三冊の大好きな絵本のうち一冊については前回のブログで紹介しましたので,今回は残りの二冊をまとめて紹介したいと思います。二冊とも作者は五味太郎です。
○ まどからのおくりもの<しかけ絵本> 五味 太郎 絵・文 偕成社
これは,楽しい しかけ絵本です。トナカイのひくソリに乗って登場するはずのサンタクロースが,ヘリコプターに乗ってやってきます。さっそく,プレゼントを配って歩きます。ところがです。まどから見えた顔やもよう,かたちに合わせて,サンタはプレゼントを置いて来るのですが<くまさんのところは,まどからまっくらでだれもいないように見えたので,プレゼントはなしになったのですが>,それがどうやら違っていたのです。絵本では,窓の形がくりぬいてあって,中の様子が見えるようになっています。そしてそのページをめくると,部屋の中の様子が描かれていて,窓から見えたものがかんちがいであったことに気づくようになっています。そんなそそっかしいサンタさんからもらったかんちがいのプレゼントだったわけですが,みんなもらったプレゼントは気にいったようでした。もらえなかったくまさんにも,プレゼントを2つもらった男の子が1つ分けてあげたので,みんながプレゼントをもらいニコニコ顔でした。
窓から見えた世界と,次のページをめくって見えた世界の 予想を超えた違いに,思わずにっこりしてしまいます。窓を入口にしながら,次の場面へ次の場面へと楽しく想像がふくらむ絵本です。
あわてんぼうのそそっかしいサンタも,かわいい感じのサンタで親しみがわいてきます。まちがってとどけられたプレゼントも,みんな気に入っているところに,作者五味さんの温かいユーモアを感じます。
○ クリスマスには おくりもの 五味 太郎 絵・文 絵本館
三冊の中でも,一番のお気に入りが,この絵本です。登場するサンタクロースが,とっても人間的なところがこの絵本の魅力です。女の子のやさしさにも感動します。
真夜中にサンタがやってきます。毎年プレゼントを届ける女の子の家にやってきて,サンタは驚きます。くつしたにプレゼントを入れようとした時,自分宛てのプレゼントが入っていたのです。サンタは,とてもうれしくなり,だいじにおくりものをかかえて家へ帰ります。じつは,サンタもちょっとそんな気がしたので,自分のベッドにくつしたをさげていたのです。サンタは,自分で自分のくつしたにおくりものを入れ,ベッドに入りました。何が入っているのか気になり,開けちゃおうかなと思いましたが,朝がくるまでがまんすることにしました。次の朝,おくりものを開けて,サンタはやった!やった!と大喜びします。中には,足にぴちっとするあたたかいくつしたが入っていたのです。冷たい雪道を歩くサンタが,少しでもあったかくなって歩くことができるようにとの思いを込めた女の子のおくりものでした。女の子のサンタへのやさしさがあたたたかく心に伝わってきます。その気持ちのよいくつしたをはいて,サンタは教会に行きます。女の子がもらったプレゼントも,女の子が願っていたくつでした。そのくつをはいて,女の子も教会に行きます。サンタは,その女の子を見て,こう思います。
『すてきな女の子になったものだ』
私も,全くサンタと同感です。クリスマスにその人が一番ほしがるものをおくりものとして用意するような女の子に成長したのですから。プレゼントをもらうだけの側から,あげることもできる側に変わった女の子。まるでもう一人のサンタクロースが誕生したような絵本です。
おくりものをとってもうれしく思い,家路を急ぐサンタ。サンタが,くつしたをさげていたのには笑ってしまいました。とっても人間的で親しみのもてるサンタです。おくりものを開けないでがまんするところも,いいですね。ますます親しみを感じます。そして,おくりものであるくつしたに込めた女の子の思いを温かく受け止め,その人間的な成長を心から喜ぶサンタが,最高にいいですね。
前のブログで紹介した絵本『サンタクロースってほんとにいるの?』の中に,『サンタクロースはね,こどもをよろこばせるのが なによりのたのしみなのさ 』という一節があります。私は,この一節をさらに広げ,サンタクロースは,人をよろこばせるのが,なによりのたのしみなのさ という表現にできたらいいなと思います。この女の子のように,こどもであっても,すてきなサンタクロースになれるんですから。人をよろこばせることができる人は,だれだってサンタクロース!サンタクロースは,白いひげや赤い服がなくても,サンタの気持ちさえもっていさえすれば,だれだってなることのできる存在なのではないでしょうか。
かって担任した女の子が結婚し,女の子が生まれました。その子からの依頼で,私がサンタ役となり,サンタのメッセージを書いてクリスマスカードを送るようになりました。今年もその時期がやってきました。どんなメッセージにしようか,ただいまニコニコ顔で思案中です。
今年のクリスマスは,新たなサンタがたくさん誕生したらいいだろうなあと 思っています。