脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

天運在我 -vsアイン食品-

2011年07月17日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグは第11節に突入。ここまで無敗で首位を走る奈良クラブにとっては、いよいよ優勝実現の可能性がある。まず目の前の試合に勝つという最低条件は必要だったが、前期唯一勝てなかった(2-2)5位・アイン食品と対戦。関西リーグ昇格以降、ここまで公式戦で未勝利だったそのアインを相手に5-1で勝利を収め、明日の残り試合の結果に今節での優勝決定を託すことになった。ちなみに明日の7位・TOJITSU滋賀FCと2位・バンディオンセ加古川の試合で加古川が引き分け以下で奈良クラブの関西リーグDiv1初優勝及び、全国地域リーグ決勝大会進出が決まる。

 

 今節の試合会場は、長居第2陸上競技場。このスタジアムといえば、3年前に奈良クラブが奈良県リーグから関西リーグに昇格を決めた場所。もちろん、輝かしい過去ばかり見えてくる場所でもない。昨年は2つもカテゴリーが下のFC大阪(大阪府1部)に全社関西予選で悔しい敗戦を喫した場所でもある。そんな悲喜こもごも詰まったこの場所で、優勝に繋がる1勝を追いかけた。

 奈良クラブは、今季ほぼ不動のメンバーと布陣を貫く。お世辞にも選手層は厚いといえないチーム事情があるものの、この完全に固定した布陣の連携度はリーグを戦うごとにブラッシュアップされている。この日もここまで5試合連続得点中と絶好調の牧を前線の頂点に、コンビを組むのは檜山。中盤ではセントラルMFを李と三本菅が組み、両サイドを小柄な辻村兄弟が隙あらば前線に飛び込まんという形で編成される。

 アインには前期の対戦時も奈良としてはかなりボールを回せた試合だった。数少ないシュート総数で相手を上回ったデータがそれを物語っている。ところが、あの試合では最後の最後に逆転したと思ったら、そのまた最後、本当にラストワンプレーで相手の2点目を献上してしまいやられてしまった。今季は出だしがかなり良かったが、やはり勝負事は甘くないということをサッカーの恐怖と共に教えてくれた試合だった。
 今日の試合は、前半序盤から陣形を崩さず、きっちり守備から落ち着いて入れた。相手FWがボールを持っても決して数的不利に持ち込まれることはなく、マイボールにできる時間が増えた。18分、吉田の左からのクロスに牧がジャンプしながら右足のアウトサイドに「チョン」と当ててループ気味にゴールネットを揺らす。これで今季10得点目。6試合連続得点と本当に止まらない。そこまでハードワークしていないが、何よりポジショニングの良さは抜群。効率的にゴールを陥れることができる選手だ。

 

 28分にはそれに負けじと、檜山がエリア内まで一人で持ち込んで得意の右足でシュートを決める。自分なりのリズムで突破を図る彼の「らしさ」が出た場面だった。

 

 ところが、32分に三本菅のファウルで取られたPKを坂本に決められて2-1とされる(ここはさすがに日野は止められなかった)。前半を1点リードで折り返す。

 PKとはいえ、相手に1点返されたことで、これでアインを乗せてしまうのは嫌だなと感じた。ところが後半が始まると、49分に辻村隆が右サイドを突破してシュートを決める。この大卒ルーキーも今季これで5得点目。本来ならばこのあたりで相手の息の根を止めたといった感じだが、今季の奈良クラブは完全なる「後半型」。前半以上にパスがぐいぐい繋がり、ポゼッションを作っていける。この試合もその例に漏れなかった。
 交代選手も含めて、吉田監督は徹底して同パターンを貫く。だいたい投入のタイミングも同じだったりするが、この日はなんと3-1というスコアで眞野に代えて谷山を投入する。CBとCBの交代。後から聞いた話では、前期のアイン戦で最後の同点弾を許したのは谷山のミスだったこともあり、吉田監督にリベンジのチャンスが託されたのだという。寡黙ながらも人情味にも溢れた采配も見られた試合。この後、矢部が投入されて更に試合は動く。

 81分、その矢部が辻村隆から左サイドのエリア手前でボールを受けると右足を一閃。「ゴラッソ」と呼ぶべき渾身のシュートがネットを大きく揺らして4点目。終了間際には牧の折り返しを相手DFがオウンゴールしてしまい、今季初の5得点快勝劇となった。

 リーグ戦は次節まで約2ヶ月間のインターバル。その前に優勝を決められるかもしれない。やれることは全てやった。11試合負けなかった。天運は明らかに我にあり。そう思わせてくれるここまでの快進撃。果たして明日これが早めの結実に繋がるだろうか。楽しみだ。


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