今週の美味しんぼ特集で昨日言及した人々以外に興味深い意見があった。医師の山田真氏である。山田氏は原発事故直後、福島に医師として健康相談会を行なっていた。現地で鼻血の話を住民からよく聞いていたという。
そこで私は、調査を行いました。2011年3月~11月の機関、福島、北海道、福岡の3地域の小学1年生の何%が、鼻血を出したかを調べたものです。こんな調査をしたのは、私ぐらいだと思います。個人による小規模調査ですが、数が1000人規模なので、信頼性はあると思います。
その結果が以下の通りだ。
鼻血を経験した小学1年生の割合(2011年3月~11月)
福岡: 26.0%(159人/612人中)
小樽: 22.8%(164人/718人中)
岩見沢: 7.4%(32人/434人中)
福島市:10.4%(8人/77人中)
いわき: 2.3%(8人/341人中)
会津: 3.2%(16人/499人中)
福岡では4人中一人が鼻血を出していたが、福島では3~4%。原発事故の影響で鼻血が増えているということはありませんでした。
山田医師が記事中指摘するように「低線量被曝と鼻血の因果関係を示すデータはない」ようだ。さらには「鼻血と事故の関連性」を示すデータも本当にあるのか。山田医師の今回の調査を見るとそうした確かなデータさえもないといえる。
乱暴な言い方をすれば、事故後たまたま福島で鼻血が出たとがことさら報道で大きく取りあげられたために、それがあたかも事故と「関連」づけられてしまった印象がある。さらに「被曝と鼻血の因果関係もありうる」といった言説へと一人歩きしてしまったのではないか。
実際は「福島第一原発ともっとも近いという印象が強いいわき市が、山田医師の調査では北海道や福岡よりも鼻血を出した子どもが少ない」というはっきしたデータが出ているのだ。もちろん一つのデータでしかないが、事故との関連で貴重な資料と見てよい。すなわち事故と鼻血を結びつけること自体怪しいということだ。
美味しんぼを始めとして、事故と鼻血ひいては被曝と鼻血との関連が3.11より盛んに取りざたされた。結果的に広く「鼻血」が原発事故のシンボルのようになっているが、その先入観さえ白紙にすべきでないかと思う。
もちろん山田医師が指摘するように鼻血を含めて事故での健康不安を抱く人がいることも事実だ。そのためにも国がもっと積極的な広報活動を行う必要がある。専門機関の地域的な試みや国連科学委員会などで多くの調査や報告がなさてきた。国もこうしたデータを収集しながらも並行して総合的に調査・検討して具体的な研究成果を国民に啓蒙する努力が望まれる。そうなれば「鼻血と事故の関連」ももっと明快になるのではないか。
雁屋哲氏が「鼻血がごとき…」と語っているのはある意味でそういえるかもしれない。