白夜の炎

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「慰安婦犠牲者に対する韓国政府の背信 <外交的癒着>」/永遠の東アジア平和のために、より

2016-01-04 16:13:45 | アジア
「慰安婦犠牲者に対する韓国政府の背信 <外交的癒着>


 2015年12月28日、韓国と日本の外務長官は、突然、そして性急に、「慰安婦」問題の「解決」を宣言した。日本の総理大臣個人のお詫びとともに賠償のための基金を作るというものだった。

 日本の外相は、「『慰安婦』問題は、当時の軍の介入の下に数多くの女性の名誉と尊厳を深く傷つけた事件」であるという点を認める。また、生存している46名の慰安婦ハルモニを支援するための基金の立ち上げのために、10億円の出資を約束した。

 これについて、韓国の慰安婦ハルモニたちの運動団体は、今回の合意が「背信」であり「詐欺」であると強く反発している。あるハルモニは、会見の場で泣いた。野党の政治家たちは外交部長官の委任を要求した。駐韓日本大使館前では抗議のデモが行われた。

 日本の活動家の団体である「従軍慰安婦のための韓国協議会」は、今回の合意は「衝撃的」だとして、次のように語った(訳者注:これは、韓国の挺身隊問題対策協議会の尹美香常任代表のコメントだと思われる)。

 「今回の合意は、韓国にとっては屈辱的外交である…慰安婦ハルモニと韓国国民の願いを徹底的に裏切った外交的癒着に過ぎない…このことで(慰安婦問題に関する)去る25年の進展がすべて無駄になった」

 元慰安婦であり積極的な活動家である李容洙ハルモニもまた、今回の合意を非難した。「犠牲者をまったく考慮していない合意だ。私は全面的にこれを受け入れない」と糾弾した。

 慰安婦ハルモニたちは、どうしてまだ満足できないのだろうか?世界のメディアは(今回の合意を)称賛しており、米国務省はすぐさま歓迎し、広報に乗り出しているのに。表面的には、今回の合意は合理的なもののように見える。(日本が)謝罪の書簡とともに、慰労金または賠償金を提供するからだ。この問題は70年にもなり、何の合意もないよりも遅ればせながら合意することが良いのではないか。慰安婦ハルモニたちは、それ以上何を望んでいるのか?

 この問題を正しく理解しようとするなら、歴史をもう少し深く見てみる必要がある。

歴史の真実が明らかになる
 いわゆる「慰安婦制度」というものは、1932年から1945年まで、大日本帝国の軍隊がアジア全域で-主に朝鮮、台湾など日本の植民地であった11の地域で-数十万人の女性を拉致および性奴隷に転落させた計画的かつ組織的な犯罪行為だった。この制度が始まって拡大していく過程で、初期には一部の職業的売春婦が動員されたこともある。しかし、すぐに女性に対する性搾取のための一種の産業システムとなり、膨大な規模になって、現代史上に類例のない大規模の性搾取へと発展した。「慰安婦制度」とは、(ナチの)ホロコーストによる大量虐殺に比肩する戦時の性搾取および虐待である。産業的規模の強姦工場、すなわち全面的かつ組織的で合理的な計算された(女性の)調達、監禁、拷問、虐待、性奴隷化、そしてテロが恣行されたのだ。

 戦争が終わった後、このような野蛮な歴史は、政策、政治、偏見の記録から完全に消された。歴史の記憶喪失を誘導するための陰謀だった。拷問と鞭打ち、(手足の)切断と連日の強姦―1日に最高50回まで―から生き残った慰安婦の女性たちのうち、一部は退却する日本軍の兵士に殺された。歴史学者は、日本軍慰安婦女性のうち生き残った率が25%程度だと推算する。戦場に投入された兵士、大西洋奴隷貿易によってアフリカからアメリカに連行された黒人奴隷の死亡率よりも高い。これは、「慰安婦」問題が20世紀史上最大の、認定されていない、さらには解決されていない虐殺行為であることを物語っている。 

