白夜の炎

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京大・小出助教 - 反原発を貫いた人の発言

2011-04-11 19:32:37 | 原発



 「【特報】

“原子力村”推進一辺倒 反骨の学者、小出裕章・京大助教に聞く

2011年4月9日 

 依然、綱渡りの状況が続く東京電力福島第一原子力発電所の事故。その状況を悔しさや怒り、おそらくは敗北感も抱えつつ、注視している人がいる。京都大原子炉実験所の小出裕章助教(61)だ。

 原子炉の安全や放射能測定を研究してきた。学生時代に原発推進派から反原発派に立場を変え、その後、四十年間、原発の危険性を訴えてきた。小出助教に事故の現状や原発が推進された背景を聞いた。 (京都支局・芦原千晶)

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 「(東北大学で)学生時代を過ごした仙台、反原発運動をともに闘った女川、三陸には友人や知人がたくさんいるが、震災後、今も連絡が取れない人もいる」

 大阪府南部の熊取町にある京大の原子炉実験所。百本もの桜は満開になると見事だが、今年は一般公開を中止した。研究棟の部屋も薄暗い。小出助教(旧・助手)は「電気を無駄にしたくない」と断り、話し始めた。
 「(福島第一原発の事故で)予測される最悪の状態は、炉心全体や大半が溶け落ちるメルトダウンだ。今も溶融しているのは確実だが、一部にとどまってくれている」

 炉心とは燃料棒のウランが核分裂して燃える場所だ。原発の総発熱量の93%が核分裂によるが、地震発生直後、制御棒が入り、この反応は止まった。しかし、燃料棒の中にたまっていく核分裂生成物は、巨大な発熱体として残ったままだ。
 核分裂生成物は崩壊熱を発するため、この熱でも炉心溶融は起こる。事故後の三週間で崩壊熱は三十分の一程度には減ったが、その後は大きく減らないのだという。
 メルトダウンを防ぐには、発熱している炉心の冷却が何より大切だ。東京電力や国は大量の水を投入し続けてきた。

 「綱渡りだが、冷却効果はあり、大規模なメルトダウンの可能性は五分五分よりは低くなった。ただ一〇〇度以下にはなっておらず、冷却は不十分。できなくなれば、炉心溶融は進む」
 メルトダウンは旧ソ連・チェルノブイリ原発事故でも起きた。原子炉が爆発した後、残った部分がメルトダウンした。

 「福島では原子炉が壊れずに、メルトダウンが進む可能性がある。そうなると、高温の溶融物と下部の水が反応すれば水蒸気爆発が起き、桁違いの放射性物質が飛び出す。これが一番怖い」
 水蒸気爆発はこれまでの水素爆発よりはるかに大規模だ。炉心を囲む圧力容器も、その外の「最後のとりで」の格納容器も破壊するという。
 「水蒸気爆発が起こって炉心にある放射性物質の大部分が、ガスや微粒子になって空中に飛び散れば、汚染はチェルノブイリと同レベルだ」

 チェルノブイリでは三カ月後、二百~三百キロ離れた場所に猛烈な汚染地帯が見つかった。福島から同じ距離を想定すると、東京も入る。「もし、これが起きてしまえば手の打ちようがない」
 停止した核分裂反応が再開される「再臨界」の可能性はどうか。再臨界で生まれる放射性物質の有無について、東電は現在も調査中という。
 もし、再臨界すれば、さらなる発熱と核分裂生成物が生まれ、事故処理は格段に難しくなる。

 高濃度の汚染水が漏れ出て、海を汚している現状はどうだろうか。

 「被ばくはどんな微量でも危険。海に汚染水を捨て、拡散するから安心、安全だという国や専門家の見方は許せない。薄めることで危険性は減るが、逆に広まる。安心というなら規制せず、風評被害を防ぐために確かなデータを出すべきだ」

 汚染を調べるには、セシウムやヨウ素を大量に取り込む海藻を調べることが最も大切で、その後、貝、魚と影響が出るという。
「私なら真っ先に海藻を調べる。すでにデータはあるのでは」

 汚染は海だけではない。放射性物質を含んだ蒸気は少量ながらも、大気中に漏れ続けている。国は人体への影響について「ただちに影響が出る量ではない」としてきた。しかし、小出助教は「一度に一五〇ミリシーベルト以上の被ばくで起きる急性放射線障害ではないと言うべきだ」と憤る。微量の放射性物質であっても、被ばくの総量によって晩発性の障害、すなわち、がんは発症するからだ。
 広島や長崎の原爆被爆者の場合、数年後に白血病が発症し、さまざまながんが十年後から出た。チェルノブイリでは、数年後から子どもの甲状腺がんが確認された。

 大気中の汚染については、同僚の今中哲二助教(60)らが、先月末に三十キロ圏外の福島県飯館村で現地調査した。原子力安全委員会が避難の指標とする五〇ミリシーベルトを一カ月で超える地域があり、原発から同心円状の三十キロ圏内の避難設定が十分ではないことが分かった。
 「研究者が手弁当で放射線量を調べてから、国はようやく原発から三十キロ離れた地点の積算放射線量データを出した。すべての情報を知らせることが、パニックを防ぐ一番の力になるのだが」 

 危険な原発が、なぜこれまで推進されてきたのか。
小出助教は原子力利権に群がる産官学の“原子力村”の存在を指摘する。「これまで電力会社からみて、原発は造れば造るほどもうかる装置だった。経費を電気料金に上乗せでき、かつ市場がほぼ独占状態だったからだ。さらに大手電機メーカー、土建業者なども原発建設に群がった」
 大学の研究者らがこれにお墨付きを与えた。
 
「研究ポストと研究資金ほしさからだ。原子力分野の研究にはお金がいる。自分の専門と社会との関わりについて考えられない学者が多い」
 小出助教は学生時代、なぜ都会に原発を造らないのか疑問に思い、女川の原発反対闘争に触れ、推進派の立場を変えた。

 京大の助手として採用されてから三十年以上たつ。しかし、今中助教とともに准教授にさえ昇進していない。
 「私たちに共感してくれる若手研究者も何人かいたが、一緒にやろうとは誘えなかった。ぼくらの仲間に入ると、研究者として安穏とは暮らせなくなる。でも今は後悔している。私と今中さんがいなくなったら、原子力に異を唱える研究者はもう出てこないのでは」

 カネと同時に「原発推進は国の方針」という力も大きかった。だが、日本は唯一の被爆国で核アレルギーも強い。なぜ、推進されるのか。
 「核兵器を持つというより、その製造能力を維持するため、としか考えられない。原発を推進すれば、その技術と材料であるプルトニウムが手に入るのだから」

 今回の事故の教訓については、原発を即刻止めるべきだと強調する。
 「今回の事故は進行中で、どれだけ被害が広がるかは分からない。原発が生み出した電気の利益を全部投げ出しても足りないだろう。原発はそういうばかげた物だ」

<デスクメモ> 「東電は安全と言っていた」。避難を強いられた町長の憤りだ。その通りだ。だが、以前から危険をとなえる学者もいた。なぜ、東電を選んだのか。たぶん、国も安全と言ったから、多数派が賛成だったからだろう。「復興のため、国民はひとつに」という声が唱和される。「右へ倣え」は変わるのか。 (牧)

