goo blog サービス終了のお知らせ 

白夜の炎

原発の問題・世界の出来事・本・映画

Japan adopts negative interest rate in surprise move/BBC

2016-01-29 16:39:54 | 経済
"In a surprise move, the Bank of Japan has introduced a negative interest rate.

The benchmark rate of -0.1% means that the central bank will charge commercial banks 0.1% on some of their deposits.
It hopes this will encourage banks to lend, and counter the ongoing economic slump in the world's third-largest economy.
The European Central Bank also has negative rates, however, it is a first for Japan.

The decision came in a narrow 5-4 vote at the Bank of Japan's first meeting of the year on Friday.
"The BOJ will cut interest rates further into negative territory if judged as necessary," the Bank of Japan said, adding it would continue as long as needed to achieve an inflation target of 2%.
Some analysts have cast doubt over how effective the rate cut will be.
Why has Japan made this move?

Japan is currently facing very low inflation, which means that people and companies tend to hold on to their money on the assumption that they can get more for it later in time. So rather than spend or invest it, they will keep it in the bank.
Charging a percentage to keep money in the central bank might encourage commercial banks to lend it out. That would boost both domestic spending and business investment.

It is also aimed at driving inflation up, which is another incentive for people and businesses to spend rather than save.
In a press conference, the BOJ's governor Haruhiko Kuroda pointed at the global economic outlook when explaining the cut.
"Japan's economy continues to recover moderately and the underlying price trend is improving steadily," he said, but warned that "further falls in oil prices, uncertainty over emerging economies, including China, and global market instability could hurt business confidence and delay the eradication of people's deflationary mindset".

Earlier in the day, fresh economic data had again highlighted concerns over economic growth. The December core inflation rate was shown to be at 0.1% - far below the central bank target.

Asian shares jumped and the yen fell across the board in reaction to the announcement. Japanese banks though saw their shares drop on the news as lenders are likely to see their margins squeezed even more.


Mariko Oi, BBC News: 'Kuroda bazooka'

The decision to implement a negative interest rate has been dubbed "Kuroda bazooka" after the governor of the Bank of Japan.
Haruhiko Kuroda, is well known for making surprise moves that shock investors. Only a few weeks ago, Mr Kuroda told the parliament budget committee that he would not introduce more stimulus for the economy.

So today's announcement caused the stock market to jump while the yen fell sharply against major currencies.
The option of lowering the cost of borrowing below zero has been on the cards for Japan's central bank since the early 2000s and it was the first in the world to consider it.

But when it comes to implementing the policy, Denmark, Sweden and Switzerland were first, followed by the European Central Bank which had to do everything it could to keep the EU economy afloat after the eurozone economic crisis.


Last resort

There are doubts, however, over how well the new policy will work.
"Negative interest rates are one of the last instruments in the BOJ's tool box," Martin Schulz of the Fujitsu Institute in Tokyo told the BBC. "But their impact is unlikely to be strong."

Mr Schulz cautioned that in the eurozone, negative interest rates are being used to tackle a financial crisis, whereas Japan is in a protracted slow growth environment.

"In Japan, credit didn't expand not because banks were unwilling to lend but because businesses didn't see the investment perspective to borrow. Even with negative interest rates, this situation will not change."

"Businesses don't need money - they need investment opportunities. And that can only be achieved by structural reforms, not by monetary policy," he said.

The decision comes in addition to the BOJ's massive asset-buying programme, which over the past years had failed to boost growth."

http://www.bbc.com/news/business-35436187

日銀 新たな金融緩和策決定 当座預金金利マイナスに

2016-01-29 16:37:43 | 経済
「日銀は、29日まで開いた金融政策決定会合でこれまでの大規模な金融緩和策に加えて金融機関から預かっている当座預金の一部につけている金利を、マイナスに引き下げる新たな金融緩和に踏み切ることを決めました。
日銀は29日までの2日間、金融政策決定会合を開き、さきほど声明を発表しました。
それによりますと、日銀が市場に供給するお金の量を年間80兆円のペースで増やす、今の金融緩和策については維持します。
そのうえで新たに、日銀が金融機関から預かっている当座預金のうち一定の水準を超える金額につけている金利について、現在の0.1%からマイナス0.1%に引き下げる金融緩和策を導入することを決めました。
マイナス金利は来月16日から導入するとしています。
この決定は、9人の政策委員のうち賛成5、反対4と僅かの差で決まりました。
これによって、金融機関が必要以上の資金を日銀に預けておくメリットが薄れることから、日銀としては、日銀の口座に積み上がっている金融機関の資金をより積極的に貸し出しなどに振り向けるよう促すねらいがあると見られます。
新たな金融緩和策を導入した背景について日銀は、原油価格の一段の下落に加え、中国をはじめとする新興国や資源国の経済の先行きが不透明なことなどから、金融市場が世界的に不安定になっていることがあるとしています。これによって企業や消費者のデフレ意識の転換が遅れ、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増えていると説明しています。
目標の2%物価上昇率にはほど遠い状況
日銀の黒田総裁が、デフレ脱却を目指して大規模な金融緩和を打ち出したのは、2013年の4月4日でした。2%の物価上昇率を目標として掲げ、2年程度の期間で達成するため、市場に供給する資金の量を2倍に増やすという大規模な金融緩和で、記者会見では、黒田総裁みずから「これまでとは次元が異なる」と評しました。
この金融緩和に真っ先に反応したのは株や為替などの金融市場です。
円相場は、緩和発表前日の2013年の4月3日の時点では1ドル=93円台だったのが、円安ドル高が進み、去年6月には、一時、1ドル=125円86銭まで値下がり。
日経平均株価も2013年4月3日の終値は1万2362円だったのが、去年6月には、2万868円銭まで値上がりし、それまでの「円高株安」が「円安株高」へと一転するきっかけとなりました。
特に、自動車メーカーなどの日本企業が苦しんでいた円高が円安に転じたことで、大企業を中心に業績が改善し、過去最高益に達する企業が続出しています。
このため、春闘で従業員のベースアップを実施するなど賃上げに踏み切る企業が増えたほか、物価も当初は上昇基調が続き、大規模緩和の導入前には前の年と比べてマイナスだった消費者物価指数は、おととし4月には消費増税の影響を除いて1.5%程度の上昇率に達しました。
しかし、おととし夏以降に原油価格が急激に下落したことで、消費者物価は、上昇率が鈍り始めました。
日銀は、「デフレ脱却に向け正念場」だとして、おととし10月、国債などの買い入れをさらに増やす追加の金融緩和に打って出ましたが、このところ原油価格が一段と値下がりした影響で消費者物価指数は0%前後にとどまり、大規模緩和の導入から2年9か月以上たっても目標とする2%にはほど遠い状況になっていました。
こうしたなか、黒田総裁は、物価の上昇に向けた動きに変化があらわれたら、ちゅうちょなく追加の金融緩和に踏み切るという姿勢を見せていました。」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160129/k10010390301000.html

