白夜の炎

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難民問題はもやは欧州だけの問題ではない/P.サザーランド・国連事務総長代行

2016-01-24 20:06:13 | 国際
「地中海の移民問題は、2つの重要な教訓をもたらした。第1に、欧州および国際社会は、立場の弱い移住者を保護する十分なシステムを有していない。第2に、そうしたシステムの欠如に際して、ポピュリスト指導者が民衆の恐怖に付け入り、70年を費やして作り上げられたリベラルで寛容な社会を弱体化させてしまうだろうということだ。

このため、今年は、欧州及び世界的なレベルでの精力的な活動が求められる。9月に国連の潘基文事務総長は、難民や立場の弱い移住者を保護する公平なグローバル体制の構築に向けた特別会合を招集する予定だが、各国には実効的かつ永続的なコミットメントを整えるよう期待したい。

昨年はこうしたコミットメントが非常に欠けていた。国際社会は約400万人のシリア難民を受け入れた隣国のトルコ、レバノン、ヨルダンに100億ユーロ(約1兆3000億円)程度の支援をしさえすれば、これら3カ国が難民への食料や住居、教育を担い、欧州への流入を減らすことができたはずだった。しかし、そうした支援をしなかった結果、ドイツ1国だけで今後数年にわたり、年間210億ユーロものコストが必要になったのだ。

昨年だけで4000人が落命

しかし、この危機がもたらした人的・政治的なコストに比べれば、資金面での話などまったくかすんでしまう。昨年だけで100万人以上が命懸けで地中海を渡り、約4000人が命を落とした。生き延びた人々も欧州の多くで入国を拒否された。

冷笑的な政治的指導者たちは、移住者が経験したうそ偽りのない体験を無視するか、それらを歪曲させてしまう醜悪なナショナリストのビジョンを掲げることで、大衆の不安な思いに容赦なく付け込んでいる。

過激派勢力は、いくつかの欧州の国々で政権をほとんど掌握するに至っている。ハンガリーとポーランドでは、反移民を掲げる政党が権力の座にあり、主流政党が反移民政策を取らざるをえなくなっている。

難民の対応に当たる欧州連合(EU)のプログラムは、たった190人を「移住させる」ことしかできていない。EUは愛国主義に過ぎ、そして無能であるように見える。

安全かつ合法的に難民が移住する手段の創出が最優先事項である。EUは入国を許可する移住者の人数について、もっと寛大になるべきであり、彼らの入国を手助けするための組織立った手段を講じるべきだ。

強固なグローバル体制構築を

また、国際社会は難民とその他の立場の弱い移住者を保護するための強固なグローバル体制を構築すべきだ。

先進国はその手段が再定住の支援であれ、人道的ビザ、学生ビザ、就労ビザなどの発給であれ、先進国で年間100万人弱の難民を受け入れられる合意に達すべきである。カナダ1国だけでも、5万人のシリア難民を今年再定住させると述べているが、この目標が達成可能なのは明らかだ。

同時に、国際社会もトルコ、ケニア、レバノン、ヨルダンなどの主要な受け入れ国における難民の地域統合を支援しなければならない。

移住者を保護するシステムを構築するために、気候変動のための対策と同じような国際的な行動を16年に起こさなければならない。2000万人の難民と、立場の弱い数百万人の移住者の生死を分ける問題であり、全世界の民主主義社会の健全さを問う深刻な試練でもあるのだ。」

http://toyokeizai.net/articles/-/101256

移民だけが“ヘル朝鮮”の脱出口に見える理由/ハンギョレより

2016-01-24 16:14:34 | 政治
 以下の韓国の状況は韓国だけのことではなく、日本にも、特に日本の若者によく当てはまることだと思います。いかがでしょうか。

「朴露子(パクノジャ)の韓国、内と外

イラストレーション キム・デジュン //ハンギョレ新聞社

 外国へ移住するという若者たちと深層的対話をしてみれば、彼らにとって北欧ないしは欧米地域の相対的高賃金や高福祉が移民欲求をかきたてたとばかりは言えないことが知れる。 彼らの移民志望動機は、第一が民主化の失敗であり、第二は朴槿恵(パククネ)政権の“労働との戦争”だ。

