脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

初めてのゴール共演 -京都vs水戸-

2011年10月03日 | 脚で語るJリーグ
 J2の第30節、14位・京都がホーム西京極にて18位・水戸を迎え撃った一戦。ここまで7月10日の栃木戦よりホームでは負け知らずだった京都だったが、水戸の吉原、鈴木の2トップの得点によって0-2と完敗。京都は3試合ぶりの敗戦。対する水戸は10試合ぶりの勝利となった。

 

 13:00というキックオフ時間が示すように、暑さが影を潜めてようやく秋を感じさせる10月に突入。絶好の好天になった西京極だったが、ここで対峙する両者の順位は共に14位と18位という芳しくない状況。しかしながら、個人的には長期の負傷から復帰した元G大阪の吉原、そして今季より加入した元日本代表FWの鈴木隆という豪華絢爛な2トップがJ2で見られるとは思えなかった。水戸の試合を生観戦するのは3年ぶり。前回も同じくここ西京極だった。
 ホームの京都は前節、千葉を1-0と振り切った。明らかにこの順位にいるのはおかしいという陣容とサッカー。西京極に足を運ぶ度にその勝負強さを見せてくれるチームだが、アウェイでの戦績が振るわず、好調さを窺わせる中にも27節のFC東京戦では1-6と大敗するなど、決して一筋縄でいかないようだ。しかしその大敗後の草津戦より新布陣の3-5-2が機能し出したようで、宮吉と久保の2トップも好調の様子。この日は秋本の負傷の影響で最終ラインに入っていた安藤が出場停止だったが、内野、森下、酒井という3バックにチョン・ウヨンをアンカーに置いて伊藤、内藤、中山、駒井が並ぶ中盤。前線では宮吉と久保が組んだ。
 対する水戸は5連敗を含む9戦勝ちなしという厳しい状況。しかしそのほとんど敗戦が1点差という試合で、上昇のきっかけは掴めそうな予感。現にこの2試合は岡山、大分に引き分けており、内容はそこまで悪くなさそうだ。練習場が先日の台風の被害でメインの練習場であるホーリーピッチが水没し、那珂総合公園やツインフィールドを転々としながらトレーニングを続けているようで、苦しい戦績に輪をかけて逆境は続く。この日は鈴木隆が先発出場で吉原とコンビを組む。ここまでこの2人が先発で並ぶのはあまり無かったようなので、これには驚いた。ゲームキャプテンは一昨年まで関西大にいた西岡が務めている。

 前半から互いに見せ場を作る試合となった。14分には京都の最終ラインの隙間を縫うように吉原が中央へ入り込み、小澤からのパスをシュートまで持ち込む。ここは京都・GK水谷が防ぐが、吉原のスピードは十分目立っていた。対して京都も30分にチョン・ウヨンが強烈かつ正確なミドルシュート。水戸・GK本間がナイスセーブに遭うものの、直後のCKから京都はDF内野がポスト直撃の惜しいヘディングシュート。35分にはドリブルで中央へ入った伊藤から久保へのスルーパスから久保がシュートを放つが、ここもわずかにバーの上へとシュートが浮いた。水戸は43分にカウンターからの攻撃。ロメロフランクのドリブルからパスを受けた鈴木隆がシュート。わずかに左に逸れるが、水戸の吉原と鈴木隆のコンビは十分輝きを放っていた。

 
 京都の見せ場を作るためには駒井の存在は不可欠。

 
 久保は再三シュートを狙う。
 この3試合で3得点と絶好調だったが…

 
 前半から屈強な当たりの強さを見せていたロメロフランク。
 ドリブルで持ち込む場面も多く見られ、印象に残った。

 どちらも得点にあと一歩という前半を折り返して、後半に入ると水戸は先手を打ってくる。村田に代えて鶴野を投入して右サイドバックへ。そして右サイドバックを務めていた西岡がボランチへとポジションチェンジ。すると、後半開始早々の48分にロメロフランクから小池に繋ぎ、小池から再びロメロフランクに返すと、ロメロフランクがこれを強烈なシュート。これは京都・GK水谷のセーブでサイドラインに逃れたが、直後のスローインから水戸はボールを即座に入れると、京都の守備陣が整う前にロメロフランクから攻め上がった鶴野へ。鶴野の折り返したボールはファーでフリーになっていた吉原が頭で合わせるには十分すぎるボールだった。これを吉原がヘッドで決めて今季初得点。水戸が先制に成功する。