辺野古代執行訴訟 破綻した国の「継続性理論」

2016-01-29 16:18:25 | 軍事
「 昨年12月20日、私は沖縄タイムス「行政の継続性 国の切り札」の中で、国の主張は「時代錯誤」とし、県との間で本格的な法廷論争を期待すると記した。というのも、国側の訴状を見れば明らかなように、国側は今回の代執行訴訟における主要争点を二つに限定している。

 (1)翁長知事が仲井真前知事の埋め立て承認を取り消したことは、「行政の継続性」(以下、公定力)を破壊するもので、明らかに違法。

 (2)埋め立てについて仲井真前知事の承認は正当・合法である(埋め立て論争)。

 注意しなければならないのは、国側はこの二つについて、並行的なものではなく、(1)が主要論点であり、(2)は付随的なもの、つまり、前者を判断すればもう後者は審理するまでもなく、国側の勝訴は明らかであると主張しているということである。

 この国側の自信のほどは、県側が複数の証人申請を行っているのに対し、国側は全く証人申請を行っていない、という事実からも推測されよう。つまり、軍事基地優先か、それともジュゴンの保護が重要かの優位性を証明するには多くの専門的な証人や証拠が必要となるのに、これをほとんど無視しているのは、公定力の理論一つで勝てるともくろんでいるとみてよいのではないか。

 先の紙面ではこの公定力について詳しく触れることができなかったので、今回はこの公定力とはいかなるものか、「学説」(判例の検討は別途行う)を中心にして検証を行い、国側の論理破綻を指摘したい。


■国側の主張する「公定力」とは何か
 国側の訴状によれば


 「行政処分はそれが仮に違法であったとしても、無効の場合は別として、取り消し権限あるものによって取り消されるまでは、何人もその効果を否定することはできない」というものであった。


 その上であえてそれを取り消す場合には


 「処分の取り消しによって生ずる不利益と、取り消しをしないことによる不利益を比較衡量し、しかも該処分を放置することが公共の福祉の要請に照らして著しく不当であると認められるに限り、これを取り消すことができる」(最高裁判所昭和43年11月7日判決)というのである。


 この主張を簡単に解説すると


 (1)前知事の処分には公定力がある。したがって原則として取り消すことができない。

 (2)翁長知事はあえてこれを取り消したが、この場合、二つの要件を満たさなければならない。

 ・取り消すことによって得られるもの、大浦湾(辺野古湾)の環境回復は、軍事基地を造るよりもはるかに価値がある。

 ・このまま埋め立てを続けることは、県民・国民の幸福(公共の福祉)にとって著しく不当である
 (3)一方、国側は翁長知事の取り消し処分は(1)と(2)に違反している。なぜなら、軍事基地の建設は、日本とアメリカの長年の検討の結果であり、これを中止させることは、双方の「国益」を失う。そもそも辺野古移設は、普天間基地被害を解消するためのものである。すでに辺野古基地建設のため莫大な費用(税金)が投入されている。これらと比較すると大浦湾の保全の価値の利益は問題にならないくらい少ない。


 付け加えれば、このような「利益考量」を行えば、埋立が合法か違法かなどという論は、無意味なことであり、仮にそれが違法だったとしても、あくまで軍事基地の建設は必要で、取り消すことは認められないというのである。

 しかし、誰が見ても、埋立が「違法」であっても、軍事基地が認められるというのはおかしい。なぜこのような理論が通用するのか。これがこの代執行裁判の大きな特徴であり、マジックなのである。


