現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

ポスト「現代児童文学」

2021-09-23 18:12:03 | 評論

 「現代児童文学」が終焉したと認識されたころ(2010年前後)には、その後の児童文学の方向性は、「子どもだけでなく大人にも共有される広義のエンターテインメントの1ジャンル」と目されていました。
 それは、「女性向け」という但し書きを付ければ、正しかったでしょう。
 なぜなら、「児童文学」の「L文学」(女性作者による女性を主人公にした女性読者のための文学)化が、1980年代ごろから同時に進行していたからです。
( これは、大人の文学でも同様の傾向にあるのですが、児童文学の場合は、さらに女性編集者、女性教師、女性司書、女性書店員、女性研究者なども加わったより強固なL文学化が進みました。)
 しかし、それから10年以上がたって、事態はより深刻化しています。
 児童文学の読者の、低年齢化が進んでいるのです。
 その背景には、スマホの普及とその低年齢化があげられます。
 いったんスマホを手に入れれば、ユーチューブ、インスタグラム、LINE、ゲーム、音楽などの魅力的なディジタル・コンテンツがいつでも自由に使えるようになるのです。
( また、そうした商品の消費の形態も、単体の購入からサブスクリプションに変化しています。)
 その動きに素早く対応したのが、マンガ業界です。今では売り上げの半分以上は、ディジタル・コンテンツから得ています。
 残念ながら、児童文学業界は、そうした流れから取り残されて、読者の低年齢化によってますます小さくなったマーケットの中で苦戦しています。
こうした状況において、低年齢層は、たんにスマホを持っていないだけでなく、(前述した)媒介者たちからの影響が強いので、児童文学の最後の砦と言えるでしょう。
しかし、ここでは絵本や絵物語という強力なライバルがいるために、文章中心の児童文学(よみもの)の出版は限定的にならざるを得ません。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« テルマエ・ロマエⅡ | トップ | 現在のエンターテインメント »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

評論」カテゴリの最新記事