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2011・02・16 朝日新聞
南米ペルーのナスカで、山形大学の研究チームが新たな地上絵を多数発見するなど、大きな成果をあげている。
昨年からは、地上での本格的な考古学調査もはじまり、ナスカの地上絵の謎に挑んでいる。
山形大学では、1994年からナスカの研究にとりくんでいる坂井正人教授(文化人類学)を中心に、2004年、心理学や地理学、情報科学の研究者によるチームを編成し、調査を続けてきた。
2006年までに、生物のような絵柄や直線、幾何学模様などの地上絵100点以上を発見。
先月は、人の頭部や動物とみられる2点の地上絵や放射状の直線が交わる「ラインセンター」を新たに76点確認したと発表した。
人の頭部は、4・2メートル×3・1メートルの範囲に描かれ、両目や口のような模様が見て取れる。
周辺の遺跡では人の頭部だけを埋めた穴や、切られた首を掘った石像がみつかっており、坂井教授は「この絵も着られた首だろう」と推測する。
新たな地上絵の発見には、衛星写真が威力を発揮した。
従来は航空写真が主体だったが、撮影には多額の費用がかかり、約220平方キロメートルに及ぶナスカ台地をくまなく調査するのは困難だった。
しかしここ10年ほどで、高解析度の衛星写真が安く入手できるようになり、台地全体の把握が可能になった。
さらに昨年、ペルー政府の許可がおり、地上での本格的な考古学調査が始まった。
これによりさっそく、直線の地上絵が描かれた時代の解明につながる成果があった。
これまで、ナスカ台地に直線が描かれた時期をめぐっては、有名なハチドリやクモなどの動物が白い線で描かれたナスカ期(紀元前200年~後600年)以降とする説と、ナスカ期より古いとする説の間で論争があった。
去年、少なくとも3か所のラインセンター付近で、ナスカ期の前のパラカス後期(紀元前400~前200年ごろ)の土器を発見。
この時期には、地表面の黒い小石を残して人間の姿などを描いた「黒い地上絵」が制作されており、同じ時期に直線が既に描かれ始めていたことを明らかにした。
直線やラインセンターの調査は、地上絵の性格を解明する上でも重要だ。
ラインセンターは高さ数メートルの小山になっている場合が多く、付近に意図的に壊したと見られる土器片が多数散乱している。
このため坂井教授は、「線が集まるだけでなく、儀礼のような活動の中心だったのだろう」と推測する。
さまざまな時代の土器片が混在している例もあり、長期にわたって使われたと考えられる。
米国の研究者は、移動の道しるべとして使われた可能性を指摘しており、土器の年代や分布の分析が進めば、時代ごとの使用目的の解明につながると期待される。
ペルーで遺跡調査を続けている井口欣也・埼玉大教授は「ナスカでは地上絵全体の正確な図面や年代決定の鍵となる土器との関連など基本データの蓄積が不十分だった。
坂井教授らの研究で、地上絵を考古遺物や周辺の遺跡、地形などと総合的に比較分析できるようになった」と評価する。
新年度には、現地に山形大学の研究施設も建設される。
研究チームは今後、気候変動と地上絵の関連を検証する他、鳥類の専門家も交えて、描かれた鳥類の特定を試みる。
坂井教授は「なぜ地上絵が描かれ、16世紀にスペイン人に征服されるまで1500年以上も使われ続けたかを明らかにしたい」と話している。
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朝日新聞2011年4月13日
ペルーのナスカ台地で、斬首の場面を描いたともとれる新たな地上絵が発見された。
山形大学人文学部付属ナスカ研究所が12日発表した。
ハチドリやコンドルを描いた地上絵より古い紀元前400~紀元前200年ごろのものだという。
2011年の夏、ナスカ大地の中心部で、同研究所メンバーが見つけ、レーザーを使って詳しく調査した。
左の人物は全長約13メートル、幅7メートルで、頭部が逆三角形。
右の人物は、頭が胴と分断されていて、全長約9メートル、幅8・5メートル。
同研究所副所長坂井正人教授は、「左の人間が右の人間の首を切ったようにも見える」と話す。
また右の人物から出ている放射状の線は、現地の古い織物にもある図柄で、重要な存在を示すと考えられており、「ある種の儀礼行為の場面が描かれている可能性もある」という。
ナスカの地上絵は世界遺産で、山形大は昨年10月に現地に研究所を開設。
ペルー国外の機関では唯一、現地調査が認められている。
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写真は同新聞より。
一番下の地上絵は「ナスカ・地上絵の謎」より。
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