夏、
ローカル線の無人駅
誰もいないプラットホームに
少女はひとりたたずんでおりました
純白のワンピースに
紅いリボンのついた麦藁帽子
空はどこまでも青く澄みわたり
金色(こんじき)の陽射しは
これでもかとばかりに
容赦なく地上を照りつけています
あたりには人っ子ひとり見あたりません
激しく降りそそぐ蝉しぐれ
そのあまりの騒がしさに
かえってあたりの静けさがきわだつようです
ときおり涼やかな風が吹き過ぎて
見わたすかぎり一面の麦畑がゆるやかに波を打ちます
そのさまはまるで緑の大海原
真っ青な空 真っ白な入道雲
※
少女は春からやって来ました
そしていま
ようやく夏にたどりついたのです
ふと あすのゆくえに目をやると
景色が遠くゆらめいています
かげろうにゆがんで見える線路のさきには
きっと秋が待っているのでしょう
そうしてもっとさきの そのまたさきのさきには
静かに凍てつく
冬の大地がよこたわっているのです
夏の命は短く
秋は思いのほかはやく訪れるものだということを
知っているのでしょうか
少女はひとり、
誰もいないプラットホームに
たったひとりでたたずんでおりました
草いきれが青く匂いたつ夏の盛り
ひとは誰しも
ひとりぼっちなのかもしれません
★絵:カシニョール★ ↓ポチッっとね