あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

島田陽子詩集から

2011-05-29 15:12:03 | インポート

今年の4月に亡くなった島田陽子さんの詩を紹介します。以前,朝日新聞の天声人語にも取り上げられた詩です。童謡集『ほんまにほんま』に収められています。

     うち 知ってんねん

  あの子 かなわんねん

  かくれてて おどかしやるし

  そうじは なまけやるし

  わるさばっかし しやんねん

  そやけど

  よわい子ォには やさしいねん

  うち 知ってんねん

           あの子 かなわんねん

           うちのくつ かくしやるし

           ノートは のぞきやるし

           わるさばっかし しやんねん

           そやけど

           ほかの子ォには せえへんねん

           うち 知ってんねん

                    そやねん

                    うちのこと かまいたいねん

                    うち 知ってんねん

小さい頃の自分を思い出しながら,この男の子の気持ちに共感してしまいます。

好きだからかまいたくなるのですね。わるさばっかりしてしまうのですね。

そんなふうにして,二人だけのかかわる時間をもちたいと願っているのだと思います。

女の子の方が,大人ですね。

よわい子にやさしいところをちゃんと認め,男の子の気持ちをしっかりと理解しているのですから。なぜその女の子だけにかまうのか……?わるさばっかりするその裏にどんな気持ちが込められているのかも,ちゃんと見通しているのですから。

だからこそ その男の子も 女の子に惹かれるのかもしれませんが……。

大阪弁が快いリズムを刻み,思わず東北人である私も声に出して読みたくなってくる詩です。

生き生きとした子どもたちの姿が心に浮かんできます。

同じく大阪弁の詩に,次のような詩があります。『続大阪ことばあそびうた』に収められています。

      まっせ

  でてもらいまっせ

  さらちにしまっせ

  かくごしてもらいまっせ

  おお まっせ まっせ

  こわいひとが きまっせ

  まっせ まっせ

  このよは まっせ

  かねのよォでおまっせ

          とんできまっせ

          ながれてきまっせ

          そらからふってきまっせ

          おお まっせ まっせ

          こわいはいが ふりまっせ

          まっせ まっせ

          このよは まっせ

          かくのよォでおまっせ

まっせのリズムは,大阪弁のもつ前向きな勢いを感じさせますが,福島での原発事故を思い出してしまいます。

もしかすると,そのままの勢いで核の世に一気に進んでいくことへの警鐘の意味も込められているのかもしれません。

勢いのある『まっせ』の構えはいいのですが,その進む方向を選択する時には,立ち止まってじっくりと考えてみることも,必要であり大切なことなのではないかと思いました。

味わい深い詩がたくさん収められている詩集なので,島田さんのご冥福を心から祈りながら,ゆっくりと読み味わっていきたいと考えています。

※新編『島田陽子詩集』 <土曜美術社出版販売 発行>より

    


あの日から

2011-05-28 10:49:54 | インポート

今日は,霧雨がしっとりと緑を濡らしています。静かで やさしい 雨です。

天気予報によれば,ここ2・3日は青空を見ることはできないようです。

3月11日以来,空がこれまでとは少し違って見えるようになりました。その思いを書き綴ったものがあります。

   あの日から

見上げた 青い空の 

深さと 遠さに 立ち止まってしまう

白い梨の花の向こうに

これまでと 変わらぬ 青い空が広がっているのに

空の存在だけが 心に広がっていく

風に揺れる 高い 杉の木

その揺れの猛々しさに 震災で亡くなった人の

無念の思いを 感じてしまう 

まだ 帰るべきところに もどれない人も いるのだから

復興のかけ声の 向こうに

一人ひとりが 抱えるものの重さを 想う

残された 人の肩が あんなにつらそうなのだから

前へ 進むのが どんなに大変なのか

立ち止まって 見上げる空は

深く そして 遠く 広がり続けている


マーガレットが満開です!

