goo blog サービス終了のお知らせ 

現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

ウォリアーズ

2025-02-04 17:17:45 | 映画

 1979年に公開された、アメリカのB級映画(低予算で製作された特定の観客向けの娯楽映画)です。
 当時アメリカで社会問題になっていた、ストリートギャングの若者たちを描いています。
 互いに敵対していたニューヨークのストリートギャングの融和を図るための集会で、主催者である有力チームのカリスマ性を持ったリーダーが射殺され、出席していたストリートギャングのチームの「ウォリアーズ」が犯人の濡れ衣を着せられます。
 「ウォリアーズ」のメンバーは、集会が行われたブロンクスからシマ(テリトリー)であるコニーアイランド(ニューヨーク郊外の海辺で、遊園地などがある歓楽街)まで、徒歩と地下鉄で逃げていきます。
 その行先々で、そこをシマとするそれぞれに個性豊かなストリートギャングのチームが襲ってきます。
 さまざまな障害を、「ウォリアーズ」は、ゲーム感覚(その後実際にビデオゲームになりました)で突破していくだけの単純なストーリーです。
 ほとんどオールロケ(トイレの中での乱闘シーンだけがセットだそうです)で撮影されているので、現在のSFXでなんでも済ましてしまう映画と違って、手作り感満載です。
 1970年代当時のニューヨークの荒廃した街路や地下鉄がふんだんに登場していて、作品にリアリティをもたらしています。
 この映画の登場人物や対象としている観衆は、児童文学でいえばヤングアダルトにあたりますが、最近の日本の児童文学では、作者の大半が女性のせいかお行儀がよくなって、こうしたピカレスクロマンはほぼ絶滅しています。
 監督のウォルター・ヒル(脚本家としては「ゲッタウェイ」など、監督としては「48時間」など、製作者としては「エイリアン」シリーズなど)は、こうしたピカレスクロマンが得意で、1984年にはやはりストリートギャングが出てくる「ストリート・オブ・ファイヤー」(その記事を参照してください)が日本でもヒットしました(その年のキネマ旬報の読者投票で洋画の第一位)。
 これらの映画では、無意味な殺人や残酷シーンはなく、ストリートギャングたちの乱闘シーンもスポーツ感覚で楽しめ、一種の青春映画か恋愛映画として見ることができます。


ウォリアーズ [DVD]
クリエーター情報なし
パラマウント ジャパン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ボヘミアン・ラプソディ

2025-01-31 09:08:55 | 映画

 イギリスの伝説的なロックバンド(ヴォーカルのフレディ・マーキュリーが、1991年にAIDSで死んだ(そのころは治療法が確立されていなかったので不治の病でした)ことも含めて)のクイーンの、結成された1970年前後から20世紀最大のチャリティ・コンサートであるライヴ・エイド(1985年7月13日)までを、フレディ・マーキュリーを中心に描いた音楽伝記映画です。
 個性の塊のような(途中からは自らゲイの典型を演じている感じもありました)フレディ・マーキュリーだけでなく、ギターのブライアン・メイ(かっこいいロック・ギタリストの典型(今は亡き多田かおるの少女マンガ「愛してナイト」に出てくるギタリストは彼にそっくりでした))、ドラマーのロジャー・テイラー(アイドル的なルックスで女の子にめちゃくちゃもてるロックスターの典型(「ブレイク・フリー」という曲のミュージックビデオは、四人が女装して出演したことで当時賛否両論を巻き起こしましたが、もちろん発案者のロジャーが圧倒的に美しく、特にクローズアップされた彼のミニスカートのヒップは女性も顔負けで、我が家では今でも「ロジャーのお尻」と語り草になっています)、ベースのジョン・ディーコン(渋いベーシストの典型)も、それらしい俳優が演じていて、それぞれやや誇張されているものの、オールド・ファンのイメージを大きく崩さなかったのは、なかなかの配役だと思いました。
 ストーリーは、15年以上の期間をすごく駆け足で振り返っていますし、メンバーだけでなく、スタッフや、フレディの家族や、恋人(男性だけでなく女性も)や、LGBTの人たちに配慮したため、無難な内容になっていますが、全編にクイーンの有名なヒットソング(「キラー・クイーン」、「ボヘミアン・ラプソディ」、「レディオ・ガ・ガ」、「伝説のチャンピオン」、「ウィ・ウィル・ロック・ユー」など)がまんべんなく散りばめられていて、音楽映画としてはまったく申し分ありません。
 しかし、この映画の一番収穫は、クイーンが、フレディだけでなく、ブライアン、ロジャー、ジョンも含めた四人がそろって、初めてロックバンドとして完成していることが、再認識できたことでしょう。
 強烈な個性と劇的な最期のために、クイーンといえばフレディ・マーキュリーがクローズアップされがちですが(この映画も基本的にはそうです)、彼らが日本で知られるようになった1970年代の初めごろは、どちらかというと、クラシック音楽の素養もあるインテリ(ブライアンは天文学、ロジャーは歯科医、ジョンは電気工学を専攻)・ロックバンドで、ピンク・フロイドやエマーソン・レイク・アンド・パーマーのようなプログレッシブ・ロックに、美しいメロディ・ラインやハーモニーを加えた最先端のバンドとして紹介されていたことを、改めて思い出しました。

ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)
クリエーター情報なし
Universal Music =music=
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

なまいきシャルロット

2025-01-25 09:20:00 | 映画

 13歳の多感な少女のひと夏の経験を、美しい映像とポップな音楽で描いています。
 学校や自分の住む田舎町への違和感、そこから脱出して自由に生きることの夢、大人たちへの反発、同い年の天才少女ピアニストへの憧れ、年上の男との出会いなど、思春期前期の少女の繊細な感情をビビッドに描いています。
 フランスの地方の美しい風景と主演のシャルロット・ゲンズブールの瑞々しい魅力とも相まって、さわやかな青春映画に仕上がっています。
 日本の児童文学でも、こうしたフレッシュな小説が欲しいものです。

なまいきシャルロット [DVD]
クリエーター情報なし
ハピネット・ピクチャーズ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(500)日のサマー

2025-01-16 09:41:06 | 映画

 2009年公開のアメリカ映画です。

 ロマンチックな恋愛を夢見る若い男性が、一目惚れした風変わりな女性、サマーに振り回される500日を、時間が先行したり、後退したりしながら描くというかなり凝った構成の映画で、ちょっとわかりづらいかもしれません。

 しかし、この風変わりな(恋人や結婚相手ではなく友人としての関係だと一方的に宣言するのですが、その一方でキスやセックスはぜんぜん平気なのです)女性がかなり魅力的なので、観客は主人公と一体になって、彼女の言動に一喜一憂してしまいます。

 けっきょく主人公は振られて、彼女は別の男性と結婚してしまうのですが、それをきっかけに、主人公は本当にやりたかった建築家を目指すようになりますし(それまではメッセージカード会社のコピーライターをしていました)、新しい恋人候補(その名前がオータムなので、オチになっています)にもアタックします。

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大統領の陰謀

2024-12-29 15:20:13 | 映画

 ニクソン大統領を1974年に辞任にまで追い込んだ、1972年のウォーターゲート事件のスクープ記事を書い、たワシントン・ポストの二人の若手記者の活躍を描いた1976年の映画です。
 アカデミー賞では、作品賞などの主要な賞は逃しましたが、助演男優賞などの四部門を受賞しました。
 これほどの政治スキャンダルを、わずか数年後に当時のスター俳優であるダスティン・ホフマンとロバート・レッドフォードを主役にして描いた、当時のアメリカ映画界の健全さに驚嘆させられます。
 ウォーターゲート事件に詳しくないアメリカ以外の国の人たち、特に若い世代にはわかりにくい映画かもしれませんが、娯楽一辺倒の今の映画へのアンチテーゼとして観る価値があるのではないでしょうか。
 また、インターネット検索やスマホはもちろん、パソコンすらない当時の新聞記者の取材活動(電話、タイプライター、メモやコピーなどの紙類、電話帳、図書館、インタビューメモなど)がよくわかり、懐かしさと共に直接取材源にあたる大切さを再確認させられました。

