BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

もしもし・・・

2012年07月31日 | 古本
 燦々な男と女の機微を散々書いていて、さらっと文章の中にさり気なく〔私の妻〕
なんて書いちやって。妻がいるなんてそれは妄想か虚言、ホムラさんのホラに違いな
い。いけしゃーしゃと文章というより文字をいいだけ捏ね繰りまわす。ホムラさんの
スタイルといえばそれまでだが、どう書けば女性が喜ぶのかお見通し心得満点の一冊。
まったくのオンナたらし歌人なのだ。危なく男のアタシも胸をきゅんとするところだ
った(笑)。
 もうホムラさんたら、いいかげんにおし。もしもし・・・ホムラさん!

 「もしもし、運命の人ですか。」 著者 穂村 弘  メディアフアクトリー
  ( 定価524円+税 2010年12月25日 初版第1刷発行 )


K 富 士

2012年07月27日 | その他
 近くで打ち合わせが終わったので狸小路を端から歩いた。すると夕方5時前でも小
路には暖簾のかかった店がチラホラ。〔K富士〕は懐かしい。安くて早くて量が多い。
以前事務所が近くにあったときはよく通った。
 開けっ放しの入り口からはもう客が呑んでるのがみえ、換気扇からは焼き鳥の煙が
出ている。釣られてアタシも入った。
 焼き鳥は少々小ぶりだが、1人前4本単位だ。してトリとブタはどちらも250
円だ。他のメニューも昭和半ばの屋台なみだ。忘れていたが生ビールは無いと言下に
云われので瓶ビール中1本、上げ底でこれまた小ぶりのお銚子を1本とお通し。〆て
1,240円、1,250円を払うとお釣りの10円を丸いプラスチックの会計皿に
素早く投げてよこした。
 いらっしゃいとか、どうも~なんて言葉、オヤジのアタマに一切無い。味や焼き
加減などの注文にも一切の耳をかさない。あげくにうるさくいう客には、出てけ!
もう来るな!だ。アタシの仕事仲間はガツの焼き方をめぐって出入り禁止になった。
それでもこの店の安さは、それらを補っているのだ(笑)。
 5時を過ぎると、常連の客が無言のまま集まり始めるのは、何十年も同じようだ。

縁 取 り

2012年07月24日 | 古本
 「謝々!チャイニーズ」への不満は著者が折角写真家なのに文庫ではほとんど写真
を見せないことにある。写真は写真集を買ってくれという、さもしさを感じるのだ。
その点藤原さんはいつも写真を出し惜しみない。(勿論編集方針の違いがあることは
解かる)文も写真も互いを補完し合ってあまりある。30年も前に出た文庫だが、色
あせることなくアタシの手に届いた。
 で、2冊とも読み終わってからある事に気付いた。写真では分らないが、カバーの
上と下にセロテープにて縁取り補強していた。読むときはカバーを外しているので気
が付かなかった。この本を手に入れ、手放した人はそんな手間をいつもかけるのだろ
うか。してその意味は?勿論痛まないようにという心がけだと思うが、丁寧なテープ
の貼り様は念が入り過ぎてる。それほどにして愛情を注いだ本を何故か手放す?
 そして、出版日が同じで5刷と6刷になっている。これも分ったようで分らん話だ。

 「全東洋街道(上)(下)巻」 著者 藤原 新也  集英社文庫 定価700円
  ( 1988年4月28日 同日発行 上巻6刷 下巻5刷 )
※初版は上巻が1982年11月25日 下巻が1983年1月25日 

陰 と 陽

2012年07月22日 | 新 刊
 陰々滅々、片や抱腹前進エンタメ・ノンフという陰と陽を2冊新刊文庫で買ってし
まった。「謝謝!チャイニーズ」は期待が大きかっただけになんか落胆。この話、も
う少し短くならないかと読みながら442ページ。こんなに気を持たせる女はアタシ
苦手じゃ。そして古本屋さんに流れるほど売れていないから文庫といえど値も高い。
アタシの満足度は値に反比例主義だから、これが均一棚なら大満足だが(笑)。
 うむー、高野さんも旬を過ぎるとこんな納まりかたするの、てな感じ。歳相応にな
ちゃうところが悲しい。あの酒飲み書店員大賞を受けた〔三畳間〕爆笑が懐かしい。

 「謝謝!チャイニーズ」 著者 星野 博美  文春文庫 定価771円+税
  ( 2007年10月10日 第1刷 )
 「メモリークエスト」 著者 高野 秀行  幻冬舎文庫 定価648円+税
  ( 平成23年7月10日 初版発行 )

初田牛駅ノート

2012年07月18日 | その他
 2010年の秋に初めて行った時は散々迷った。地図だけが頼りで、カーナビなど
付けていなかった。10キロも20キロも逸れて走ってから、どうも違うと分る。
誰かに訊こうにも民家も人も見当たらない。その分ようやく探し当てた時の喜びは
大きかった。
 根室本線「初田牛駅」はこんもりとした森の中、開拓期の大木を切り倒して開墾し
たようなその先にひよっこりと在った。多くの駅がそうであるように、元は木造駅舎
で駅員さんもいたが、1971年に無人駅になったらしい。
 現駅のすぐ近くには「初田牛小学校跡地」という碑がある。これも1988年の閉
校だというから、24年前のことだ。跡地には建物の土台すら残ってなく雑草林にな
っていて、碑だけが在りし日々のよすがとなっている。
 この駅に初めて行った時に読んだ〔駅ノート〕に、「祖父が暮した一晩近い駅に降
り立った」と少女が書いていた(文面の筆跡でそれと解釈)その部分は、もう見つけ
ることは出来なかった。二年という年月もまた長い時間というべきか。
 今回の道東の旅もまた、駅付近こそが過疎という現況をみる旅となった。