(* 記事のリード部分以外は電子版では読めない。全文は「日々坦々」(http://etc8.blog83.fc2.com/blog-entry-968.html)から。」

日本のエネルギー政策の基本―河野太郎のブログ

2011-04-11 19:14:44 | 原発

 http://www.taro.org/

 河野太郎のブログをみると日本の核エネルギー政策が完全に行き詰まり、何兆円というお金をどぶに捨て続けてきたこと、そして今もそれを続けようとしていることがよくわかります。

積立金を手放そうとしない東電

2011-04-11 18:35:51 | 原発



 「積立金3兆円!!「原子力村」天下り団体は今こそ、カネを吐き出せ

2011年04月11日10時00分
提供:ゲンダイネット

トップの理事長は元東電役員

 東電がこれから支払う巨額の損害賠償を捻出するために、「電気料金の値上げは必至」といわれるが、ちょっと待って欲しい。“原子力村”の天下り団体が、使用済み核燃料の再処理に備えて、3兆円を超える積立金を持っているのだ。このうちの4割は東京電力の拠出金。これを損害賠償に使うべきだ。

 団体名は「公益財団法人 原子力環境整備促進・資金管理センター」。使用済み核燃料をリサイクルして使う「核燃料サイクル事業」の推進を前提に、法律にのっとって、放射性廃棄物の再処理と最終処分のための積立金を電力会社から集め、管理している。

 10人いる評議員のうち8人が電力会社役員や原発関連団体理事長といった原子力村の出身者。12人の役員には経産官僚OBの名前もある。トップの常勤理事長は、元東電執行役員(原子力・立地本部副本部長)だ。

 団体が管理する資金(10年度末運用残高見込み)は、再処理等積立金が2兆4416億円、最終処分積立金が8374億円。核燃料の再処理で作るリサイクル燃料(MOX燃料)には危険なプルトニウムが含まれる。事故を起こした福島第1原発の中でも、3号機はMOX燃料を使っていた。だからなのか、狂ったように水をかけ続けたのは記憶に生々しい。

 以前から核燃料の再処理に反対してきた自民党の河野太郎衆院議員は、ブログでこの団体と積立金を取り上げて、こう書いている。

「これだけの事故を引き起こして、まだ新規立地を進めるのか。再処理を進めるのか。絵空事を言う前にきちんと損害賠償を行わせるべきだ」

 できもしない再処理のために巨額の資金を積み立てておく必要はないだろう。

(日刊ゲンダイ2011年4月8日掲載)」

東電副社長はエネルギー庁長官の天下り指定ポスト

2011-04-11 18:26:24 | 原発

 東電の副社長はエネルギー庁長官の天下りポスト。

 ふざけた話だが、氷山のホンの一角だろう。

 同様の情報大歓迎です。

 皆でどんどん回していきましょう。

 調査した塩川議員ご苦労様です。


 他の国会議員も調査権をばしばし行使して調べなさい。


 「http://www.asyura2.com/11/genpatu8/index.html
 阿修羅さんのサイト

東電副社長はエネ庁幹部の指定席

塩川議員調べ 天下り禁止が必要

 東日本大震災にともなう東京電力福島第1原発の未曽有の事故で、原発の安全のための規制機関を原発推進の官庁から切り離すことの重要性が浮き彫りになっています。こうしたなか、日本共産党の塩川鉄也衆院議員の調べで、東電副社長が原発推進官庁である経済産業省(旧通商産業省)幹部の「天下り」指定席になっていることがわかりました。

 東電には、ことし1月1日付で、前資源エネルギー庁長官の石田徹氏が顧問として「天下り」したばかり。同氏の前に東電に天下りした旧通産省官僚は4人にのぼり、1962年からほぼ切れ目なく、東電に役員として在籍していたことになります。(表参照)

 1957年6月、通産事務次官を退官した石原武夫氏は、古河電工(取締役、常務)を経て、62年5月に東電取締役に就任し、常務、副社長、常任監査役を歴任しました。

 資源エネルギー庁長官、通産審議官などを務めた増田實氏は、東京銀行顧問を経て、80年11月に東電顧問に就任。常務、副社長を務めました。

 資源エネルギー庁次長、経企庁審議官などを務めた川崎弘氏は、日本輸出入銀行理事を経て、90年12月に東電顧問に就任。その後、常務、副社長となりました。

 同じく、資源エネルギー庁次長、通産省基礎産業局長、日本輸出入銀行理事などを歴任した白川進氏も、増田、川崎両氏と同様、99年10月、顧問として入社後、副社長まで務めました。

 天下りは、2007年の国家公務員法改悪までは、「原則禁止」でしたが、禁止期間は2年間だけ。石田氏以前の天下り官僚が、いずれも退官後、銀行顧問など他の企業ですごした後に天下りしているように「抜け道」がありました。

 国公法改悪で、「原則禁止」から「あっせん禁止」となりました。昨年8月に経産省を退職した石田氏は、わずか4カ月後の東電顧問就任。民主党・菅直人内閣は、官庁側の「あっせん」がなかったから「天下り」に該当しないといいますが、天下りそのものです。

 塩川議員は、「『指定席』ともいえる経産省と電力会社との癒着が、今回の福島原発事故の背景にあったことは明らか。今回の事故を踏まえれば、『あっせん』があったかどうかではなく、高級官僚が所管企業に再就職すること自体が天下りであり、明確に禁止するべきです」と話しています。」

反原発のデモが拡大しているのに大手のメディアが黙殺しています。

2011-04-11 18:19:06 | 原発
 大手メディアが反原発デモを黙殺するので、そのことを報じているブログを以下に紹介します。

 http://blog.zaq.ne.jp/spisin/

 ソウル・ヨガ というこのブログは原発の労働問題についても大変勉強になるブログです。

 イダ様。ありがとうございます。

 「反原発デモを報道しないマスコミ

 反原発の「素人の乱」高円寺デモの参加人数が1万人を超えたそうです。15000人と発表。芝公園も1000人以上集まったそうです。


 すごいです。なのにマスメディア(特にテレビ)ではほとんど取り上げられません。

 それは意図的なものだと思います。反原発派、今や、「反東電」の意味を持つので、東電と一体になってきたメスメディアは東電批判をしない、見せないのだと思います。

 来ていたメディアは海外メディアがほとんどで、日本のテレビは日本テレビが少し報道したようです。

以下、松原さんから回ってきた情報です。

++++++++++++++++++++

若者パワーがついに炸裂!~反原発高円寺デモに7000人
>
 4月10日午後、「浜岡原発すぐ止めて!東京集会&デモ」(芝公園・約1000名)に 続いて、高円寺では「素人の乱」の呼びかけで反原発デモが行われた。駅近くの 小さな公園には続々と人が詰めかけ、あっというまにぎっしり埋まり、歩道まで あふれかえった。

 それでも人の波は止まらず7000人に達した。参加者の9割近く が20~30歳代の若者。それも「デモは初めて。ネットで知った」という人ばかり で、「もう原発はいらない、何か表現しなければ」という必至の思いにあふれて いた。

 思い思いのプラカードや飾り、衣装、そして強烈な音楽で集会デモはヒー トアップした。多数の若者が一気に登場した高円寺デモは、日本の社会運動でも 画期的な出来事。

 素人の乱の松本哉さんは「何かが始まった。いや、始めなけれ ば日本は滅びる」と記者に語った。また、ユースト中継も1万人以上が視聴し た。(M)


