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感想:『蒲生邸事件』

2009年08月30日 23時32分39秒 | 宮部みゆき
蒲生邸事件蒲生邸事件
価格:¥ 1,733(税込)
発売日:1996-09


日本SF大賞受賞作。評価の高さを聞き及んでいたので、宮部みゆきの最初の一冊に選んだのだが……。

期待が大きすぎたのかもしれない。或いは、発表当時であれば違った感想となったのかもしれない。宮部みゆきのストーリーテラーとしての力で最後まで読み切ることはできたが、残念なことにどこが面白いのか見出すことができなかった。
タイムトラベルものであり、過去への干渉が歴史によって修正されるという設定は、当時としては不明だが、現在において目新しさを感じるものではない。

その上で不満を感じたのは大きく二点。一つは主人公に感情移入できなかったこと。もちろん作品の演出上主人公にはこのような性格が必要だったのだろう。現実的な知識量であり、内面であったことも事実だ。それが理解できても主人公に対して思い入れが全くできなかった。
もう一つは「驚き」がなかったこと。設定でも、ストーリー展開でも意外性を感じることがなかった。どこかに捻りがあるのかと思いつつ読んでいたが、最後まで見られなかった。「驚き」や「センス・オブ・ワンダー」だけがSFの条件とは言わないが、私にとってこの作品はSFとは呼べないものだ。

そして、行き着いた先は、なぜ二・二六事件なのかということ。確かに歴史の転換点の一つと言える事件だが、この作品のテーマである歴史の修正という考え方、別の言い方をすれば歴史の必然性だが、それこそ一つの事件の影響力よりもじわじわと細部から湧き上がって流れというものを生み出すものだと思う。当時の時代背景が十分に伝わるものだったのか、確かに非常に丁寧には描かれていたがそれでも疑問が残ってしまった。

この作品の評価が宮部みゆきの評価にそのまま繋がるというものでもない。SFや歴史に対する見方が合わなかっただけと現段階では見なしている。劇場アニメの『ブレイブ・ストーリー』が著しく肌に合わなかったので(原作は未読)、相性が悪い可能性も考えられるが、どちらにせよもう少し他の作品を読んでから評価を定めることにしよう。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
自分は宮部みゆきは読まないので、コメント書くの... (Fakir)
2009-08-31 01:01:12
昔、宮部みゆきの『火車』という作品を読んで、思ったことが「アガサ・クリスティの方が間違いなく面白い」でした。

ミステリ読まれるなら、むしろアガサ・クリスティをお薦めします。自分的に面白かったのは『五匹の子豚』『死との約束』『予告殺人』『パディントン発4時50分』あたりです。
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お久しぶりです(^-^) (奇天)
2009-08-31 17:58:00
クリスティは昔非常にハマって著作の7~8割は読みましたw
特にポアロものは読破したと思います。ただ鳥頭なもので、今改めて読んでもきっと新鮮に読めそうですが(苦笑。有名どころの作品以外はキレイさっぱり忘れていそうで。地味めの作品では『鳩のなかの猫』あたりが面白かった気がします。

海外ミステリは、クリスティと、同じ英国女流作家のエリス・ピーターズくらいしか読んでいません。ミステリも嫌いじゃないんですが、クイーンとか挫折しまくりだったりします(汗。

クリスティに限らず国内の小説家・漫画家でも女性作家の作品にハマりやすいんで、宮部みゆきにも相性の合う作品がきっとあると思っているんですけどね。彼女もゲーマーですし(笑)。
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お久しぶりです 既読でしたか(/ω\) (Fakir)
2009-08-31 18:56:37
それなら、他の本の感想見て、お薦めと思う本ということで秋田禎信氏をお薦めします。
(布教っぽいですが(゜▽゜;))

たぶん『RD潜脳調査室』あたりが合うんじゃないかなと思います。
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秋田禎信氏ですか。名前はもちろん知っていますし... (奇天)
2009-09-01 01:00:34
『RD潜脳調査室』はアニメの方はなぜか見そびれてしまったので、ノヴェライズから入るのもいいかもしれませんね。
もちろん代表作である「魔術士オーフェン」シリーズから読んでみようかなとも思いますがw

図書館の予約枠が恐ろしいことになっているのですぐにとはいきませんが、近いうちに読んでみます!
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