 これまで、市民が国や自治体を被告とする行政裁判は、全国で山ほど行われてきた。もちろん、この公定力をめぐる裁判例も若干ある。しかし、今回のように国側が自治体を相手に真正面から公定力を論じるのはおそらく史上初めてである。

 少し皮肉っぽく言うと、国側にとっても高等裁判所裁判官の人事あるいは国側代理人の最強メンバーの編成という舞台装置の整備と並んで、このような大上段の理論武装をしなければならないほど、今回の裁判は史上かってない「大裁判」だということなのであろう。


 では学説はこの公定力はどのように説明してきたか。国がその震源として挙げたのが「行政学の父」としてのドイツの行政法学者オットー・マイヤーである。

■「公定力の震源」 オットー・マイヤー

 オットー・マイヤーは、今からほぼ100年前、立憲君主制を背景とするプロイセン憲法(1850年)、ビスマルク憲法(1871年)、そして当時世界で最も進歩的、自由主義的・民主主義的な憲法といわれたワイマール憲法(1919年)の体制下で「行政権」を研究。ドイツ最大の「論理的教条主義者」といわれるようになった。

 彼の学説は、その後も、ワイマール憲法とは正反対のファッシズムを構築したナチス憲法(1933年)の下でも揺らぐことなく、君臨し生き続けた。ここから有名な「憲法変われど、行政法変わらず」という格言が生まれている。

 それでは、マイヤーの行政法はどのようなものであるか。

 端的に言うと、

・行政権は本質的に「偉大なる事実としての国家」に源泉を持つ万能なものである

・だが、それはあくまでも「法規」のもとにあり、その中で、行政権の優越的地位に基づき、国民を支配する。

 この理論は、一方で立憲君主制の中では「法規」の名前で「君主」の裸の権力による暴走を抑え、他方でナチズムの下では国民の権利を守るために機能したといわれる。

 「公定力理論」はこのような全体の脈絡を背景に、行政権の神髄を語る骨太な理論として構築された。

 「行政処分は、権限ある行政庁が公益のため、自ら適法なものと確認して行う国家権力の発動であるから、裁判所の判決と同様、それ自体権威を有し、適法性が推定される」とする。

 そしてこの理論は、国側は戦前の美濃部達吉によって紹介され、戦後も田中二郎、塩野宏、そして、藤田宙靖など名だたる行政法学者(最高裁判所判事や文化勲章受章者など)に受け継がれてきたとし、これを、今回の代執行裁判で、最も早くかつ簡単に勝てる議論として、訴状の冒頭に持ってきたという次第である。



■公定力理論の変化

 しかし、現代日本は「立憲君主制国家」ではなく「国民主権の近代国家」である。国家の思想も制度も180度変わった。

 オットー・マイヤーの行政法はプロイセン憲法時のものであり、ここでの国家体制は「君主」が頂点にある。日本はこのプロイセン憲法をモデルに明治憲法を制定したが、君主は日本の場合「天皇」であった。明治憲法によると「天皇イコール神」であり、行政は神の僕として、神の言葉にしがって仕事を行う。それは「権威」あるものであり、原則として誤りはない。それゆえ、国民の行政に対する異議申し立ても厳格に制限される。このような体制の下では、マイヤー行政法の導入もある意味で至極自然なことであり、この行政法が天皇体制を支えた。

 しかし、昭和憲法の制定は革命的なものであった。権力者は、天皇から国民に転換されたのである。行政権は「偉大なる事実としての国家」から演繹されるものではなく、主権者たる国民から信託されたのである。行政権は、天皇ではなく内閣に属するものであり、かつ三権分立のもと最高で唯一の国会のコントロール下に置かれとして具体化された。そして、行政は国会の定める法律を実施するだけでなく、国民に対し、情報を公開し、裁判を含めて、様々な異議申し立てや参加を許容しなければならないとされるようになったのである。

 明治憲法から昭和憲法への転換はいわば「革命」とでもいうべき根源的な価値観の転換であり、マイヤーからみても、ワイマール憲法およびナチズム体制をもはるかに超える事態が出現している、と認識され納得されたであろう。したがって、このような行政をめぐる環境の大きな変化は当然のことながら「公定力理論」にも大きな変化を生み出す。



■公定力理論の終焉

 つまり、行政は、もはや「権威の象徴」ではなく、国民の信託の下での代行者である。また、行政行為は、裁判所内部での異議申し立てしか認めない「判決」と同じようなものではなく、いつでも、誰でも、どこでも、異議を申し立てることができる「意思表示」の一つとして考えなければならない。さらに「違法ではあっても取り消されるまで有効」というような不可侵で永久不変なものではなく、適宜、修正されたり、撤回されたりしなければならない。

 もちろん、行政の意思表示は、私人と私人との個別的な意思表示と異なり、一方的に、一度に多くの国民を対象として行われることがある。

 道路建設を一つの意思表示としてみると、計画決定から事業決定、土地収用などへというように「連続展開」し、さらには民事や刑事裁判と異なって、行政に独特な行政不服申立・行政事件訴訟法があるなど、通常の市民間の意思表示とは異なる部分も多く持つが、国民の信託に基づき、それは適宜修正されなければならないという本質は変わりないのである。