 ところが移民しようが資本主義世界の一般的問題である搾取や疎外、差別などを避けられるわけではない。 結局“労働者”としての自覚を持って、国内でも労働者が人間らしく生きられる世の中を作るために共に闘うことこそがより良い方法ではないかと思う。

 私は今年でノルウェーに来て16年になる。 その間全く変わらないことが一つある。 この16年間、私には多いときは週に数件ずつ、少ない時でも月に数件は「北欧にどうにかして移民できないだろうか」のような類の問い合わせが韓国から届いている。 移民問題と何の関係もない一介の教員労働者である私にそのような問い合わせが来るのは、それだけ韓国に北欧との接点が少なくて、関連する専門家が少ないためだと思う。 最近になってそのような問い合わせが急速に増えたことも確かだ。 それだけ輸出と不動産市場、マルチ商法に依存する韓国経済が、最近大きな危機を予感して多くの人が“脱南”(?)を考え始めたのではないかと考えられる。 電子メールでの問い合わせだけでなく、韓国の青年、学生たちと対話をするたびにいつもリフレインのように「ヨーロッパのようなところに移民して暮らしたい」という言葉が聞こえてくる。 青年たちのこの“脱南ラッシュ”(?)をどのように理解すべきだろうか?

 私は北欧移民とは何の職業的関係もないと言ったが、“移民”問題それ自体は私にとっては“自分の問題”でもある。 私自身が一種の移住移民者だからだ。 初めはソ連の廃虚から韓国に行き、それから韓国のある私立大学で3年間非正規教員として仕事をした後にノルウェーに就職移民に行ったからだ。 私の場合、移民の動機を説明するのは極めて簡単だ。 最初の移民は単純にひもじかったからだった。 1990年代中盤のモスクワでは、特に家賃を払って住宅を借りなければならなかった私のような場合には、一つの大学で契約専任講師として韓国語を教えると同時に、別の三つの大学で時間講師として講義をしても、とうてい飢えを凌ぐことはできなかったために、非正規教員(正確には3年契約の講義専任講師)の賃金で一応生活できたソウルに行ったのだ。 二回目の移民は契約期間が満了したので行ったのだが、その他に自分は基本的に外部者であり韓国学界の構成員にはなれないことを実感したことが大きな動機だった。 同じ“胎生的韓国人”でさえも一部の専攻では特定大学の特定学科を卒業していなければ生涯を“庶子”として生きることを余儀なくされる状況なのに、貧困国出身の外部者に韓国学界への編入が容易なはずがあろうか? ところで、私に向って「どうしても外国へ移住したい」意向を明らかにした韓国の青年の大多数は、ひもじくて言っているわけではなかった。 高卒の青年もいたが、相当数は“名門大”出身であり、少数だが彼らの中にはすでに正社員として就職できた幸運児もいた。 差別にさらされがちなアジア系外部者として、慣れない北欧に行って生涯をそこで社会編入問題と取り組む覚悟をしてまでも、経済大国である大韓民国の若く賢い人材が移民熱を燃やす理由は果たして何なのか?

 もちろん、一義的には多くの若者が資本主義世界の労働者として当然にも自分たちの労働をより有利な条件で売ろうと思うことから移民を望む。 韓国の保守マスコミは異口同音に「高費用低効率」と恨んでいるが、統計的に見れば韓国は高賃金社会では全くない。 勤労者平均年俸(約3千万ウォン)は日本の約80%、ドイツやフランスの60%、アメリカやカナダの50%に過ぎない。 そのうえ高学歴者の就職競争は一層激しく、労働時間ははるかに長く、労働強度もはるかに高く、老齢年金や無償医療・教育サービスとして提供される社会的賃金も質的にも量的にも北欧のそれとは比較にならない。 簡単に言えば、“社会貴族”と言われるごく少数の職群・職種(“名門大”の専任教授、医師、高級公務員や財閥の役員など)以外の場合には“より良い社会”に行ける労働者であれば韓国で仕事をすることは“損害”と言える。 資本家にはるかに多くの時間とエネルギーを奪われていながら、得られる報酬ははるかに少ないためだ。 “ヘル(地獄)朝鮮”の別名は“企業天国労働地獄”なので、まだ“脱出”可能性が多少なりともある若い労働者、ないしは労働者候補生がそんな地獄を抜け出したいと思うのは当然のことではないだろうか? それでも疑問は残る。 特に住宅の賃貸ないし購入費用と子供の育児費用まで考慮するならば、韓国は多くの韓国人にとって薄給の国であるが、果たして賃金だけで疎外と差別に露出しかねない慣れない地域に行って、残った一生を生きる決心がつくだろうか? 1950~70年代とは違い韓国の労働者の賃金は飢餓賃金とまでは言えないのに。