大統領の陰謀 [Blu-ray]
クリエーター情報なし
ワーナー・ホーム・ビデオ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パーフェクト デイズ

2024-12-27 09:26:21 | 映画

2023年公開の日本・ドイツ合作映画です。

役所広司の一人芝居といっていいほど、彼の表情や仕草による演技が圧倒的で、カンヌ国際映画祭で主演男優賞を獲得したのも納得できます。

渋谷区の公衆トイレ(非常に芸術的でユニークなトイレがたくさん登場します)を舞台にしています。

もともとこの映画は、渋谷区内17か所の公共トイレを刷新する「THE TOKYO TOILET」というプロジェクトをPRするために企画されたものです。

監督のヴィム・ベンダースが、日本滞在時に接した折り目正しいサービスや公共の場所の清潔さに感銘を受け、長篇作品として再構想し、彼が日本の街の特徴と考えた「職人意識」「責任感」を体現する存在として主人公を位置づけ、彼に「平山」という名前を与えました。

この名前は、監督が敬愛する小津安二郎監督が、「東京物語」で笠智衆が演じた父親役を初めとして繰り返し使ったものです。

映画も、小津作品を思わせるような日本の美しい風景(隅田川や神社の庭の樹木など)が描かれています。

映画は、平山の規則正しい毎日のルーチン(一人暮らしでの身支度、育てているひこばえ(昼食をとる神社の大木から、許可を得て持ってきています)の世話、軽自動車による早朝のドライブ(アパートの外にある自動販売機で買った缶コーヒーを飲みながら、カセットテープで古い洋楽を聴いています)、几帳面で誠実なトイレ掃除、仕事を終えた後の銭湯、浅草の地下街にある焼きそば屋でのお酒、フィルムを使うカメラでの写真撮影、就寝前の文庫本による読書など)を描きながら、そこにわずかにかかわってくる人たちとの関係も描いていきます。

同僚の調子のいい男、彼が好きなガールズバーの女の子、家出してきた主人公の姪、それを迎えに来た主人公の妹、休日(これもルーチンがあって、掃除をまとめてやり、コインランドリーでの洗濯、写真の現像の依頼と受取り、古本屋で文庫本を買う)に行くスナックのママ(石川さゆりが演じていて主人公とはいい雰囲気なのですが、歌がうますぎるのが難点です)、ママの元夫(三浦正和が演じていてこれもいい感じです)などです。

主人公は、普段は非常に無口ですが、姪やママやその元夫とは、ちゃんと会話ができます。

ラストは、元夫(癌が転移しています)からママを託されて、主人公にとってはある意味ハッピーエンドな感じです。

主人公を初めとして、芸達者ばかりの出演者が、優れた監督の演出で確固たる世界を作り上げています。

アカデミー賞の外国語映画賞の受賞は逃しましたが、一見の価値のある映画だと思います。

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

プレイス・イン・ザ・ハート

2024-12-26 14:07:38 | 映画

 1984年公開のアメリカ映画です。
 1930年代のテキサスの田舎町を舞台に、事故(酔った黒人少年の銃で偶発的に撃たれた)で保安官の夫を亡くした専業主婦が、一人で家族(幼い息子と娘)と農場を守って闘っていく姿を描いています。
 姉夫婦の結婚の危機(夫が友人の妻と不倫をしている)、竜巻による町の壊滅的な被害、綿花の摘み取り競争(一番早く出荷すると賞金が出る)、奇妙な仲間たち(綿花栽培に詳しい流れ者の黒人の使用人、第一次大戦で失明した下宿人など)、南部の風俗(カントリーミュージックやダンスなど)、KKKによる黒人差別などを取り混ぜながら、初めはお金を稼ぐことは何もわからなかった女性が、だんだんたくましく成長していく姿が感動的です。
 ラストの教会のミサのシーンで、主人公のまわりには、家族や地域の人たちに交じって、KKKに追われて町を去った使用人の黒人、離婚の危機を乗り越えようとしている姉夫婦、そして、冒頭で死んだ保安官の夫と犯人の黒人少年(直後に白人たちによって虐殺されました)までが参加しているところに、この映画のテーマと作品の題名が意味するところがはっきりと表れています。
 アメリカ南部の風景や風俗も魅力的なのですが、なんといってもこの映画で素晴らしいのは、サリー・フィールドが演じるヒロインの魅力でしょう。
 決して美人でもなければスタイルもいいわけでもありませんが、なんともチャーミングな女性で、周囲の登場人物だけでなく観客までもが彼女を応援したくなってしまいます。
 サリー・フィールドは、この女性役で二度目のアカデミー主演女優賞(一回目は「ノーマ・レイ」)を獲得しています。

