脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

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相模原、見せつけるその実力差 -S.C.相模原vs愛媛FCしまなみ-

2011年10月18日 | 脚で語る地域リーグ
 第47回全国社会人サッカー選手権大会(通称:全社)が15日から岐阜県各会場で開催されており、32チームの社会人チームが参加して戦っている。4日目の準決勝は大垣市浅中公園総合グラウンド多目的広場で2試合が行われ、第1試合では関東2部リーグでJリーグ準加盟を果たしているS.C.相模原が四国リーグ王者の愛媛FCしまなみを3-0で下して決勝進出を果たした。

 

 快晴の大垣。名神高速を大垣ICまで走れば会場の浅中公園はすぐそこだ。名神高速の脇にこの準決勝の会場である総合グラウンド多目的広場と決勝及び3位決定戦が行われる陸上競技場がある。長良川球技メドウを彷彿とさせる少し傾斜のあるメインスタンド(柱が少々邪魔だったが…)の先にはコンディションの良さそうな天然芝のピッチが広がっていた。
 この準決勝に駒を進めたのは、まずS.C.相模原。既に説明不要のJFL以下のカテゴリーでは神奈川県リーグ時代の昨年にJリーグ準加盟を果たした規格外のチームだ。先週も関東遠征を行った奈良クラブに6-0とその格の違いを見せつけ、明らかに昨季と比べても大幅にブラッシュアップされた印象だ。特に中盤に鎮座する佐野の加入(J2・北九州からレンタル加入)は大きく、これまでの坂井に加えて大きなゲームメイカーが加わった。GKにもかつて磐田や愛媛で活躍した山本が加入しており、バックアップも含めてその層は厚い。初戦の六花亭マルセイズ戦から危なげなくここまで3連勝。昨季は準決勝で現在JFLの讃岐に零封で完敗を喫した。今季もJFAの優遇措置で地域リーグ決勝大会への切符は掴んでいるものの、実力を誇示するべくこの大会は本気で優勝を目指しているようだ。
 対する愛媛FCしまなみは四国リーグの王者。1回戦のトヨタ蹴球団戦から3戦連続で1点差を切り抜ける辛勝劇の連続で準決勝まで這い上がってきた。特に2回戦のサウルコス福井戦、そして前日の準々決勝・FC KAGOSHIMA戦は延長戦までもつれ込む厳しい試合。間違いなく選手たちの疲労は極限まで来てたと思うが、地域決勝への辞退が報道されており、そうれであれば、事実上この大会が今季最後の公式戦になるだけに優勝で2011年を締め括りたいところ。

 ところが試合は開始早々から相模原のペース。まるで4日目と感じさせない彼らのボール回しには溜息が出るほどで、中盤の佐野、水野、吉岡からどんどんロングボールがしまなみの最終ラインとGKの間を狙って放り込まれる。そこに森谷、齋藤の両FWが走り込んでチャンスを作るのだが、フィニッシュのシュート以外はミスが少なく、その高精度に彼らのタフネスはおろかその技術の高さを再確認させられた。

 
 疲れ知らずの相模原、坂井がボールキープ。

 
 右サイドからチャンスボールを入れ続けた水野。
 柏に在籍する水野晃樹の実兄。

 8分に齋藤がハーフラインからのパスに呼応して左サイドをドリブルで持ち込む。最後のシュートこそ右に外れたが、彼らの先制点は時間の問題だった。12分にその齋藤がシュートを決めてあっさり相模原が先制。14分には佐野からのロングパスを森谷がGKと1対1に持ち込むチャンスを作るが、ここは決められない。少し森谷、齋藤の両FWにこそシュートの場面で連戦の疲れは感じられたものの、チャンスを圧倒的に作る相模原の前にしまなみは防戦一方となった。

 
 驚異的な得点力を誇る相模原・FW齋藤。
 この日も2得点と存在感は絶大。

 
 森谷が佐野のパスに反応して迎えた14分のチャンス。
 これは決定的だった。

 18分には右サイドの水野から絶好のアーリークロスが齋藤へ。齋藤はこれにボレーで合わせようとするが、あと数センチ合わずという場面。隙あればチャンスを作る相模原、27分には相手DFのミスを奪った齋藤が左サイドのゴールライン付近まで持ち込むと、中央へパスと思いきや自分でシュート。これが相手DFに当たりながらもゴールへ。執念も込められたかのような見事なゴールだった。

 
 
 GKと相手DFをぶち抜いた齋藤の2得点目。
 相模原はこれでさらに優位に。

 しまなみも相模原のボールを奪って即座にカウンターに繋げようとするが、工藤、奥山を軸に据える守備陣を突破できない。前半40分のハーフタイムを待たずして最初の交代を施す展開を強いられ、前半は2点のリードを与えて折り返すことになった。

 
 しまなみもキャプテンの山口を中心に好機を狙うが…

 後半に入っても相模原のペースは落ちず、55分に坂井がしまなみのエリア内まで持ち込むと、中央へ走り込んだ吉岡にパス。吉岡が強烈にこれを蹴り込み3点目を奪った。その後は、富井や村野、松本と徐々にバックアップの選手たちを投入する余裕の展開。しまなみは後半の中盤から相模原陣内へ度々ボールを運んだが、最後まで決定的な場面を作れず、試合は3-0で相模原が勝利を掴んだ。

 
 
 工藤(上)と奥山(下)のCBコンビは安定感を欠かずに無失点。

 
 途中から出てくるMF村野。
 視野が広く、彼のプレーも相手チームにとっては厄介だ。

 
 しまなみは同大出身の北森が途中から出場。
 しかしながら、状況を変えられず。

 昨季からの躍進、そして先週の奈良クラブとのテストマッチを見ていても、もはや当然というような相模原の全社決勝進出。少しこの出場チームの中でも頭一つ抜け出た実力のような気がする。特に中盤から前のミスの少ないアタッカー陣は誰もが強烈。そしてそのほとんどがJリーグ経験者だ。ポゼッションで完全に自分たちのペースにできる力がこのチームにはある。先に先制点を奪われたらなかなか持ち直すのは難しいだろう。さて、4日目とは思えない強靭なスタミナと衰えぬ実力を見せている相模原。明日の決勝戦ではいかに戦うか。
 そして、しまなみは悔しい零封負け。序盤からかなり全体的に動きが重かったように思う。しかし、ここまで3日間で3試合をこなしてきたのだからそれは当然。まだ彼らには3位決定戦が残っており、ここで愛媛への帰還を強いられるわけでない。まだ正式発表がされていないものの、選手のツイッターでの発言、そして高知新聞の報道などから11月から始まる地域決勝への出場が辞退する方向と見られている。彼らの最大のモチベーションは、この大会での1つでも上の順位だろう。

 
 3位決定戦でここまでの粘り強さを見せられるか、しまなみ。