 しかし、外国に移住したいという若者たちと深層的対話をしてみれば、彼らにとって北欧ないし欧米地域の相対的高賃金や高福祉が移民欲求を呼び起こしたとばかりは言えないことを簡単に知ることが出来る。 彼らが言う移民志望動機は、大きく二つに分けられる。

 第一は、“民主化の失敗”と括れる巨大な問題群だ。 もちろん私と話し合った若者たちは、韓国にまだ一部の自由民主主義的制度が残存すること自体を否定はしなかった。 たとえ現在の大統領と執権官僚層が熱心に破壊してはいるものの、まだ制限的ではあっても反対の声を上げて政治・市民団体が現執権者らと合法的闘争を行うことができる。 ところがこのような可能性もますます少なくなっている上に、政治ではなく社会が全く民主化されなくて、むしろ最近では一層再び権威主義化しているということが若者たちを最も苦しめている。 一昨年、“ナッツリターン”事件が話題になったが、事実その事件が外国の空港で、複数の目撃者の前で起きたのでそれなりに知らされて司法処理につながったのだろう、このような“企業における強者の横暴”は韓国企業では常習的であり、減るどころかかえって増えている印象を与える。 会社の中での上司と部下の関係や、大型マートなどサービス業種での顧客と感情労働者間の関係は、民主化・平等化されるどころか一層序列化・暴力化されている。 公開的に維新時期を懐かしむ朴槿恵勢力による国政掌握が韓国政治の後退・再権威主義化の象徴になったが、同じような後退は社会の随所で進行している。 韓国で生きることを“運命”として受け入れた過去の世代の場合には、権威主義的社会関係の強者・上司の暴言や暴力を“妻子のため”になんとか堪えもした。 ところが海外研修が普遍化して、一時は少数の専有物だった外国語駆使力も一般化されたおかげで、若い世代は民主・平等とは逆行している韓国の“ヘル”での人生をもはや宿命として受け入れようとはしない。 かつて多くの女性が無条件に「我慢が肝心」と自らに言い聞かせた家庭内暴力が、この頃では離婚請求理由になり離婚率急増の理由になるのと一脈通じる論理なのに、個人の尊厳と精神の健康を守るために外国に視線を転じる青年たちに果たして石を投げることができようか?

 第二は、朴槿恵政権が行っている“労働との戦争”を、若い労働者や将来労働者になる青年たちが韓国を脱出してでも避けようとしているということだ。 新自由主義は世界のどこでも労働者に残酷だが、朴槿恵時代の韓国ほどに労働者を構造的に絞り取り組織的に無力化させる社会は世界のどこにも見られないほどだ。 例えば、使用者が職場内の恐怖支配に利用することが明らかな韓国雇用労働部の最近出した「低成果者解雇指針」のような文書をノルウェーの労働者が読むならば、19世紀末の搾取工場の話と誤認することが明らかだ。 全国単位の労働者組織の代表を数千名の警察官を動員し逮捕する国家を、果たして韓国以外に挙げられるだろうか? こんなところで労働者として生きることを、運命として受け入れろと言うほうが無理だろう。


