おにぎり2個の里みち歩き 農山漁村の今昔物語

おにぎりを2個持って農村・山村・漁村を歩き、撮り、聞き、調べて紹介。身辺事象もとりあげます。写真・文章等の無断転載禁止

大間々扇状地扇端の江田沼  湧水涸れる <農村の水24 >

2011年06月17日 00時00分00秒 | 農村の水

写真1 降雨で水位上昇の江田沼(えだのぬま)


写真2 沼の周りは公園に整備され、清々しい。「新田環境みらいの会」など地域の皆様が整備されているのであろう


写真3 電動ポンプ小屋。江田沼に替わり、伏流水・地化水を汲み揚げ、田んぼなどへ送る


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 群馬県の旧新田郡新田町の江田沼(えだのぬま)
 大間々扇状地の扇端部にある沼
 扇端部の沼の中で最も低い標高に立地
 矢太神水源(弊ブログ2011年06月16日)から2㎞ほど扇状地を下った所にある

 まず、江田沼の現状について、近くに住む男性(1936年・昭和11年生まれ75歳)が次のように教えてくださった
(以下、< >は筆者の質問あるいは返答。「 」は男性のご教示。( )は筆者の補足)
 <ここ(江田池)は自然の湧き水ですか>「昔は湧き水で、いつも水があったんですけど、こゆう側溝ができたりして地下水がだんだん下がったみたいですね」
 <湧き出すのが少なくなった>「えー、湧き出すのが少ないですね」
 「夕立とか、梅雨どきとか、雨が多いと一応溜まるんです」
 <それ以外は溜まらなくなった>「はい、だいたい、10月頃、雨が降らなくなってから春さきまでは干上がっちゃうんです。それと、周辺の泥が流れ込んで、昔の深さよりずーと、あのー、底が高くなっちゃった。そいで、ま、地下水ってのは、ほとんど出なくなった」
 「昔は、1年中、どっからか、こー、地下水が浸透して溜まってたんですけど、底が浅くなったのと周辺が整備されて周辺の地下水自体も下がったから、湧き出すってのがなくなった」
 <これから、矢太神水源と重殿水源へ行くんですけど>「上の方(矢太神水源や重殿水源の方)は、ここよりは、地下水位もそんなに下がってないし、赤城からの地下水が伏流水となって、ここへん(辺)で、こー、出てきている。ここは、もー、一番シモ(下)の方に入る」
 <ここからシモ(下)に、こゆう沼はないですか>「ここで終わりみたいです」
 「ここから1キロぐらい先の所に石田川ってのがある。そこに、直ぐ、こゆう水ってのも流れて行ってしまう。昔は、ヨウスイボリ(用水堀)って、ここらへんの田んぼの時季なるってゆうと、農家の人が浚って綺麗に手入れしたけど、今は、もー、地下水汲み上げるんですよ。ほとんど、そんな目的(農業用水に使う目的)もなくなって。そんで、ま、年々、こゆ土が流れ込むしね、夕立の時、そいで、池の底自体がヘドロで、こー、溜まってしまって」
 「昔の面影はなくなったって、土地の人は言ってますよね」


 次に、江田沼から矢太神水源(ヤダイジンスイゲン)へ向かう途中、石田川左岸の畑で作業中の男性農業者(1928年昭和03年生まれ83歳)が教えてくださる。
 <(矢太神水源は)石田川に沿って行けばいいですか>「うん、石田川のズーと見えるムラ(「村」:近世期の村に系譜をもち、連綿と続く自治的集団。「むら八分」のむらに当たる。行政単位の村ではない。以下同じ。)がそうだから」
 「川のハタがズーと行けるから(石田川の堤防をズーと行けるから)。そいで、ヒトムラ(一つのムラ)越してやからね」
 <ヒトムラ越して次の村なんだ>「ムラってゆうより、ウチがなくなっちゃうとこなんだね」
 <ここは、赤城の伏流水が出る所でしょ>「うん、そう、そう」
 <江田の池が一番端(はし)の方みたいですね>「江田の池は、山がある時は水があったんだけど、今ねー」
 <ない>「うん。今日は、(昨日雨が降ったので)ちょっと溜まったんねー」
 <いつも涸れてんですか>「もー、時季なると涸れちゃう、春は涸れちゃうねー。ここ、雨が降ったから」
 <昔は赤城の水が出てたんですか>「赤城の水だか、なんだかしんねけど、向こうがズーと山林だったから、だから(水が)年間あったんだよ。ウナギなんか、こんな、でっけーのが」
 <ウナギもいたんですか、でっかいのが>「あー、いたんだ。だけど、目がつぶれなんつって」
 <獲ると>「うん」
 <獲っちゃだめだったんだー>「獲っちゃだめ」
 <矢太神沼が石田川の>「水源地」
 「重殿は、イクシナ(生品)でね、イチノイ(市野井)にある」
 「向こう(重殿)は、オーカワ(大川)の源流なんだよ、ちっさい川だけどオーカワ」


 上記2人のご教示から、湧水枯渇の要因は次のように考えられる
  ①山林の開発や伐採による保水力減少
  ②扇状地開発による雨水の河川への直接流入と地下浸透水減少、すなわち伏流水減少
  ③江田沼周辺の開発による地下水位の低下と泥流入
  その結果
  ④農業用水源として江田沼は使われず
  ⑤土地改良事業で地下水・伏流水の電動ポンプ揚水となり
  ⑥農業用水路や沼は浚渫されず、昔日の面影はない

 大間々扇状地湧水の行く末を想起させる江田沼である。
 最後に、江田沼の禁忌習俗としてウナギの捕獲禁止があったことを知る

 謝辞:丁寧に教えてくださった上記のお二人に感謝致します
 執筆・撮影者:有馬洋太郎 撮影年月日:2011年06月04日 撮影地:群馬県太田市・新田中江田町(旧新田郡新田町)

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