 これは、行政の今日的な実態をみればさらに説得力を増す。

 日本では戦後高度経済成長以降、行政は従来の消極的な権力行政(軍隊・警察そして税と個別的な許認可など)の執行から、福祉・公共事業、国際的な対応などへと国民の生活に全面的かつ広範囲に介入するようになった。それこそ、朝起きて就寝するまで、水道、電気、交通、教育や労働、介護、保険、そして医療から葬儀まで「行政」なしには、一日たりとも過ごすことができない時代となっているのである。

 ここではそれぞれの行政には触れないが、行政の仕事は、時代の変化を受けて変転極まりなく、絶えず「変化と修正」の連続を不可避としている。「違法であっても取り消されるまでは有効である」というような行政の固定化は、行政だけでなく、国民の生活全体を窒息させてしまうだろう。変転し、絶えず修正される行政には「間違い」も必然であり、国会・国民はもとより、内閣も既存の行政について絶えず、時代や国民の要望に応えて点検していかなければならないのである。

 重要なことは間違いを認めないことではなく、間違いを犯した場合の被害者に対する損害賠償などをルール化したうえで、直ちに修正することである。このような行政の実態と考え方は、公定力論に関する「学説」にも変更を迫るであろう。

 国側の引用した学説は、古くは明治憲法下のものから、戦後初期から中期にかけての学者のそれが多く、そこには残念ながら、ここまで見てきた行政概念の転換は、充分には反映されていないようである。

 現にそれ以降の学者、例えば桜井敬子・橋本博之著「行政法」(第4版 弘文堂、2010年)は「公定力の根拠」として

 「かっては、行政行為には適法性の確定が働くからであるという説明がなされた。この見解は、国家は正しい処分を行うものである公権力に対する信頼が背景にあり、一種の権威主義的な考え方があるといえる。

 しかし、行政が行う判断が正しいという論理必然性はなく、今日、このような国家権力に対する権威主義的な考え方を維持することはできない。現在、公定力は、過去の行政法理論の延長上に、脆弱な根拠に基づいてかろうじているにすぎない」

 と断言していることに、注目すべきであろう。

 公定力理論は破綻したのである。

■二重効果論と利益衡量

 公定力理論の終焉は、オットー・マイヤーの「憲法変われど、行政法変わらず」ではなく、「憲法変わり、行政法も変わる」によって生まれた。そしてそれは国側の公定力論だけでなく、それに引き続く「利益考量論」にも変化をもたらす。

 そこでもう一度、国側の利益考量論を復習しておくと、原則、仲井真知事の処分は取り消せない。やむを得ず翁長知事がこれを取り消す場合には、取り消したほうが圧倒的に国民の利益になる、ということを証明しなければならない、というのであった。これについて国側は、軍事をめぐる日米双方の国益を筆頭に置き、これに勝る価値はほかに存在しない、としていた。

 しかし、裁判は政治の場ではなく法律の場である。法律の場であるということは、軍事が上か、ジュゴンが上かというような命題を「裸」で持ち出すのではなく、あくまで両知事の処分が公有水面埋立法に照らして、合法・正当かということ判断するということなのである。この点はまず、国側の主張が公定力理論にこだわりすぎたためか、冒頭に見たように、いきなり利益衡量論として日米双方の国益などを持ち出すようなそれこそ、自ら県を批判してやまない「政治論」に堕してしまっているのではないか。これが第一の問題点である。次いで、公有水面埋立法の下での解釈にあたっても、国側の主張はいかにも公定力論に引きずられているようである。

 オットー・マイヤーの時代、あるいは日本の戦前あるいは戦後初期まで、行政は、国家と国民・個人の間を規律するものであった。そこでは、行政の国民に対する優越性が認められていた。日本の多くの学者が追随したのも、この行政法が「国家と国民の関係」つまり二面的な関係を規律する法である、という観念が前提になっていた。しかし、先に見たように現代の行政は、国家と国民の関係を大幅に、しかも質的に転換させている。

 公有水面埋め立てについてみれば、埋め立て自体は、確かに、国家と国民(沖縄防衛局はそもそも国民かという根源的な問題はここでは触れない。以下、受益者とする)の関係の問題である。しかし問題は、現代の行政の困難は、国と受益者以外にこの行為によって不利益を受ける国民(環境や財政あるいは文化といったようなものも含む)というものを無視できない、ということなのである。これは先の二面的関係に比していえば三面関係から成り立っているといってよい。これを学界では「二重効果論」という。

 二面関係から三面関係へ、このような行政の本質に変化が認められるようになったのは、それこそ国民の側からの、工場建設の認可と公害の発生、薬の認可と薬害あるいは、商品表示と消費者、そしてダム、道路、埋め立てなどをめぐる公共事業と強制移転や環境破壊などの問題提起があったからである。不利益者の存在とその法的位置づけの重要性はもはや行政だけでなく、裁判所にとっても、また議会にとっても回避できないものになっている。

 二重効果論に即していえば

(1) 古典的な行政法理論では、不利益を受けるものの、法による行為で国民が間接的に受ける利益は「反射的」なものにすぎないとして無視した。

(2)無視された側は、情報公開、人権侵害などの実態の宣伝、審議会などへの参加要求、議会での追及などを開始し、不服審査や裁判を行うようになった。

(3)政府もこれら国民の要求や運動により、次第に情報公開法、不服審査・行政事件訴訟法などの一般法の制改定、さらには裁判所による原告適格の拡大や処分の取り消し、さらには行政処分に対する様々な懐疑を生み出し、

