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雑草の日:ふんどしと万葉集

2022-01-25 06:29:19 | 日記
地下で息づく

 毎週火曜日はウォーキングの途中で見かけた雑草を取り上げています。
先週の大雪で森林公園は白一色の世界、葉や花の色は全て消えました。
 それでも辺りを見ながら歩けば、枯れたヘクソカズラの小さな実が枝先に絡んで
いるのが見つかります。
薄褐色の数珠つなぎの実に混じって、時に黒いものも目に入ります。
なんだ、あれは?
目を凝らすと、 アカネ科 アカネ属 アカネ の小さな実でした。

 今は雪の下で眠っているアカネの根ですが、春の訪れと共に芽を出し細い茎
をするすると伸ばします。
 茎には4枚の葉が輪生しますが、その半分は偽物。
<同じアカネ科のヤエムグラ属と同様に偽輪生が見られる。
これは対生した葉2枚と同じ形をした2枚の托葉から成る。>(素人植物図鑑 より)
 つる植物ながら巻き付く仕組みは持っておらず、細い身を他の植物に引っか
けるようにして伸びていきます。
 やがて白くて小さな花を咲かせ、晩秋に黒く熟した実を残します。
冬になると地上部は枯れて無くなり地下に根だけが残ります。
この根が赤いのでアカネです。

意外な仕事

 太くてひげ状に分岐した根を掘り起こして、昔の人は止血や利尿などの民間薬
に用いました。
 もっと遡った時代にはこの根で物を染める技術を生み出しました。
日本最古と言われる赤の染料です。
<生根はプルプリンを含み乾くと赤になる。>(素人植物図鑑 より)
 染料としての歴史は日本だけでありません。
藍と共に古代より世界中で使われてきました。
 <藍の青と茜を混ぜて紫色を作り、茜を泥染めして茶色を作り出した。>
(YUMEZAIKU より)
大昔から人の暮らしの中にあったアカネは、そんじょそこらの雑草とは別物です。

 格式高いアカネは万葉集の時代には「あかねさす」の枕詞になりました。
昭和の時代には大ヒット曲「シルエットロマンス」に登場もしました。
 来栖えつこさん作詞の「茜色のシルエット」は何度も聴いた馴染みのフレーズ。
赤く縁どられた影といったところでしょうか。
頭の中に漠然と色が浮かびますが「赤」と「茜色」の違いは何?
そう聞かれたら答えに窮します。
 <JIS規格では茜色は「こい赤」とされ、一般にはやや黄色みを帯びた暗い
赤色を指す。
真っ赤な夕焼け空は「茜色」、一方で朝焼けの赤は「曙色」という。>
(コトバンク より>
繊細に色分けをする日本人ならではの表現です。

 日本人と言えばアカネとのこんな付き合い方もありました。
<茜色は古来より血流を良くし生気を増すとされてきた。
そのため男性は茜染めのふんどし、女性は茜染めの腰巻を身に付けた。>
(YUMEZAIKU より)
 アカネは男女の秘所を包み隠す俗っぽい仕事もこなしてきています。
 
コメント
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