べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

きみがあふれてゆく

2007年09月17日 11時44分10秒 | 慕情

春、きらめく木漏れ陽の中で
きみのくちびるに小さな笑みが咲いたとき
何かが変わりはじめたのです
ぼくの中で

夏、草原をわたる風に野花が香り
うっとりと目蓋をとじたきみを見たとき
ぼくは秘かに感じたのです
世界がほのかに彩づきはじめたことを

あの頃のきみは
ぼくが瞬きしている束の間に
つばさを広げようとしていたのですね
朝陽の中で羽化する蝶のように

それでもきみの中には
少女の面影が消えずに残っていたっけ

秋、波にあらわれた貝殻を耳にあて
もの思いに沈むきみの横顔を目にして
戸惑いをおぼえたこともありました
そのあまりのあどけなさに

冬、一日のおわりに小さく手をふって
さようなら 
と 小頸をかしげる愛らしい仕草に
いつもなんだかいたたまれない心持がしたものです

そしてあの日 
ラヂオから流れくる古びた曲に
きみが思わず涙したとき
ぼくはようやく気づいたのです

ぼくは そう
たしかにきみに・・・・・

きみへの想いはそんなふうに
ぼくの心の片隅に
ある日とつぜん小さく芽ばえ
みるみる胸を満たしていったのです

ふと気がつけばきみのことばかり
いまにも溢れてしまいそうなんだ







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