水溜り木造駅

2012年07月11日 | その他
 翌日はこれも云わずと知れた厚岸の道の駅に夕方着いた。厚岸湾を見下ろす高台に
在って静かな駅だ。するとどうだ、日本一周ママチャリ青年が先着していた。50Km
以上も離れている道の駅間を、彼は難なく越えて来ていたのだ。
 二日続けてチャリ男氏に遭うのもなにかの縁、声をかけた。今夜も便所横が便利だ
とテライがない。道東はあまりにも夜が寒いので、途中で一人用テントを買ってきた
という。釧路地方の年間の平均気温は、6℃なんだよと言うと、「マジっすか!」と
大袈裟に驚いて見せた。
 チャリ氏はやはりタイヤのパンクが恐いという。特に雨の翌日はゴミなどが道路脇
に集まるため、パンク確率が高くなるという。夜道のパンクにはナキが入るそうだ。
その辺りで野宿することになるらしい。
 彼はこの先根室半島の突端まで行き、返して網走に向かいそのまま海岸沿いを北上、
稚内から反時計まわりで南下して、最終的には沖縄まで行き大阪に戻るという。
 きっといまごろは、サロベツ原野の海岸沿いの一日走っても風景の変わらない真直
ぐな道を、黄色に咲くエゾカンゾウをみながらママチャリを漕いでいるだろう。

 ※ 写真は根室本線「糸魚沢駅」(花咲線) 駅前の広場には、いまは懐かしい
   水溜りが出来ていた。木造駅には水溜りが似合う。

恋を問う

2012年07月09日 | その他
 白糠町の道の駅〔恋問〕はアタシにとってお馴染みだ。海の波の音が近くに聴こえ
夜中はトラックのアイドリングエンジン音が煩いのはいつもの事だ。
 どうやら利用者がエサでもあげるのか、妙に車と人になっこいキツネが一匹たむろ
している。立ち寄る車一台一台をお出迎えするのだ。そして、なにもエサを貰えない
と知ると、めげずに次の車に向かう。あそこまで餌付けされていると、野生に戻る事
は出来ないだろう。
 ハーレィバイクに乗った二人組のお兄さんが爆音を発しながら駐車場をゆっくりと
パレード。なんどか止まり、そして場所を探した。二台のバイクはキャンプ道具一式
を積み込んでいるのか、装備が山なりになっている。やがて停めた処でバーベキュー
の火おこし。夜になると一人用テントを二張り広げ寝入った。大型トラック用の駐車
帯一つを二台ハーレイが占領したのだから、いい度胸だ。アイドリング音や排気ガス
にも怯むことはなかった。
 日本一周というハタをたて、大阪・城東区と書いた厚紙を荷物に貼ってるママチャ
リ青年がいた。朝早く起きたアタシがトイレに行くと、その入口の外側で露営寝して
いた。この人は野生に回帰して、床のカタさを恐れないようだ。
 大型のキャンピングカーが一台停まっていた。あれほどの大きさなら浴槽だって付
いているのかも知れない。なかなか豪華風で人目をひいていた。
 普通乗用車の中年カップルが一晩泊まっていた。なにが目的でそうしているのか、
理由は分からん。
 軽自動車のおばあさんがひとり、コンビニめしを黙々と喰っていた。なにかの事情
があるのか、それともよっぽどのドライブ旅が好きなのだろうか。
 六っの夏の無人駅を巡った夜の、それをシラヌカ!!〔恋を問う〕という道の駅の
一夜物語りだ。(笑)

痛快な話

2012年07月02日 | 古本
 6月に読んでいた本はあと3冊。

 ①「怪優伝ー三國連太郎・死ぬまで演じつづけること」 著者 佐野 眞一
  ( 講談社 定価1700円+税 2011年11月20日 第1刷発行 )
 三國さんが選んだ10本の映画について対談した聞き書き、および三國連太郎論。
 佐藤浩市さんが役者になると聞いて、それなら親子の縁を切ると云ったそうな。
親子でテレビにバカズラ晒しているタレントなど、その意味が解からんだろうが。
痛快なはなしだ。

 ②「空から恥が降る」 著者 藤原 新也  文春文庫 定価762円+税
  ( 2004年5月10日 第1刷 )
 意外にも藤原さんはネットなど使ってエッセイなど書いていた。捨てネコの話から
戦争親子のブッシュまで、空からの自由な文字爆弾。

 ③「日 本」 かん 尚中さんと中島 岳志さんの日本の未来を語る対談本
  ( 河出文庫 定価760円+税 2011年9月20日 初版発行 )
 中島さんの本が行きつけの古本屋さんに出ることは滅多にない。「秋葉原事件」
など読みたいのだが、どうかそのうちに。