 実際にどれほど多くの女性が拉致、徴発されたり、または騙されて、あるいはそのまま売られたのか、その数字を知る方法はない。報復を恐れた実行当局者たちがほとんどすべての記録を破棄したからだ。しかし、その数字は数十万に達するものと推算される。

 特に、慰安婦制度が日本政府によって体系的に計画、組織されて執行されたという事実には、疑問の余地がない。日本軍が占領したはるか彼方の植民地地域にまで連行するために、慰安婦の女性たちは、日本政府から旅券とビザを発給されていたからだ。慰安婦の女性は、日本の軍用艦船に乗せられて、日本軍の兵士の監視を受けて移動した。いわゆる「慰安所」は、日本軍の基地内、または近隣地域に設置され、おおむね日本軍当局が管理していた(一部は軍当局が民間業者に下請けをさせた)。また、軍医が女性を「点検」した。ある事例では、次のような生体実験に利用されることもあった。一人の女性が一日にどれだけ多くの強姦に耐えられるか?または、性病はどのように伝染し、どのように予防できるか?

 (第2次世界大戦当時)大日本帝国の会計指針によれば、慰安婦の女性は軍需品の一種として、使い捨ての「消耗品」として扱われた。ここにはまた、(慰安婦女性に対する)賃金の支給日、一般兵士と将校の慰安婦の使用日程などが記載されている。一部の人々は、慰安婦制度が民間のブローカーや事業家によって作られた自発的な「歓楽事業」だったと主張する。しかし、これらは、戦争当時の日本軍の調達システムがどのように運用されていたのかを見逃している。また、当時の日本政府がファシズム軍部独裁政権であり、物品の調達、分配、供給などの部門を政府が直接統制、管理していた統制経済であったという事実を無視している。米をはじめとするすべての生活物資、労働者、女性に至るまで、一定量を割り当てる政府の組織が発表すれば、植民地地域はこれに従わなければならなかった。

 去る70年間、日本政府は、(米国の支援と示唆を受けて)このような慰安婦制度の存在自体を否定してきた。生き残った少数の慰安婦女性は、(社会の)陰に隠れて、疾病と悪夢、言葉に表せない苦痛と羞恥を耐えねばならなかった。彼女たちのほとんどは、ひどい性的暴力によって不妊になり、ほとんどは自分の肉体がどうしてダメになってしまったのか、その秘密を墓場まで持って行った。そして1991年、たった一人の韓国人慰安婦女性が勇敢に名乗り出て、沈黙を破った。

 「一人の女性が生涯の秘密を話しした時、どんなことが起きたのか?世界の隠された真実が明らかになる。」

 詩人のミュリエール・ルーカイザーはこのように言う。金学順ハルモニがまさにその女性だった。彼女が姿を現して自分の人生を語った時、韓日間の歴史の中の隠された秘密が満天下に晒された。金学順ハルモニは、他の慰安婦ハルモニに自身の話を打ち明けて勇気を与え、これら慰安婦ハルモニたちは、徐々に前面に出てきて、日本を批判し始めた。ハルモニたちの声は、半世紀の間抑圧されてきた恥辱の沈黙と憤怒のために震えていた。

 「天皇に、私のところへ来て跪いて許しを乞えと伝えてくれ。私は謝罪を望んでいる。私たち全員に。」

 ある慰安婦ハルモニはこのように言った。ハルモニたちの声が大きくなるほど、犯罪の証拠も積み上げられていった。しかし、日本政府は、責任を免れるために、のらりくらりとするばかりだった。しかし、時間が経つにつれて、否定による負担が認定による当惑よりも大きくなっていった。韓国の親日派が傍観する間に、韓国政府が積極的に前面に立ち、ついに1993年、日本政府が責任を認めた。いわゆる河野談話がそれである。曖昧で、形式的で、生ぬるい謝罪だった。それも、国家首班ではない官房長官名義であった。

偽の謝罪、真の謝罪
 河野談話は、日本の国会が発表したものでも、国会の批准を受けたものでもなかった。したがって、法的効力を持つ公式謝罪ではなかった。それにも関わらず、日本では、(日本の)責任の認定に向かう重要な第一歩だという点で歓迎された。ある意味では、河野談話は、慰安婦問題を前向きに論議していく適切なきっかけではあった。当時、日本政府は、民間の賠償基金(アジア女性基金)の創設を支援し、慰安婦被害者に伝達する寄付金を集めた。