映像
http://www.youtube.com/watch?v=4x24jPd9xjo&feature=relatedhttp://www.youtube.com/watch?v=xoeX0GOb3Ig

☆都内で反原発デモ 札幌や富山などでも
(日本テレビ動画ニュース)

http://www.news24.jp/articles/2011/04/10/07180563.htmlhttp://twitter.com/#!/morita0/statuses/56947499310661632

☆写真速報 : 若者パワーが炸裂!反原発高円寺デモに7000人
(レイバーネット日本)

http://www.labornetjp.org/news/2011/0410shasin

http://www.asyura2.com/11/genpatu8/msg/912.html



中国に学ぶべき時 もはやアジアの先進国ではない

2011-04-11 14:38:29 | 原発


 「日本と中国、震災への対応から見えた「差」=シンガポール華字紙

サーチナ 4月11日(月)13時6分配信

 シンガポールの華字紙・聯合早報網は10日、中国と日本でほぼ同時に地震が発生したことは、両国の制度を比較する思わぬ機会となったと報じた。

 3月10日、雲南省盈江県でM(マグニチュード)5.8の地震が発生した。これ以前にも大小の地震が発生していた盈江県ではすでに大きな被害を受けていた。中国の規定によると、地震の規模がM5.0以上でなければ、国家の災害救援対応措置は発動されない。しかし、盈江県民政局局長は自ら北京に赴き、中国中央民政局と交渉し、900万元(約1億1286万円)の救援資金を確保していた。

 地震発生当時は北京で「両会」(全国人民代表大会・中国人民政治協商会議)が開かれていた。雲南省の全人代代表は盈江県に代表される開発の遅れた地域に対しては、国家の災害対応基準をM5からM4.5に引き下げて対応すべきだと提案し、中国は盈江県のM3以上の地震に対する措置と同様の救済措置を取った。震災当日午後、雲南省政府は2000万元(約2億5080万円)の救援資金を支給し、ほぼ同時にタイ族チンポー族自治州政府は中央政府に対して300万元(約3762万円)の救援資金を要請した。

 地震発生1時間後には中央・雲南・州各政府の官僚が現地入りして指揮に当たり、2時間後には軍・武装警察・消防泰昇・医療チームが被災地に到着。北京の両会に参加していた雲南省党書記白恩培氏は、当日夜には現地入りして救援の指揮にあたった。さらに中央政府は2日目に5500万元(約6億8970万円)の救援資金を支給している。

 雲南省での地震発生から1日後、日本で大震災が発生した。記事は、「この未曽有(みぞう)の大災害に対し、日本人の冷静さと秩序ある姿勢は世界を感動させたが、日本の被災者救済神話はたちまち崩れ去った」と指摘、混乱する指揮系統、遅れた救援活動、透明性を大きく欠く情報を指摘したうえで、「首相は震災後3週間たって初めて被災地を視察するありさまだ」と報じた。

 さらに記事は、「中国政府のとった措置は、効率的かつ透明で、臨機応変かつ責任を持ったものだと言える」と評価する一方、震災を通じて中国は日本にGDPだけでない実力を見せつけたと報じた。(編集担当:畠山栄)」

ロシアからの助言

2011-04-11 14:25:59 | 原発

 ロシアの声 http://japanese.ruvr.ru/2011/04/10/48726275.html 

 からの引用。 チェルノブイリ以後の研究蓄積が生かされた発言が見られる。

 関係者にはぜひ見て欲しいと思います。

 「 ロシアとウクライナの医師達によれば、チェルノブイリで事故処理に当たった人々で、同時におよそ300ミリシーベルト(0.3グレイ)かそれ以上の放射線を浴びた人々の中に、深刻な障害が生じたという事だ。

  ここで再び、イワノフ議長の話を引用したい-

  「我々は、福島で事故処理に当たっている方々の浴びる放射線量を150ミリシーベルトに抑えるよう勧める。福島では、一昼夜の放射線量の限界は2から3ミリシーベルトなので、そうした値を越えた人は少ない。この数値内なら、放射線のリスクは見られない。ただこの数値を越えれば、チェルノブイリ後のような有害な生物学的影響が生じる可能性がある。」

 専門家達は、福島ではチェルノブイリとは違って、放射線火傷や激しい嘔吐、胃の不調、高熱といった放射線被爆による病気の問題は起こらないのではないかと見ている。 チェルノブィリ原発事故の後では、そうした患者がおよそ150人出た。彼らは皆、治療のためモスクワやキエフの病院に送られ、多くの命が救われた。」

エコノミストの指摘

2011-04-11 14:08:47 | 原発



 エコノミストが日本の役所の対応を以下のように批判している。もっともであり、日本の役人の本質を示している。

 彼らは―とくに中央官庁のエリートとよばれる連中は―官僚になったとたん、人としての判断を失うのである。

 「日本の関係当局は、相手の立場を思いやるのではなく、テクニカルな対応に終始し、事態の改善に役立っていない。

 輸出業者は政府に対し、製品が放射性物質に汚染されていないことを輸出先の港に示す証明書を発行するよう求めている。

 だが、政府はもっぱら、日本の大部分の地域では放射線量は安全なレベルだと輸出業者を説得することに労力を費やしている。

 「問題はどう不安を軽減するかであり、科学的証拠をどう提示するかではない」と日本経団連の根本勝則氏は指摘する」


 →全文はこちら http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5838

原発は廃止か減少とのロイターオンライン調査

2011-04-11 13:45:48 | 原発

 ロイターの日本語サイトに設置されているオンライン投票の結果は以下の通り。

 これが3月10日だったら、大分違ったと思う。

 現状では、この調査で半分が原発の全廃を主張。

 3割が減らすべきだとしている。

 計画通り進めるという意見は、2割。


「ロイターオンライン調査

政府のエネルギー基本計画では2030年までに14基以上の原発増設を目指している。

今回の原発事故を受けて、あなたの望む政策は。

計画通り、原発を増設     (16172 votes, 22%)
 
計画を見直し、原発を減らす     (20725 votes, 29%)

原発を全廃        (34989 votes, 49%)」

同感です―原発20キロ圏の人々の生活と仕事をどう立て直すのか?

