たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

医療と災害対策 <論点 医療機関の災害対策>を読みながら

2019-01-23 | 医療・医薬・医師のあり方

190123 医療と災害対策 <論点 医療機関の災害対策>を読みながら

 

災害対策と言えば、弁護士も阪神大震災以来、さまざまな支援活動を本格化してきたと思います。昨年12月は、<日弁連、全国市長会と「災害協定」締結 「被災者に寄り添っていきたい」>という災害発生後の支援対応を各地で行ってきたことを事前に協定化したわけです。実際、和歌山でも県市と次第に弁護士会と協定を結びつつあります。まあこれは事後対応ですね。

 

弁護士事務所とか、弁護士会館の災害予防策は、後者はそれなりに?行っていますが、前者はどうでしょうね。依頼者なり相談者なり、弁護士が事務所で対応する方々について配慮しないといけないのは当然ですが、医療の世界ほど深刻ではないですね。ただ、東日本大震災の時、ある事件の弁護団の一人が被災地域に事務所があり、直後にメールで仕事ができなくなったといった連絡とその事務所内のものが壊れたり傾いたりといった写真が添付されていて、怪我がなくてよかったなと思った次第です。

 

ところで、災害と医療と言えば、災害後の負傷者対応としての医療活動がよく話題になりますが、今回は医療機関自体の災害対策を取り上げたいと思います。

 

今朝の毎日記事<論点医療機関の災害対策>では、2018年は災害が頻発し、今後も大地震津波、異常豪雨、巨大強風などさまざまな災害が起こる可能性があることを踏まえ、医療機関の備えについて3人の議論を紹介しています。

 

まずはそれぞれの意見を拝聴しましょう。

<国立保健医療科学院の小林健一・上席主任研究官>は、現代の医療が電力への依存度が高まっていること、医療関連物流が広域化・効率化されていることを指摘しています。

 

医薬品やリネンなど多くの物資が、このことで医療機関の在庫を少なくできることはいいのですが、災害時には交通支障などでロジステックスが滞りますね。電源も遠隔地に集中しているため北海道で起こったブラックアウトがいつ発生するかもしれません。九州でも危うい状態であったかもしれません。

 

<物資の備蓄や非常用電源の燃料確保は現在、3日分程度が一般的だ。災害拠点病院の指定要件もそうなっている。>

 

この点、福和伸夫・名古屋大学減災連携研究センター長はより積極的な意見を述べています。医療機関にとって必須のライフラインである水、電力、ガスについて<太陽光発電や燃料電池、蓄電池を設置すれば停電対策になる。ハイブリッド車や電気自動車は蓄電池として使えるので、病院の医療従事者の車を全てハイブリッド車にする方法もあり得る。水は、井戸や貯水槽の他、使った水をリサイクルする浄化システムもあるといい。>と自律分散型を啓発しています。

 

以上は、ロジステックス的な視点からの災害対応でしたが、より重要なことは患者さんそれ自体への対応ですね。

先の小林氏は<災害時の医療というと、被災によるけが人への対応を想像するかもしれないが、最も優先順位が高いのは入院患者の安全確保だ。その際、各病院の業務や使命は何か、運営を続けるためにどんな方針を取るべきかという発想が大事だ。・・・各病院が日常業務に優先順位をつけ、何が大事かを点検しておかないといけない。>そうですね、日常業務に追われている医療機関で、こういった災害対応を患者の状態に応じて果たして講じられているのか、気になるところです。

 

また、小林氏は<病院の立地条件について・・・私が11年に全国の約8600病院を対象に実施したアンケートでは、回答のあった約6100病院のうち、約3割の病院がハザードマップで洪水や地震、土砂災害などの被害が予測される地域内に建っていた。>とその問題状況を明らかにしています。そもそもハザードマップの作成公表に取り組みだしたのが最近ですから、これは必ずしも医療機関だけの責任ではないでしょう。また、このハザードマップはそのデータ裏付けも十分とは言えない場合もあり、災害想定も限定的であって、その意味ではより意識的、自律的にさまざまな災害回避のための調査をして立地先を検討すべきでしょう。

 

ついでにいえば、農業振興地域農用地区除外特例や市街化調整区域で例外許可の対象となる一つの条件として医療施設となっていることから、また地価が安いことから、元水田・畑地域に病院が立地することも少なくないように思います(多くはクリニックなどでしょうけど)。低地の水田は氾濫源であることが多いのですから、相当の予防策を講じていないと、危険な選択となりますね。

 

ここでは議論されていませんが、医療スタッフの配置が災害時にも十全かという点です。車や電車通勤の方もいるでしょう。何人かは災害時を想定して、近隣を居住地としているかもしれませんが、どこまで配慮されているか心配です。そもそも残業時間を一般労働者並みに削減することに大きな抵抗があるくらいですから、ぎりぎりで医療業務に対応しているわけでしょうから、災害時スタッフが減ったらどうなるのでしょう。もっと余裕のある勤務態勢を確立してもらいたいものです。

 

JCHO北海道病院の古家乾病院長は、北海道で昨年発生した地震後のぶらっくアウトによる病院での業務に支障が生じた状態を生々しく語っています。

しかもこの病院では相当備えがあったと思われます。

たとえば<建物や設備の被害はなく、水は日ごろから地下水を浄化装置で作ってためていた>とか、<都市ガスを燃やして発電する「ガスコージェネレーションシステム」を停電対策として導入し、非常時でも75%の電力は賄えるようにしておいた>とか、<食料の備蓄>で<入院患者の食事の提供に問題は起きなかった>とかです。

 

しかし、いずれも完全ではなかったのですね。電源停止は診療中止となっています。ガスコージェネも<夏場は日中のみの発電だったため、夜間のサーバーダウンにつながった。>と災害への対応が不十分だったのです。食料備蓄も<職員用は備蓄していなかった>ので、医療スタッフは空きっ腹では満足のいく仕事ができませんね。

 

今後の対応を個々の医療従事者が心してしっかり講じることを啓発しています。

<医療従事者は非常用電源の種類や稼働可能時間、診療機能など各病院の情報をあらかじめ共有し、「非常時に地域の医療をどう守るか」という視点で日ごろから考えておくことが大切だ。>

 

とはいえ、医療機関はどんなに頑張っても、現在でも大変なのですから、別の視点も必要でしょう。

 

先の福和氏は<それでも医療機関の対応能力は限られている。それを上回る数のけが人が出たら、生死に関わらない人は手当てを受けることも難しくなってしまう。国民が「自分事」だと思って、家屋の耐震化や家具固定など、けがを少なくできるよう心がけてほしい。>と私たち個々人の心がけを求めています。当然ですね。たしか西日本豪雨の時、119番に通報が途切れず、結局、通報できなかった人もいたようです。災害時、お互い自分でトリアージして対処すること、それ以前に災害に遭わないよう配慮することでしょうかね。

 

ちょうど一時間がすぎました。今日はこの辺でおしまい。また明日。


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