AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

価値の少ない六部定位脈診法

2006-04-16 | 古典概念の現代的解釈
脈診法には、六部定位脈診、脈状診、人迎脈診の3つがある。うち人迎脈診は、小椋道益氏の死去にともない、現在事実上消滅してしまった。脈状診は、私個人では、有用な診察手段だと思っているが、その結果を鍼灸治療に直接結びつけることに困難を感じている。問題なのは、六部定位脈診である。
※2010年9月27日、人迎脈医会理事の飯田孝道先生から人迎脈診は消滅していないとのメールを頂戴した。失礼しました。(2010年9月29日)

40年ほど前、東京教育大学(現、筑波大)の森和先生の行った実験がある。それは3人の六部定位脈診の名人が、20名ほどの被験者の腕を脈診した(スリットから腕だけを出し、他部位はカーテンなどで隠した)が、3人の名人鍼灸師の回答はバラバラであって、一致するのは数例ほどだったという。この実験から推察されるように、六部定位脈診は、当人が無意識的にしても、他の望聞問診の情報を取り入れていれて判断しているか、もともと六部定位脈診で診断できない、といえそうである。

そもそも六部定位で寸関尺の部に臓腑を配当していることに無理がある。配当する臓腑は時代とともに変化してきた。
 
 脈状に関する手技や解釈は定説がない。東洋医学関係者間でのコンセンサスもとれていない。恩師の代田文彦先生は、わざわざ脈をみなくても病態(虚実、表裏、寒熱)の推測はできる。換言すれば脈から分かるのは、これくらいだろうと述べいる。沢田健先生も代田文誌先生も、脈診をしなかったと聞く。

※脈状診についてのブログは、「古典概念の現代医学的解釈」カテゴリー中の、「主要な脈状診の解釈」ブログにあります。