プレイス・イン・ザ・ハート [DVD]
クリエーター情報なし
復刻シネマライブラリー
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベルリン・天使の詩

2024-12-24 06:49:16 | 映画

 1987年のカンヌ映画祭で監督賞を受賞した、ヴィム・ヴェンダース監督の代表作(最高傑作は「パリ、テキサス」(その記事を参照してください)でしょう)の一つです。
 人々の心の声を聞いてそっと励ましていく守護天使の一人(?)が、サーカスの空中ブランコ乗りの女性に恋をして、永遠の生命を捨てて人間になる話です。
 白黒とカラーを効果的に使い分けた映像、人々の心のつぶやきをあらわす詩的で深遠な言葉の数々、戦争の傷跡が残るベルリンの荒廃した風景、そんな所でも確かに存在する人々の暖かなつながり、この映画のヒントを与えたというバンドのロック・ミュージックなどが、互いにうまく響き合っています。
 普通の映画が「散文」ならば、この映画は題名にもあるとおりに「詩」でしょう。
 やや難解ですが、一度は味わう価値があります。
 天使と人間の対比が、生きていくことの意味を考えさせてくれます。

ベルリン・天使の詩 デジタルニューマスター版 [DVD]
クリエーター情報なし
東北新社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

レオン

2024-12-23 10:59:21 | 映画

 1994年のフランス・アメリカ合作映画です。
 リュック・ベンソン得意の派手な流血シーンに溢れたアクション映画で、主役を演じたジャン・レノを一躍トップスターにしました。
 孤独な殺し屋と家族(警察の麻薬捜査局を牛耳る悪徳警官に皆殺しにされます)に疎外されている12歳の少女の純愛を描いています。
 おませな女の子とまるで子どものような(読み書きができず、いつもミルクを飲んでいます)大人の男性という組み合わせは、「シベールの日曜日」(その記事を参照してください)を思い起こさせます(1962年のフランス映画(アカデミー外国語映画賞を受賞)なので、おそらくリュック・ベンソンは少なからず影響を受けていると思われます)が、派手な銃撃戦が目立つのでこちらの方が一般受けはしましたが、イノセンスな魂の触れ合いを描いた作品としてはかなり劣ります。
 当時はジャン・レノばかりがクローズアップされましたが、少女役のナタリー・ポートマンのややこまっしゃくれているけれど魅力的な美貌と演技(16年後に、「ブラック・スワン」でアカデミー主演女優賞を受賞)、敵役の悪徳警官役のゲイリ―・オールドマンの狂気溢れる風貌と演技(24年後に「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」でアカデミー賞主演男優賞を受賞)も強く印象に残ります。

レオン 完全版 (字幕版)
クリエーター情報なし
メーカー情報なし
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パリ、テキサス

