たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

医師の働き方と役割2 <「滅私奉公」 男性医師も限界>を読みながら

2018-09-15 | 医療・医薬・医師のあり方

180915 医師の働き方と役割2 <「滅私奉公」 男性医師も限界>を読みながら

 

13日<論点 忙しすぎる勤務医>での議論を取り上げました。そのときなにか大事なものをうっかり落としてしまったと思っていました。他方で、医療基本法の提言を取って付けた形で加えてしまい、余計わかりにくくなったかなとも思っていました。

 

昨夕の毎日記事<特集ワイド紙面座談会 「滅私奉公」 男性医師も限界 女性医師の「抑制」は当然か>で女性医師だけの談話を読んで、これは言っておく必要があるかなと改めて思ったのです。

 

まずはその座談会での発言です。この企画は<医療現場での女性医師の差別は当然なのか? 東京医科大が医学科の入試で女性合格者を抑制していたことや、全国の大学医学部の約7割で男性の合格率が高いことが明らかになった。露骨な差別に批判が噴出する一方で「女性は辞めていくので抑制は仕方がない」と当然視する声もある>ことを踏まえて、田村彰子記者?が構成したようです。

 

大学入学時の女性差別は私立と国立では違うようですが、いずれにしても私立では従来から暗黙のうちに意識されていたようですね。

 

他方で、<医学部在学中や、医師になってから「女性は不利だ」と感じたこと>については、誰もが差別的取扱を経験し、問題にしています。

 

たとえば<実習で脳外科や心臓外科をはじめとしたいわゆるメジャー外科を回っている時に、男性の先輩医師に「女医はいらない。男と女では役割が違うから」とはっきり言われたことがあります。もしくは、私と同期の男子学生には熱のこもった指導をして、勧誘している。>

 

法曹の世界でも、40年くらい前は研修所の1クラスが50名くらいで女性が45名、10%くらいだったと思います。女性が少ないので、研修所の中では結構優遇?されていたかもしれません。他方で、当時は男性は割合自由に裁判官、検察官、弁護士を選択していたと思いますが、女性は検察官をあまり選択していなかったような記憶です。医師の世界で言えば外科医などのような世界と捉えられていたかもしれません。少なくとも私は当時勧誘があり、指導検察官とも親しくしていましたが、その組織の強さには肌が合わないと思い断念しましたので、女性の気持ちもそうかなと思っていました。

 

では、弁護士の世界はどうかというと、私が若い頃はそんなイメージがあったように思います。差別的な取扱を耳にすることもありましたが、正確な情報は知らないというのが本当です。とはいえ弁護士は一人親方みたいな人もいましたので、昔気質の人は、今で言えば差別的取扱をしていたかもしれません。また余分な話をしてしまいました。

 

医師の世界に戻ります。異様さがビビッドに伝わってきます。<明らかに「男の園」ですからね、外科は。手先が器用で手術が好きだったのですが、外科医になるためには女性としての人生を全部捨てるしかないと実習で思い知らされた。>とか。

 

でも中に外科医となった女性医師もいますが、その人への印象がまたすごいです。

<外科系にわずかにいる女性医師も、学生だった頃の自分の目には幸せそうに見えなかった。外科の中では、女性扱いされていないというよりも「ちょっと変わった人」と受け止められているようで。>

 

女性医師の比率は20%以下なんですね。これはやはり低すぎますね。このこと自体、医師の世界になにか問題があると考えてしまいます。

<女性医師の人数は増えており、2016年の厚生労働省の調査で全体の2割を超えている。しかし、離職する人も多い。女性医師の割合は20代で3分の1を占めているが、50代では15%に落ち込む。特に、転勤が多く当直もある大学病院などにはほとんど残らないのが実情だ。>

 

出産と子育てで、女性医師は差別的扱いを受けるようです。しかし、だからといって女性医師を抑制するあり方が是認されるかについて、基本的な問題提起がありました。

 

妊娠・出産・育児を経験した女性医師は、当直や転勤の多さなどで無理だと発言しつつ、男性医師も同じだとして、<男性だって介護や妻の病気など24時間365日、フルに働けなくなる恐れはいくらだってありますよね。>と。そのとおりです。

 

別の医師は<女性医師の人数を抑制し、男性医師に滅私奉公を強いることで医師の不足を解決しようなんてそもそも無理です。男性医師も人間的な生活を送れるように、医療システム全体を変えていくべきです。>と医療の構造改革を訴えています。

 

具体的には、<例えば、主治医制ではなくて、チーム制をもっと推進する。情報を適切に共有すれば、夜間や休日の緊急呼び出しも激減するはず。>と、前のブログでも引用したアメリカ方式でしょうか、そういう提案がだされています。

 

これに対して、悲観的な意見もあります。<今の制度とか社会の認識のまま医学部の女性を増やしたら、大学病院やそれに依存している医療システムは簡単に崩壊すると思います。やはり女性医師は辞めてしまうことが多いので、医師不足になるからです。>と。

 

ここで指摘されている現行制度や社会の認識について述べるために、あえて今日はこのテーマを2つめとして取り上げました。

 

医療基本法の提言では患者の立場に立って制度改革を訴えることがありますが、患者の権利を確保するためには、医療側はもちろん患者側も変わる必要があるように思います。たとえば、病院で待ち時間2時間、3時間が当たり前といったことは早急に改善する必要があると思うのです。最大30分の待ち時間といった方針をたてることで、あらゆる医療サービスのあり方を見直すことを検討するのはどうでしょう。他方で、一人の診察はできるだけ15分以上かけることを方針とするのです。当然、医師にみてもらえない患者が出てきますね。でもほんとうにその医師に診てもらわないといけない患者かどうか、それほど頻回に診察を受けないといけない患者かどうか、あるいは適切に対応していない医師に長く診療を受けているかどうかなど、改めて見直すシステムを構築してはどうかと思うのです。

 

たしかに診療報酬の審査については、国民健康保険診療報酬審査委員会が一定のチェックを行っていますが、ここで取り上げているのはより診療内容にコミットすることで、適切妥当な診療のあり方を患者、医療側、双方の視点で、見直すような新たな制度です。

 

少なくとも医師が当直勤務を含め長時間労働を強いられ、女性医師が外科とか一定の診療科を担えないとか、男性医師も余裕がないような状況は、決して患者ファーストではないでしょう。患者側も自由奔放に、次々と医師を変えるとか(病院・診療所も)、効果が認めら得ないのに同じ診療を繰り返し受け続けることがあるとすれば、合理的な抑制があっても良いのではと思うのです。

 

簡単なことではないですし、誤解を招きかねないことですが、医師をこのような形で追い詰めることは、本来の医療のあり方ではないと思います。患者も望ましい医療のあり方に参加するステークホルダーとして(そういう地位がまず保障されないといけませんが)、意識を持ちたいものです。

 

今日はこれにておしまい。また明日。


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