現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

辻原登「寂しい丘で狩りをする」

2018-07-29 09:51:20 | 参考文献
 かつて強姦をして逮捕された男が七年後に出所し、その男から執拗に命を狙われている被害者女性と、彼女に調査を依頼されたこれも別れた男にストーカー行為を受けている女性探偵との奇妙な関係を、ミステリータッチで描いています。
 偶然の多用、荒唐無稽なストーリー展開、デフォルメされた登場人物など、典型的なエンターテインメントの手法で書かれた作品です。
 作品の面白さはまあまあと言ったところなのですが、ここで注目したいのは作品にちりばめらた非常にマニアックな情報の扱いについてです。
 この作品でも、辻原が得意とする、犯罪、裁判、映画、カメラ、文学、風俗などの分野において、博覧強記ぶりをいかんなく発揮しています。
 しかし、これらのマニアックな知識の披瀝が、時として物語の本質から外れたところで長々とおこなわれてしまいます。
 これは、プロットを追って読んでいるコモンリーダーの読みを阻害していることもあったように感じられました。
 たしかに「神は細部に宿る」ともいいます。
 児童文学の世界でも作者ならではの知識がちりばめられた作品を読むことは、読書の喜びのひとつなのですが、いき過ぎると失敗することが多いようです。

寂しい丘で狩りをする
クリエーター情報なし
講談社

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