2024-12-16 08:46:51 | 映画

 1984年にカンヌ映画祭でパルム・ドール(最優秀賞)を受賞した、ヴィム・ヴェンダース監督のロード・ムービーの傑作です。
 四年間行方不明だった男が、弟夫婦の献身的な愛情で、人間性を取り戻していきます。
 しかし、彼は、弟夫婦が育ててくれていた七歳の息子を連れて、テキサス州ヒューストンにいると思われる若い妻(25歳ぐらい。子どもを産んだときは17か18)を探しに、車でテキサスに向かいます。
 兄弟とは? 夫婦とは? 男女とは? 父子とは? 母子とは?
 いろいろなことを考えさせてくれる映画です。
 そういった意味では、児童文学のテーマとも重なります。
 実は、NHKのBS放送を録画して四十年ぶりに見たのですが、あいにく緊急地震放送のために放映の途中で打ち切りになっていました(大災害だったのですから当然のことです)。
 しかし、続きを見るのはなかなか難しかったです。
 NHKは地震のために放送中止になった番組が多いために再放送のめどは立っていませんし(これまた当然です)、近隣のレンタルショップや図書館はどこもこの映画のDVDやビデオを持っていなくて、かなり遠くの大型のレンタルショップでようやく発見しました(ただし、ディジタルリマスター版のブルーレイだったので、放送よりもいい画質で見られました)。
 他の記事でも書きましたが、古い名画を見るのは年々難しくなっているようなので、うまい方法を考えなくてはと思い知らされました。
 
 

パリ,テキサス コレクターズ・エディション(初回生産限定) [Blu-ray]
クリエーター情報なし
ジェネオン・ユニバーサル

 
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ペーパームーン

2024-12-13 09:04:10 | 映画

 大恐慌後の禁酒法時代を背景にしたロードムービーです。
 母を事故で亡くした九歳の少女を、母親の知り合い(わずかだが少女の父親の可能性もある)の気のいい詐欺師が、親戚の家に送り届けるまでの珍道中が楽しいです。
 いろいろなオーソドックスな詐欺の手口が、オニール親子(実の親子です)の達者な演技(特にテータム・オニールはシャーリー・テンプル(戦前の天才子役)の再来と言われて、この映画でアカデミー助演女優賞を最年少で受賞しています)で、鮮やかに描かれています。
 ペーパームーンと言う題名は、実際には血のつながりを持たなくても一緒に過ごしていくうちに心のつながりを築いていくという意味で、少女が、裕福でやさしそうな叔母夫妻との生活よりも、根無し草のような詐欺師との暮らしを選ぶラストを暗示しています。
 子どもがたばこを吸うなど、今では許されないようなシーンもありますが、人と人のつながりを見事に描いた傑作ですし、児童文学を創作する上でも大いに参考になります。
 それしても、天才子役たちのその後は、洋の東西を問わず悲惨なことが多く、テイタムもその例にもれません。
 そんな子役たちを、ちやほやしながら搾取する大人たちの存在は許しがたいものがあります。

ペーパー・ムーン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
クリエーター情報なし
パラマウント ジャパン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モスラ対ゴジラ

2024-12-04 09:10:36 | 映画

 1964年に作られた東宝の怪獣映画です。
 2014年は、1954年の作られた「ゴジラ」の60周年ということで、盛んに古い怪獣映画がテレビでも上映されました。
 この映画は、ゴジラシリーズでは第4作目で、先行して1961年に作られた「モスラ」と対決することになります。
 これは、第3作の「キングコング対ゴジラ」が好評だったのですが、キングコングはアメリカ産の怪獣だったので、東宝の自前の人気怪獣であるモスラと戦わせることにしたのでしょう。
 「ゴジラ」「ラドン」「モスラ」などの怪獣が単独で登場する初期の映画では、「核実験反対」「公害問題」「先住民問題」などの社会批判が作品に込められていましたが、対決シリーズになってからは、「人類の敵」ゴジラ対「人類の味方」モスラといった単純な構図になってしまい、娯楽色がさらに強くなりました。
 それでも、この映画のころまでは、ラストシーンなどに「より良い社会を作っていかなければならない」などの理想主義的なセリフがスローガンのように付け加えられていましたが、やがてそれもすっかりなくなりました。
 「現代児童文学」も同様ですが、当初は「社会の変革」などの意志を持って出発したどんなジャンルも、次第に商業主義に負けて娯楽色を前面に出していき、ついには陳腐なものに成り下がるようです。

モスラ対ゴジラ【60周年記念版】 [Blu-ray]
クリエーター情報なし
東宝
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シベールの日曜日

