脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

サッカー専門誌も時を刻む

2008年02月28日 | 脚で語るサッカーギア


 いやはや、まさかワールドサッカーマガジンが休刊になるとは。現在発売中の3/6号にて「完全保存版 ワールドサッカークロニクル」なる大々的な特集を組んでいるので、何を今さらなんて思い買って開いてみると休刊宣言が書かれていた。2008EUROを迎える今年の春からは新たな形で情報発信していくとのことだが、一体どうなるのか。ここ最近では、「ワールドサッカーキング」なる同じ類の新雑誌も登場していることもあって、やはり売上の伸び悩みが大きな要因なのかもしれない。

 幼少の頃から、専門誌は常に部屋に溢れていた。小学生の頃に夢中だったのは「Jサッカーグランプリ」。覚えてらっしゃる方もいるだろう。当時開幕したばかりのJリーグをメインに写真中心の構成で、おまけに子供心をくすぐるポスター2枚付きという魅力の専門誌であった。筆者は読者コーナーによく投稿していたものである。かつてG大阪でプレーした久高友雄(故人)を追いかけ、まだJFLを戦うC大阪時代の久高氏と撮った写真が投稿コーナーに載ったのが良い思い出である。
 さすがに知識と教養が付き始めた中学生時代は、学研の「ストライカー」、BBM社の「サッカーマガジン」、日本スポーツ企画出版社の「サッカーダイジェスト」へと傾倒していく。サッカー好きなら当然のプロセスながらも、最初はまんべんなく気に入ったものを買って、あとはひたすら立ち読みというスタンスだった。

 やはり、サッカーダイジェストと比べると写真の比率が多かったサッカーマガジンが中学時代の愛読書に落ち着いたのは無理もない。とにかくJリーグの比率を重視していた。まだ欧州サッカーに関してはお世辞にも「ファン」とも言い難かった。かつては現在と違って、1枚の写真がそのまま表紙になることが大半で、今でも印象に残っている表紙は数知れない。
 そう考えると、昔持っていたサッカー誌を全て今でもそのまま残していれば「お荷物」にはなるが、最高の情報ソースとしても大いに役立ったであろう。大半が廃品回収の餌食になってしまい、わずかながら手元に残っている昔のものを読み出したら止まらなくなる。たまにブックオフなどで昔懐かしい表紙に出会えば、感嘆の思いと共に即買いの対象として手が出てしまうものだ。

 現在、完全に購買対象になっているのはサッカーダイジェストとワールドサッカーダイジェスト、及びサッカー批評やJ'sサッカーあたりである。個性的な有識者を揃え、読み応えのある記事で誌面を展開する日本スポーツ企画出版社の専門誌に比べ、近年のBBM社の専門誌は、冒頭に書いた「サッカークロニクル」のような懐古的特集ばかりで誌面における企画内容の頭打ちさを感じさせていた。そんなことを思いながらも興味本位で、そして情報ソースとして持っておきたいと思わせる企画もあり、中にはくだらないながらも最近はBBM社の両誌にも手を出す機会が多かっただけに今回のワールドサッカーマガジンの休刊宣言は非常に残念である。

 筆者も定期購読しているが、サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の登場は確実に国内のサッカー専門誌のスタンスに少なからず影響を及ぼしたのは確か。新聞ならではの即効性のあるレビューでシーズン中は「エルゴラッソ」のストロングポイントをつくづく感じさせるし、それ以外でどれだけ読者を引きつける特集を組めるかという企画力が現在の週刊専門誌には求められているところだ。また、そうなってくると、サッカーマガジンとサッカーダイジェストの競合は一段とヒートアップしてくる。ニューズ出版のJ'sサッカーのようにこれまで無かったサポーターをメインに取り上げる新たな視点を持った専門誌すら台頭してくる時代となった。

 そして、国内はさておき、欧州をはじめとする海外サッカーに関しては、日本人における“質の高い”有識者の絶対数が少ないことは今回の原因であることは否めないだろう。“ワールド系”は大抵、現地人記者が寄稿したものを編集している内容が多い。木村浩嗣編集長が手掛ける「フットボリスタ」のような日本人主導による一味違う海外専門誌が本来増えるべきではあるのだが。
 スカパー!の普及で、誰もが容易にプレミアシップやセリエAなど海外サッカーをライブで観られる御時世となった。それだけでなくインターネットからも日夜溢れ出す多くの情報を取捨択一して、自身の持論を掲げることほど難しいものはない。日本人が海外サッカーについて書けないのは、完全にその多くの情報に対して「受動化」著しいからかもしれない。欧州や南米などはなかなか現地観戦が容易ではない。しかし、自ら出向いてその雰囲気や文化性を体に染み込ませなければ、本当の海外記事は書けないだろう。自ら掘り探っていく熱意と努力が求められるのである。

 これから、従来のものとは一線を画した、さらに面白い着眼点で誌面を展開する書籍メディアが出て来てほしいものだ。サッカーの歴史と文化の発展、日々時を刻んで進化を遂げる鼓動がサッカー誌からも伝わってくるようになった。ワールドサッカーマガジンの休刊はネガティブなことではない。新たなステージで我々を楽しませ、考えさせてくれる新たな媒体を必ず提供してくれる試金石だと個人的には感じている。