児童文学作家の松谷みよ子さんが2月末に89歳で亡くなりました。子どもたちの心に残る名作を数多く残されたことに感謝すると同時に、ご冥福を心よりお祈りいたします。
「いないいないばあ」や 小さいモモちゃんシリーズの作品はもちろんですが、私にとって最も印象的な作品は、「龍の子太郎」「二人のイーダ」「花いっぱいになあれ」の三作品です。どれも、子どもたちと 担任であった私をつなぐ 忘れられない作品でもありました。
「龍の子太郎」は長編ですが、太郎の活躍と成長を 子ども自身が自分と重ね合わせて読み味わうことのできる、ストリー性豊かな作品でした。3年の担任時代に、昼食後のひとときに継続して読み聞かせたこともありました。長編の物語を自力で読める頃にこの作品と出会うことで、読書の世界の扉が開かれるように感じたものです。
神沢利子さんの書いた「ちびっこカムの冒険」も、この時期に出会う最適な作品としてお勧めです。
「二人のイーダ」は、高学年の子どもたちを物語の世界へ誘う格好の作品でした。動く椅子の謎を通して、広島に原爆が投下された事実を知ることになり、良質な子ども向けのミステリーであり、同時に戦争と平和について考えさせられる作品でもあります。
さとうさとるさんの書いた「だれも知らない小さな国」、いぬいとみこさんの書いた「木かげの家の小人たち」も、子どもたちを本の世界に導いてくれる傑作だと思います。
「花いっぱいになあれ」は、1年生の国語教材にもなった作品で、子どもたちと一緒に読み味わうことのできた、心に残る作品でもありました。
「花いっぱいになあれ」の願いを込めて、学校の子どもたちが、ふうせんに花のたねをつけてとばします。その願いを受けとめ、山の中の小さな野原を 金色のお花畑に変えたのが 子ぎつねのコンでした。文字を知らないコンは、ふうせんに添えられた手紙を読むことができません。赤いふうせんを 見たことのないきれいな花とカン違いするコンでもありましたが、手紙に込められた子どもたちの願いをみごと実現してみせたのです。
子どもたちとは、ふうせんの花との出会いから 花のためにコンのしたことやしぐさ・語りかける言葉 を読み取りながら、その時々のコンの表情や心情の変化をイメージしていきました。
野原でいいゆめを見ていたコン →目の前にまっかな花を見た時のコン →紙づつみの根っこを埋めてあげた時のコン →お水をくんでかけてあげた時のコン →次の朝小さくしぼんでくたんとたおれた赤い花を見つけた時のコン →雨が何日も降り続いたあとに見たことのない芽がすっくり顔を出しているのを見つけた時のコン →ぐんぐんのびていく芽を見ている時のコン →コンをおいこし、ばいのばいのばいものびた茎を見上げている時のコン →ある日大きな金色の花を見つけた時のコン →いくつもさいた金色の花の中にいる時のコン →こぼれ落ちたひまわりの種を食べた時のコン →毎年金色の花に囲まれ種を味わうコン
その時々のコンの表情を想像し合いながら読み進めた楽しいひとときを思い出します。
「花いっぱいになあれ」と願った子どもたちの願いがコンを通して実現され、美しい金色のお花畑になった喜びを 読み手である子どもたち自身も強く感じ取ることができたように思いました。
子どもたちの内に在るさまざまな願いや想い、それが叶えられ実現できた時の喜び。コンの姿と一体となって、読み手の子どもたちはその喜びを体感する。そして何よりその場に立ち会うことができたことが、教師としての大きな喜びでもありました。
一人で読む楽しさとは異なる 集団として読み味わうことの楽しさ。それを実感させてくれたのは、この作品の持つ力であり、子どもの心によりそって数多くの作品を生みだした 松谷さんの表現力によるものだと強く感じます。
子どもたちの想像の世界が揺さぶられ、一人ひとりの想像した絵が重ねられ、豊かで立体的なイメージとなって 作品世界が子どもたちの心の内につくりあげられていく。
物語文を読むことの 限りない可能性と楽しさが満ちている このような作品が、教科書教材として数多く取り上げられることを心から願うものです。
生きた言葉の担い手となるべく言語活動が重要視されるようになったとは言え、文字である言葉と向き合い、そこから広がる想像世界の楽しさを共に体感できる国語の時間でありたいと願うからです。
低学年の子どもたちを読書の世界に導く傑作としては、いぬいとみこさんの書いた「長い長いペンギンの話」がお勧めです。長編ではありますが、次から次へと新たな出来事が起こりハラハラドキドキの連続で、読み聞かせの作品としても最適です。
松谷さんとは、私が若かりし頃に実際にお会いしたことがあります。栗原市にお呼びし、講演をしていただいた時のことでした。温かい人柄と 創作意欲に満ちた作家としての熱い思いにふれることができました。後日、感謝の思いを込めて地元産の米をお送りしたところ、お礼の言葉がていねいに綴られた直筆のハガキと色紙が届きました。心に残るなつかしい思い出です。
この機会に、改めて松谷さんの作品を読み直してみたいと思っています。子どもの心に届く傑作をたくさん残して下さったのですから。できることなら、こんな夢のある想像世界を是非自分でも描いてみたいと想ったりもしてるのですが……。