(4)河川法など一部実定法の改正や自治体による条例の制改定

 などとして発展し、具体化されていっているのである。

 この流れを概括的に言えば、受益者だけでなく、不利益を被る国民も「対等」に行政処分の当事者として位置づけられる、というものであり、場合によって、受益者が受ける利益よりも、国民の受ける不利益が大である場合には、処分は行われないし、すでに行われた処分を取消しあるいは撤回もありうるということなのである。ここには国家の国民に対する優越性とか、受益者は保護されるが不利益者は保護されない、などという法理論は存在し得なくなったということを確認しておこう。


■代執行訴訟はこう見る

 そして、このような視点で代執行裁判を見ると、国側の公定力理論とそれに引き続く利益衡量論は、この受益者・沖縄防衛局の利益にのみ固執し、対等な当事者である国民を軽視。さらに公有水面埋立法の下での法的な利益考量を飛び越えていきなり政治論を行っているように見えるのである。

 反対に、このような視点で見ると、私が世界2015年12月号「沖縄・辺野古 公有水面埋め立て承認の取り消しを考える」で分析・解説したように、翁長知事が任命した第三者委員会の「検証検査報告書」(2015年7月16日)は、この二重効果論の展開に誠実に答える優れた傑作である、と思えて仕方がないのである。報告書の結論は公有水面埋立法の下で、利益者と国民の利益考量を行った結果、仲井真前知事の処分には「法的な瑕疵がある」、つまり「違法」であるということであった。国も県も、この点について世界最高の「知と証拠」を持って正々堂々議論する、というのが私が先に指摘した「本格的な法廷論争」という意味なのである。」

http://www.okinawatimes.co.jp/cross/?id=369

【識者評論】辺野古代執行訴訟 行政継続性、国の切り札 

2016-01-29 16:16:09 | 軍事
「今回の行政代執行裁判には、国によれば二つの論点がある。一つは仲井真弘多前知事が行った公有水面埋め立て承認処分を、翁長雄志知事が取り消したのは、「行政の安定性」を害する。もう一つは、仲井真前知事が行った埋め立て承認は合法であって違法ではないという。そして、「裁判はこの第一の論点ですべて決着がつき、第二の論点はもうほとんど審議する必要性すら認められない」と、国が言っていることを、直視しなければならない。

» 基地と原発のニュースをフクナワでも

 国側の決定的な切り札となっているのが「行政の継続性」という行政法学上の独特な概念(公定力)で、「行政処分は国家権力の発動であり、裁判所の判決と同じようにそれ自体が、権威を有し、いったんなされた行政処分は違法だとしても、取り消されるまで、何人もその効力を否定できない」というのである。

 国はこれを学説と判例によって根拠づける。学説は行政法学の父と言われる「オットー・マイヤー」(1846~1924年)を元祖とする。現代日本でも行政法学界の重鎮である田中二郎や塩野宏東京大名誉教授などによって支持され、最高裁判所の判例(1968年11月7日)によって確定している。

 これによれば、仲井真前知事の行った処分は「権威」があり原則取り消しできない。仮に翁長知事が取り消す場合は「取り消すことによって得られる利益が、取り消し前よりもはるかに大きい」という場合に限られる。これまでの日米双方の交渉の経過、沖縄の軍事的地位などを衡量すると、その結果は明らかで「勝負あり」という。

 オットー・マイヤーはドイツ立憲君主制時代の学者だ。その学説は「国家統治」から出発する「官治主義的」なもので、ワイマールとナチスという両翼の政治体制に耐えた。ここから「憲法変われど、行政変わらず」という格言が生まれた。

 しかし、戦後日本は国家統治の国から国民主権の国に180度変わった。行政は国民の信託によって仕事を行うにすぎない。そして行政の違法性の判断は裁判所が行う。この国民主権と三権分立の日本国憲法構造の下では、「違法であっても有効だ」というような神がかりのような議論は入り込む余地がない。違法な処分はあくまで違法で、取り消されて当然なのであり、そこには双方の利益を衡量するというような発想もあり得ないのである。

 しかし、残念ながら沖縄県側の主張もこの点に関する反撃は極めて弱く、法廷での本格的な論争を期待したい。(法政大学名誉教授・五十嵐敬喜、公共事業論)」

http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=151481

中谷元防衛相が自衛隊に破壊措置命令

2016-01-29 16:08:08 | 軍事
「[東京 29日 ロイター] - 北朝鮮が長距離ミサイルを発射する兆候があることを受け、中谷元防衛相が自衛隊に破壊措置命令を出したことが29日、分かった。政府筋が明らかにした。自衛隊はミサイル迎撃能力を備えたイージス艦などを展開し、警戒を強める。

米政府関係者によると、北朝鮮のミサイル発射場周辺の活動が活発化しており、数週間以内に打ち上げを実施する可能性があるという。

菅義偉官房将官は29日の閣議後会見で、「(北朝鮮が)事前の予告なく挑発行動に出る可能性は否定できない。いかなる事態にも対応できる態勢はしっかりとっている」と語った。

日本は2014年にも、北朝鮮のミサイル発射に備えて破壊措置命令を発令。自衛隊は海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載したイージス艦を日本海に派遣した。」

http://jp.reuters.com/article/nakatani-north-korea-idJPKCN0V70B2

ロシア、サウジ等と協調減産か?

