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奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている(横浜美術館)

2012-07-15 10:19:40 | アート系

昨日スタートした「奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている」に行ってきました。
(↑こちらははがきサイズのちらし。真ん中で折れていない「夜まで待てない」)

奈良さんの横浜美術館での個展は2001年に開催された「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」以来で、今回が2回目。

今回は以前に奈良さんがツイッターに書かれていたとおりで新作のみ。

リストを見るとなんと108点もの作品があるのですが制作年は2010、2011か2012のみ!

過去の作品をひっぱり出して来ちゃえば会場は埋まるだろう。

でも、そういった手法を取らず、ペインティングやドローイングの他にも今回初となるブロンズまでオール新作で臨む姿勢が素晴らしい。


美術館のドアが開くと「ホワイトゴースト」がお出迎え!!

でかい!

これは以前にニューヨークで屋外に展示されていたことのある作品。

見たかったのであえてうれしい。つるんとしてて線もシンプル。でもどう見ても奈良さんの作品だと分かります。エッセンスの凝縮がお見事。

なんと約3.7mもの高さ。

ここは写真撮影が出来ます。記念写真を撮るひとがたくさんいました。
(「奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている」会場内は撮影不可)





さて、最初の部屋「第4展示室」に足を一歩踏み入れて泣きそうになった。

そこに佇む作品から放たれるなにものかがそこに存在するという空気。

そうだ、6年前のAtoZの会場で感じたあの感じにとても近い。

最初の部屋はほの暗い中にブロンズ像が8点(※うち1点のみ白銅)。

最初は陶器と同じようなものを想像してた。でも、まるで違う。

ブロンズの像はどれも表面に作家の手の痕跡がこれでもかと残っている。

まるでその空間に存在していたナニモノかを手の動きで拾い出して形に新しい命に仕立てるかのように。

そういう意味でとても生々しく命が宿っているなあと感じました。

「ミス樅の子」の空に向かって長く伸びる頭はついついしたからじっと見上げてしまう。

「真夜中の巡礼者」は前に出した手のフォルムのバランスが秀逸。あとまつげのとんがったフォルムも凛としてていい。

繊細な描写もいいのだけどもこういう大きな作品で作家の手のぬくもりがこれでもかと残ってる作品もいいものだ。

「彫刻のためのエスキース」と題されたラフスケッチもいい。




さて、次の部屋「第5展示室」へ。

「2011年の僕のスタジオから/水戸での展示を経由して2012年7月の横浜へ」と題されたインスタレーション。

昨年の水戸でのインスタレーションが再現されるとのことで楽しみにしていました。
(関連記事:CAFE in Mito 2011 かかわりの色いろ(水戸芸術館現代美術ギャラリー)

音楽がとてもあっててなんとも居心地のいい空間。

壁にはドローイング、ペインティング、写真、おもちゃなどなど。

ダンボールから足を出してるアイツも健在で嬉しい限り。あとスタンドもちゃんと来てた。

命少女、NO NUKESの2012版の少女がここにいる。

少し仕切られてて部屋的ではあるけれども、ここはもう小屋じゃない。

そういうところでも奈良さんの変化を感じますね。

あとよいなあと思ったのが灯り。

裸電球が3つ。ほのかにやさしい光が暗さも同時にかんじさせてくれている。

ここはずっと居られそう。




つづいては「ホワイエ」に。

「ブランキー」ここ最近の奈良さんのアクリルのあのカラフルな色彩は好き。あたまのかたちがリーゼントちっく。

「Red Cross Kranken Schwester」段ボールに描かれてて文字はドイツ語かな?マジック(だと思う)のラインがなんとも軽やか。

「体重計少女」こういうバランスがすっと出てくるんですよね~。キタカのエゾモモンガのフォルムが脳裏をよぎったのはナイショ。


「山少女」
この線のうるさい描写があんまり見ない感じ。ミス樅の子といいこういうこんもりしたフォルムの好きですね。




そして「第6展示室」へ。

部屋としてはひとつですが仕切りがあって分かれてます。

薄茶の紙に色鉛筆で描かれたシリーズの点数がはんぱない!

正方形なのと大きさ的にもレコードジャケットを意識しているのでしょうか。
(正方形でないのもある)

気に入ったものをいくつか。

「年貢の納め時」手のポーズとフォルムが楽しい。しかもにゃんこっも一緒のポーズ!

「Lone Star」手、長っ!