2011-04-11 13:29:50 | 原発

 木走り日記 → http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/


 木走り日記が、クローズアップ現代が取り上げていた原発20キロ圏の町工場が抱える問題を紹介している。

 私はテレビ番雲の方を見ていなかったのでとても勉強になりました。


 以下はブログに書き込まれていた「木走り日記」さんの意見ですが。私も同感です。

 今のままでは、日本は役所ができる範囲か否かで線引きされて、そこにはいらない人はどんどん落ちこぼれていくしかないことになります。

 それにしても行政の第一線の人たちは、あるいは市長や議員達は、このような問題に際して、自分たちで何ができるか考えたり、上にあげたり、メディアに訴えたり、なぜしないのでしょうか。

 YouTubeにでもすぐ意見をあげればいいではないですか。

 以下木走り日記からの引用

 「一点目。

 激甚災害に「地震・津波」は含まれているが、「放射能」避難は含まれていないとの杓子定規な対応は、とても納得ができませんでした。

 たしかにこの男性の工場は「地震・津波」によって物理的に壊れてはいませんが、原発事故によって発生した「放射性物質」により政府により避難させられていること、いつまでに復帰できるかまったくめどがたっていないこと、事実上生活基盤が被災していると言う点では、地震・津波による「放射性物質」の飛散も、激甚災害に指定されて当然ではないでしょうか。

 もし前例がないことから由来する法の不備ならば、政府はすぐに早急に改正するべきです。

 二点目。

 きのみきのままで放射能避難地域から避難してきた経営者に、出勤簿や賃金台帳などを平時のように事務的に要求するのは、あまりにも理不尽な役所仕事であり、納得がいきません。


 放射能に汚染されている工場に取りにいけとでも言うのでしょうか。

 激甚災害の特例措置を講じるべきです。

 津波による書類流失、地震による会社崩壊、放射能による立入禁止、このような、激甚災害により必要書類が用意不能な場合は、例えば自治体が避難者及び事業所に発行する「被災証明書」があれば、やはり特例的に限度額を設けて、書類不備に目をつむり助成すべきです。

 あまりにも杓子定規な対応に画面をみていて怒りすら覚えました。

 政府は被災地の中小企業の現状を直視すべきです。

 そして今すぐにその硬直した諸制度を改正し実効性のあるかつ迅速な支援を行うべきです。」 

新潟県内の河川・水道水の汚染状況―4/10付県発表

2011-04-11 13:17:52 | 原発
 新潟県発表の河川水と水道水の汚染状況。4/10付。

 1.河川水 汚染されているところのみ/放射性ヨウ素とセシウム

  今回は検出されず


 2.水道水 新潟市(信濃川下流) 放射性ヨウ素  0.3ベクレル/kg

  他は今回は検出されず

 

平井さんの文章から(5)

2011-04-11 12:44:07 | 原発
続き

 「日本には途中でやめる勇気がない

 世界では原発の時代は終わりです。原発の先進国のアメリカでは、二月(一九九六年)に二〇一五年までに原発を半分にすると発表しました。それに、プルトニウムの研究も大統領命令で止めています。あんなに怖い物、研究さえ止めました。

 もんじゅのようにプルトニウムを使う原発、高速増殖炉も、アメリカはもちろんイギリスもドイツも止めました。ドイツは出来上がったのを止めて、リゾートパークにしてしまいました。世界の国がプルトニウムで発電するのは不可能だと分かって止めたんです。日本政府も今度のもんじゅの事故で「失敗した」と思っているでしょう。でも、まだ止めない。これからもやると言っています。

 どうして日本が止めないかというと、日本にはいったん決めたことを途中で止める勇気がないからで、この国が途中で止める勇気がないというのは非常に怖いです。みなさんもそんな例は山ほどご存じでしょう。

 とにかく日本の原子力政策はいい加減なのです。日本は原発を始める時から、後のことは何にも考えていなかった。その内に何とかなるだろうと。そんないい加減なことでやってきたんです。そうやって何十年もたった。でも、廃棄物一つのことさえ、どうにもできないんです。

 もう一つ、大変なことは、いままでは大学に原子力工学科があって、それなりに学生がいましたが、今は若い人たちが原子力から離れてしまい、東大をはじめほとんどの大学からなくなってしまいました。机の上で研究する大学生さえいなくなったのです。

 また、日立と東芝にある原子力部門の人も三分の一に減って、コ・ジェネレーション(電気とお湯を同時に作る効率のよい発電設備)のガス・タービンの方へ行きました。メーカーでさえ、原子力はもう終わりだと思っているのです。

 原子力局長をやっていた島村武久さんという人が退官して、『原子力談義』という本で、「日本政府がやっているのは、ただのつじつま合わせに過ぎない、電気が足りないのでも何でもない。あまりに無計画にウランとかプルトニウムを持ちすぎてしまったことが原因です。はっきりノーといわないから持たされてしまったのです。そして日本はそれらで核兵器を作るんじゃないかと世界の国々から見られる、その疑惑を否定するために核の平和利用、つまり、原発をもっともっと造ろうということになるのです」と書いていますが、これもこの国の姿なんです。

廃炉も解体も出来ない原発い

 一九六六年に、日本で初めてイギリスから輸入した十六万キロワットの営業用原子炉が茨城県の東海村で稼動しました。その後はアメリカから輸入した原発で、途中で自前で造るようになりましたが、今では、この狭い日本に一三五万キロワットというような巨大な原発を含めて五一の原発が運転されています。

 具体的な廃炉・解体や廃棄物のことなど考えないままに動かし始めた原発ですが、厚い鉄でできた原子炉も大量の放射能をあびるとボロボロになるんです。だから、最初、耐用年数は十年だと言っていて、十年で廃炉、解体する予定でいました。しかし、一九八一年に十年たった東京電力の福島原発の一号機で、当初考えていたような廃炉・解体が全然出来ないことが分かりました。このことは国会でも原子炉は核反応に耐えられないと、問題になりました。

 この時、私も加わってこの原子炉の廃炉、解体についてどうするか、毎日のように、ああでもない、こうでもないと検討をしたのですが、放射能だらけの原発を無理やりに廃炉、解体しようとしても、造るときの何倍ものお金がかかることや、どうしても大量の被曝が避けられないことなど、どうしようもないことが分かったのです。原子炉のすぐ下の方では、決められた線量を守ろうとすると、たった十数秒くらいしかいられないんですから。

 机の上では、何でもできますが、実際には人の手でやらなければならないのですから、とんでもない被曝を伴うわけです。ですから、放射能がゼロにならないと、何にもできないのです。放射能がある限り廃炉、解体は不可能なのです。人間にできなければロボットでという人もいます。でも、研究はしていますが、ロボットが放射能で狂ってしまって使えないのです。

 結局、福島の原発では、廃炉にすることができないというので、原発を売り込んだアメリカのメーカーが自分の国から作業者を送り込み、日本では到底考えられない程の大量の被曝をさせて、原子炉の修理をしたのです。今でもその原発は動いています。

 最初に耐用年数が十年といわれていた原発が、もう三〇年近く動いています。そんな原発が十一もある。くたびれてヨタヨタになっても動かし続けていて、私は心配でたまりません。

 また、神奈川県の川崎にある武蔵工大の原子炉はたった一〇〇キロワットの研究炉ですが、これも放射能漏れを起こして止まっています。机上の計算では、修理に二〇億円、廃炉にするには六〇億円もかかるそうですが、大学の年間予算に相当するお金をかけても廃炉にはできないのです。まず停止して放射能がなくなるまで管理するしかないのです。

 それが一〇〇万キロワットというような大きな原発ですと、本当にどうしようもありません。

「閉鎖」して、監視・管理

 なぜ、原発は廃炉や解体ができないのでしょうか。それは、原発は水と蒸気で運転されているものなので、運転を止めてそのままに放置しておくと、すぐサビが来てボロボロになって、穴が開いて放射能が漏れてくるからです。原発は核燃料を入れて一回でも運転すると、放射能だらけになって、止めたままにしておくことも、廃炉、解体することもできないものになってしまうのです。

 先進各国で、閉鎖した原発は数多くあります。廃炉、解体ができないので、みんな「閉鎖」なんです。閉鎖とは発電を止めて、核燃料を取り出しておくことですが、ここからが大変です。

