脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

J20年の矜持 -G大阪vs浦和-

2011年10月04日 | 脚で語るガンバ大阪
 首位を走るG大阪にそれを勝点1ポイント差で追う2位・名古屋と3位・柏、そして4位・横浜FMあたりまでの4強が優勝争いを繰り広げるJ1。第28節を迎えていよいよ佳境、万博ではG大阪の20周年記念試合を兼ねて14位・浦和との試合が行われ、1-0でG大阪が勝利した。これでG大阪は浦和戦公式戦11試合無敗(8勝3分)。加えて1993年のJリーグ開幕戦の初勝利から足掛け19年目にして300勝を達成。150勝の際も含めてそのいずれも浦和戦。記録の面でもその相性の良さを窺わせる20周年記念試合となった。

 

 試合前には20周年記念のイベントとしてG大阪歴代ベストイレブンの投票結果が発表されていた。西京極から阪急とモノレールを乗り継いで約50分ほどで駆けつけると、既にシジクレイのインタビューが行われており、結果の発表中。結果的に、GK藤ヶ谷 DF加地、シジクレイ、宮本、山口 MF橋本、明神、遠藤、二川 FWアラウージョ、エムボマという内容だった。やはり2005年のリーグ優勝時のメンバーが人気、実績ともに圧倒的な支持率。それを考えると、低迷期のG大阪を支えた稲本(現川崎)のアーセナル移籍がもう10年前の話だということにも気付く。リーグ優勝以来、新規のファンが増えたなという印象で、メインスタンドは特にその印象が著しい(アラウージョのビデオレターの際に反応が薄かったのは寂しかったが…)。しかしながら、当日のマッチデイプログラムには礒貝や本並、木場、實好に永島という懐かしい顔ぶれも登場していた。20年という歴史の重みをしみじみと感じる(ちなみにG大阪の全身である松下電器サッカー部は奈良県リーグからのスタート)。続いて、キックオフ前にはヘリコプターによる試合球の投下など非常に手の込んだ企画でスタジアムは盛り上がる。もっとも、スタジアムDJの仙石氏のカウントダウンとヘリコプターの呼吸が一切合わず、何度もヘリコプターが行っては帰って来てという流れには笑ってしまったが、何よりそのアクシデントに間髪入れず「やり直せ」コールの大合唱を始める浦和サポーターの秀逸なブーイングも含めて、2000年代のJリーグを牽引してきた両者がこういう形で対戦できるのは感慨深い。思えば、1993年5月16日のJリーグ開幕戦もこの対戦カード。個人的にJリーグを初観戦したのも1993年ニコスシリーズ第3節の浦和戦だった。という訳で非常にこの試合は楽しみでもあった。

 
 20周年記念ベストイレブン。
 エムボマのランクインは時代を感じる。

 
 シジクレイが試合前にインタビューに応える。
 試合キックオフ時にはキックインも。

 
 
 ヒヤヒヤしたヘリからの試合球投下。
 確かにスタジアムDJとの呼吸を合わせるだけでも大変(笑)

 肝心の試合の方は、前回対戦時には1-1の引き分けだったこともあって、両者ライバル意識も相まって激しい試合になったことは確かだ。G大阪はこの試合に合わせて下平が左サイドバックに復帰。そしてセンターバックにはこれまでの高木ではなく中澤が戻ってくるなど、前節・甲府戦の敗戦を意識したメンバーチェンジでほぼ現状のベストメンバーといえる内容。何よりも昨季からの負傷で長らく戦列を離れていた橋本のベンチ入りがトピックスだった。
 対する浦和は、なんとここまで直近8試合で1勝3分5敗という厳しい戦績。今季は序盤に3連敗を喫した後で14試合でわずか1敗と負けてはいなかったが、9試合の引き分けとほとんど勝利には至っていない。ここに来てまた直近6試合では未勝利と不調に喘いでおり、柱谷GMの解任などチームは揺れている真っ只中といえるだろう。何より試合前の時点で降格圏内の16位・甲府との勝点差がわずか2ポイントという状況だった。3試合連続無得点という状況を打開すべく、この試合ではエスクデロではなく途中加入のデスポトビッチが先発に名を連ねた。

 
 下平、中澤がカムバック。
 優勝争い真っ只中で連敗は許されない。

 これまでの系譜からしても、1点を争う試合になるだろうと予感したが、予想以上にこれまでの浦和戦と比べても力の差が歴然という内容。圧倒できるリードこそ作れなかったが、前半のうちに先制できたのはG大阪にとって大きかった。28分に驚愕のロングパスが遠藤から出され、これに走り込んだイ・グノが流し込んで先制点を奪う。

 
 
 
 圧巻の遠藤のパスからフィニッシュはイ・グノ。
 相変わらず決定力の高さを見せてくれる。

 
 山口と組んだのは中澤。
 やはり信頼感と安定感では高木にリード。

 前半からG大阪が浦和を圧倒。得点こそ1点に留まったものの、浦和にチャンスをほとんど作らせず後半へ。すると、浦和は野田に代えて山田暢を投入。64分には梅崎を小島に代えて投入してくるなど浦和も成せる術を使って攻勢に転じようとする。しかし、後半も依然変わらずG大阪のペースは変わらない。その攻勢にラフィーニャが再三チャンスをフイにする場面が相次ぎ、溜め息が漏れる。彼さえフィニッシュでミスが無ければもっと大差がついていたゲームだった。結果、1-0でG大阪が勝利をもぎ取る。これで浦和戦は11戦無敗ということになった(8勝3分)。

 
 浦和は、司令塔・柏木がドリブルで切り開こうとする。

 
 原口も自由に持たせれば怖い選手。
 しかし、その自由を与えられなかった。

 
 試合ごとに成長が感じられる武井。
 バックアップメンバーを返上する今季の活躍。

 
 
 ああ...ラフィーニャらしくないシュート場面のミスが相次ぐ。

 この試合、先制点の場面で度肝抜かれるロングパスを通した遠藤もさることながら、二川の存在感が凄まじかった。ボールを簡単に取られないキープ力、パスコースを瞬時に見出す視野の広さ、また、そこにパスを出せる技術と随所で二川らしさを披露。アディショナルタイムにベンチに下がるまで約90分間その存在感を見せつけてくれた。
 また、アディショナルタイム直前には負傷で長らく戦列を離れていた橋本が今季初出場。万感の拍手でピッチに送られる。入っていきなり左からの折り返しをダイレクトシュートという場面があったが、これはミートせず。優勝を狙うG大阪にとって心強い頭脳派が戻ってきた。

 
 二川は今季も衰え知らず。
 30歳を迎えた今季、さらに円熟味を増すプレー。

 
 大きな拍手と声援で迎えられた橋本。
 20周年記念試合ということで采配も粋だ。

 ところが残り6試合というところでこの試合で足を痛めた加地が骨折と診断される事態に。この試合でようやく下平が左サイドバックに戻ってきたにも関わらず、再びサイドバックの人材不足に泣くことに。これは何気に痛い。果たして代役は誰が務めるだろうか...と考えを巡らせるところにG大阪の悩ましい一面がある。次節は3位につけG大阪を4ポイント差で追いかける名古屋とアウェイで対戦。ここに競り勝ち、柏とのデッドヒートを制することができるか。6年ぶりの優勝は確実に意識できるところまで迫っている。

 
 
 ラフィーニャが途中加入にも関わらず、この2人で20得点。
 この2人の決定力にかかっている。