あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

初雪の感動 『手ぶくろを買いに』から

2010-12-07 18:30:11 | インポート

栗駒山も雪化粧をし,そろそろ平地でも雪が降る季節を迎えました。暖かい日が続いていましたが,今日あたりから全国的にも平年並みの気温に戻るとの天気予報ですので,今週中に雪を見ることができるかもしれません。

初雪のことを考えると浮かんでくるのが,新美南吉の童話『手ぶくろを買いに』です。『ごんぎつね』と同様に絵本としても出版されており,東京書籍の教科書(3年下)にも掲載されている物語です。この物語では,生まれて初めて雪を見た子ぎつねの様子が,いきいきと描かれています。

◇ある朝,ほらあなから子どものきつねが出ようとしましたが,「あっ。」とさけんで,目をおさえ  ながら母さんぎつねの所へ転げてきました。「母ちゃん,目に何かささった。ぬいてちょうだい。早く,早く。」と言いました。母さんぎつねがびっくりして子ぎつねの目を見たところ,何もささってはいなかったのです。昨夜のうちに,あなの外に真っ白な雪がどっさりふったのです。そして,その雪の上からお日様がきらきらとてらしていたので,雪がまぶしいほど反射し,子ぎつねは自分の目に何かささったと思ったのでした。

一夜にしてすべてが銀世界に変わり,そして朝日を受けてきらきらと輝く雪のまぶしさに子ぎつねが目に何かささったと錯覚する様子に,雪の日の朝を迎えた時の新鮮な感動を思い出します。光あふれる銀世界が,頭の中にも明るくきらきらと広がってくるような気がします。

◇それから,子ぎつねは初めての雪遊びをします。雪の上をかけ回りながら,雪の粉がしぶきのようにとびちってうつる,小さいにじを見ます。もみの枝からなだれ落ちる雪におどろき,雪の中を十メートルも転がるようににげます。

森の中に降り積もった雪に驚き,おそるおそる雪にふれる子ぎつね。やがては雪に慣れて夢中になって遊ぶ様子が,目に見えるようです。自分の小さい頃や子どもたちと雪遊びをして遊んだ時の出来事も思い出します。自分としても見覚えのある,一瞬の間に見える小さい虹,枝からなだれ落ちる雪も,鮮やかによみがえってきます。

◇遊んで,ほらあなへ帰って来た子ぎつねは,「お母ちゃん,おててがつめたい,ちんちんする。」と言って,ぬれてぼたん色になった両手を差し出します。母さんぎつねは,その手にはあっと息をふきかけ,ぬくとい母さんの手でやんわりつつんでやります。

手袋もしないで夢中になって雪遊びをした後に,ぼたん色になった手の冷たさと痛さに気付いた幼い日のことを思い出します。子ぎつねと同じように母の手で温めてもらったような気がします。温かくなるにつれ,手の痛みがむずがゆさに変わっていく感覚まで思い出します。大きな手が小さな手をすっぽりと包み,母と子のふれあいの温かさが,ほのぼのと伝わってきます。

寒くなるのはいやですが,雪は好きです。降る雪の中に立ち,下から舞い降りてくる様子を眺めるのが好きです。誰も通らない雪道に足跡を付けて歩くのが好きです。まるで白い花が咲いたような 木の枝にふんわりと積もった雪が好きです。その雪を落とすのも好きです。新雪の中に顔を付けてみるのも好きです。一夜にして世界が,水墨画の世界に変わるのが好きです。…

子ぎつねのような童心にかえり,今年の雪と ゆっくりと 向き合ってみたいなあと思っています。