「いないいないばあ」や 小さいモモちゃんシリーズの作品はもちろんですが、私にとって最も印象的な作品は、「龍の子太郎」「二人のイーダ」「花いっぱいになあれ」の三作品です。どれも、子どもたちと 担任であった私をつなぐ 忘れられない作品でもありました。
「龍の子太郎」は長編ですが、太郎の活躍と成長を 子ども自身が自分と重ね合わせて読み味わうことのできる、ストリー性豊かな作品でした。3年の担任時代に、昼食後のひとときに継続して読み聞かせたこともありました。長編の物語を自力で読める頃にこの作品と出会うことで、読書の世界の扉が開かれるように感じたものです。
神沢利子さんの書いた「ちびっこカムの冒険」も、この時期に出会う最適な作品としてお勧めです。
「二人のイーダ」は、高学年の子どもたちを物語の世界へ誘う格好の作品でした。動く椅子の謎を通して、広島に原爆が投下された事実を知ることになり、良質な子ども向けのミステリーであり、同時に戦争と平和について考えさせられる作品でもあります。
さとうさとるさんの書いた「だれも知らない小さな国」、いぬいとみこさんの書いた「木かげの家の小人たち」も、子どもたちを本の世界に導いてくれる傑作だと思います。
「花いっぱいになあれ」は、1年生の国語教材にもなった作品で、子どもたちと一緒に読み味わうことのできた、心に残る作品でもありました。
「花いっぱいになあれ」の願いを込めて、学校の子どもたちが、ふうせんに花のたねをつけてとばします。その願いを受けとめ、山の中の小さな野原を 金色のお花畑に変えたのが 子ぎつねのコンでした。文字を知らないコンは、ふうせんに添えられた手紙を読むことができません。赤いふうせんを 見たことのないきれいな花とカン違いするコンでもありましたが、手紙に込められた子どもたちの願いをみごと実現してみせたのです。
子どもたちとは、ふうせんの花との出会いから 花のためにコンのしたことやしぐさ・語りかける言葉 を読み取りながら、その時々のコンの表情や心情の変化をイメージしていきました。
野原でいいゆめを見ていたコン →目の前にまっかな花を見た時のコン →紙づつみの根っこを埋めてあげた時のコン →お水をくんでかけてあげた時のコン →次の朝小さくしぼんでくたんとたおれた赤い花を見つけた時のコン →雨が何日も降り続いたあとに見たことのない芽がすっくり顔を出しているのを見つけた時のコン →ぐんぐんのびていく芽を見ている時のコン →コンをおいこし、ばいのばいのばいものびた茎を見上げている時のコン →ある日大きな金色の花を見つけた時のコン →いくつもさいた金色の花の中にいる時のコン →こぼれ落ちたひまわりの種を食べた時のコン →毎年金色の花に囲まれ種を味わうコン
その時々のコンの表情を想像し合いながら読み進めた楽しいひとときを思い出します。
「花いっぱいになあれ」と願った子どもたちの願いがコンを通して実現され、美しい金色のお花畑になった喜びを 読み手である子どもたち自身も強く感じ取ることができたように思いました。
子どもたちの内に在るさまざまな願いや想い、それが叶えられ実現できた時の喜び。コンの姿と一体となって、読み手の子どもたちはその喜びを体感する。そして何よりその場に立ち会うことができたことが、教師としての大きな喜びでもありました。
一人で読む楽しさとは異なる 集団として読み味わうことの楽しさ。それを実感させてくれたのは、この作品の持つ力であり、子どもの心によりそって数多くの作品を生みだした 松谷さんの表現力によるものだと強く感じます。
子どもたちの想像の世界が揺さぶられ、一人ひとりの想像した絵が重ねられ、豊かで立体的なイメージとなって 作品世界が子どもたちの心の内につくりあげられていく。
物語文を読むことの 限りない可能性と楽しさが満ちている このような作品が、教科書教材として数多く取り上げられることを心から願うものです。
生きた言葉の担い手となるべく言語活動が重要視されるようになったとは言え、文字である言葉と向き合い、そこから広がる想像世界の楽しさを共に体感できる国語の時間でありたいと願うからです。
低学年の子どもたちを読書の世界に導く傑作としては、いぬいとみこさんの書いた「長い長いペンギンの話」がお勧めです。長編ではありますが、次から次へと新たな出来事が起こりハラハラドキドキの連続で、読み聞かせの作品としても最適です。
松谷さんとは、私が若かりし頃に実際にお会いしたことがあります。栗原市にお呼びし、講演をしていただいた時のことでした。温かい人柄と 創作意欲に満ちた作家としての熱い思いにふれることができました。後日、感謝の思いを込めて地元産の米をお送りしたところ、お礼の言葉がていねいに綴られた直筆のハガキと色紙が届きました。心に残るなつかしい思い出です。
この機会に、改めて松谷さんの作品を読み直してみたいと思っています。子どもの心に届く傑作をたくさん残して下さったのですから。できることなら、こんな夢のある想像世界を是非自分でも描いてみたいと想ったりもしてるのですが……。