2016-01-29 16:04:06 | 産業
「[ニューヨーク 28日 ロイター] - 28日の原油市場では、石油輸出国機構(OPEC)とロシアによる協調減産への期待が広がり、価格が一時急騰した。ただアナリストの多くは、実現の可能性に否定的な見方を示している。

バークレイズ(ニューヨーク)のコモディティアナリスト、マイケル・D・コーヘン氏は「誤った期待」と題した顧客向け投資ノートで「OPECによる減産のうわさは、市場のセンチメントを変える試みにすぎない。われわれは懐疑的」と指摘した。

28日の原油価格上昇は、サウジアラビアによる減産提案を示唆したロシアエネルギー相の発言が背景。同相によると、サウジは産油国が生産量をそれぞれ最大5%削減することを提案したという。原油価格はその後、湾岸諸国関係者が計画を否定したことで上げ幅を縮小した。

マッコーリー・グループ(ヒューストン)のアナリストは「減産調整でOPECとの協調を検討するというロシアのスタンスを示したものに過ぎない」との見方を示している。

原油市場ではこのような団結スタンスは異例。たとえロシアとOPECによる5%減産が実現しても、日量では200万バレルで、価格崩壊の原因である供給過剰からみるとごくわずかな量にすぎない。

ソシエテ・ジェネラル(ニューヨーク)のアナリスト、マイケル・ウィットナー氏は「実現してもマイナス200万バレルで、イランからはプラス100万バレル。効き目があるとは思えない」と述べた。

バークレイズやマッコーリー、その他の金融機関もこのような減産の可能性は低いとみている。

ウィットナー氏も、サウジは以前イラクやイラン、ロシアといった主要産油国との協調なしには減産しないと述べており、この4産油国間の合意実現は難しいとの見方を示した。

同氏は「ロシアやイラクは態度に軟化がみられるが、イランは制裁が解除されたところで、増産姿勢を崩さないだろう」と指摘した。」

http://jp.reuters.com/article/russia-oil-cuts-analysts-idJPKCN0V708X

習近平国家主席、受刑者およそ3万人特赦

2016-01-29 15:59:10 | アジア
「中国政府系メディアが報じたところによると、習近平国家主席は、昨年末までに受刑者3万1527人に対する大規模な特赦を行った。そのうち、事件当時に18歳未満だった服役者の割合は94%。

 国営の新華社通信ニュースサイト、新華網の26日の報道によると、今回の特赦の対象者は、中国共産党の下で抗日戦争などの戦争に参加したことがある者、75歳以上で体に重い障害があり、自立した生活を営むことが難しい者、事件当時に18歳未満で、懲役3年以下の者、または残りの刑期が1年以下の者だった。

 習主席は、昨年8月29日から国家主席特赦令への署名を開始している。

 今回の特赦は1975年毛沢東が行って以来40年ぶりで、非戦争参加者がはじめて対象になっている。米人権団体「米中対話財団(Dui Hua Foundation)」の幹部ジョン・カンム氏は米メディアに対し、「毛沢東以外の歴代トップ(小平、江沢民、胡錦濤)が踏み切れない特赦を習近平が行った。(最高指導者としての)自信をみせている」と見解を述べた。中国問題専門家からは「習近平氏が全面的に政権の主導権を握ったことを意味する」との見方もある。

(翻訳編集・桜井信一)」

http://www.epochtimes.jp/2016/01/25146.html

石油に一体何が本当におきているのだろう?/F. William Engdahl

2016-01-29 13:58:50 | 国際
「石油に一体何が本当におきているのだろう?

New Eastern Outlook
2016年1月24日
F. William Engdahl

もし世界経済の成長や停滞を決定する何らかの単一商品の価格があるとすれば、それは原油価格だ。現在の世界石油価格の劇的な下落に関しては、余りに多くのことがあてにならない。2014年6月、主要な石油は、一バレル、103ドルで取り引きされていた。石油と石油市場の地政学を研究してきた多少の経験から、私は大いにうさんくさいものを感じている。私には納得がゆかないいくつかの物事について、皆様にもお伝えしよう。

1月15日、アメリカ石油価格指標、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)の取り引きは、29ドルでひけたが、2004年以来最低だ。確かに、世界には、少なくとも一日約100万バレル、過剰生産があり、それが一年以上続いている。

確かに、イラン経済制裁解除は、供給過剰の市場に新たな石油をもたらし、現在の市場の価格下落圧力を増すことになろう。

ところが、アメリカとEUの対イラン経済制裁が、1月17日に解除される数日前、イラン国営石油NIOCのセイード・モフセン・ガムサリ国際局長は、イランは“…生産増大が決して価格を更に低下させないような形で市場に参入するつもりだ…市場が吸収できるだけの量を生産するつもりだ。”と述べた。だから、経済制裁解除後、イランの世界石油市場への新参入は、1月1日以来の急激な石油価格下落の理由ではない。

中国経済の崩壊とされるものとともに、中国の石油輸入需要が崩壊したというのは事実ではない。2015年11月までの一年で、中国より多く、実により多く、8.9%も、年々輸入し、一日660万バレルで、世界最大の石油輸入国となっている。

