酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

「ダッカ殉難者」帰国に思う

2016-07-05 08:42:16 | 国際事件
 「ダッカ人質事件」で犠牲となった邦人7人の遺体が5日早朝、政府専用機で帰国した。岸田外相、北岡JICA理事長らが出迎えた。

 専用機近くには白布で覆われた七つの柩が並んだ。花束が手向けられ、黙祷が捧げられた。7人の無念さを思うと胸が塞がる思いである。と同時に、この映像を執拗に流し続けるNHK(ほかは見ていないので分からない)には違和感を覚えた。

 午前7時数分前、ローカルニュースを遮って羽田からの中継が飛び込む。岸田外相が献花するシーンが映し出された。ローカルニュースの前にも十分すぎるほどの時間を割いて専用機帰国を伝えていた。岸田らの献花は地元ニュースをぶった切って流すほどの意味があるとは思えない。そんなことを考えながら眺めているうち、妙な既視感にとらわれた。ベトナムやアフガン、イラクなどで戦死した米兵遺体の帰国シーンである。

 星条旗にくるまった柩。政府や軍関係者が出迎え、儀仗兵が柩を運ぶ。お国のために戦った人々への鎮魂の礼である。

 〝安保法案〟の施行により自衛隊員が海外で戦死する蓋然性が高くなっている。今回の出迎えは、それに備えた予行演習のように見えた。

 途上国支援はJICAの表看板である。脆弱な社会インフラを立て直し、暮らしやすい地域を作り上げる。現地で活動する一線の方々の思いは純粋だろう。だが、巨視的に見れば援助国の海外進出の橋頭堡であることは間違いない。だから中国と競い、欧米と権益争いを繰り返すのである。

 バングラのハシナ政権は野党を力で封じ込め、道路封鎖などのデモを蹴散らした。これに反発する若者らの過激な行為が跡を立たず、昨年は100人以上のテロ犠牲者を生んでいる。こうした流れの中に今回の事件も位置づけられよう。

 事件の犠牲者を悼み、卑劣な犯行を憎むのは当然の心情だが、過度に死者を美化することは慎みたいものだ。

 

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする