<
ゴルゴ13、一生遊べるカネがあっても働き続ける理由
2018.11.30 16:00
https://www.news-postseven.com/archives/20181130_804514.html
なぜゴルゴは一生遊ぶカネを蓄えているのに、働き続けるのか。元外務省主任分析官の佐藤優氏と、『ゴルゴ13』作者さいとう・たかを氏が、「ゴルゴ(通称G)のインテリジェンス」を読み解く短期集中連載。最終回は、人間関係を築く上でいちばん大事なことを語り合う。
* * *
佐藤:先生とゴルゴの共通する部分でいえば、“約束”に対する態度もそうかもしれませんね。ゴルゴはお金を稼ぐために働いているわけでもない。
さいとう:とうに一生遊んで暮らせるカネは蓄えているからね(笑)。
佐藤:セックスも好きなようですが、色欲で行動を変えるわけでもない。殺すことが好きなサイコパスでもない。ではなぜ、ゴルゴがスナイパーを続けるかといえば、そのモチベーション維持には「約束を守る」ということがあるように思うんです。ゴルゴは異常と言ってもいいほど、約束を守ることに固執しますよね?
さいとう:これは、私自身が「はみ出し者」であることも影響していると思う。中学3年の時の担任に「東郷」という先生がいましてね。これまで私は、テストになんか意味がないと思い、ずっと白紙で提出していました。ところが東郷先生が白紙の答案用紙を持ってきて、私の机の上に置くと、こう言ったんです。
「白紙で出すのは君の意思だからかまわない。しかし、答案用紙を出すのは君の義務だから、その証明として名前を書きなさい」
ショックでしたね。ああ、約束事とはこういうことなんだと。それから私は人間の約束と責任を考えるようになりました。この先生の名前を借りて、ゴルゴは「デューク東郷」という名にしたんです。
佐藤:ゴルゴの名はそこから来ていたんですか! でもこの体験は本当に大きかったのですね。私が作品を通じて感じていたのは、実は「人間の信頼」だったんです。古代ローマの根本概念でもある「ローマ法」の基本概念に、「合意は拘束する」という話があるんです。現在の国際法の大原則にもなっているのですが、「約束したことは絶対に守る」ということです。ゴルゴは約束を違えません。ゆえに依頼者との間で「人間の信頼」が保たれる。ゴルゴは、命中率も100%ですが、約束遂行率も100%です。
◆『ゴルゴ13』とキリスト教の終末遅延
さいとう:約束を違えないというのは、私の信念でもあるんです。原稿を落とさない、というのもそう。締め切りは仕事上の約束だからです。約束を守ることが、人間関係で最も大事だと思っているんです。
佐藤:そう見ていくと、ゴルゴが仕事を断る時は「約束を守れない」ことがわかっている時だけです。あらかじめ、できない仕事は引き受けない。信頼関係のない相手や、嘘をついている依頼も断ります。ゴルゴの「約束」が、人との信頼関係で成り立っているからですね。
さいとう:こうして『ゴルゴ13』の連載を続けているのも、読者に対して私が勝手に「面白い作品を届ける」と約束してしまったからかもしれない。読者の声をそう受け取ってしまった。だから引退はしません! 引退というのは、人生の舞台から降りるということ。本来、人間にとっての引退は死ぬことでしかない。
佐藤:もし描きたくなくなったら、それは引退じゃなくて休職というわけですね。
さいとう:わしは休職もしませんよ(笑)。勝手に引退して、そのあとすることがなくなって不安を増大させるよりは、「やれる間はやる」と覚悟を決めて、進んでいけばいい。これはサラリーマンでもなんでもそうでしょう。やりたいようにやればいい。
佐藤:私は『ゴルゴ13』を読み直して、「聖書」を想起しました。聖書の冒頭は、「創世記」。神の天地創造から始まります。これは皆知っていると思うのですが、聖書のラストがどうなっているのか意外と知られていません。最後の「ヨハネの黙示録」で、イエス・キリストは「わたしはすぐに来る」という言葉を残して天に昇っていきます。
でも何年待っても戻ってこない。イエス・キリストが死んだのは紀元30年頃ですが、それから2000年も経つのに、一向に戻ってこない。このことを神学の専門用語で「終末遅延」というのですが、ゴルゴにも終末遅延が起きている(笑)。といっても『ゴルゴ13』はまだ50年です。まだまだ続けていただかないと。
※佐藤優、さいとう・たかを・著/『ゴルゴ13×佐藤優 Gのインテリジェンス』より
>
>わしは休職もしませんよ(笑)。勝手に引退して、そのあとすることがなくなって不安を増大させるよりは、「やれる間はやる」と覚悟を決めて、進んでいけばいい。これはサラリーマンでもなんでもそうでしょう。やりたいようにやればいい。
この辺りはこうした仕事っぷりに本当に憧れる。
と言うか私は無限に突き進んでいけるほどの体力が無く、その意味で才能が無かった。
自分の体を動かせない自分と言う現実を直視せねばならない。
するとどうすべきなのか。
ゴルゴ13、一生遊べるカネがあっても働き続ける理由
2018.11.30 16:00
https://www.news-postseven.com/archives/20181130_804514.html
なぜゴルゴは一生遊ぶカネを蓄えているのに、働き続けるのか。元外務省主任分析官の佐藤優氏と、『ゴルゴ13』作者さいとう・たかを氏が、「ゴルゴ(通称G)のインテリジェンス」を読み解く短期集中連載。最終回は、人間関係を築く上でいちばん大事なことを語り合う。
* * *
佐藤:先生とゴルゴの共通する部分でいえば、“約束”に対する態度もそうかもしれませんね。ゴルゴはお金を稼ぐために働いているわけでもない。
さいとう:とうに一生遊んで暮らせるカネは蓄えているからね(笑)。
佐藤:セックスも好きなようですが、色欲で行動を変えるわけでもない。殺すことが好きなサイコパスでもない。ではなぜ、ゴルゴがスナイパーを続けるかといえば、そのモチベーション維持には「約束を守る」ということがあるように思うんです。ゴルゴは異常と言ってもいいほど、約束を守ることに固執しますよね?
さいとう:これは、私自身が「はみ出し者」であることも影響していると思う。中学3年の時の担任に「東郷」という先生がいましてね。これまで私は、テストになんか意味がないと思い、ずっと白紙で提出していました。ところが東郷先生が白紙の答案用紙を持ってきて、私の机の上に置くと、こう言ったんです。
「白紙で出すのは君の意思だからかまわない。しかし、答案用紙を出すのは君の義務だから、その証明として名前を書きなさい」
ショックでしたね。ああ、約束事とはこういうことなんだと。それから私は人間の約束と責任を考えるようになりました。この先生の名前を借りて、ゴルゴは「デューク東郷」という名にしたんです。
佐藤:ゴルゴの名はそこから来ていたんですか! でもこの体験は本当に大きかったのですね。私が作品を通じて感じていたのは、実は「人間の信頼」だったんです。古代ローマの根本概念でもある「ローマ法」の基本概念に、「合意は拘束する」という話があるんです。現在の国際法の大原則にもなっているのですが、「約束したことは絶対に守る」ということです。ゴルゴは約束を違えません。ゆえに依頼者との間で「人間の信頼」が保たれる。ゴルゴは、命中率も100%ですが、約束遂行率も100%です。
◆『ゴルゴ13』とキリスト教の終末遅延
さいとう:約束を違えないというのは、私の信念でもあるんです。原稿を落とさない、というのもそう。締め切りは仕事上の約束だからです。約束を守ることが、人間関係で最も大事だと思っているんです。
佐藤:そう見ていくと、ゴルゴが仕事を断る時は「約束を守れない」ことがわかっている時だけです。あらかじめ、できない仕事は引き受けない。信頼関係のない相手や、嘘をついている依頼も断ります。ゴルゴの「約束」が、人との信頼関係で成り立っているからですね。
さいとう:こうして『ゴルゴ13』の連載を続けているのも、読者に対して私が勝手に「面白い作品を届ける」と約束してしまったからかもしれない。読者の声をそう受け取ってしまった。だから引退はしません! 引退というのは、人生の舞台から降りるということ。本来、人間にとっての引退は死ぬことでしかない。
佐藤:もし描きたくなくなったら、それは引退じゃなくて休職というわけですね。
さいとう:わしは休職もしませんよ(笑)。勝手に引退して、そのあとすることがなくなって不安を増大させるよりは、「やれる間はやる」と覚悟を決めて、進んでいけばいい。これはサラリーマンでもなんでもそうでしょう。やりたいようにやればいい。
佐藤:私は『ゴルゴ13』を読み直して、「聖書」を想起しました。聖書の冒頭は、「創世記」。神の天地創造から始まります。これは皆知っていると思うのですが、聖書のラストがどうなっているのか意外と知られていません。最後の「ヨハネの黙示録」で、イエス・キリストは「わたしはすぐに来る」という言葉を残して天に昇っていきます。
でも何年待っても戻ってこない。イエス・キリストが死んだのは紀元30年頃ですが、それから2000年も経つのに、一向に戻ってこない。このことを神学の専門用語で「終末遅延」というのですが、ゴルゴにも終末遅延が起きている(笑)。といっても『ゴルゴ13』はまだ50年です。まだまだ続けていただかないと。
※佐藤優、さいとう・たかを・著/『ゴルゴ13×佐藤優 Gのインテリジェンス』より
>
>わしは休職もしませんよ(笑)。勝手に引退して、そのあとすることがなくなって不安を増大させるよりは、「やれる間はやる」と覚悟を決めて、進んでいけばいい。これはサラリーマンでもなんでもそうでしょう。やりたいようにやればいい。
この辺りはこうした仕事っぷりに本当に憧れる。
と言うか私は無限に突き進んでいけるほどの体力が無く、その意味で才能が無かった。
自分の体を動かせない自分と言う現実を直視せねばならない。
するとどうすべきなのか。