 放射能まみれになってしまった原発は、発電している時と同じように、水を入れて動かし続けなければなりません。水の圧力で配管が薄くなったり、部品の具合が悪くなったりしますから、定検もしてそういう所の補修をし、放射能が外に漏れださないようにしなければなりません。放射能が無くなるまで、発電しているときと同じように監視し、管理をし続けなければならないのです。 

 今、運転中が五一、建設中が三、全部で五四の原発が日本列島を取り巻いています。これ以上運転を続けると、余りにも危険な原発もいくつかあります。この他に大学や会社の研究用の原子炉もありますから、日本には今、小さいのは一〇〇キロワット、大きいのは一三五万キロワット、大小合わせて七六もの原子炉があることになります。

 しかし、日本の電力会社が、電気を作らない、金儲けにならない閉鎖した原発を本気で監視し続けるか大変疑問です。それなのに、さらに、新規立地や増設を行おうとしています。その中には、東海地震のことで心配な浜岡に五機目の増設をしようとしていたり、福島ではサッカー場と引換えにした増設もあります。新設では新潟の巻町や三重の芦浜、山口の上関、石川の珠洲、青森の大間や東通などいくつもあります。それで、二〇一〇年には七〇~八〇基にしようと。実際、言葉は悪いですが、この国は狂っているとしか思えません。

 これから先、必ずやってくる原発の閉鎖、これは本当に大変深刻な問題です。近い将来、閉鎖された原発が日本国中いたるところに出現する。これは不安というより、不気味です。ゾーとするのは、私だけでしょうか。

どうしようもない放射性廃棄物

 それから、原発を運転すると必ず出る核のゴミ、毎日、出ています。低レベル放射性廃棄物、名前は低レベルですが、中にはこのドラム缶の側に五時間もいたら、致死量の被曝をするようなものもあります。そんなものが全国の原発で約八〇万本以上溜まっています。

 日本が原発を始めてから一九六九年までは、どこの原発でも核のゴミはドラム缶に詰めて、近くの海に捨てていました。その頃はそれが当たり前だったのです。私が茨城県の東海原発にいた時、業者はドラム缶をトラックで運んでから、船に乗せて、千葉の沖に捨てに行っていました。

 しかし、私が原発はちょっとおかしいぞと思ったのは、このことからでした。海に捨てたドラム缶は一年も経つと腐ってしまうのに、中の放射性のゴミはどうなるのだろうか、魚はどうなるのだろうかと思ったのがはじめでした。

 現在は原発のゴミは、青森の六ケ所村へ持って行っています。全部で三百万本のドラム缶をこれから三百年間管理すると言っていますが、一体、三百年ももつドラム缶があるのか、廃棄物業者が三百年間も続くのかどうか。どうなりますか。

 もう一つの高レベル廃棄物、これは使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出した後に残った放射性廃棄物です。日本はイギリスとフランスの会社に再処理を頼んでいます。去年(一九九五年)フランスから、二八本の高レベル廃棄物として返ってきました。これはどろどろの高レベル廃棄物をガラスと一緒に固めて、金属容器に入れたものです。この容器の側に二分間いると死んでしまうほどの放射線を出すそうですが、これを一時的に青森県の六ケ所村に置いて、三〇年から五〇年間くらい冷やし続け、その後、どこか他の場所に持って行って、地中深く埋める予定だといっていますが、予定地は全く決まっていません。余所の国でも計画だけはあっても、実際にこの高レベル廃棄物を処分した国はありません。みんな困っています。

 原発自体についても、国は止めてから五年か十年間、密閉管理してから、粉々にくだいてドラム缶に入れて、原発の敷地内に埋めるなどとのんきなことを言っていますが、それでも一基で数万トンくらいの放射能まみれの廃材が出るんですよ。生活のゴミでさえ、捨てる所がないのに、一体どうしようというんでしょうか。とにかく日本中が核のゴミだらけになる事は目に見えています。早くなんとかしないといけないんじゃないでしょうか。それには一日も早く、原発を止めるしかなんですよ。

 私が五年程前に、北海道で話をしていた時、「放射能のゴミを五〇年、三百年監視続ける」と言ったら、中学生の女の子が、手を挙げて、「お聞きしていいですか。今、廃棄物を五〇年、三百年監視するといいましたが、今の大人がするんですか? そうじゃないでしょう。次の私たちの世代、また、その次の世代がするんじゃないんですか。だけど、私たちはいやだ」と叫ぶように言いました。この子に返事の出来る大人はいますか。

 それに、五〇年とか三百年とかいうと、それだけ経てばいいんだというふうに聞こえますが、そうじゃありません。原発が動いている限り、終わりのない永遠の五〇年であり、三百年だということです。

住民の被曝と恐ろしい差別

 日本の原発は今までは放射能を一切出していませんと、何十年もウソをついてきた。でもそういうウソがつけなくなったのです。

 原発にある高い排気塔からは、放射能が出ています。出ているんではなくて、出しているんですが、二四時間放射能を出していますから、その周辺に住んでいる人たちは、一日中、放射能をあびて被曝しているのです。

ある女性から手紙が来ました。二三歳です。便箋に涙の跡がにじんでいました。「東京で就職して恋愛し、結婚が決まって、結納も交わしました。ところが突然相手から婚約を解消されてしまったのです。相手の人は、君には何にも悪い所はない、自分も一緒になりたいと思っている。でも、親たちから、あなたが福井県の敦賀で十数年間育っている。原発の周辺では白血病の子どもが生まれる確率が高いという。白血病の孫の顔はふびんで見たくない。だから結婚するのはやめてくれ、といわれたからと。私が何か悪いことしましたか」と書いてありました。この娘さんに何の罪がありますか。こういう話が方々で起きています。

 この話は原発現地の話ではない、東京で起きた話なんですよ、東京で。皆さんは、原発で働いていた男性と自分の娘とか、この女性のように、原発の近くで育った娘さんと自分の息子とかの結婚を心から喜べますか。若い人も、そういう人と恋愛するかも知れないですから、まったく人ごとではないんです。 こういう差別の話は、言えば差別になる。でも言わなければ分からないことなんです。原発に反対している人も、原発は事故や故障が怖いだけではない、こういうことが起きるから原発はいやなんだと言って欲しいと思います。原発は事故だけではなしに、人の心まで壊しているのですから。

私、子ども生んでも大丈夫ですか。たとえ電気がなくなってもいいから、私は原発はいやだ。

 最後に、私自身が大変ショックを受けた話ですが、北海道の泊原発の隣の共和町で、教職員組合主催の講演をしていた時のお話をします。どこへ行っても、必ずこのお話はしています。あとの話は全部忘れてくださっても結構ですが、この話だけはぜひ覚えておいてください。

その講演会は夜の集まりでしたが、父母と教職員が半々くらいで、およそ三百人くらいの人が来ていました。その中には中学生や高校生もいました。原発は今の大人の問題ではない、私たち子どもの問題だからと聞きに来ていたのです。