2024-12-02 18:36:29 | 映画

 冒頭、第一次インドシナ戦争のシーンで始まります。
 戦闘機のパイロットだったピエールは、恐怖の表情を浮かべたベトナムの少女らしい子どもの姿を目にしたとたんに撃墜されてしまいます。
 この事故により記憶を失った30才のピエールは、病院で知り合った看護婦のマドレーヌと暮らしています。
 ピエールは、数少ない理解者の芸術家のカルロスの仕事を手伝ってわずかな小遣いをもらっていますが、生活面でも経済面でもマドレーヌの庇護下で暮らしています。
 そういう点では、マドレーヌはこの映画では母性を象徴しているかもしれません。
 ある夜、ピエールは、父親に修道院の寄宿舎に預けられる形で置き去りにされた12才の少女と遭遇します。
 日曜日、寄宿舎に出かけたピエールは、面会に来た父親と間違えられてしまいます。
 それから、日曜ごとのピエールと少女の交流が続きます。
 ふたりがいつも散歩する湖の景色が、白黒のスクリーンに本当に美しく描かれています。
 特に、少女が湖に小石を投げて波紋が広がる中にふたりの姿が映り、少女が「これが私たちのおうちよ」というところは、ため息が出るほど美しいシーンです。
 少女は修道院ではフランソワーズと呼ばれていますが、それは彼女のギリシアの女神から取った名前がキリスト教的でないというので変えられたのだと、彼女はピエールに言います。
 そして、教会の屋根の風見鶏を取ってくれたら、本当の名を教えてあげるとピエールに告げます。
 ところが、ピエールは記憶を失ったときの後遺症か、高いところにあがるとめまいに襲われてしまうのでした。
 二人の日曜日ごとの交流は、子ども同士のようにほほえましいシーンの連続です。
 ピエールは、事故のショックで記憶を失うだけでなく、子ども以上に純真な心の持ち主になっています。
 そのため、二人の会話は、いつも少女の方がリードして進められます。
「私がお母さんのかわりになってあげる。」
「私が12であなたが30、13で31」と、数えていって「私が18になったら、あなたはまだ36だから結婚しましょう……」
といった会話も交わしますが、二人の交流は子どもたちによる純真なものです。
 あとで二人の交流を知って不安を訴えるマドレーヌに、芸術家のカルロスだけはピエールに理解を示します。
 戦争で過去を失った男と、家族に捨てられた少女の、孤独な者同士の魂のふれあいという関係は、なかなかまわりからは理解されません。
 クリスマスの夜を、二人は一緒に過ごすことになります。
 カルロスの家からツリーを持ち出したピエールと、寄宿舎を抜け出した少女の、二人だけのささやかで暖かいクリスマスの晩をすごします。
 いたずらっぽくほほえんだ少女がピエールに渡したマッチ箱。
 その中の紙切れに、一言「Cybele」と書かれています。
 初めてピエールに明かした名前シベール。
 これが、少女の心からのクリスマスプレゼントでした。
 ピエールは、「あとで僕もプレゼントをあげるよ。」と秘密めかした笑顔で答えます。
 そのころ、不安に駆られたマドレーヌが同僚の医者に相談したことで修道院に連絡がとんて゛大騒ぎになり、警察が少女の行方の捜索を開始していました。
 カルロスが「なんて軽はずみなことを……」といったのも後の祭りでした。
 以前の約束を覚えていたピエールは、少女が眠っている間にナイフを片手に教会の屋根によじ登って、風見鶏を取り外します。
 その時、突然ピエールは、今まで自分を悩ませていためまいなどの発作が治っていることに気がつきます。
 シベールとの交流で、ついにピエールが戦争で負った心の傷(ベトナムの少女を殺してしまったと思いこんでいます)が癒えたのです。
 そして、ナイフと風見鶏を手に、シベールの所へ戻りかけたとき、警官にピエールは発見され、少女に害意を持って近づく変質者と思われて射殺されてしまいます。
 警官が無線で報告している声が聞こえてきます。
「危ないところでした。もう少しでナイフで少女を……」
 マドレーヌやカルロスたちが、現場に駆けつけたときは全てが終わった後でした。
 警官たちに起こされて「君の名前は?」と聞かれたシベールが、あたりの状況を見て、「もう、私には名前なんかないの。誰でもなくなったの!」と泣きながら叫ぶラストシーンが印象的です。
 そして、終始静かだった映画で最後のシベールの叫びに、いきなりかぶさってくる音楽が「miserere nobis」(我らを哀れみたまえ)なのでした。
 この映画は、1962年のアカデミー外国語賞をはじめとして、数々の賞を受賞しています。
 私が今は無きぴあ(当時は100円でした)を片手に、毎日のように都内各地の名画座や自主上映会で内外の名画を見てまわっていた1970年代には、「シベールの日曜日」は雑誌で人気投票すると必ず上位に入る(たしかぴあでは1位になったこともあります)ほどの有名な映画でした。