劇的に増大している現在の世界石油市場における政治リスクの煮えたぎる大釜状況に加わったのが、2015年9月以来の、テロリストのインフラに対する恐るべき空爆で、正当に選出されたシリア大統領、バッシャール・アル・アサドの依頼に応えるというロシアの決断だ。更に、NATO加盟国のトルコが、シリア領空で、ロシア戦闘機を撃墜するという厚かましい戦争行為をおかして以来、レジェップ・タイイップ・エルドアンのトルコと、モスクワとの間の関係の劇的な決裂もある。こうした全てのことからして、石油価格は、下落でなく、上昇するはずなのだ。

戦略的に重要なサウジアラビア東部州

さらに加えて、サウジアラビア国民であるニムル・アル・ニムルを処刑するという、サウジアラビア国防大臣で、事実上の王、ムハンマド・ビン・サルマン王子による、正気と思えぬほど挑発的な決定だ。アル・ニムル、尊敬されていたシーア派宗教指導者は、2011年、サウジアラビアのシーア派の権利を要求したテロ活動のかどで告訴された。超厳格なワッハーブ派スンナ宗派ではなく、シーア派の教えを奉じている約800万人のサウジアラビア人イスラム教徒が暮らしている。彼の犯罪は、抑圧されているシーア派少数派、おそらくはサウジアラビア国民の約25%に対し、権利を拡張するよう要求する抗議行動を支持したことだ。サウジアラビアのシーア派国民は、王国の東部州に圧倒的に集中している。

サウジアラビア王国の面積はドイツ連邦共和国の倍だが、住民はわずか400万人という東部州は、おそらくは地球上で最も価値のある不動産区画だ。国営石油会社のサウジアラビア・アラムコは東部州のダーランが本拠だ。

サウジアラビアの主要な石油とガス田は、世界最大の油田ガワールを含め大半が東部州陸上、海上にある。ガワールを含めサウジアラビア油田からの石油は、世界最大の原油ターミナル、ラスタンヌーラ・コンプレックスの石油ターミナルから何十もの国々に出荷されている。サウジアラビアによって汲み上げられる一日1000万バレル近くの石油の約80%がペルシャ湾のラスタンヌーラに送られ、そこで西に向かう超大型タンカーに積まれる。

東部州には、サウジアラビア・アラムコのアブカイク・プラント施設、一日700万バレルの能力を有する同社最大の石油加工・原油安定化設備がある。アラビアン・エクストラ・ライトと、アラビアン・ライト原油の主要石油加工サイトで、ガワール油田から汲み出される原油も扱っている。

しかもたまたま、東部州の油田と精油所の大多数のブルーカラー労働者は…シーア派だ。彼らは最近処刑されたシーア派宗教指導者ニムル・アル・ニムルに同情的だともいわれている。1980年代末、サウジアラビアのヒズボラ・ヘジャズは、石油インフラを何度か攻撃し、サウジアラビア人外交官殺害もした。彼らはイランで訓練を受けたとされている。

しかも現在、政治的緊張に加えて、片や、両脇を卑屈なアラブ湾岸協力会議諸国によって守られたサウジアラビアとエルドアンのトルコ、そして片や、アサドのシリアと、シーア派国民が60%のイラクと、現在ロシアによって軍事的に支援されている隣国イランとの間で、新たな不安定化の要素が高まりつつある。情緒不安定な、30歳のビン・サルマン王子が、王に任命されようとしていると報じられている。

1月13日、中東シンクタンクのガルフ・インスティテュート、独占レポートで、80歳のサウジアラビアのサルマン・アル・サウード国王は、王位を退位し、息子のムハンマドを王にする計画だと書いている。報告書は、現在、王は“現在の皇太子で、アメリカのお気にいり、強硬派のムハンマド・ビン・ナーイフをも、現在の皇太子兼内務大臣の地位から排除するこの動きへの支持を求めて、兄弟を順次訪問している。進展に詳しい情報源によれば、サルマン国王は兄弟たちに、サウジアラビア王政の安定のためには、継承を、横方向や斜め方向の継承ではなく、王が権力を、自分の最も相応しい息子に渡す直系継承に変える必要がある。”と書いている。

2015年12月3日、ドイツ諜報機関BNDは、気まぐれで、すぐ感情的になると彼らが見ている人物、サルマン王子が益々権限を強化しつつあることを警告するメモをマスコミに漏洩した。シリア、レバノン、バーレーン、イラクとイエメンへの王国の関与をあげて、サルマン王子に言及して、BNDはこう述べていた。“サウジアラビア王家の年長メンバーによるこれまでの慎重な外交姿勢は、衝動的な干渉政策によって置き換えられるだろう。”

石油価格の更なる下落?