 当然、慰安婦ハルモニのほとんどは、このような(非公式的で法的効力のない)謝罪と慰労金を拒否した。彼女たちは、依然として真の謝罪を望んでいる。特に、慰安婦ハルモニたちは、常識と理想に基づいて、次のような措置を求めている。

○1932~45年に大日本帝国の軍によって性奴隷化が計画、組織、執行されたという点を全面的に認めること

○日本の国会が公式で法的効力を持つ謝罪をすること

○すべての犠牲者に対して、法的で全面的な賠償をすること

○慰安婦の女性の犠牲を記録し、日本軍の性奴隷化の歴史を保存するための記念碑を設立すること

○戦争犯罪に対して責任ある犯罪者を起訴、処罰すること

 これらの要求のうち、どれも(以前の謝罪を含めて)今回の合意で充足されていない。まず、慰安婦制度が日本政府の公式の政策であったという点を認めていない。軍部が「介入」したという漠然とした言及だけがあるだけだ。(慰安婦女性の)「苦痛と受難」に対する包括的な遺憾の表明があったのみで、その苦痛の原因は特定されていなかった。反面、河野談話にあった「強制」という単語は消えている。言い換えれば、安倍政権がしつこく主張してきたように、慰安婦の女性は自発的な娼婦であったという点を、間接的に認めたものだ。さらに安倍政権は、雀の涙ほどの金額(10億円)を寄付することで、直接的かつ法的な賠償の義務を回避した。これから日本の公式謝罪(国会で批准される)はないようだ。戦争犯罪に対する調査、犯罪行為者に対する処罰、戦争犯罪に対する教育は、はるか彼方に行ってしまった。特に、日本は、今回の「謝罪」とともに、(今回の合意が最終的で不可逆的だという理由で)韓国がこの問題をこれ以上問題提起できなくした。これから永遠に、韓国は、この問題に関して日本を批判できなくなった。おそらく(駐韓日本大使館前の)少女像は撤去されるだろう。今や、慰安婦問題は、安倍総理と岸田外相がうんざりするほど叫んできたように、「不可逆的に解決」した。

 人類の歴史上、強大国の政府が公式謝罪をしながら、事後の被害者による問題提起や批判を禁止した例はない。戦争犯罪と人道主義に反する犯罪には、いかなる制約も条件もあり得ない。これらの犯罪について沈黙を強要してもならない。ところが韓国政府は、まさにこのような前提条件に合意をした。このような全面的な降伏、これ以上の道徳および主権の放棄は、想像すらできない。このようなものが謝罪だとしたら-そして韓国がこれ以上の批判を提起できないとしたら-韓国は自ら主権国家であることを放棄したのだ。

 いったい、韓国政府は、なぜこのような話にもならない謝罪を受け入れなければならなかったのか?

狂気への回帰
 天動説を信じる限り、地球など惑星の軌道を正確に予測することはできない。太陽が太陽系の中心であるという点を認めなければ地球の動きを知ることができないように、「米国という太陽」の重力を認めなければ、韓国政治の不合理で退行的な行動を理解することはできない。このような点を念頭に置けば、次のような韓国政府の不合理で自己敗北的な行動の原理を理解できる。自虐的な貿易協定、自己破壊的な経済政策、そして環境、市民社会、経済の膨大な犠牲を払った軍事基地の建設など。今回の慰安婦に関する韓日の合意は、まさにこのような狂った政策の当然の帰結だった。

 去る10年間、米国は、アジア太平洋地域への回帰を準備してきた。去る150年間の米国は、いつでも太平洋を自分の独占的勢力圏(American Lake)として、太平洋周辺諸国を属国とみなしてきた。1882年の朝米相互通商条約の米国側代表であるシューフェルト提督は、次のような華麗で性差別的な問題文体で、米国の優位に対する確信を明らかにしている。

