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なぜ日本代表はグループリーグを突破できたのか?

2010年06月25日 06時18分41秒 | スポーツ
ワールドカップ前、日本代表のグループリーグ突破はありえないと思っていた。それが2勝1敗という堂々たる成績で2位通過を決めた。

なぜ日本代表はグループリーグを突破できたのか?

大きな理由は2つ存在すると思う。
ひとつは、環境である。今大会、ジャブラニという公式球が使われている。ロングボールが伸びやすく、フリーキックがなかなか決まらない大会となっているのは何よりもそのボールに原因がある。これに多くのスタジアムが1000mを優に超える高地であるという条件も重なり、ロングパスを有効に使ってきたチームは非常に苦戦することとなった。これに対して、日本はJリーグでジャブラニを使用するなど事前の準備に怠りなかった。一方、デンマークは精度の高いロングパスに魅力のあるチームだが、それが影を潜めた。センタリングも精度を欠き、脅威とならなかった。

欧州勢が苦戦しているのは、ボールのせいだけではない。リーグ戦の疲労ももちろんあるが、それ以上にモチベーションに苦しんでいるように見える。例えば、南米の選手であれば欧州のクラブで活躍していても自国のファンへのアピールの場は第一に自国の代表チームである。しかし、欧州の強豪リーグを抱える国では代表チームでの活躍よりも日々のクラブでの活躍の方が優先される。そのうえ欧州外でのワールドカップということでチームとして戦う姿勢がなかなか築くことができなかった。
それでも以前であれば圧倒的な個人技で苦しみながらでもグループリーグは戦い抜くことが出来た。しかし、世界の実力差が埋まった上に慣れないボールなどコンディションの調整に手間取っているうちにストレスが溜まり自滅していった感がある。これは地元開催で有利なはずのアフリカ勢も同様で、チーム戦術の徹底がなされぬままに試合に挑んだ形となった。

日本はそんな欧州及びアフリカ勢と同組となったことが大きなチャンスに繋がった。カメルーンは大会前から不調な様子だったが、調子を取り戻すことなく敗退した。オランダもロッベンを欠き、大会前に期待されたような攻撃は全く見られなかった。デンマークも日本の前に完敗した。

こうした環境面が日本に大きなチャンスを与えた。だが、そのチャンスを掴む準備が出来ていたのことが大きな理由のもうひとつである。
岡田監督は大会前どう戦うのか混迷していたが、最終的にはしっかり守り、豊富な運動量で数少ない攻撃の機会を生かすという戦術を取った。今大会活躍しているチームは、高地であっても運動量で相手を圧倒するようなチームである。ロングパスが機能しにくい状況ではショートパスと運動量が重要になってくる。また、得点が入りにくい大会でもあるので、しっかりした守備力があれば崩れにくい。
カメルーン戦の勝利はかなりラッキーな部分が多かった。攻撃の機会は少なく、またリードした後引き過ぎて再三ピンチを作った。だが、ラッキーであっても勝利はチームに自信を植え付けた。オランダ戦はカメルーン戦とは見違えるほどの動きを見せた。ただし、オランダ相手ということで警戒しすぎた面もあり、敗戦となってしまった。それでも、互角に近い戦いはできたので更なる自信になっただろう。
デンマーク戦はこうした自信の上で非常に素晴らしい試合をやってのけた。攻撃もアイディアのある見る者をワクワクさせるだけのものを見せたし、守備でも若干不安な面もあったがGK川島の好調さもあって胸を張って良い内容だった。

この準備がワールドカップ本大会の展望を予想してなされたものかには疑問は残る。守備的にならざるを得なかったのは、ワールドカップ前の戦いで攻撃力に不安があったためであるし、日本の躍進を支える本田や川島も本大会直前に突然出てきたようなものだから。前回ワールドカップ終了後からの強化の結果とは言えず、岡田監督の体制になってからの方針とも言い難い。もちろん、結果が全てだから、この結果は賞賛されていい。ただし、今後の強化への道筋とは分けて考えるべきだろう。

自信を手に入れたことは素晴らしい。それが過信となってしまわないよう気をつけなければならないが。
次の対戦相手はパラグアイである。ヨーロッパの強豪国の名に比べれば与しやすい相手と思うかもしれない。だが、それは大きな思い違いである。
今大会南米勢は非常に好調だ。難しい環境の中でヨーロッパ勢とは対称的に素晴らしいサッカーを繰り広げている。フリーキックの精度が上がらないのはヨーロッパ勢と同じだが、豊富な運動量と組織的なプレーで事前の予想を上回る結果を残している。ブラジルやアルゼンチンほどではなくとも、決して侮っていい相手ではない。

それでも全く勝つ可能性がないという相手でもない。互いに運動量豊富であるならば、テクニックで劣ってもメンタルで上回ればいい。日本にはフリーキックという武器がある。パラグアイが未だにフリーキックで正確さを欠くのに対して日本は2本のフリーキックを直接ゴールに叩き込んだ。相手がフリーキックを警戒すれば、ファールしづらくなり、攻撃のチャンスは増える。
それでも繰り返して言うが、決して戦い易い相手ではない。南米特有の上手さもある。攻撃陣の決定力もある。守備も安定している。チャンスで確実に決められるか。本当の力が問われる試合になるだろう。

なぜ日本代表はグループリーグを突破できたのか?

幸運も実力のうちというならば、まさに実力だ。大会中は自信を持って戦って欲しい。ただし、大会後は冷静に振り返り、浮かれることなく次を目指して取り組んで欲しい。次のブラジル大会で活躍してこそ、今大会がフロックではなかったと証明できるのだから。