2011-05-27 20:59:30 | インポート

今年も,マーガレットが咲き始め,今が満開です。

かって勤めていた登米市の嵯峨立小学校(閉校となり,現在は被災された南三陸町の方々の避難所となっている)の周りに咲いていたマーガレットを1株もらってきて,庭の真ん中に植えたものが,今では庭いっぱいに増え,白いじゅうたんのように,咲き誇っています。

我が家の庭は,自然園のような状態で,ちょっと前まではタンポポの咲く黄色のじゅうたんだったのですが,今は白のマーガレットが主役になっています。

ひとつひとつの花を見ますと,白い花弁の中央にまるで卵の黄身のような鮮やかな黄色の核があります。新鮮な卵を目玉焼きにしたような風情に,思わず微笑んでしまいます。臭いは,キク科の植物らしい独特のものがありますが,咲いている姿は可憐で清楚です。風に揺れる姿を見ていると,心の中まできれいに浄化されるような感じがして,さわやかな気持ちになります。

まるで,教室で子どもたちと向かい合っているような気持ちにもなります。

今,木々の緑もいいですね。生命力あふれる新緑のみずみずしい輝きが,体内にまで浸みこんでくるような感じがします。柔らかな緑葉の背景に,青い空。二つの存在と色と明るさが一体となって,初夏の姿を演出しています。

悲しみの時が,少しずつ自然と溶け合って,少しは心穏やかな時となってくれることを,祈りたいと思います。

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『左手一本のシュート』を読んで

2011-05-23 10:11:43 | インポート

寄せられたコメントを通して,以前ブログでも取り上げた山梨県立日川高校バスケットボール部の田中正幸さんのことを紹介する本が小学館から出版される<企画・編集者,執筆者に心から感謝です>ことを知りました。

以前朝日新聞の記事を読んで,右半身麻痺という状態にありながら,懸命な努力と周りからの温かいサポートを受けながら,公式の試合で見事左手一本でシュートを決めた田中正幸さんのことを知った時のことを思い出します。記事を読み終わった時には,涙があふれ,熱い感動が込み上げてきましたが,本を読んでも同様の感動を味わいました。

そして,田中正幸という人間のすばらしさはもちろんのこと,彼をサポートした周りの人々が何と心が温かくすばらしい人たちであったかを改めて実感することができました。

病院やリハビリの施設でお世話いただいた方々,小・中・高で所属したそれぞれのバスケットボール部の監督さんたち,中学校での担任の先生方,大好きなバスケットを通して強く心が結びついた仲間たち,いつも身近にいて彼を温かく見守り支えてくれたお母さんや家族。

それぞれがある時は,良き理解者や指導者として関わり,熱烈なサポーターとして,彼を支えてきたんですね。

そして,田中さん自身も常にまわりの人への感謝を忘れませんでした。

『あの日から,僕の人生は変わったんです。自信がついたし,心の底から人に感謝することができるようになった。人は人に支えられてるんだって。あの日の出来事は,僕がまわりの人に支えられて生かされていることを忘れないために,神様が僕にくれた贈り物だって思っています。』

あの左手一本で決めたシュートは,彼と関わり彼を支えたたくさんの人々の熱い思いが実を結んだ最高のシュートであったんですね。

田中さんの大好きな曲に,モンゴル800の歌う『あなたに』という曲があります。特に出だしの「人にやさしくされたとき 自分の小ささを知りました」というところとかが好きで,すごく元気づけられ,いつもまわりに支えられていたんで,ああ本当にそうだなって思ったそうです。この曲は本来はラブソングということですが,私には詩の中で「あなた」にあたるものが,田中さんを支えている周りの人々であり,大好きなバスケットであり,自分の求める夢だったのではないかと思います。

    「あなたに」

    人にやさしくされたとき 自分の小ささを知りました

    あなた疑う心恥じて 信じましょう 心から

    流れゆく日々 その中で変わりゆくもの多すぎて

    揺るがないもの ただひとつ あなたへの想いは変わらない

    泣かないで 人々よ 悩める喜び感じよう

    気がつけば 悩んだ倍 あなたを大切に思う

    ほら 元通り以上だよ 気がつけば もう僕の腕の中

右半身麻痺に負けずに,決して揺らぐことなく,再びバスケットコートに立ってシュートすることを夢み信じながら,努力を続けてきた,田中さんの強い意志の源が,この詩の中に息づいているように感じます。

田中さんは,中学校の恩師(二宮先生:良き理解者であり温かい指導者)の依頼で,中学校3年生を対象に講演をします。その後半の一節です。

   「………… 僕は夢とは『自分自身の心と体を成長させてくれる大切なもの』だと考えま

    す。夢に向かって毎日精いっぱい頑張れるように『いつか,やがて,きっと』という言葉

    を僕は心の中で大切にしています。頑張っていれば必ず夢はかないます。だから,み

    んなにも勉強をしっかり頑張って高校に合格を果たして,その先にある輝く未来へ夢を

    もって努力していってほしいです。………」

二宮先生は,教師として生徒たちにいいものを与えたいと願い,田中さんに講演を依頼しました。

   『あのね,いいものって<本物>だと思っているんです。うそ偽りなく,自分自身の力で運

    命を切り開いた人。田中正幸は,間違いなく本物です。』

左手一本でシュートを決めた場面では,まるでその会場にいて,熱いサポーターの一人として応援しているような気持ちになり,入った瞬間には込み上げるものがあり,深い感動を覚えました。