朴露子(パクノジャ)ノルウェーオスロ大教授・韓国学 //ハンギョレ新聞社
 “ヘル朝鮮”から出て行きたい気持ちはよく分かる。 しかし、皆が皆できるわけでもなく、出たとしても程度の差こそあれ資本主義世界の一般的問題である搾取や疎外、差別などは避けられないだろう。 結局“労働者”としての自覚を持って、韓国でも労働者が人間らしく生きられる世の中を作るため共に闘争することこそがより良い方法ではないかと思う。

朴露子(パクノジャ)ノルウェーオスロ大教授・韓国学

韓国語原文入力:2016-01-19 21:37
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/726900.html 訳J.S(3770字)」

http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/23142.html

中国第4世代原発、世界に向け一歩前進 2016年 1月21日

2016-01-24 15:31:47 | 中東
「 中国核工業建設集団公司が発表した最新の情報によると、同社の王寿君董事長(会長)とサウジアラビア「原子力・再生可能エネルギー都市」の代表者は、習近平国家主席のサウジアラビア訪問中に「サウジアラビア高温ガス冷却炉プロジェクトの業務提携覚書」に調印した。これは両国が「1ベルト、1ロード」(シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロード)を実行に移すための重要な措置であり、中国の第4世代原発技術・高温ガス冷却炉の海外進出実現の重大な進展となった。科技日報が伝えた。

 同社によると、高温ガス冷却炉は中国が完全に独自の知的財産権を持つ第4世代先進原発技術であり、固有安全性、さまざまな用途、モジュール化建造といった特長とメリットを持つ。いかなる状況下でも、メルトダウンや大量の放射性物質の漏えいといった事故が生じることはなく、人類の健康や環境に影響をおよぼすこともない。

 同社は国内の福建省、広東省、江西省、湖南省などの各地で、60万kW高温ガス冷却炉の準備作業を順調に進めているほか、海外のサウジアラビア、アラブ首長国連邦のドバイ、南アフリカなどの国と地域で、高温ガス冷却炉の業務提携に関する覚書に調印している。今回のサウジアラビア「原子力・再生可能エネルギー都市」との提携の実質的な進展により、高温ガス冷却炉の固有安全性を確保するほか、その多用途性で現地の電力供給、海水淡水化、石油化学工業の需要を満たすことができる。その柔軟なモジュール化設計により、異なる電力網の需要に適応できる。特にサウジアラビアなど「1ベルト、1ロード」沿線国の電力網に適しており、関連産業をけん引することができる。」

http://www.spc.jst.go.jp/news/160103/topic_4_04.html

漢代の皇帝陵から世界最古の茶葉

2016-01-24 15:29:56 | アジア
「漢代の皇帝陵から世界最古の茶葉

2016年01月21日
 中国・陝西省にある前漢の景帝(在位:紀元前156年~同141年)の墓、陽陵の副葬品の中にあった茶葉が現存する世界最古のものであることがこのほど確認された。この成果は英科学専門誌「ネイチャー」系の電子科学誌「Scientific Reports」で発表された。

 チャイナ・ウオッチが21日、西安発新華社=共同電で報じた。陜西省考古研究院の専門家の楊武站氏によると、同省考古研究院が中国科学院に調査を依頼した結果、判明したという。陽陵の封土の東側にある外蔵坑からはこれまでに、陶製の動物俑のほか、腐食した木箱に入った多数の小さな銅印、イネ、アワの種子などが見つかっている。このため、陜西省考古研究院は2008年末、腐食・炭化し、肉眼での識別が困難になった有機物を中国科学院に渡し、分析を依頼した。