 「米国は新郎であり、中国、日本、朝鮮は新婦である…われわれ米国人は、『新郎が太平洋を渡ってこれら新婦のところにやって来たゆえ、今後いかなる商業的ライバルや軍事的競争者も、われわれの許しなしには太平洋を意のままに行き来できないことを明らかにする…東洋と西洋が太平洋で一つになることで、帝国に向かう(米国の)挑戦は終着駅に到着し、人類の力は絶頂に達する。』

 現代地政学の父であり英国の地理学者であるハルフォード・マッキンダー(米国のアルフレッド・セイヤ―・メーハンとともに)も、これと同様に、ユーラシア大陸を「中心地域(heartland)」「主軸国家(pivot state)」または「世界島(world island)の中心」と呼んだ。

 マッキンダーとメーハンの理論は、世界情勢を「大陸勢力」対「海洋勢力」の角逐と理解する。二人とも、世界を支配するためにはユーラシア大陸の中心を掌握しなければならない、と信じている。

 マッキンダーの表現を借りれば、「中心地域を支配する者が世界島を支配し、世界島を支配する者が世界全体を支配する」のだ。

 米国政府、学界、シンクタンク、そして軍部内の国際関係および地戦略的(geo-strategic)思想家たちは全員、自分が認めるか認めないかに関わらず、マッキンダーの息子である。アジアで中国が勃興する時点、マッキンダーの亡霊に憑りつかれて21世紀の米国の単一覇権の維持を夢見る米国の地戦略思想家たちは-ヒラリー・クリントンは彼らの代弁人だ-、迫り来る地政学的変化を感知して、その対策として「アジアへの回帰」を提出した。ヒラリーが2011年に<フォーリーン・アフェアーズ>に寄稿した「米国の太平洋世紀」がそれである。世界島の主軸国家(中国)に回帰しようというものだ。ヒラリーは次のように言う。

 「世界政治の未来は、アジアで決定されるだろう…米国はまさにその中心にいる…したがって、次の10年間、米国政治の最も重要な課題は、アジア太平洋地域に対する実質的な投資を-外交、経済、戦略、その他諸々-増大させ、米国の国益を確保することである…今や、アジア太平洋地域は、世界政治の舵取り役となった…アジア太平洋地域への戦略的旋回は、米国の世界的指導力を確保・維持するためのグローバルな努力が追求される、当然の目標である」

 アジアへの回帰が現実的に意味するところは、米国の軍事力の60%をこの地域に配置しているということだ。中国の地域的影響力を遮断するための措置である。このために米国は、中国周辺の米軍基地を首飾り型に配置している。公海戦などの攻撃的な軍事テキストを採択して、(中国を除く)アジア諸国との二国間、あるいは多国間の軍事協力および合同軍事訓練を実施しており、先端武器の搬入など、アジア地域全体を再軍事化させている。米国はまた、「航海の自由」「合同軍事訓練」などを口実に、(中国の海上輸送路の中心である)南シナ海で、中国に対して敵対的で好戦的かつ挑発的な軍事的緊張を作り出している。のみならず、マスコミを動員して、中国を限りなく悪魔化するやり方で情報および文化戦争を仕掛けている。(南シナ海の領土紛争に関連して)フィリピンを前面に出して中国を国連海洋法協約(UNCLOS)に提訴させた法律戦争、中国に対する封鎖と孤立、さらにはTPPという通商協定を通じた中国との経済戦争も展開している。

隷属の渦
 アジア回帰の中心は、韓国と日本の軍事・政治同盟を通じて中国に挑戦し、中国を封鎖したり脅迫して、必要とあれば打倒することだ。このような米国の作戦が成功を収めるためには、日本は「不沈空母」、韓国は「橋頭保」または「前進ルート」とならなければならない。万一、中国と全面戦になれば、韓国のすべての兵士と装備、軍事基地は、米軍司令官に指揮されることになる。一方、日本は、最近、平和憲法を無力化させ、世界のどこでも米国を助けて攻撃的な軍事作戦を展開できるように、日米軍事協定を改定した。韓国と日本の間の情報共有協定、そして両国のミサイル防御システムの相互運用性の確保もまた、(中国に対する)攻撃的前進戦略の一部だ。ところが、最近まで「慰安婦」問題をめぐる韓日の対立が、両国の効率的な軍事協力を妨げる障害物だった。米国の二つの核心的なパートナーが互いに対話もしない関係だと、アジアへの効果な回帰は期待できない。今やその障害物が消えたことで、「アジア回帰」は計画通りに進行するだろう。

