あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

朝日新聞・天声人語より

2010-12-19 20:43:00 | インポート

19日付けの朝日新聞「天声人語」に,人生について深く考えさせる秀句(短歌・俳句)が掲載されていましたので,その句に対する感想を添えて紹介します。年齢的にも共感を覚える世代に入りつつあるからこそ,しっとりと心に感じるのでしょうか。

○ 「生きてるよ」 そのことだけを 知らせんと 出口をわずか 雪踏みにけり

                 山形市 大沼 武久 作

雪深い地域なのでしょうか。雪下ろしも体力的には難しく,生きているという事実を知らせるためだけに出口の雪踏みをする……雪国の厳しさを実感させる短歌です。隣の家とは,かなり離れているのでしょうか。外へ出るのも,大変な積雪なのではないかと思います。安否の確認だけではなく,誰かに我が家を訪ねてほしい…そんな人恋しい思いも感じます。すぐにでも出かけて行って,声をかけてあげたくなります。しかし,そんな中でも自らの生と存在を知らせようとする雪踏みをする姿に,生きる強さとたくましさも感じます。厳しい中でもこれまでしっかりと生きてきたという自負とその生の重さを感じるからでしょうか。

○ 齢(よわい)のみ 自己新記録 冬に入る

                      三橋 敏雄 作

日々,生きることで齢を重ねていくことに改めて気づきます。生きることは他の人との競争ではなく,自らの生を刻む営みでもあります。今日を終えることでまた1日,1年を終えることでまた1才,生きる長さの記録は更新されていきます。若い時代を生き,壮年の時代を生き,冬に入るのを辛く感じる老年の時代を生きていくのが人生なのでしょうか。冬の寒さや厳しさに敢然と立ち向かい乗り越えながら齢を重ね,自己新記録の更新を図っていきたいものです。

○ 嗟(さ)する勿(なか)れ 旧歳(きゅうさい)の別れを

       ……去り去りて回顧する勿れ 君に老(ろう)と衰(すい)とを 還(かえ)さん

              宋の時代の詩人  蘇軾 作

新聞の解説によると,これは忘年を意味する「別歳」(べっさい)という一作で,『行く年よ振り返らずさっさと去れ。お前に私の老と衰を返すから,持って行ってくれ』という意味だそうです。生きることに対するしたたかさとも言える強さを感じる一節です。去りゆく年には,老と衰だけではなく,いやなこともすべて持って行ってくれと言いたいような気がします。そして,来る年には新たな力と希望を持ってくるようにとリクエストしたいものです。

ひょうひょうと時の流れを渡る蘇軾のように,おおらかに来る年を迎えたいものです。

○ 九十の 端(はした)を忘れ 春を待つ

                     安部みどり女 作

ここまで悟りを開くことができたら,すばらしいですね。まさに年齢や些細なことにとらわれず,悠々と新たな春を待ちたいものです。人生とは日々新たなり,また新たなり……前を見ながら,明日への一歩を踏み出し,新たな春を迎えたいものです。