粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

「職業としての売春婦」は全くの正論

2016-01-15 17:46:35 | 厄介な隣国

♪本当のことを言ったらお利口になれない…。47年前の流行歌(「フランシーヌの場合」歌手新谷のり子)にそんな歌詞の歌があった。自民党内での会議で桜田義孝・元文部科学副大臣が戦前の慰安婦を「職業としての売春婦」と発言して問題になり、最終的にその発言を撤回したようだ。

「売春婦は職業としての娼婦(しょうふ)、ビジネスだった。これを何か犠牲者のような宣伝工作に惑わされ過ぎている」

「…そんなのは職業としての売春婦ということをね、もうちょっと、私は遠慮することはないと思うんだよね。そういうことを遠慮しているから、間違って日本でも韓国でも広まっちゃうんじゃないかと思うんですね」

桜田元副大臣の発言それ自体その内容は事実であり正論そのものである。慰安婦は売春婦であり、それ以上でもそれ以下でもない。元副大臣からすれば「本当のこと」をいったことでバッシュングをうけた。「お利口になれない」ことをしたと嘆息しているかもしれない。

桜田氏に難点をつけるとしたら、時期が悪かったということに尽きるだろう。昨年末の日韓合意で日本政府が慰安婦問題で韓国政府に対して謝罪と補償を表明したことで韓国がこれ以上、慰安婦問題を蒸し返さないということの言質を得た矢先にことだったからだ。日本政府としても今はこの問題で本音を吐くことで韓国政府の反発を招くことを何よりも恐れているのだろう。

それはこの発言に対する菅官房長官の記者会見にも現れている。「政治家一人ひとりの発言に政府としてコメントは控えたい」「自らの発言については自らが説明責任を有するのは当然だ」つまり、桜田発言の是非については触れず、本人で騒ぎを始末するよう求めている。桜田発言に関わりたくないという気持ちがありありだ。

そして桜田氏も「誤解を招いた所があり、発言を撤回する」といかにも事務的な文言で「説明責任」を行果たした。ここでも発言内容を撤回するというよりもむしろ日韓合意で敏感になっている政府首脳部に配慮したということにすぎない。自分の発言そのものは間違っていないが、この時期に発言してしまったという反省だ。

昨年末の日韓合意は公式の合意文種なるものはなく、日韓外相間の口約束に近いもののようである。だから、日本も韓国も自国の都合の良いように解釈していることは明らかだ。「軍の関与」とはいっても日本側は肯定的側面を強調したいだろうが、韓国は逆に慰安婦の人権を侵害する元凶のように解釈している。

桜田発言に対し韓国外務省が早速非難声明を出した。

日本の帝国主義膨張の過程で、強制連行された女性を対象に広範囲に行われた戦時の性暴力であり重大な人権侵害で、国際社会の共通認識だ。

強制連行された女性」「性暴力」「重大な人権侵害」といった手垢のついた捏造用語が並び果ては「国際社会の共通認識」という壮大な宣伝戦略で締めくくられている。こんな居丈高で欺瞞に満ちたプロパガンダを信じるわけにはいかない。しかし、昨年末の日韓合意は日本が韓国に再びその口実を与え日本を叩くための絶好の材料を提供してしまった。

ただ、韓国現政府は合意直後ということもあり、多少は遠慮する部分もあった。韓国外務省はこの非難の後に「「歴史の前で恥も知らない国会議員の無知蒙昧な妄言に、いちいち言い返す価値も感じない」「いちいち言い返す価値もない」ということでこれ以上この発言に拘ることはしない態度を示した。韓国側も「問題を蒸し返す」ことには控える気持ちがあるのだろう。

日本政府も韓国政府もこの合意の真相を国民に触れられたくないという姿勢がありありだ。いわば日韓内密での大人の対応ということだ。しかし、時間の経過とともにいずれ合意内容を巡って日韓の間でのすれ違いや齟齬が大きくなっていくだろうと思う。そうなったときに世論調査では日韓合意を支持している日本国民の意識も変わってくるだろう。「本当のこと」を理解して日本人自身がもっと「お利口」にならないといけない。

 

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