 (就任後、対話を拒否してきた)韓日両国の指導者が初めて対話をしたのは、2014年3月だった。まさにオバマ大統領が斡旋した席だった。家長である米国が、仲の悪い兄弟に和解せよと命令したのだ。今回の慰安婦合意は、その命令の最終的な結果だった。二人の兄弟は家長の言葉を聞いて、経済、軍事などすべての分野での協力を妨げていた障害物を除去したのだ。その間、米国務省は、韓日の和解のために、公開・非公開で多くの努力をしてきた。時には両国をたしなめもし、時には失敗もした。いずれにせよ、米国はその望みを達成した。しかし、下手をすると、今回の成功を後退させることになるかも知れない。

 自国の便宜と地政学的な国益だけを追求すれば、決して文明化された政策を立てることはできない。同様に、歴史的な記憶喪失と道徳的破綻、そして強大国に対する一方的隷属は、災厄へと進む近道だ。韓国の現代史は、今回の合意が、50年前の対米隷属である朴正煕政権が推し進めた韓日協定の延長であることを物語っている。韓日の国交を正常化した1965年の協定は、不平等かつ非民主的で、大多数の国民の支持を得られなかった合意だった。この協定は、流血とテロの中で辛うじて維持されていた。

 軍事独裁者の朴正煕は、日本の関東軍に服務した親日分子だった。1965年当時も、今と同様に、中国に対する恐怖と嫌悪が米国のアジア政策を支配していた。米国務省の政策企画委員会のウォルト・ロストーは、韓国に圧力をかけて日本と国交を回復させた。近代化論の信奉者だった彼は、自身の著書の<経済発展段階論:非共産主義者宣言>に出てくるように、韓国と日本、そして他のアジア諸国の間に、強力かつ協力的で相互結合した資本主義ブロックを形成することによって、アジア地域に勃興する共産主義に対抗する要塞にしようとした。共産主義イデオロギーの拡散に抵抗する権威主義的な民族主義者は、誰であっても米国の支援を受けた。これらの国々は、ロストーの理論によれば、輸出志向的産業化に力を注ぐことで、「経済の跳躍(take off)」を成し遂げ、資本主義の優越性を証明しようとした。これを通じて、社会主義、輸出代替産業化、自主的経済を指向した(第3世界の)独立運動の挑戦を退けようとした。

 安倍現総理の外祖父である岸信介は、日帝時代の商工相を務め、朴正煕の助言者でもあった。韓日基本条約の締結を支援するために駆り出された岸は、自分の過去の部下であった朴正煕を説得して、1965年6月に韓日国交正常化を成就させた。その協定は、韓国側のすべての賠償要求を否定していた。韓国国民の抗議と憤怒が爆発し、朴正煕は戒厳令でもって対応した。韓日基本条約を通過させるために、数多くの人々が拘束され、拷問された。今、彼の娘が、またもまったく同じように、暗鬱な歴史に直面することになるだろう。

 一方、安倍政権は、凶悪なやり方で慰安婦問題を迂回した後、軍国主義に向かって突っ走っている。若干の見かけの変化を除いては、日本が放棄したものはほとんどない。謝罪すらもなかったし、メンツを潰されてもいない。むしろ、河野談話にある謝罪の表現を若干後退させた。その対価として日本は、ついに韓国政府を沈黙させ、これによって将来的に韓国国民をも沈黙させるだろう。今や日本は、ファシズムの復活と軍事化のためのすべての準備を整えた。去る半世紀、日本を支配してきた平和憲法も無力化させた。安倍は、過去の大日本帝国の復活を夢見る極右的、民族主義的、軍国主義的イデオロギーを信奉している。5億ドルの予算をかけて日本の歴史の汚点を除去しようとしている。また、日本の政治家と外交官は、過去と現在、未来の大日本帝国の栄光という夢に挑戦状を突きつける人は、誰であっても脅迫し、袋叩きにする。