 話が一通り終わったので、私が質問はありませんかというと、中学二年の女の子が泣きながら手を挙げて、こういうことを言いました。 

 「今夜この会場に集まっている大人たちは、大ウソつきのええかっこしばっかりだ。私はその顔を見に来たんだ。どんな顔をして来ているのかと。今の大人たち、特にここにいる大人たちは農薬問題、ゴルフ場問題、原発問題、何かと言えば子どもたちのためにと言って、運動するふりばかりしている。私は泊原発のすぐ近くの共和町に住んで、二四時間被曝している。原子力発電所の周辺、イギリスのセラフィールドで白血病の子どもが生まれる確率が高いというのは、本を読んで知っている。私も女の子です。年頃になったら結婚もするでしょう。私、子ども生んでも大丈夫なんですか?」と、泣きながら三百人の大人たちに聞いているのです。でも、誰も答えてあげられない。

 「原発がそんなに大変なものなら、今頃でなくて、なぜ最初に造るときに一生懸命反対してくれなかったのか。まして、ここに来ている大人たちは、二号機も造らせたじゃないのか。たとえ電気がなくなってもいいから、私は原発はいやだ」と。ちょうど、泊原発の二号機が試運転に入った時だったんです。

 「何で、今になってこういう集会しているのか分からない。私が大人で子どもがいたら、命懸けで体を張ってでも原発を止めている」と言う。

 「二基目が出来て、今までの倍私は放射能を浴びている。でも私は北海道から逃げない」って、泣きながら訴えました。

 私が「そういう悩みをお母さんや先生に話したことがあるの」と聞きましたら、「この会場には先生やお母さんも来ている、でも、話したことはない」と言います。「女の子同志ではいつもその話をしている。結婚もできない、子どもも産めない」って。

 担任の先生たちも、今の生徒たちがそういう悩みを抱えていることを少しも知らなかったそうです。

 これは決して、原子力防災の八キロとか十キロの問題ではない、五十キロ、一〇〇キロ圏でそういうことがいっぱい起きているのです。そういう悩みを今の中学生、高校生が持っていることを絶えず知っていてほしいのです。

原発がある限り、安心できない

 みなさんには、ここまでのことから、原発がどんなものか分かってもらえたと思います。

 チェルノブイリで原発の大事故が起きて、原発は怖いなーと思った人も多かったと思います。でも、「原発が止まったら、電気が無くなって困る」と、特に都会の人は原発から遠いですから、少々怖くても仕方がないと、そう考えている人は多いんじゃないでしょうか。

 でも、それは国や電力会社が「原発は核の平和利用です」「日本の原発は絶対に事故を起こしません。安全だから安心しなさい」「日本には資源がないから、原発は絶対に必要なんですよ」と、大金をかけて宣伝をしている結果なんです。もんじゅの事故のように、本当のことはずーっと隠しています。

 原発は確かに電気を作っています。しかし、私が二〇年間働いて、この目で見たり、この体で経験したことは、原発は働く人を絶対に被曝させなければ動かないものだということです。それに、原発を造るときから、地域の人達は賛成だ、反対だと割れて、心をズタズタにされる。出来たら出来たで、被曝させられ、何の罪もないのに差別されて苦しんでいるんです。

 みなさんは、原発が事故を起こしたら怖いのは知っている。だったら、事故さえ起こさなければいいのか。平和利用なのかと。そうじゃないでしょう。私のような話、働く人が被曝して死んでいったり、地域の人が苦しんでいる限り、原発は平和利用なんかではないんです。それに、安全なことと安心だということは違うんです。原発がある限り安心できないのですから。

 それから、今は電気を作っているように見えても、何万年も管理しなければならない核のゴミに、膨大な電気や石油がいるのです。それは、今作っている以上のエネルギーになることは間違いないんですよ。それに、その核のゴミや閉鎖した原発を管理するのは、私たちの子孫なのです。

 そんな原発が、どうして平和利用だなんて言えますか。だから、私は何度も言いますが、原発は絶対に核の平和利用ではありません。

 だから、私はお願いしたい。朝、必ず自分のお子さんの顔やお孫さんの顔をしっかりと見てほしいと。果たしてこのまま日本だけが原子力発電所をどんどん造って大丈夫なのかどうか、事故だけでなく、地震で壊れる心配もあって、このままでは本当に取り返しのつかないことが起きてしまうと。これをどうしても知って欲しいのです。

 ですから、私はこれ以上原発を増やしてはいけない、原発の増設は絶対に反対だという信念でやっています。そして稼働している原発も、着実に止めなければならないと思っていあす。

 原発がある限り、世界に本当の平和はこないのですから。


優しい地球 残そう子どもたちに
筆者「平井憲夫さん」について:

1997年1月逝去。
1級プラント配管技能士、原発事故調査国民会議顧問、原発被曝労働者救済センター代表、北陸電力能登(現・志賀)原発差し止め裁判原告特別補佐人、東北電力女川原発差し止め裁判原告特別補佐人、福島第2原発3号機運転差し止め訴訟原告証人。
「原発被曝労働者救済センター」は後継者がなく、閉鎖されました。
e-kochi

原子力発電がなくても暮らせる社会をつくる国民会議
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平井さんの文章から(4)

2011-04-11 12:43:05 | 原発
続き

 「びっくりした美浜原発細管破断事故!

 皆さんが知らないのか、無関心なのか、日本の原発はびっくりするような大事故を度々起こしています。スリーマイル島とかチェルノブイリに匹敵する大事故です。一九八九年に、東京電力の福島第二原発で再循環ポンプがバラバラになった大事故も、世界で初めての事故でした。

 そして、一九九一年二月に、関西電力の美浜原発で細管が破断した事故は、放射能を直接に大気中や海へ大量に放出した大事故でした。

 チェルノブイリの事故の時には、私はあまり驚かなかったんですよ。原発を造っていて、そういう事故が必ず起こると分かっていましたから。だから、ああ、たまたまチェルノブイリで起きたと、たまたま日本ではなかったと思ったんです。しかし、美浜の事故の時はもうびっくりして、足がガクガクふるえて椅子から立ち上がれない程でした。

 この事故はECCS(緊急炉心冷却装置)を手動で動かして原発を止めたという意味で、重大な事故だったんです。ECCSというのは、原発の安全を守るための最後の砦に当たります。これが効かなかったらお終りです。だから、ECCSを動かした美浜の事故というのは、一億数千万人の人を乗せたバスが高速道路を一〇〇キロのスピードで走っているのに、ブレーキもきかない、サイドブレーキもきかない、崖にぶつけてやっと止めたというような大事故だったんです。

 原子炉の中の放射能を含んだ水が海へ流れ出て、炉が空焚きになる寸前だったのです。日本が誇る多重防護の安全弁が次々と効かなくて、あと〇・七秒でチェルノブイリになるところだった。それも、土曜日だったのですが、たまたまベテランの職員が来ていて、自動停止するはずが停止しなくて、その人がとっさの判断で手動で止めて、世界を巻き込むような大事故に至らなかったのです。日本中の人が、いや世界中の人が本当に運がよかったのですよ。

 この事故は、二ミリくらいの細い配管についている触れ止め金具、何千本もある細管が振動で触れ合わないようにしてある金具が設計通りに入っていなかったのが原因でした。施工ミスです。そのことが二十年近い何回もの定検でも見つからなかったんですから、定検のいい加減さがばれた事故でもあった。入らなければ切って捨てる、合わなければ引っ張るという、設計者がまさかと思うようなことが、現場では当たり前に行われているということが分かった事故でもあったんです。