 
 
 待ちに待った吉原の今季初得点。
 喜びはゴール裏のサポーターと共に分かち合う。

 54分には、最終ラインから大きく蹴られたボールが前線の鈴木隆の下へ。鈴木隆は相手DFを背負いながら全速力で駆け込みシュートするもGK水谷の阻止に遭う。まるで2002年W杯ベルギー戦(@埼玉)の時の彼の得点時のデジャヴを思わせるその光景にアウェイ側は沸き立った。ここは得点に至らなかった水戸だが、この直後にGK本間のフィードをサイドライン際で拾った小池が一気にドリブルで突進。京都・DF内野を一気に抜き去ると、そのまま中央へ折り返して難なく鈴木隆が流し込んだ。見事な流れからの展開のみならず、シュートの直前で鈴木隆は相手DFと見事な駆け引き。全く相手を寄せ付けずフリーになっていた。

 
 
 
 まるでベルギー戦の彷彿とさせる場面。ここは決まらず。

 
 
 
 
 
 
 しかし、三度目の正直と言わんばかりにこの得点。
 鈴木隆行、今季3得点目で水戸が追加点。

 後半の序盤で一気に2得点を叩き出した水戸。前半からカウンターの度に前線で躍動する吉原、そしてあらゆる所に顔を出してボールをもらう鈴木隆の動きは際立っていた。決定機こそ京都に分があったが、0-0で折り返せたのは水戸にとっては大きかっただろう。京都の守備陣の手薄な場面を良く突いた。柱谷監督の先手を打つ采配も得点に繋がった。
 その後も2点のビハインドを追う京都がアタックをし続けるが、水戸の守護神・本間の好セーブも光り最後まで得点ならず。2-0と水戸が完封で乗り切り、開幕戦に続く京都戦の勝利となった。

 
 90分間集中した本間の好守も光った。

 
 ゲームキャプテンの西岡は後半からボランチへ。
 ミスが少なく、すっかりチームの主軸。

 
 ゲーム中も激しく指示を送る水戸・柱谷監督。
 何とかこの勝利を上昇のきっかけにしたいところ。

 今季初となる吉原と鈴木隆の先発からのゴール共演。2人が共に前半からピッチに立つと思っていなかったので、揃ってゴールまで見せてくれるとは感無量。こんなことはなかなか生観戦では成し得ないだろうという値打ちのある試合だった。まだまだ十分Jでは力を発揮できる2人と、ロメロフランクや再三見せ場を作った小池など実力のある選手がいるのは確かで、この京都戦だけ見れば、水戸は中位への巻き返しは可能だと思う。震災や台風の影響など逆境に耐えながら戦っているのはサポーターも同じく。チームを引っ張るベテランFWの2人に牽引も含めて、水戸の残り試合は少し気にしておきたい。
 対する京都は、ホームで約3ヶ月ぶりとなる敗戦。ここで勝点3ポイントが積み上げられれば、順位は上がったであろうだけに残念。試合後にはスタンドから厳しい声も飛んでいたが、次節、次々節とホームで徳島、札幌と上位陣を迎えるこれからが正念場。いつも後半に投入されるダンを筆頭に久保、宮吉ら以外のFW陣の奮起が求められる。

 
 
 鈴木隆行、吉原宏太の存在は水戸には大きい。

 
 かなり険しい表情が印象的だった京都・大木監督。
 上位陣との連戦が続く次節から踏ん張りどころ。


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