今は,将来の夢を実現するため希望の大学に入り,頑張っているとのこと。

支えられた自分が,今度は支える側となって活躍する夢に向かって歩んでいくことと思います。

高校の3年間,田中さんを支えた日川高校バスケットボール部の古田監督は,

『正幸を支えようと懸命にやってきましたが,振り返ると,こちらのほうがあいつに支えられていたと思うんです』

と語っています。

私自身,この本を読んで,改めて生きる希望や夢,これからを生きる元気や力をもらったような気がし,田中正幸さんに心から感謝したいと思っています。


絵本『ずっとつながっているよ』を読んで

2011-05-20 07:58:27 | インポート

新聞の記事の中に,作者の入江 杏(いりえ あん)さんと書いた絵本の紹介があり,是非読んでみたいと思い購入した絵本です。

2000年3月31に東京都世田谷区で,一家四人が殺害されるという事件がありました。

作者の入江さんは,その被害者の母親のお姉さんにあたり,一家とも親密な心の交流がありました。この絵本は,亡くなられた4人(父親のみきおさん,母親であり妹のやすこさん,娘のにいなちゃん,息子のれいちゃん)にささげる形で,書かれたものです。

いつも家族と一緒だったぬいぐるみのこぐまのジェシカの視点で,描かれています。ジェシカの家族への温かい目線と思いは,作者である入江さん自身のものでもあるのでしょう。

四季折々の中での家族とのふれあい。そしてやってきた別れ。大切な人たちが目の前から消えてしまって以来のジェシカの悲しみが切々と伝わってきます。

事件があってから5年後にこの絵本は書かれました。その間に,胸に疼く悲しみが少しずつ癒され,4人の家族とは「どんなに遠くはなれていても ずっとつながっている」と感じることができるようになったのだと思います。そして,この絵本が生まれたのではないかと思います。

震災で愛する人が亡くなった方々も,このジェシカと同じような悲しみを抱かれているのではないかと思います。あの日からまだ2ケ月余りしかたっていないのですから,まだまだ辛く悲しい日々が続いているのではないかと思います。

ジェシカと同じように,少しずつ悲しみが癒され,どんなに離れていても愛する人との確かなつながりを感じることのできる日が訪れることを心から祈ります。

    「 いつでも いっしょに いたんだね。 風にも,水にも,光にも。

       いつでも,いっしょに いるんだね。  空にも,地にも,昼も,夜も。

      どんなに遠く はなれていても,

               ずっと つながっているから。

                                      ありがとう,わすれないよ。  」   原文より

※絵本では,悲しい別れの日からあったことが 次のように書かれています。

   だけど,ある日……信じられない できごと。

   にいなちゃん,れいちゃん,パパもママも,

   ぼくの 目の前から 突然いなくなった。

      こんなことって あるのかな?

      あんなに やさしかったのに。

      どこに 行っちゃったの?

      もう 会えないの?

          どんなに待っても,

          帰ってこなかった……。

          どんなに待っても

          もう会えなかった……。

              どんなに願っても

              かなわない願いがあることを

              ぼくは 知った。

                 でもね ある朝,

                 やっぱり 空気が冷たくて,

                 霜が キラキラ 光る朝。

                     霜柱を踏んだら……。

                     足元から 聞こえてくる

                     ひそやかな音。

                         ほら! 耳をすましてごらん。

                         「ミシュカ,ミシュカ……」って

                         ほくを 呼ぶ声がする。

                     にいなちゃんと れいちゃんが 呼んでいる。

                     ぼくが 霜柱を踏むたびに,

                     「ミシュカ,ミシュカ……」って ささやいている!

                 いつでも いっしょに いたんだね。

                 風にも,水にも,光にも。

             いつでも,いっしょに いるんだね。

             空にも,地にも,昼も,夜も。

         どんなに遠く はなれていても,

         ずっと つながっているから。

         ありがとう,わすれないよ。

※「ずっとつながっているよ~こぐまのミシュカのおはなし~」

   ○絵と文:入江 杏   ○くもん出版