神奈川県の黒岩知事は岩手県宮古市の瓦礫受け入れを表明していたが、やはりというか、最終処分場となる横須賀の住民は反対の声が強い。瓦礫の焼却灰を同市の産業処理施設に埋め立てることは、「これまで県内の廃棄物に限る」とした住民との協定に違反するというのが、表向きの反対の理由だが、放射性物資が持ち込まれることへの不安が最大の理由であることは明白だ。
県は東京都の先例にならい現地での引き取り時、焼却時、埋め立て時に放射線量を入念にチックするとしている。持ち込む瓦礫の放射線量もキロ100ベクレル以下と厳しい基準にしている。これを焼却するとその灰は33倍に放射線量が濃縮されるが、それでもキロ3300ベクレル以下であり、政府が土壌の埋め立て基準であるキロ8000ベクレルの半分以下だ。東京都は政府基準を採用している。
また埋め立ても既に埋めてある産業廃棄物に充分土をかけて、焼却灰を防水の充分施した特殊な袋に入れてその上に乗せる。そこにまた土を3.5mの高さまでかぶせるという入念なものだ。内容を知る限りでは、おそらくその場所にいても放射線量は横須賀の他の場所と比べても全く変わらないかそれ以下かもしれない。
横須賀住民の説明会では、黒岩知事がその安全性を強調したが、住民は「受け表明する前になぜ住民の了解を得得ようとしないのか」といった手続き論を主張する人も多かった。しかし瓦礫から出る放射性物質がいかに危険かを数値をもって具体的に反論した人は皆無のようだ。中には「知事の説明が不十分」とか「知事は放射能に対する認識が甘い」などという知事の人間性に対しての異議を唱える者がいたりで、本当に説明を聞きにきたのか疑問な点も感じられる。
思うに被災地の焼却灰受入れに対して、「積極的には賛成することはないが、放射性物質の問題がなければ仕方ない」という人が大半ではないか。何が何でも反対というのは、いわゆるプロ市民かそれに感化された一部市民に過ぎないのではないか。消極的賛成派の声より過激な反対の方が、数は少ないが表面的には目立つ。あたかも市民を代表しているように見えてしまう。
プロ市民に感化される市民というのはおそらく家庭ではやさしい父親、母親なのだろう。しかし、いざこういった説明会では「反対のための反対」の過激論で口角泡を飛ばすことになる。こういうのを「住民エゴ」というのだろう。これはもちろん横須賀に限らない。特に原発事故以来こうした放射能を忌避する過激な住民運動がはびこっている。
東日本大震災によって生じた瓦礫は岩手で476万トン、宮城で1569万トンあるという。この膨大な瓦礫を全て県内で処理するには限度を大きく超えてしまう。したがって岩手で最低57万トン、宮城では338万トンを県外で受け入れてもらうよう求めている。震災復興にはまずこうした瓦礫の処理が前提になることは明らかだ。この火急の必要事項を県外の人々の「善意」だけで頼っていたら全然前に進まない。善意など吹っ飛んでしまう住民エゴが大きく立ちはだかってくるのだ。
特にプロ市民に煽動された市民運動が一番たちが悪い。これらプロ市民を排除し、住民エゴを表面化させない方策が必要であると思う。
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