べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

文箱の中で色あせていくもの

2016年10月16日 16時14分48秒 | 慕情

薄水色の便箋と
あわい桜色の封筒を手に入れました
あなたに手紙を書くためです
ペンとインキも買いそろえました
そのしなやかなペン先は
太すぎも細すぎもせず
ちょうどほど良い感じです
小瓶に入ったインキは
深い海の色をしています

そしてわたしは何通も
何通も手紙をしたためました
すべて あなたに宛てた手紙です
言葉を紡ぐということは
吹き溜まりの落ち葉の中から
とくべつな枯葉を一枚
選び出すようなものです
あるいはまた砂浜で
芥子粒ほどの宝石を見つけ出すことに
似ていなくもありません

とにかくわたしは
そのペンとインキでもって
薄水色の便箋に
藍色の文字を書き連ねていったのです
けれどこれらの手紙があなたのもとに
届けられることはありません
手紙をしたためることで満たされた心を
わたしはそっと
文箱の中に仕舞っておくことにしたのです
言葉は無慈悲です
どんな想いも言葉にした途端
哀しく色あせてしまうのですから

あなたの町でもいまごろは
秋桜が咲いて
風にゆらゆら揺れているのでしょうか




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