環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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緑の福祉国家9 21世紀へ移る準備をした「90年代」⑤     研究報告「2021年のスウェーデン」

2007-01-19 07:29:23 | 市民連続講座:緑の福祉国家
皆さんへの期待は「環境問題」に対する私の考えや「スウェーデン」に関する私の観察と分析を、ぜひ批判的な立場で検証し、日本の将来を「明るい希望の持てる社会」に変えていくためにそれぞれの立場から日本の現状を真剣に考えてほしいことです。私たちの子どもや孫のために・・・・・

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★研究報告「2021年のスウェーデン 持続可能な社会に向けて」の公表(99年1月) 
将来から現在を見るバックキャスト的手法は、スウェーデン政府が21世紀の長期ビジョンを想定するときに使っており、「地球は有限」を前提に、「経済は環境の一部」と見なし、国民の合意のもとに政策を決め、社会を望ましい方向に変えていく手法です。
 
スウェーデンのペーション首相が施政方針演説で「生態学的に持続可能な社会への転換」を明らかにした1996年の前年、95年にスウェーデン環境保護庁は「25年後の2021年次の望ましい社会を想定したプロジェクト」をスタートさせました。そして、約4年の歳月と4億円を費やした研究成果「2021年のスウェーデン―持続可能な社会に向けて」が、99年1月に公表されました。
 
この報告書の要旨は日本の雑誌「ビオシティ」(2000年6月号 No.18)に、「我々はすでに正しい未来の道を選択した――スウェーデン2021年物語」と題して紹介されています。

このプロジェクトで採用された「バックキャスト的手法」では、最初に望ましい未来社会を設定し、その未来社会を実現する戦略を検討することになります。
 
まず、長期的な環境目標が「自然科学の知見」に基づいて設定されました。つぎに、持続可能な社会を築くための基礎的な要素を見つけるために、「物質の流れ」、「建築物」、「技術」の3分野で、まったく別のコンセプトに基づく2つのモデル、「タスクマインダー」(現実の経済社会の延長上で環境に配慮し、再構築したモデル)と「パスファインダー」(望ましい経済社会をイメージしたモデル)を想定しました。

生態学的に持続可能な社会への転換に必要な分野のうち、農業、食糧生産、森林、下水、エネルギー、交通、都市生活、農村生活などが、この2つのモデルを通して検討されました。このプロジェクトには、官僚や研究者のほか、実際に持続可能な社会の実現をめざす役割を担うことになる、さまざまなセクターの代表者が参加しました。報告書は、つぎのように結論づけています。

★この報告書「2021年のスウェーデン」は、スウェーデンの「持続可能な社会創造」の基本目標が実現性のあることを示している。この未来研究では生態学的な持続可能性についてのみ考察するのではなく、異なった選択肢の経済的、社会的な関係についても分析を行なった。
 
★ここに示した持続可能な未来像は、現在開発中か、すでに使用されている技術を基本に考えられた。したがって技術の不足が、提示した目標が実現できるかできないかを決定する要因にはなり得ない。むしろ、持続可能性の妨げになるのは、現行のEUの共通農業政策であり、住宅やオフィスビルのエネルギー削減の動きが遅いことであり、現在の生産と消費のパターンなのである。

★このプロジェクトから得られた成果の一部は環境保護庁から政府に提出され、一昨日紹介した、98年制定の21世紀の環境法体系「環境法典」の基礎資料として使われました。
 
バックキャストするスウェーデンは、「理想主義の国」ではなく、理念に基づいた長期ビジョンを掲げ、行動する「現実主義(プラグマティズム)の国」なのです。



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