もんじゅの大事故

 去年(一九九五年)の十二月八日に、福井県の敦賀にある動燃(動力炉・核燃料開発事業団)のもんじゅでナトリウム漏れの大事故を起こしました。もんじゅの事故はこれが初めてではなく、それまでにも度々事故を起こしていて、私は建設中に六回も呼ばれて行きました。というのは、所長とか監督とか職人とか、元の部下だった人たちがもんじゅの担当もしているので、何か困ったことがあると私を呼ぶんですね。もう会社を辞めていましたが、原発だけは事故が起きたら取り返しがつきませんから、放っては置けないので行くのです。

 ある時、電話がかかって、「配管がどうしても合わないから来てくれ」という。行って見ますと、特別に作った配管も既製品の配管もすべて図面どおり、寸法通りになっている。でも、合わない。どうして合わないのか、いろいろ考えましたが、なかなか分からなかった。一晩考えてようやく分かりました。もんじゅは、日立、東芝、三菱、富士電機などの寄せ集めのメーカーで造ったもので、それぞれの会社の設計基準が違っていたのです。

 図面を引くときに、私が居た日立は〇・五mm切り捨て、東芝と三菱は〇・五mm切上げ、日本原研は〇・五mm切下げなんです。たった〇・五mmですが、百カ所も集まると大変な違いになるのです。だから、数字も線も合っているのに合わなかったのですね。

 これではダメだということで、みんな作り直させました。何しろ国の威信がかかっていますから、お金は掛けるんです。

 どうしてそういうことになるかというと、それぞれのノウ・ハウ、企業秘密ということがあって、全体で話し合いをして、この〇・五mmについて、切り上げるか、切り下げるか、どちらかに統一しようというような話し合いをしていなかったのです。今回のもんじゅの事故の原因となった温度センサーにしても、メーカー同士での話し合いもされていなかったんではないでしょうか。

 どんなプラントの配管にも、あのような温度計がついていますが、私はあんなに長いのは見たことがありません。おそらく施工した時に危ないと分かっていた人がいたはずなんですね。でも、よその会社のことだからほっとけばいい、自分の会社の責任ではないと。

 動燃自体が電力会社からの出向で出来た寄せ集めですが、メーカーも寄せ集めなんです。これでは事故は起こるべくして起こる、事故が起きないほうが不思議なんで、起こって当たり前なんです。

 しかし、こんな重大事故でも、国は「事故」と言いません。美浜原発の大事故の時と同じように「事象があった」と言っていました。私は事故の後、直ぐに福井県の議会から呼ばれて行きました。あそこには十五基も原発がありますが、誘致したのは自民党の議員さんなんですね。だから、私はそういう人に何時も、「事故が起きたらあなた方のせいだよ、反対していた人には責任はないよ」と言ってきました。この度、その議員さんたちに呼ばれたのです。「今回は腹を据えて動燃とケンカする、どうしたらよいか教えてほしい」と相談を受けたのです。

 それで、私がまず最初に言ったことは、「これは事故なんです、事故。事象というような言葉に誤魔化されちゃあだめだよ」と言いました。県議会で動燃が「今回の事象は……」と説明を始めたら、「事故だろ! 事故!」と議員が叫んでいたのが、テレビで写っていましたが、あれも、黙っていたら、軽い「事象」ということにされていたんです。地元の人たちだけではなく、私たちも、向こうの言う「事象」というような軽い言葉に誤魔化されてはいけないんです。

 普通の人にとって、「事故」というのと「事象」というのとでは、とらえ方がまったく違います。この国が事故を事象などと言い換えるような姑息なことをしているので、日本人には原発の事故の危機感がほとんどないのです。

日本のプルトニウムがフランスの核兵器に?

 もんじゅに使われているプルトニウムは、日本がフランスに再処理を依頼して抽出したものです。再処理というのは、原発で燃やしてしまったウラン燃料の中に出来たプルトニウムを取り出すことですが、プルトニウムはそういうふうに人工的にしか作れないものです。

 そのプルトニウムがもんじゅには約一・四トンも使われています。長崎の原爆は約八キロだったそうですが、一体、もんじゅのプルトニウムでどのくらいの原爆ができますか。それに、どんなに微量でも肺ガンを起こす猛毒物質です。半減期が二万四千年もあるので、永久に放射能を出し続けます。だから、その名前がプルートー、地獄の王という名前からつけられたように、プルトニウムはこの世で一番危険なものといわれるわけですよ。

 しかし、日本のプルトニウムが去年(一九九五年)南太平洋でフランスが行った核実験に使われた可能性が大きいことを知っている人は、余りいません。フランスの再処理工場では、プルトニウムを作るのに核兵器用も原発用も区別がないのです。だから、日本のプルトニウムが、この時の核実験に使われてしまったことはほとんど間違いありません。

 日本がこの核実験に反対をきっちり言えなかったのには、そういう理由があるからです。もし、日本政府が本気でフランスの核実験を止めさせたかったら、簡単だったのです。つまり、再処理の契約を止めればよかったんです。でも、それをしなかった。

 日本とフランスの貿易額で二番目に多いのは、この再処理のお金なんですよ。国民はそんなことも知らないで、いくら「核実験に反対、反対」といっても仕方がないんじゃないでしょうか。それに、唯一の被爆国といいながら、日本のプルトニウムがタヒチの人々を被爆させ、きれいな海を放射能で汚してしまったに違いありません。

 世界中が諦めたのに、日本だけはまだこんなもので電気を作ろうとしているんです。普通の原発で、ウランとプルトニウムを混ぜた燃料(MOX燃料)を燃やす、いわゆるプルサーマルをやろうとしています。しかし、これは非常に危険です。分かりやすくいうと、石油ストーブでガソリンを燃やすようなことなんです。原発の元々の設計がプルトニウムを燃すようになっていません。プルトニウムは核分裂の力がウランとはケタ違いに大きいんです。だから原爆の材料にしているわけですから。

 いくら資源がない国だからといっても、あまりに酷すぎるんじゃないでしょうか。早く原発を止めて、プルトニウムを使うなんてことも止めなければ、あちこちで被曝者が増えていくばかりです。

平井さんの文章から(3)

2011-04-11 12:42:00 | 原発
続き

 「放射能垂れ流しの海

 冬に定検工事をすることが多いのですが、定検が終わると、海に放射能を含んだ水が何十トンも流れてしまうのです。はっきり言って、今、日本列島で取れる魚で、安心して食べられる魚はほとんどありません。日本の海が放射能で汚染されてしまっているのです。

 海に放射能で汚れた水をたれ流すのは、定検の時だけではありません。原発はすごい熱を出すので、日本では海水で冷やして、その水を海に捨てていますが、これが放射能を含んだ温排水で、一分間に何十トンにもなります。

 原発の事故があっても、県などがあわてて安全宣言を出しますし、電力会社はそれ以上に隠そうとします。それに、国民もほとんど無関心ですから、日本の海は汚れっぱなしです。

 防護服には放射性物質がいっぱいついていますから、それを最初は水洗いして、全部海に流しています。排水口で放射線の量を計ると、すごい量です。こういう所で魚の養殖をしています。安全な食べ物を求めている人たちは、こういうことも知って、原発にもっと関心をもって欲しいものです。このままでは、放射能に汚染されていないものを選べなくなると思いますよ。