 当時はビデオ・レンタルもなく(だいたい家庭用ビデオレコーダーもありませんでした)、映画を見るためには自分でその場所へ行くしかなかったのです。
 その代わりに、フィルムセンターや名画座や自主上映会で、少なくとも都内に住んでいれば毎日どこかで名画を見られたので、商業主義全盛の今よりもむしろ環境は良かったかもしれません。
 話は脱線しますが、小劇場の演劇も今みたいに商業主義化していなくて、やはりぴあの情報をもとに毎週のように千円以下の低料金で見にいってていました。
 当時は、つかこうへい劇団と野田秀樹の夢の遊眠社(会場は東大の駒場キャンパスが多かったです)が全盛期でした
 話を映画に戻しますと、「シベールの日曜日」は2010年にDVDが出ているのですが、どこの宅配レンタルDVD会社も在庫を持っていません。
 名画を見る唯一の頼みの綱だったシネフィル・イマジカも、とうとう商業主義に屈して、2012年3月1日に名画専門チャンネルの看板を下ろして、イマジカBSという平凡な娯楽映画チャンネルになってしまいました。
「これはDVDをアマゾンで買うしかない」と思いかかっていたのですが、「第3回午前十時の映画祭」で「シベールの日曜日」を上映することが分かって、立川まで見に行くことにしていました。
 ところが、日曜日の朝刊を何気なく見ていたら、スターチャンネルの欄に「シベールの日曜日」の文字がありました。
 「第3回午前十時の映画祭」とのタイアップで、なんとその日の午前十時に放映されるのです。
 あわてて契約の手続きをして何とか時間までにスターチャンネルが映るようになり、「シベールの日曜日」を録画することができました。
 37年ぶりに見た「シベールの日曜日」は、少しも古びることなく二十歳ごろに見たときと変わらない感動を私に与えてくれました。
 当時は、冒頭のインドシナ戦争(アメリカでなくフランスとの間でおきました)でベトナムの少女を殺したと思いこんだことから始まっていることで、一種の反戦映画ともいわれていました(当時は日本だけでなく世界的に反ベトナム戦争運動が盛んでしたから、そういった映画もたくさんありました)。
 また、キリスト教の閉鎖性に対する批判という解釈もありました(修道院では、シベールがギリシアの女神の名前だという理由で、彼女は別の名前をつけられてしまいます。ラストシーンで、教会の風見鶏をピエールが盗みます。クリスマスの日に、ピエールは殺されてシベールは永遠に名前を失います。ラストシーンで、教会音楽の一節 「我らを哀れみたまえ」が流れます)。
 しかし、一番素直な解釈は、シベールとピエールという二つの孤独な魂が邂逅する物語だとする見方でしょう。
 その過程で、ベトナムの少女を殺したと思いこんでいたピエールの心の傷が、シベールという自分と同じように孤独な少女と触れ合うことによって癒され、ピエールが自己を回復していきます
 しかし、マドレーヌや同僚たちに象徴される世俗の人たちには、シベールやピエールという疎外されている人たちの心情を正しく理解することができません。
 ラストのピエールの死とそれによりシベールが永遠に名前を失う結末は、シベールのイノセンス(純真で無垢)な魂がやはりイノセンスなピエールの魂は救済したものの、世俗的な現実には受け入れられなかったことを象徴しています。
 イノセンスな魂による別の魂の救済というと、1956年に同じくアカデミー外国語賞をとったフェデリコ・フェリーニの「道」で、ジュリエッタ・マシーナが演じた知的障碍者の女性ジェルミソーナのイノセンスな魂が、アンソニー・クイン演じる凶暴な大男ザンパノの魂を救済したラストシーンを思い浮かべます。
 また、このイノセンスな魂による人や社会の救済というのは、映画だけでなく文学、特に児童文学にとって(狭義の現代児童文学だけでなく、近代童話や現在の作品も含めて)重要なテーマの一つだと考えています(ようやくこのブログの主題につながりました)。
 私は、イノセンスな魂と、いわゆる童心主義が同じものだと考えていませんし、イノセンスな魂というのは子どもだけに宿るものだとも思っていません。
 ただ、イノセンスな魂は、抑圧される側(大人より子ども、健常者より障害者、マジョリティよりマイノリティ)に宿りやすいとは信じています(あるいは、信じたいと思っています)。
 最後に余談になりますが、この映画の人気は、シベールを演じたパトリシア・ゴッジのちょっとおませでキュートな女の子の魅力に負うところも多いと思われます。
 そして、ピエールは、成熟した女性の魅力にあふれる同棲相手のマドレーヌでなく、まだ未成熟な少女のシベールを選択します。
 そのため、近年では「シベールの日曜日」とロリータ・コンプレックスを関連付けて語られることもありますが、実際に映画を見ていただければそんな単純な映画ではないことがよくわかります。
 