世界の石油と天然ガス埋蔵の中心地中東を巡って、この不穏どころではない状況において、不穏な要素が蠢いており、実際ここ数週間、既に昨年12月、40ドル帯という低価格で一時的に安定していた石油価格が、今や更に25%も下落し、約29ドルで、見通しは暗い。シティグループは、20ドルの石油がありうると予想している。ゴールドマン・サックスは最近、世界石油市場を再び安定化させて、供給過剰から脱出するには、一バレル、20ドルという安値が必要かも知れないと言い出した。

今後数カ月で、何か非常に大きな、非常に劇的なものが、世界が全く予期していない何かが世界石油市場で形成されつつあるという非常に強い直感を私は持っている。

前回、ゴールドマン・サックスと、そのウオール街のお仲間が、石油価格で、劇的な予測をしたのは、2008年夏のことだった。当時、アメリカのサブプライム不動産メルトダウンが広がり、ウオール街銀行への圧力が高まるさなか、その年9月のリーマン・ブラザーズ崩壊直前、ゴールドマン・サックスは、石油は一バレル200ドルに向かっていると書いた。当時、147ドルという高値にあった。当時、私は、世界石油市場では膨大な過剰供給が存在しているという事実に基づいて、全く逆の可能性が高いという分析を書いたが、それをわかっていたのは、奇妙にもリーマン・ブラザーズだけだった。中国国際航空や、他の巨大な中国の国営石油顧客に、200ドルになる前に、あらゆる石油を147ドルで買い占めるよう説得するため、価格上昇をあおる助言として、JPモルガン・チェースなどのウオール街銀行は、200ドルという価格を宣伝しているのだと情報通の中国筋から聞かされた。

ところが、2008年12月、ブレント原油価格は、一バレル、47ドルに下落した。2008年9月、元ゴールドマン・サックス会長だったアメリカ財務長官ヘンリー・ポールソンの意図的な政治決定によるリーマン危機が、世界を金融危機と深刻な不況に突き落とした。ゴールドマン・サックスや、シティグループや、JPモルガン・チェースなどの他のウオール街主要巨大銀行にいるポールソンのお仲間は、議会に7000億ドルもの未曾有のTARP資金を持った緊急援助権限の白紙委任状を与える議会によう強いるため、ポールソンが、リーマン危機を企んでいたことを、事前に知っていたのだろうか? この出来事で、石油先物のレバレッジ・デリバティブを利用して、自分自身の200ドル予測がはずれる方に賭けて、ゴールドマン・サックスと、お仲間は莫大な利益をあげたとさされている。

まず、シェール石油‘カウボーイ’を処分する

現在、2009年あたりからアメリカ石油算出増大の最大の源であるアメリカ・シェール石油業界は、大量破産の瀬戸際ぎりぎりのところで踏みとどまっている。ここ数カ月、シェール石油生産は、かろうじて下落し始め、2015年11月、約93,000バレルだ。

大手石油会社カルテル-エクソン・モービル、シェブロン、BPとシェルは、二年前に、シェール・リース権を、市場で投げ売りしはじめた。現在、アメリカのシェール石油業界は大手ではなく、BPやエクソンが“カウボーイ”と呼ぶ 中規模の積極的な石油会社が支配している。歴史的に、大手石油会社に資金供与してきた、JPモルガン・チェースやシティグループなどのウオール街銀行は、大手石油会社自身と同様、世界で最も重要な市場を、彼らが再度支配できるのだから、現時点でシェール・ブームが破裂しても、涙をながすことなどありえない。シェール“カウボーイ”に、過去五年間に何千億ドルも貸しこんだ金融機関は、4月に、次の半期ローン見直しを迎える。価格が20ドル近辺をうろついていれば、新たな遥かに深刻な実際のシェール石油会破産の波がおこるだろう。もしそうであれば、カナダの巨大なアルベルタ・タール・サンド石油を含め、非在来型石油資源は間もなく過去のものとなるだろう。

それだけでは、石油は、巨大石油会社や、ウオール街の銀行にとって快適な70-90ドル・レベルに回復しない。中東のサウジアラビアと湾岸アラブ同盟諸国からの過剰供給は劇的に減らさなければならない。ところが、サウジアラビアには、そうしようという兆しが皆無だ。それで私はこの全体像が心配になるわけだ。

今年後半、石油価格を劇的に押し上げるような何か極めて醜悪なものが、ペルシャ湾で醸成されつつあるのだろうか? シーア派と、サウジアラビア・ワッハーブ派石油国家との間で、実際の武力戦争が醸成されつつあるのだろうか? これまでのところは、主として、シリアにおける代理戦争だ。シーア派宗教指導者処刑と、イラン人によるテヘランのサウジアラビア大使館襲撃以来、サウジアラビアや、他のスンナ派湾岸アラブ諸国による外交関係断絶となり、対決は遥かに直接的なものとなった。サウジアラビア財務省元顧問のホセイン・アスカリ博士はこう語っている。“イランとサウジアラビアがぶつかる戦争があれば、石油は一夜にして、250ドル以上になり、再度100ドル・レベルに下落しかねない。もし両国が、お互いの積み込み設備を攻撃すれば、石油は500ドル以上に高騰し、損害の程度次第では、そのあたりにしばらく留まることになる。”

あらゆることが、世界が次の巨大オイル・ショックに向かっていることを示している。それは、いつも石油を巡るものであるように見える。ヘンリー・キッシンジャーが、1970年代中期、ヨーロッパとアメリカが、OPEC石油禁輸と、ガソリン・スタンドでの長蛇の列に直面した際の、オイル・ショック当時に言ったとされているように“もし石油を支配できれば、全ての国々を支配できる”。この支配妄想が、急速に我々の文明を破壊しているのだ。地球上で最大の石油の大物になろうとして競争するのではなく、平和と発展に力を注ぐべき頃合いだ。

F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書で、オンライン誌“New Eastern Outlook”に独占的に寄稿している。」

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/01/post-c3be.html