朝日新聞の天声人語で紹介された99歳の詩人:柴田トヨさんの詩集「くじけないで」飛鳥新社
刊をさっそく注文し、読んでみました。
平成15年から22年2月までに書かれた詩が42編収録されています。
どの詩も、母親として、妻として、女性として、子として(亡き母への想い)、人生経験豊富な先
輩・人間として、それぞれの視点から感じ取った思いが、飾らない言葉でストレートに表現さ
れ、まっすぐに読み手の心に届いてくる感じがしました。
返事 くじけないで 思い出Ⅱ
風が耳元で ねえ 不幸だなんて 子どもと手をつないで
「もうそろそろ 溜息をつかないで あなたの帰りを
あの世に 待った駅
行きましょう」 陽射しやそよ風は 大勢の人の中から
なんて 猫撫で声で えこひいきをしない あなたを見つけて
誘うのよ 手を振った
夢は
だから 私 平等に見られるのよ 三人で戻る小道に
すぐに返事をしたの 金木犀の甘いかおり
「あと少し 私 辛いことが 何処かの家から流れる
こっちに居るわ あったけれど ラジオの歌
やり残した 生きていてよかった
事があるから」 あの駅あの小道は
風は あなたもくじけずに 今でも元気で
困った顔をして いるかしら
すーっと帰って行った
詩集の後に書かれてある「私の軌跡」を読むと、これまで柴田さんが生きてきた足跡をたどる
ことができます。その終わりに、次のような一節があり、心に残りました。
「人生、いつだってこれから、だれにも朝はかならずやってくる」
いい言葉ですね。何を始めるにしても、いつだってこれから … 99歳で詩集を出した人の言
葉ですから、説得力があります。
素直に受け止め、始める中味を改めてしっかりと見つめなおしていきたいものです。
いつだって、誰だって、日々 出発点に 立っているのですから。
そして 誰にも 朝が 待っている …… のですから。