 アジア回帰の成否に関係なく、米国が日本の軍国主義というパンドラの箱を開けたことは、痛恨の極みである。中国との戦争の危機の高まりは、どのような謝罪も役に立たない狂気の現れであるからだ。しかし、歴史は私たちに、想像できないことが実際に起きたとしても、決して驚くなと言う。慰安婦問題がまさにそうではないか。



朴インギュ:ソウル大学を卒業後、京郷新聞でワシントン特派員、国際部次長を経て、2001年にプレシアンを創刊。編集局長を経て2003年に代表理事に就任し、2013年にプレシアンが協同組合に転換すると理事長になった。南北関係および国際情勢に関する専門知識をもとに連載を続けている。」

http://east-asian-peace.hatenablog.com/entry/2016/01/04/125624

「安倍政治は米国の対日提言の“完コピ”

2016-01-04 15:57:17 |  北米
「山本太郎が追及を広めた「安倍政治は米国の対日提言の“完コピ”」
2015.10.26  <山本太郎氏インタビュー>

 安保法制に関連した一連の参議院採択では、「ひとり牛歩」や「お焼香パフォーマンス」を行い物議を醸した参議院議員の山本太郎氏。日本は今後、どういう選択をするべきか伺った。

――米国追従の根拠となる、「アーミテージ・ナイ報告」について、追及を広めたのは山本議員だとの話があります。

山本:8月19日の安特委で「安倍政権の政策は、アーミテージ・ナイ報告の完全コピーではないか」と質問しました。その約1か月前に玉城デニー幹事長(沖縄3区)から「機会があったら質問したかった」と聞いたのがきっかけです。報告を改めて読んだら「(米国の要求の)完全コピーだ」「ひどいな」とびっくりしました。安保法制だけでなく、原発再稼働からTPP、特定秘密保護法、武器輸出三原則に至るまで見事に一致していたからです。経団連などアメリカの大企業側に立っている人たちにとって、ここに列挙された政策が必要ということがよくわかりました。

山本太郎
参議院会館で取材陣に対し、アーミテージ・ナイリポートの内容について熱弁をふるう山本太郎氏
――国会審議で野党議員が「武器弾薬の輸送」についての中身を詰めていくと、銃弾や砲弾や手榴弾、果てはミサイルや核兵器まで条文上は輸送可能になっていることが明らかになりました。

山本:それで「誰が望んだのか」と追及されて、去年7月に集団的自衛権行使容認の閣議決定で憲法解釈を変えたのも、今回の安保法制が作られていくのも「『日米ガイドラインの改定』でアメリカから求められたことが発端だった」と政府は認めた。「米軍のニーズ」と抜け抜けと言うこと自体、安倍政権はおかしくなっている。この国は誰のものなのか。

 今回の安保法制でも、安倍総理は米国議会で夏までの成立を約束しました。日本国内で言っていないことをアメリカに渡ってから宣言することが多い。麻生財務大臣が「日本の水道を民営化する」と’13年4月に宣言したのも、日本国内ではなく米国のCSISです。「おまえ、何さまだ」「おいおい誰が『国民の財産を勝手に民営化していい』と言ったのか」とツッコみたくなりましたが、「ここで発言したら実行に移すしかない」というように見えます。「宣言させられる」と言ったほうがいいかもしれません。結果、米国の対日要望を次々と受け入れている。

――日本は今後、どういう選択をするべきだと思いますか。

山本:米軍の準機関紙『スターズ・アンド・ストライプス(星条旗新聞)』は5月13日付で「アメリカの防衛予算は、すでに日本の自衛隊を当てにしている。’16年のアメリカ防衛予算は新法案可決が前提で、4万人の米軍兵員を削減、防衛予算も減らす方向」と書いてありました。米国の権威ある外交政策研究季刊誌『フォーリン・ポリシー』(7月16日付)も「日本の軍事面での役割が拡大、日本政府が多くの最新の装置を買うことは、ペンタゴンとアメリカの防衛産業にとって良いニュース」とあり、日本政府の購入予定兵器と社名を列挙していました。米国側が国防予算削減でカネがかからない上に、自国の国防産業の金儲けになるメリットを淡々と語っているのに比べ、日本側は悪夢の近未来図をひた隠しにしているのです。