シベールの日曜日 HDニューマスター版 [DVD]
クリエーター情報なし
紀伊國屋書店
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

木と市長と文化会館 または七つの偶然

2024-11-30 09:17:13 | 映画

 1992年のエスプリのきいたフランス映画です。
 村の活性化のために文化会館を作ろうとする市長(本当は村長の方が正しいのではないでしょうか?)と反対派のエコロジストの校長を中心に、みんなが議論を戦わせる姿を描いたドキュメンタリータッチの映画です。
 市長や校長(この二人は直接は議論しません)を中心に、市長の愛人の女流作家、この問題を取材に来た女性フリーライター、彼女が記事を載せた政治雑誌の編集長、文化会館建設のコンペに優勝した建築家、村の英語教師、牧畜を営む老人など、様々な人が、それぞれの立場で堂々と意見を述べ合います。
 私にはあまりフランス人の知人はいないのですが、みんなこんなに議論好きなのでしょうか?
 日本では日常会話ではタブーとされる政治がらみの話(社会党と緑の党が中心)でも、フランクに自分の意見を述べ合い、反対の立場の人の意見にも感情的にならずに尊重するので、かなり衝撃的でした。
 特に、校長の10歳の娘(校長の意見にも反対の立場)が市長を論破する場面では、今の日本の児童文学が忘れている「子どもの立場に立つ」が鮮やかに実現されていて感心しました。
 校長の娘の意見の通りに、文化会館の代わりに村の人たちがみんなで集まれる緑地が作られるラストは、ちょっとハッピーエンドすぎる(しかもそこだけミュージカル風)気もしますが、まあ一種の寓話と考えればいいのかもしれません。

木と市長と文化会館/モンフォーコンの農婦 (エリック・ロメール コレクション) [DVD]
クリエーター情報なし
紀伊國屋書店
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジュマンジ

2024-11-29 09:08:54 | 映画

 1995年公開のアメリカ映画です。

 1981年に出版された同名の絵本を元に作られ、同名のボードゲームのサイコロの目によって次々と不思議なことが起きます、

 CG、アニマトロニクス、ミニチュアなどを駆使した当時としては最新の特殊撮影映像と、主演のロビン・ウィリアムスを初めとした一流俳優陣によるしっかりした人間ドラマを兼ね備えた、一級のエンターテインメント作品です。

 2017年に、舞台をビデオゲームに移した続編の「ジュマンジ/ウェルカムトゥジャングル」(その記事を参照してください)が作られてヒットし、さらに続編の「ジュマンジ/ネクストレベル」(その記事を参照してください)まで作られました。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする