東の低い空に光が射して
不安な夜が終わりをつげようとしています
やがて空の片隅に
あざやかなオレンジの色が染み広がって
マーマレードの朝が明けていくのです
とくになにか良いことが
待ち受けているというのではないけれど
一日のはじまりがこんなにも美しいから
ぼくは思わず
“Terry’sTheme”を口ずさむ
いまごろきみはまだきっと
優しい夢の中をたゆたっているのでしょうね
こうしてぼくらは
別々の時を過ごしているけれど
この世のどこかにきみがいる
ただそのことが
ぼくにはとてもたいせつなのです
ほら、マーマレードの朝が明けていくよ
この世のどこかにきみがいる
ただそれだけで
世界はこんなにも美しい
この世のどこかにきみがいる
ただそれだけで
世界はこんなにも哀しい
いまはただ
きみの心が安らかであることを願うだけ
いまはただ
きみが幸せでありますようにと祈るだけです
※Terry’s Theme From “LIME LIGHT”
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夜がさよならしようとしているよ
まだ明けきらぬ朝のうす陽の中で
茜色に染まった枯葉が小さくふるえてる
木立の梢で
まるで新しい日の訪れをはにかんでいるかのように
ことさら静かに明るみをおびてゆく空を眺めながら
ぼくは深呼吸をひとつする
きみが生まれたその日もきっと
一日のはじまりはこんなふうに美しかったんだろうな
などとひとり思いを巡らせながら
いまごろきみはまだ
深い眠りの中にいるのかな
いったいどんな夢を見ているの
やさしい夢ならいいのだけれど
朝の冷たい大気の中で
小鳥たちのさえずりが
いつにもまして清々しく聴こえてくるのは
きょうがきっととくべつな一日だから
きみのいない世界に生まれてきたぼくが
ぼくのいる世界に生まれてきたきみと出逢うまでに
どれほどたくさん季節が通り過ぎて
どれほど多くの偶然が積み重なったことだろう
きみは気づいているの
なにげないその笑顔が
荒んだぼくの心を
そっと癒してくれているということに
もしもきみが涙を流したり
何かに傷ついたりしたとき
ぼくはきみに
いったい何をしてあげられるだろうね
きみがそのさりげない微笑で
ぼくの胸にほのかなあかりを灯してくれたように
ぼくもきみのために
何かしてあげられるといいのだけれど
あぁ、新しい朝の光が降りそそぎはじめたよ
きょうは世界中が輝いて見えるとくべつの日
それほど遠くない昔
小さなきみが喜びの産声をあげた
記念すべき美しい日
ぼくの祈りのつぶやきが ほら
白いかすみとなって
冷たい光の中でゆらめいているよ
安らぎと優しさがこれからもずっと
きみの胸を満たし続けますようにと・・・・・
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また冬がやってきたんだね
きみに出逢ってから
いったいどれほど季節の後姿を見おくったことだろう
気の遠くなるような時が流れて
思いもよらない出来事がいくつも積み重なって
ようやく巡り逢えたというのに
きみについて知っていることといえば
いまもほんのわずかばかり
なのにこんなにもきみのことが気がかりで
いつも心から離れないなんて
なんだかまったくおかしなことだね
遠く離れてみて
近ごろようやく気づいたよ
風景は心を映すものだということを
ひとはみな
心を通して世界をながめていたんだね
目に映るすべてのものが
これまでになく色あせて見えるのは
季節のせいとばかりはいえないような気がするよ
きみと歩いたあの道も
きみと訪ねたあの街の景色も
いつかぼくの中で
ぼんやりかすんだ想い出になってしまうのかな
きみとの時間をもっとたいせつにしたいのに
そんなことさへ儘ならないなんて
ぼくの想いなど気にとめることもなく
時は虚しく過ぎ去っていくよ
ときおりふときみの名をつぶやいてしまうのは
きみを想う気持ちの不確かさと
その不確かな感情の置きどころを見失ってしまったから
それでもただひとつだけ確かなことがあるとすれば
それはきみと出逢ってからというもの
寒がりやのぼくが
冬を好きになったということ
また冬がやってきたんだね
きみに出逢ってから
いったいどれほどの季節が
ぼくの前を通り過ぎていったことだろう
過ぎ去ろうとする季節をひきとめることなんて
ぼくにはできない
ちょっと呼びとめて
振りかえらせることすらできないのだから
遠く離れた鈍色の空の下できみの手が
冷たくかじかんだりしていなければいいのだけれど
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もしも生まれ変わったら
わたしは野に咲く花になりたいの
名もない小さな花に生まれ変わって
あなたの澄んだ眼ざしに
静かに見つめてほしいから
もしも生まれ変わったら
わたしはきらめく雪になりたいの
真っ白な雪に生まれ変わって
あなたの心にゆるやかに
ふんわり降り積もってみたいから
もしも生まれ変わったら
わたしはしなやかな風になりたいの
香しい風に生まれ変わって
波うつようなあなたの髪に
そっと口づけてみたいから
もしも生まれ変わったら
わたしはやわらかな陽ざしになりたいの
おだやかな陽ざしに生まれ変わって
ひとりたたずむあなたを
やさしく包んであげたいと思うから
もしも生まれ変わったら
もいちどあなたに逢いたいの
もいちどあなたに巡り逢えたら
もいちどわたしの心を届けたい
たとえ気づいてもらえなくても
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春、きらめく木漏れ陽の中で
きみのくちびるに小さな笑みが咲いたとき
何かが変わりはじめたのです
ぼくの中で
夏、草原をわたる風に野花が香り
うっとりと目蓋をとじたきみを見たとき
ぼくは秘かに感じたのです
世界がほのかに彩づきはじめたことを
あの頃のきみは
ぼくが瞬きしている束の間に
つばさを広げようとしていたのですね
朝陽の中で羽化する蝶のように
それでもきみの中には
少女の面影が消えずに残っていたっけ
秋、波にあらわれた貝殻を耳にあて
もの思いに沈むきみの横顔を目にして
戸惑いをおぼえたこともありました
そのあまりのあどけなさに
冬、一日のおわりに小さく手をふって
さようなら
と 小頸をかしげる愛らしい仕草に
いつもなんだかいたたまれない心持がしたものです
そしてあの日
ラヂオから流れくる古びた曲に
きみが思わず涙したとき
ぼくはようやく気づいたのです
ぼくは そう
たしかにきみに・・・・・
きみへの想いはそんなふうに
ぼくの心の片隅に
ある日とつぜん小さく芽ばえ
みるみる胸を満たしていったのです
ふと気がつけばきみのことばかり
いまにも溢れてしまいそうなんだ
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