――今回の法案成立で、PKO活動における「駆け付け警護」が可能になりました。

山本:イラクに派遣された自衛隊員のうち、(退職者を除く)自衛隊員の自殺者は合計56人。一方、アメリカの退役軍人省は’10年度予算としてメンタルヘルス対策費45億6000万ドルを組んでいます。これほどの予算が日本でも必要になることを安倍政権は考えているのか。予算がつけば、他の社会保障費が削られるのは必至。日本は結局、戦争国家になって財政破綻することになりかねないのです。

【山本太郎氏】
’74年生まれ。俳優を経て’13年に参議院議員に。現在、「生活の党と山本太郎となかまたち」に所属

 安保法制の政府案を「違憲」と断言した3人の憲法学者の一人、小林節・慶應義塾大学名誉教授は、今回の法案成立を「米軍の二軍として自衛隊を海外派遣するもの」「“戦費破産”を招きかねない」と警告。

「憲法守れ」と多くの人が参加した国会前デモ
「憲法守れ」と多くの人が参加した国会前デモ
「憲法9条2項で日本は『交戦権を持たない』と定めている。日本には専守防衛を除いて、外国に出かけて戦争をする法的資格はありません。同盟国が戦争に巻き込まれた場合に助ける『集団的自衛権』の行使は、日本はできないことになっていたのです。

 安倍首相が官房副長官だった10年以上前のことです。飛行機内で彼と乗り合わせ、私は『憲法改正をしないで集団的自衛権行使・自衛隊の海外派兵はできるのか』という財界からの質問に答えるための資料を開いていて、彼が非常に関心を示しました。そこで私は『憲法を改正しないと無理です。憲法上(戦力にはあたらない)“必要最小限”の自衛権行使を認められていますが、海外派兵はそれを超えている。派兵が“必要”だと拡大解釈をしても“必要最小限”で歯止めがかかるから無理です』とレクチャーしました。

 それなのに安倍首相は改憲をせず“解釈改憲”で『安全保障環境の変化』を理由に海外派兵可能な法案を強行採決しました。『必要』も『最小限』の部分も拡大させたのです」

 今回の安保法制によって「日本の自衛隊が米軍の二軍のような存在になる」と小林教授は指摘する。

「米国の意向を受けた首相の一存で、自衛隊がホルムズ海峡をはじめ地球の裏側にまで派兵される。

 自衛隊が米軍と一緒に行動することは、イスラム教徒にとっては“敵対宣言”にも等しい。テロが起きたニューヨークやロンドン、パリと同じように、東京や大阪、名古屋へのテロの脅威が増すでしょう」

小林節・慶應義塾大学名誉教授
「憲法改正を言わずして、解釈上の改憲が進んでしまう」と小林教授は警告する
 この法案は米国の都合ばかりを優先し、日本にとって何のメリットもないと小林教授は強調する。

「第二次世界大戦後、米国は『世界の警察』と称して高額の戦費を使い、世界に展開していきました。その結果、米国は今や“戦費破産”状態にあります。そんな米国の戦争の一部を受け持て!というのが安保法制の本質なのです。日本にとっては、莫大な税金が使われるだけで何のメリットもない。

 安倍政権は当初、憲法改正による自衛隊の派兵を目指していました。しかし、そのためには国民の大きな不安があり、手続きもたいへんです。そこで安倍政権は憲法改正よりも“解釈改憲”で自衛隊の『米軍後方支援』の内容を広げていくという道を選んだのでしょう。今後も我々が注視していかなければ、知らず知らずのうちに憲法が形骸化していく事態を招く恐れがあります」(同)」

http://nikkan-spa.jp/955586