7/4付の朝日新聞の社会面に,感動的な記事が掲載されていました。
写真には,6/12に開かれた山梨県の高校のバスケットボール大会における,日川高校3年のバスケット部員・田中正幸君(19)の片手でのシュート場面が映っていました。左手だけでパスを受け,そのままシュート。チーム初得点となったシュートでした。
この田中君は,中学時代には県選抜チームの5人に入る「スーパースター」だったそうです。
しかし,希望に満ちて日川高校への入学が決まったものの,入学前に脳動静脈奇形による脳出血を起こし,治療ではなく延命ための緊急手術を受けます。
倒れてから11日目に奇跡的に意識が戻ったものの,言葉と右半身の自由を失います。
その後リハビリ病院で苦痛と闘う日々を過ごし,本人の持ち前の身体能力と強い意志のおかげて,車いすから歩けるようになり,やがて言葉も取り戻して,1年後の四月に復学できるようになります。
そして,週1回のリハビリを続けながら,部活には休まず通います。
最初は黙って練習を見ているだけでしたが,「自分のために,チームのため,できることをやろう」と考え,大声でアドバイスをおくったり,応援の父母のために椅子を用意したり,体育館のすみのリングに向かい左手だけで延々とシュート練習をした。(利き腕の右手が頭より上がらず指も固まって動かないため) 試合に出たい…そう思い続けた。
チームは,田中君の初得点で一つになり,7月末から沖縄で開かれる高校総体出場を勝ち取った。田中君のモットーは,『楽しく一生懸命やろう。笑顔があれば,なんでもできる。』 田中君の夢は『将来は福祉の道に進み,夢の前で挫折しそうな人を支える仕事に就きたい。』とのことです。
いるんですね。こんなすばらしい少年が…。夢をあきらめることなく懸命に努力を続けた田中君。田中君が,右足を引きずってコートに立つと,体育館は大きな声援に包まれ,事情を知る相手チームの応援団も一緒になったそうです。
つらいリハビリを乗り越え,現役最後の大会にぎりぎりで間に合い,見事シュートを決めた田中君。ベンチの仲間たちは半分泣いていたそうです。試合の後,床にうずくまって泣き続ける田中君を,仲間たちはタオルで顔を隠して見守ったそうです。
誰よりも身近で田中君の努力と試合に出たいという思いを分かっていた仲間たちだったからこそ,その時の田中君の涙の意味を自分のことのようによく理解できたのだと思います。
高校総体での日川高校バスケットボールチームの健闘を,心から応援したいと思います。