現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

ダン・ブラウン「インフェルノ」

2018-03-03 08:41:55 | 参考文献
 「ダビンチ・コード」で有名なラングドン教授シリーズの第四作です。
 偶然の多用、荒唐無稽な設定、デフォルメされた登場人物、ご都合主義の展開、主要人物の恋愛などを駆使した、純然としたエンターテインメント作品です。
 シリーズの外の本と同様に世界的なベストセラーになっているようですが、ダンテの「神曲」にもキリスト教にもなじみの薄い日本でもヒットしているのは、別の理由があるでしょう。
 それは、主人公たちが、フィレンツェ、ヴェネツィア、イスタンブールといった世界でも有数の観光地を駆け巡り、時には一般観光客には行かれないような内部にまで潜入していくからです。
 そう、この作品は、一種の手の込んだ詳細な観光ガイドブックの働きをしているのです。
 それが、日本の読者、特に女性読者に受け入れられた主な理由でしょう。
 この作品のように、世界各地を舞台にした作品(例えばフィレンツェだったら、トマス・ハリスの「ハンニバル」)は今までもありましたが、こんなにお金と時間をかけて詳細に調査した作品は稀でしょう。
 児童文学の世界でも、世界各地の有名な場所を舞台にした作品(例えば、カニグズバーグの「クローディアの秘密」におけるニューヨークのメトロポリタン美術館など)はありましたが、ここまで徹底したものはないと思います。
 あるいはこういった作品は、児童文学のエンターテインメント作品の一分野としても、これから開拓することが可能かもしれません。
 ただ、ダン・ブラウンのように十分なお金と時間をかけないと、中途半端なものになってしまうと思いますが。

インフェルノ (上) (海外文学)
クリエーター情報なし
角川書店


インフェルノ (下) (海外文学)
クリエーター情報なし
角川書店
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする