脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

日本代表の弱体化する精神力

2008年02月18日 | 脚で語る日本代表


 なんて決定力に乏しいチームなんだと日本各地で怒りの声が噴出していそうな結果となった東アジア選手権の北朝鮮戦。1-1のドローで終わったことよりも内容を紐解けば、負けてもおかしくなかったという戦いぶりとなってしまった。

 かつての代表と比べても、今の日本代表には国際舞台において強烈なアウェイの洗礼を食らっている選手が少ないということと対照的に、先制点を奪った北朝鮮の鄭大世は本当に堂々と伸び伸びプレーしていたように思う。確かに開催地が反日感情剥き出しの中国で、彼らが北朝鮮に惜しみない声援を送ったのは大きなパワーとなったに違いないが、それにしても前半の立ち上がりから「勝利への姿勢」でその差は大きく出ていた。間違いなく北朝鮮の方が勝負に対して貪欲だったし、格上の日本に委縮する場面は見られなかった。前述の鄭大世がその象徴だ。
 日本はそんな北朝鮮にあわやという局面を数多く作られた。会場の異様な雰囲気と北朝鮮の闘志剥き出しのプレーが日本のリズムを狂わし、DF水本の憶測ミスから先制点を奪われた。後半何とか前田のヘッドで同点に追い付くものの、この日のFWはほとんど仕事をさせてもらえず。日本が誇る巧手の宝庫である中盤でさえも1ボランチのシステムが劣勢のきっかけとなることもしばしば。前がかりになりすぎて、前線からのミスで高速カウンターに肝を冷やすことの繰り返しであった。

 4年前に日本が優勝したのアジア杯の会場でもあった重慶。しかしこのチームに当時を知る者はごくわずか。前述にもあるように、あの極限の戦いを経験している者が少ないことがこのドローには無関係とは言えない。云わば「精神力」の面で、日本はその未熟さを露呈した。メンバーを大幅に入れ替えたことが「吉」とならなかったわけではない。チームとして勝つ姿勢と意欲に欠けていたということが最大の要因である。
 そして、サッカーライターの杉山茂樹氏も強烈に以前から訴えるように、岡田監督の目指すサッカー像も正直全く伝わってこない試合でもあった。事前の練習からその起用が確実視されていた左SBの加地。試合中は本来右利きで右SBの選手だけに左足でコントロールしてからのクロスや仕掛けはほとんど無かった。かといって逆サイドの内田が強烈に良い働きをするでもない。日本代表が近年抱える問題とも提起できるが、あまりにサイドアタッカーが貧相である。後半20分から出場した安田が輝きを放ったのはそのせいでもあるが、1アシストと結果を残したように積極的にゴール前に仕掛ける彼と比べれば、クロスの精度も含めて内田と加地の両スタメンはあまりに機能していなかったと感じる。確かにこれではいくらサイドアタックを攻撃の軸に標榜しても結果は出ないだろう。

 この大会におけるタイトルの意義は正直薄い。いくら岡田監督が優勝を狙いに行くと断言しても、ピッチでそれを具現化する戦術、選手の覇気はその温度から遙かにかけ離れている。鄭大世のような気迫とサッカーをする楽しさを前面に出す選手が皆無と言っていいほどであった。
 さすがに快勝で終えたW杯ジア3次予選のタイ戦で、ある程度の評価を受けた岡田監督のサッカーも早々このザマでは信頼を勝ち取るのは難しい。戦術うんぬんよりもまずは精神力の鍛練が必要だろう。そうでなければ、次の中国戦は敗北すらあり得るかもしれない。
 結果次第では、選手と岡田監督の目指すサッカーに歪みすら生じてしまう恐れもあるが、まずはそこを強い精神力で乗り切ることが必須だ。まだまだアジアの中でも突出した強さを持ち合わせていない日本の戦いぶり。今週、その塊のような中国とやる上では、戦術よりも先に泥臭く勝利を狙う精神力を持ち合さなければ簡単に足元をすくわれる可能性は非常に高い。