「ミラーボール盆踊り」久々に名古屋嬢ちっくな胸の谷間のある女性。こちらも腕のフォルムが盆踊りちっくでかつパラパラ的にも見える。

「He is Bad I am Good」地の池に横たわる首。ちょび髭がなんとなくヒトラーっぽく見えなくもないが決め付けは危険なりってことで。

「1234」心臓のハート。なんでもないことだけども奇跡の連続で生きてるボクたち。

「Get Fooled Again」なんかゆるいのに迫力がすごい。かなりでかい目と手のゆらゆらからだろうか。

「Rock'n Roll Show」手の動きがいい!チカラを感じるんですよね。


続いて今回、かなりの収穫だったドローイング。


「Young Mother」

これが一番ぐっときました。

顔の表面に描かれている小さなぐるぐる、そして実際にはないでろう線。

明らかにおかしいはずのものがそうは見えない。むしろしっくりとはまる。

しかもこれらの線がこの母を守るエーテルのように見える。

きっと授かった命のエネルギーなんだろう。

今回、何度となく戻ってじっくりと見た作品。

しかし、奈良さんの鉛筆で描いたのの突き刺さるかのような繊細な感じはなんだろう。尋常でない感じが最大レベル。


「Five Years」

腕にかかえるボールには「Five Years」と書かれてる。

他にも書かれている文言が気になりました。「earth was really dying」地球は実際に死んでいた。

しかも、wasの下にはisを消してある。

時間の経過。震災以前ならば同じ変わらない5年後がオートマティックにやってきただろう。

でも、いま確証はない。

あっ、でも解釈はそれぞれです。


「Baby Rocker Help Help」

こちらはもっとやばい。

巨大なおんなのこ。頭から火を出してしまってる。

背景やなんかのスケール感から巨大なんだろうなあと見てとれる。

はるか彼方には家があってドーム状のものが被さりNO NUKESと書かれてる。

やはりこれはシェルターなのか。

だとしたらこの巨大なおんなのこ自体が危険な状況の現況だとしたら悲しい。


そしてアクリル。

「Middle Finger」

これだけなんとも立派なシルバーのごっつい額に入ってて他と違う。

なんとなく色の乗せ方を意識して変えているのではないかなあと。

描かれているのは中指を立ててるいおんなのこなんだけども。


「Under the Hazy Sky」

今回一番気になった絵画。

好き嫌いで言うと微妙だけどもこの目に浮かんだ悲しみの表情ったら。

奈良さんの絵画はかなりの点数を見ているけどもここまで悲しみをつきつけた瞳ってあんまり見た覚えがない。

この1点が突出してて気になる作品です。

そしてラストは「夜まで待てない」。

会場を出たところの年表に画像が貼られていますがびっくりします。

もとはまるで別の絵だったのがどんどんと塗りつぶされていまの絵に至ってる。

左右非対称の表情が気になるところ。

昔の奈良さんの絵に感じた怖さと近年見る穏やかな表情と。この2つがひとつの画面でバランスを保ちつつ同居している。

互いの存在を肯定しつつ拮抗して存在しているのだ。

異なる2つは「君」と「僕」であり、その2つがちょっと見ててクロスするこの展示会場の場も想起してしまう。と言ったら言い過ぎかな。

今後、またどんな風に奈良さんの作風が変化してくのか楽しみです。

御大にはならずに今も現役で走り続ける作家でいる姿勢、ほんと尊敬します。




会場での展示はここまで。でもまだまだ終わりません。

前述したように展示室を出てすぐに奈良さんの年表があります。一部モニターも組み込まれてて制作の模様なんかが流れています。



そして、続く常設展示に奈良さんの作品が。

「アルゼンチンばばあ」のための挿絵、回天やなんかはなんども見てる。

ところがこれは初めて!!

「ジュリアン」奈良美智 2012

こういうおしっこしてるシチュエーションのが出てるとは前もって知ってたもののこのトーンにはびっくり。

開会式のユーストの中ではこのあたりについて語られていました。

2001年の「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」でも登場していたおしっこをする少年モチーフ。そしてまた今回も。

まだまだ出し足りないってことで!


そして忘れてはならないのがカフェ!


なんとこんなふうに作品が展示されています。10点以上あったかと。
(※フラッシュを使用しなければカフェでの撮影はOKだそう)

あとブロンズも2点ありました。


あと、嬉しいのはトレイに敷かれているシート。

ちゃんと奈良さんの作品を使ってる。

ホワイエに展示されていた「体重計少女」。

もちろん持って帰りましたよ!


図録は現在、製作中とのこと。

会場の図版が入るとのことで楽しみ!


ショップの横のケースの中には森ガールのキーホルダー!

なんと7色。ゴールドとシルバーは横浜会場限定とのこと。

見終わって満足。

奈良さんやっぱ、すごいや!!



<おまけ>

桜木町駅に!「夜まで待てない」


裏には「Under the Hazy Sky」

また必ず再訪しますね!


「奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている」
会期:2012年7月14日(土)-9月23日(日)
会場:横浜美術館
休館日:木曜日
開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)

「奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている」公式サイト
http://www.nara2012-13.org/


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