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ロシアが苦しむ「ゾンビ森林火災」 ウクライナ進軍で国内消防に暗雲
5/11(水) 18:49
https://news.yahoo.co.jp/articles/e180b1400d75ff469f16a35a2864caa40062e884
──シベリアの雪の下でくすぶる万年火災。従来火災を監視していたロシア軍は、ウクライナ派兵で人員不足に陥っている
シベリアでは毎年、「ゾンビ火災」と呼ばれる野火が繰り返している。雪の下、泥炭質(泥状の石炭の一種)を多く含んだ土壌で火の気がくすぶり続け、春になると再燃するものだ。
今年もシベリア西部では、気温上昇に伴う火災シーズンに突入した。大規模な野火が発生しており、グリーンピース・ロシアによると、4月時点ですでに火災規模は昨年の2倍に達している。
通常は軍隊などが消火に当たる。だが、多くがウクライナに動員されている今年、火災の監視体制は手薄だ。延焼が続けば汚染された大気が近隣国へ流入するほか、メタンガス放出による温暖化要因になるとしてロシア国外でも憂慮されている。
ロシアのニュースサイト『シベリアン・タイムズ』が4月20日に公開した動画には、実際の火災の状況が収められている。炎が立木を呑み尽くし、見渡す限りの空一面を黒煙が覆い尽くしている。
■ 派兵で消防能力に不足
火災は永久凍土を溶かし、地中に封じ込められていたメタンガスを放出する。ガスは周囲に滞留し、さらに森林火災が広がりやすくなるという悪循環を生んでいる。
広大な森林の消防を担うのは、軍隊のほか地元有志の消防団員などとなっており、平時でさえ人的リソースは不足気味だ。米ニュースサイトの『アクシオス』は、ウクライナへの派兵で野火の発見と対処が遅れ、森林火災が「制御不能なまでに燃え広がる可能性」があると指摘している。
NASAラングレー研究所のアンバー・ソジャ研究員によると、大きな火災は衛星写真または通報による発見後、平常時であれば軍用機を投入して消火活動が展開される。「仮に戦争が続いたとするなら、夏のあいだこの(消防)能力が存在するかさえ疑問です」と彼女は憂慮する。
煙は国境を越えて流れ出すため、ロシア西部に位置するヨーロッパ諸国でも空気質の悪化は懸念事項だ。英インディペンデント紙は、「シベリアにおける憂慮すべき悪循環のひとつだ」と述べ、最大で数百万人が煙を吸うおそれがあると指摘した。
■ 火のみえない「ゾンビ火災」
シベリアでは毎年、表面からはみえない火が雪の下でくすぶり続け、春になると大規模な火災のきっかけとなる「ゾンビ火災」を繰り返してきた。
シベリアン・タイムズは昨年1月、ゾンビ火災の様子を収めた動画を公開している。雪に覆われた美しい森林だが、どこからともなく立ち上る煙が充満している点で異様だ。
さらに注意すると、所々の雪が溶けて穴が空いているのがわかる。また、パチパチと何かがはぜる音も時々聞こえる。凍土に含まれる泥炭が燃焼を続け、穴を通じて煙が上がってきているとみられる。動画撮影者の男性は、「まだ燃えている……。」「(燃えている)泥炭があるのだろう」と呟いている。
シベリアは、現在地球上でもっとも速く温暖化が進行している地域のひとつだ。凍土中からメタンガスが放出されることで状況の悪化につながるほか、火災による煤が北極に到達すると、海氷の融解を促進する。
さらには夏場に北極海の氷が失われると、ジェットストリームが乾燥した高温の気流をアメリカ西部に運びやすくなり、米西部でも森林火災が悪化するとの研究(がある。シベリアの火災は極めて広い範囲に影響を与えるようだ。
■ 侵攻の今年、もはや支援の手はなく
ゾンビ火災は毎年雪解けの季節になると、大規模な森林火災を引き起こす。例年、火災の発見と対処は軍の任務の一部となっているが、今年はウクライナ侵攻に人員を割かれ、森林火災への対応が手薄となりそうだ。
インディペンデント紙は、「通常対処を行なっているロシア軍の複数の部隊が戦闘のためウクライナに派兵されていることから、シベリアでは森林火災の確認が行われず、燃えたまま放置されている」と報じた。
過去にはベラルーシを挟んだポーランドからも消防隊が応援に駆けつけているが、制裁の行われている今年はその支援も停止される模様だ。
中央ヨーロッパのニュースを発信する『ヴィシェグラード』は、ロシアの行動を嘆く。「数年前には大規模な森林火災の鎮火を助けるべく、ポーランドから数百人の消防隊員がモスクワ地方へ駆けつけた。これはその際の動画だ。今ではシベリアの半分が燃えているが、誰も助けには来ない。ロシアよ、なぜ友でなく敵を作ろうとするのか?」
ウクライナへの侵攻は、ロシア自身の防火体制にも影を落としているようだ。
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