 中国科学院はこれを受け、質量分析法で木箱の中の有機物の表面の絨毛の間にある小さな結晶を調べた。すると、これらが茶葉であり、すべて新芽で、最高級品だったと判明したという。」

http://www.spc.jst.go.jp/spcdaily/201601.html_71192263.html#13

110年前の行商組織に両班・日本商人まで加入/朝鮮日報より

2016-01-24 15:22:42 | 歴史
「 20世紀初め、「チャンドルベンイ」と呼ばれる褓負商(ほふしょう、行商人)の組織に、中国・日本の商人も加入していたことが確認された。韓国学中央研究院(韓中研)のチョ・ヨンジュン、シム・ジェウ、チョン・ギョンモク教授と韓神大学のヤン・ソンア研究員が共同で出版した『チャンドルベンイの組織と記録』(韓中研出版部)で明らかにされた研究結果だ。研究チームは、忠清南道礼山・唐津一帯の褓負商組織「礼徳商務社」の組織員リストと規定をハングルに翻訳し、解説を加えた。礼徳商務社は、1851年から6・25戦争(朝鮮戦争)直後の1954年にかけて、およそ110件の資料を残した。

 今回出版された『チャンドルベンイの組織と記録』で注目されるのは、1906年から07年の組織員リストだ。このリストには、中国商人の華商・王文魁と日本人商人の上野為吉が、礼徳商務社の幹部に当たる「副接長」として登場する。外国商人と韓国商人については対立関係ばかりで見がちだが、協力・協調も同時進行していたというわけだ。チョ・ヨンジュン教授は「外国商人まで参加することで、組織の性格も、当初の『行商人の同業組合』から『地域の商人連合』あるいは『地域共同体』へと拡大・変化したと見ることができる」と語った。

 1860年代以降は両班(ヤンバン=朝鮮王朝時代の貴族階級)や僧侶も褓負商の組織に参加した、という事実も興味深い。平安道竜川郡守を務めた鄭俊鎔(チョン・ジュンヨン)は、1905年から06年にかけて、礼徳商務社のリーダーに当たる「領位」を務めていた。五衛将を務めた元官僚も参加していた。1889-90年のリストには、忠清南道唐津にある霊塔寺の僧侶の名前も載っている。1898年にソウルで褓負商を中心に「皇国協会」が結成されたことから考えると、当時の中央・地方権力が、商人を動員するため積極的に抱き込みに乗り出した、という解釈も可能だ。チョ教授は「純粋な商人組織というよりも、商業を名目としつつ、同時に政治を含むさまざまな目的で組織を運営した可能性がある」と語った。

 礼徳商務社は、6・25戦争直後の1954年の時点でも、およそ50人の組織員を確保するほどしっかりした組織を維持していた。褓負商組織が、植民地時代や光復(日本の植民地支配からの解放)、戦争を経ながらも命脈を保つことができたのは、相互扶助や自律など、厳格な規律を強調していたからだ。1850-60年代の組織規律には「市場で押し売りした者、むち打ち30発」「同僚に手荒なことをした者、むち打ち30発」「弔問をしない者、むち打ち15発、罰金5銭」などといった内容が盛り込まれている。また1883年の規律には、多数決による接長選出という「民主的選挙手続き」も含まれている。

 チョ教授は「褓負商が1970-80年代まで五日市などで命脈を保つことができた原動力を、組織規律からも読み取ることができる」と語った。

キム・ソンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版」

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/01/23/2016012300449.html

中国爆買いの灯は消えるのか/ロイターより

2016-01-24 15:11:11 | 経済
「[上海 20日 ロイター] - 世界経済の先行きにとって、さらに悪いニュースかもしれない。「爆買い」で昨年の経済成長を支える主役だった中国の消費者が、今年は支出を切り詰める可能性が高まっている。

外食の頻度を減らし、スマートフォンの機種交換を先送りし、衝動買いを減らしていくという。

世界第2位の経済大国である中国の政策当局にとっては、ただでさえ株式市場の動揺と賃金成長の伸び悩みに苦慮しているというのに、これもまた気を揉む材料だ。

中国経済は昨年、この四半世紀で最も低い経済成長率を記録したが、少なくとも政府が掲げた目標に近い成長率を維持できたのは消費需要のおかげだったと、アナリストは見ている。

エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの北京在勤アナリスト、トム・ラファティ氏は、「2015年に経済を救ったのは中国の消費者だ」と語る。「彼らの消費支出が、これまで中国経済のけん引役だった産業や投資の不振を相殺することに貢献した」と言う。

だが、今年も消費者が同じように動いてくれるという保証はない。

オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)が20日発表した調査によれば、中国の消費者信頼感は今月記録的な低さとなった。米調査会社チャイナ・ベージュ・ブックの調査では、第4・四半期の雇用成長・賃金成長は過去4年間で最低となっている。

これらの調査を裏付けるように、ロイターが上海で取材した消費者も、今後支出には気を配り、抑制していく可能性が高いと語っている。

<爆買い頻度も減少>

男性のZhouさんは、昨年ガールフレンドとともに外食で約7万元(約125万円)、衣類とアクセサリーに4万元を使ったという。だが、今年は経済状況に鑑みて約3分の1近く支出を切り詰める予定だ。「自炊を増やす。携帯電話などのエレクトロニクス製品の買い替え頻度も減らすかもしれない」と言う。

ある店舗でマグカップやベッド用のシーツを物色していた30歳の女性Zhengさんは、「物価上昇に収入が追いつかないようだ」と不安を口にする。「こういうものは必要ない。もう少し自制して、買い物にも頻繁に行かないようしなければ」と語った。

さらに厳しい打撃を受けるのは、中国で増大しつつある高齢者層かもしれない。医療費が可処分所得に食い込みつつあるからだ。

すでに退職した55歳の女性は、ロイターの取材に対し、自分のお金の大半は都市部の大気汚染対策用のエアフィルターに使わざるを得なかったと語る。「病気になって病院に行く必要が生じたときのために、貯金しておきたいのだけど」と言う。

中国国内に多数存在する小規模な小売店経営者は、彼ら自身も消費者だが、完全に国内需要に依存して生計を立てているだけに、厳しい状況に置かれている。

上海で携帯電話ショップを経営するDongさんは、昨年下半期に売上が急激に落ちたという。「奇妙な話で、理由は分からない。株式市場が暴落したからかもしれない。2016年はもっと悪くなると思う」と話す。

<逆風>

エコノミストは、今年、賃金が伸びず失業率が上昇すれば、消費者の支出は低下すると警告するが、そうなる可能性は高そうだ。

また、最近の人民元安によって中国で販売されている多くの輸入品価格にその影響が及んでおり、中国人の購買力が内外で低下することも考えられる。

「賃金上昇が緩やかになることで、今年は消費支出の伸びが抑えられると予想している。さらに、産業の不振が消費に及ぼす悪影響が強まるリスクも残っている」と、オックスフォード・エコノミクスのアジア経済担当責任者ルイス・クイジス氏(香港在勤)は分析する。

中国の国家統計局によれば、GDP成長に対する消費の貢献比率は、昨年15ポイント上昇して3分の2を超え、巨大な製造部門の減速を相殺することに貢献した。もっとも、そのうち民間消費ではなく政府支出によるものがどの程度あるのか、公式の内訳は発表されていない。

中国の内閣に相当する国務院は昨年11月、民間消費を加速させる試みとして、小売、医療、旅行やスポーツなど「ライフスタイル関連ビジネス」に対する融資提供において、金融機関がこれまで以上に多様な担保を受け入れることを奨励していくと発表した。

<強靱さの兆候も>

とはいえ、消費財の小売販売額は前年比で11%以上増大し4000億ドルを超え、オンラインショッピングサイトのタオバオでは、11月の販促イベント期間中、たった1時間で約40億ドルの売上高を稼いでいる。

こうした消費の強靱さを示す兆候は続いている。

ANZの消費者信頼感調査からは、「今こそ高額商品を購入すべき時期だ」と考える回答者が増えていることが分かる。昨年の新車販売台数は4.7%増と伸び悩んだが、中国自動車製造者協会によれば、今年は6%増が見込まれている。

それでも、上海の婦人服店の経営者は「この1年間、商売は不振だったし、上向きになるとは考えられない」と懸念する。「富裕層が高級品を買うとしても、貧困層は節約に走るだろう」と語った。

(Pete Sweeney記者)

(翻訳:エァクレーレン)」

http://jp.reuters.com/article/china-economy-consumers-idJPKCN0V200H?sp=true