現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

現代における戦争児童文学

2017-11-28 09:54:25 | 考察
 現代において新しい戦争児童文学を書く意味は、よく考えなければならないかもしれません。
 日本では、戦争児童文学は一つのジャンルとして成立するほど多く書かれています。
 その上で、さらに新しい作品を書くのであれば、従来の作品にはない新しい面がなければいけないのではないでしょうか。
 平和な現代の日本に暮らす子どもたちに、戦争が「遠い過去のこと」でも、「どこかの外国のこと」でもなく、ともすれば自分自身も巻き込まれる可能性があることを想起させるような工夫が必要だと思います。
 「戦争は悲しい」、「戦争は悲惨だ」、「戦争は恐ろしい」といった風に、情緒的に反戦を訴えるだけでは、限界があるのではないでしょうか。

戦争児童文学は真実をつたえてきたか―長谷川潮・評論集 (教科書に書かれなかった戦争)
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梨の木舎
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伊坂幸太郎「EXIT」AX所収

2017-11-28 09:53:00 | 参考文献
 主人公の凄腕の殺し屋が、同等の腕前の同業者と対決します。
 この対決は引き分けに終わるのですが、その後主人公はあっさりと(二行で)別の手段で殺されてしまい、主人公は対決した同業者へ移ります。
 この短編では、作品の一番の魅力である主人公の恐妻家ぶりがぜんぜん生かされていなくて、まったく物足りません。
 息子への愛情(これは同業者も同じです)は他の短編と同様に書かれているのですが、とってつけたようでうまくいかされていません。
 そのため、同業者との対決がメインになっているのですが、こうしたアクションシーンはもっと上手に書ける作家はたくさんいるので、特に魅力はありません。
 他の短編は雑誌に発表されているのに、この作品と次の最終作品だけが書き下ろしになっているようなのですが、それが悪影響(本にするために無理に書かされたかもしれません)しているように思われます。

AX アックス
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KADOKAWA
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三崎亜記「正義の味方」チェーン・ピープル所収

2017-11-28 09:52:22 | 参考文献
 ウルトラマンを想起させる「正義の味方」が、実はみんなにとって迷惑な存在(「敵」に壊されるのだけならその被害は国が補償するが「正義の味方」との格闘で被害がさらに拡大されてしかも誰も保障してくれない、「敵」は「正義の味方」がいるから日本だけを襲ってくるのではないか、政争に利用されているなど)になっていったことが、「正義の味方」がいた四十年前を懐古する形で語られます。
 明らかにウルトラマンのパロディなのですが、書き方が独特です。
 ほとんどリアルタイムのストーリー展開はなく、過去の事実を淡々と説明する感じです。
 そう、何かの教科書のようです。
 この作品はかなり極端ですが、最近のエンターテインメントでは、描写、アクション、ダイアローグといった従来の小説の文章よりも説明文でストーリーが語られる傾向にあります。
 これは、対象としている読者の読書体験が昔と比べて少なく、文字情報から物語を読み解く力が弱くなっているので、説明文の方が物語を追いやすくなっているためだと思われます。
 このことが悪いと言っているのでなく、かつて物語消費の媒体が「人による語り」から「文字情報」へ変わったように、現代では「文字情報」から「視覚プラス音声情報」へと変化していると言っているのです。
 文学に限ってみても、「詩」から「散文」へ、その「散文」もより意味を限定する(児童文学研究者の宮川健郎の言葉を借りれば)取扱説明書のような誰が読んでも同じように意味が伝わるものへと変化しつつあります。
 極論すれば、文学は限りなく芸術から遠い世界へ向かっていると言えるかもしれません。


チェーン・ピープル
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グーニーズ

2017-11-28 09:51:45 | 映画
 1985年に公開された子ども向け冒険映画で、その頃大人気だったシンディー・ローパーが主題歌を歌っていたこともあり、日本でもヒットしました。
 当時夥しい数あったスピルバーグ印(この映画では製作総指揮)の映画だったことも人気の原因ですが、演出力は彼が監督した作品には遠く及びません。
 子どもたちの海賊の宝物さがしを、脱獄中の偽札作り犯人グループとの対決や、ゴルフ場開発のために町がなくなる話などに絡めて、いいもの役と悪人役がはっきりしていて、最後にはいい方がすべて勝つという単純明快なハッピーエンドストーリーです。
 見どころは、スピルバーグの「インディー・ジョーンズ」を子ども版にした冒険活劇シーン(CGではないのでそれなりにスリルが味わえます)と、「インディー・ジョーンズ」や「スタンド・バイ・ミー」(この映画より一年後の公開ですが)で活躍した子役たちも含めた少年たちの達者な演技でしょう。
 そう、この映画は「インディ・ジョーンズ」の子ども版であるとともに、「スタンド・バイ・ミー」のエンターテインメント版なのかもしれません。
 そういう意味では、児童文学のエンターテインメントを書こうとしている人にはお勧めできます。

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