脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

2008バージョンG大阪封切り

2008年02月21日 | 脚で語るJリーグ


 ハワイのオアフ島で行われているパンパシフィック選手権初戦、LAギャラクシーと対戦したG大阪は1-0で勝利し、このタイトルに王手をかけた。2008年シーズン最初の公式戦となったこの大会には、確固たる自信と連携面での好感触が窺える新バージョンのG大阪がそこにはあった。

 LAギャラクシーの注目選手として、ベッカムがいたことはほとんど話題に上らない。強いて言えば、そのワールドクラスの右足は健在ということか。きっちり合せてくるロングフィードとその精密なクロス以外にLAギャラクシーというチームはほとんど持ち味を出せず、往年の名選手であるルート・フリット監督の目指すサッカー像はほとんど見えなかった。
 
 そんな中、代表組を片っ端から招集され、グアムキャンプから連携を図ってきた今大会遠征メンバーは躍動していた。新加入のミネイロ、山崎、ルーカス、佐々木と続々とスタメンに名を連ねる選手たちに加え、武井、福元といったメンバーも交代出場でそのコンディションの良さをアピールした。既に長い期間キャンプを行っていることで、運動量は90分通してLAを凌駕していた。その中でも最も好感触を得たのはこの日左SBに入ったミネイロの好パフォーマンスだったろう。かなり攻撃にウエイトを置いたポジショニングで左サイドを駆け回った。その積極的な攻撃参加が時にLAのカウンターに対応しきれていない部分もあったが、ボディコンタクトにも優れ、足下のボールの処理も非常に非凡な能力を持っている。枠こそは捕えられなかったが、来日前から定評のあった強烈なFKも披露してくれた。何よりもバレーの先制点は彼の攻撃参加から生まれたものであり、充分及第点の出来と言えるだろう。
 そして、ルーカスと山崎はかなりバレーを生かせる。それを証明するように先制点も含めてこの日のバレーはシュートを再三放つチャンスに恵まれたが、衛星的に彼の周辺を動き回る山崎のフリーランニングとルーカスにボールが収まることからのチャンスは多かった。バレーが最も得意なシュートレンジであるDFラインの裏スペースを効果的に作り出せていただろう。

 DF陣も久々に90分のフル出場を遂げた中澤が気を吐いた。長身選手を揃えるLAの前線を封じ、チームにリズムも与えていた。そして右SBでプレーした佐々木も再三そのサイドを狙われたが、運動量で格の違いを見せつけたといった感じだ。後半その彼に代わり出場機会を得た福元も慣れないポジションながら無難にこなした。ともかくここに加地、水本と安田理が帰還するのだから、本当に開幕戦のメンバーは予想しがたい。コンビネーション不足を考慮して、このままのメンバーでいってもおかしくないぐらいだ。

 より一層のキーマンぶりを見せつけたのは明神と山口。この日は1ボランチということもあってボールが集まり、「捌き役」となる場面も多かったが、危険地帯に必ず顔を出すその察知能力は“流石”の一言。もはや遠藤不在時には彼なしでG大阪は回らないと言っても過言ではない。ミネイロの顕著な攻撃参加スタイルのために左サイドのカバーリングに奔走したゲームキャプテン山口も相変わらずの安定感と昨季以上の風格を見せつけた。

 代表組不在の苦しい状況下で迎えた公式戦初戦。しかしながら、毎年チームとしてのリノベーションを見せるG大阪は最高の楽しみを今季は与えてくれそうだ。LAギャラクシーの期待外れの低調ぶりを差し引いたとしても、これはますます代表組との融合、そしてシーズン開幕が楽しみになってきた。
 ACLも戦う今季は、フルスロットルで駆け抜けなければならない。しかし、今季のG大阪の選手層の厚さとその質ならば、それも決して不可能ではないはずだ。

 一方で、スタンドはガラガラ。ケガと隣り合わせとも言える質の悪い人工芝ピッチはボールのバウンドもかなり変化を与え、おまけに中継を見ていても、国際規格のピッチサイズとは明らかに縦横の長さが足りていないその様子は、良質な選手を台無しにしてしまうほどの劣悪ぶりで、LAの28番フランクリン選手などはターフ用のトレーニングシューズでプレーする始末。適当なレギュレーションとその環境の悪さに、改めてこの大会の価値には首を傾けざるのを得なかったのもまた事実であった。

 決勝の相手はヒューストン・ダイナモ。幸先よく目の前のタイトルを獲りに行こうではないか。