 数年前の石川県の志賀原発の差止め裁判の報告会で、八十歳近い行商をしているおばあさんが、こんな話をしました。「私はいままで原発のことを知らなかった。今日、昆布とわかめをお得意さんに持っていったら、そこの若奥さんに「悪いけどもう買えないよ、今日で終わりね、志賀原発が運転に入ったから」って言われた。原発のことは何も分からないけど、初めて実感として原発のことが分かった。どうしたらいいのか」って途方にくれていました。みなさんの知らないところで、日本の海が放射能で汚染され続けています。

内部被爆が一番怖い

 原発の建屋の中は、全部の物が放射性物質に変わってきます。物がすべて放射性物質になって、放射線を出すようになるのです。どんなに厚い鉄でも放射線が突き抜けるからです。体の外から浴びる外部被曝も怖いですが、一番怖いのは内部被曝です。

 ホコリ、どこにでもあるチリとかホコリ。原発の中ではこのホコリが放射能をあびて放射性物質となって飛んでいます。この放射能をおびたホコリが口や鼻から入ると、それが内部被曝になります。原発の作業では片付けや掃除で一番内部被曝をしますが、この体の中から放射線を浴びる内部被曝の方が外部被曝よりもずっと危険なのです。体の中から直接放射線を浴びるわけですから。

 体の中に入った放射能は、通常は、三日くらいで汗や小便と一緒に出てしまいますが、三日なら三日、放射能を体の中に置いたままになります。また、体から出るといっても、人間が勝手に決めた基準ですから、決してゼロにはなりません。これが非常に怖いのです。どんなに微量でも、体の中に蓄積されていきますから。

 原発を見学した人なら分かると思いますが、一般の人が見学できるところは、とてもきれいにしてあって、職員も「きれいでしょう」と自慢そうに言っていますが、それは当たり前なのです。きれいにしておかないと放射能のホコリが飛んで危険ですから。

 私はその内部被曝を百回以上もして、癌になってしまいました。癌の宣告を受けたとき、本当に死ぬのが怖くて怖くてどうしようかと考えました。でも、私の母が何時も言っていたのですが、「死ぬより大きいことはないよ」と。じゃ死ぬ前になにかやろうと。原発のことで、私が知っていることをすべて明るみに出そうと思ったのです。

普通の職場環境とは全く違う

 放射能というのは蓄積します。いくら徴量でも十年なら十年分が蓄積します。これが怖いのです。日本の放射線管理というのは、年間50ミリシーベルトを守ればいい、それを越えなければいいという姿勢です。

 例えば、定検工事ですと三ケ月くらいかかりますから、それで割ると一日分が出ます。でも、放射線量が高いところですと、一日に五分から七分間しか作業が出来ないところもあります。しかし、それでは全く仕事になりませんから、三日分とか、一週間分をいっぺんに浴びせながら作業をさせるのです。これは絶対にやってはいけない方法ですが、そうやって10分間なり20分間なりの作業ができるのです。そんなことをすると白血病とかガンになると知ってくれていると、まだいいのですが……。電力会社はこういうことを一切教えません。

 稼動中の原発で、機械に付いている大きなネジが一本緩んだことがありました。動いている原発は放射能の量が物凄いですから、その一本のネジを締めるのに働く人三十人を用意しました。一列に並んで、ヨーイドンで七メートルくらい先にあるネジまで走って行きます。行って、一、二、三と数えるくらいで、もうアラームメーターがビーッと鳴る。中には走って行って、ネジを締めるスパナはどこにあるんだ?といったら、もう終わりの人もいる。ネジをたった一山、二山、三山締めるだけで百六十人分、金額で四百万円くらいかかりました。

 なぜ、原発を止めて修理しないのかと疑問に思われるかもしれませんが、原発を一日止めると、何億円もの損になりますから、電力会社は出来るだけ止めないのです。放射能というのは非常に危険なものですが、企業というものは、人の命よりもお金なのです。

「絶対安全」だと五時間の洗脳教育

 原発など、放射能のある職場で働く人を放射線従事者といいます。日本の放射線従事者は今までに約二七万人ですが、そのほとんどが原発作業者です。今も九万人くらいの人が原発で働いています。その人たちが年一回行われる原発の定検工事などを、毎日、毎日、被曝しながら支えているのです。

 原発で初めて働く作業者に対し、放射線管理教育を約五時間かけて行います。この教育の最大の目的は、不安の解消のためです。原発が危険だとは一切教えません。国の被曝線量で管理しているので、絶対大丈夫なので安心して働きなさい、世間で原発反対の人たちが、放射能でガンや白血病に冒されると言っているが、あれは“マッカナ、オオウソ”である、国が決めたことを守っていれば絶対に大丈夫だと、五時間かけて洗脳します。  

 こういう「原発安全」の洗脳を、電力会社は地域の人にも行っています。有名人を呼んで講演会を開いたり、文化サークルで料理教室をしたり、カラー印刷の立派なチラシを新聞折り込みしたりして。だから、事故があって、ちょっと不安に思ったとしても、そういう安全宣伝にすぐに洗脳されてしまって、「原発がなくなったら、電気がなくなって困る」と思い込むようになるのです。

 私自身が二〇年近く、現場の責任者として、働く人にオウムの麻原以上のマインド・コントロール、「洗脳教育」をやって来ました。何人殺したかわかりません。みなさんから現場で働く人は不安に思っていないのかとよく聞かれますが、放射能の危険や被曝のことは一切知らされていませんから、不安だとは大半の人は思っていません。体の具合が悪くなっても、それが原発のせいだとは全然考えもしないのです。作業者全員が毎日被曝をする。それをいかに本人や外部に知られないように処理するかが責任者の仕事です。本人や外部に被曝の問題が漏れるようでは、現場責任者は失格なのです。これが原発の現場です。

 私はこのような仕事を長くやっていて、毎日がいたたまれない日も多く、夜は酒の力をかり、酒量が日毎に増していきました。そうした自分自身に、問いかけることも多くなっていました。一体なんのために、誰のために、このようなウソの毎日を過ごさねばならないのかと。気がついたら、二〇年の原発労働で、私の体も被曝でぼろぼろになっていました。

だれが助けるのか

 また、東京電力の福島原発で現場作業員がグラインダーで額(ひたい)を切って、大怪我をしたことがありました。血が吹き出ていて、一刻を争う大怪我でしたから、直ぐに救急車を呼んで運び出しました。ところが、その怪我人は放射能まみれだったのです。でも、電力会社もあわてていたので、防護服を脱がせたり、体を洗ったりする除洗をしなかった。救急隊員にも放射能汚染の知識が全くなかったので、その怪我人は放射能の除洗をしないままに、病院に運ばれてしまったんです。だから、その怪我人を触った救急隊員が汚染される、救急車も汚染される、医者も看護婦さんも、その看護婦さんが触った他の患者さんも汚染される、その患者さんが外へ出て、また汚染が広がるというふうに、町中がパニックになるほどの大変な事態になってしまいました。みんなが大怪我をして出血のひどい人を何とか助けたいと思って必死だっただけで、放射能は全く見えませんから、その人が放射能で汚染されていることなんか、だれも気が付かなかったんですよ。

 一人でもこんなに大変なんです。それが仮に大事故が起きて大勢の住民が放射能で汚染された時、一体どうなるのでしょうか。想像できますか。人ごとではないのです。この国の人、みんなの問題です。