BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

暗澹たる気持ち

2020年03月03日 | 映画
オーストリアの山間部のなか、農夫一家、妻と3人の娘が暮らしている。そこに日本で言う赤紙が。
しかし主人公〔フランツ〕はそれを拒否、最期までヒットラーへの忠誠を拒否し収監される。
第二次世界大戦のさなか、残された一家に村人からの仕打ちも、全世界共通だ。
フランツは獄につながれ、尋問や暴力がやられ放題。だが妻との文通はできたようだ。やがて弁護士が
ついた裁判が、これにもフランツはサインを拒否、判決は死刑で、その後、刑場に。
一度妻との面会が許され、文通、裁判。あたしは暗澹たる気持ちになった。それはこの映画の内容
だけにではない。日本との比較においてだ。まるで終戦前の日本と同じではないか。
徴兵拒否などしようものなら家族はその村には暮らせなかっただろうし、憲兵から逃れるより死んだ方が
まし、というのが日本だった。獄に捕らわれたら身内との面会やまともな裁判などはない。多喜二は拷問
で死に、朝鮮人というだけで、あるいはアカとされるだけで自警団に井戸に放り込まれた。
ひとは誰でも普通に狂うのだ。

映画は間違いなく傑作だ。美しい風景も農民の暮らしも監獄もリアルそのものだ。しかも涙を煽る映画だけ
にしなかった。だからこそ言いたい。
主人公フランツが囚われ、やせ衰えていくリアルが無い。餓死しない程度の食事、殴られ放題の暴力。どんな
ことになってもフランツの顔つき・姿勢はほぼ正常だ。ヒゲさえ少ししか伸びない。それは本人の鉄の意志
を表現したとするなら、アタシはすこし違うと思う。あれは監督の意図なのだろうか。 
映画館は空いているぞ。いまこそ、みんな観るべし。
 映画「名もなき生涯」 監督 テレンス・マリック  2019年/アメリカ・ドイツ

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