BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

曲 解 ?

2009年07月29日 | その他
 もしそれが曲解でなければ、一瞬の平和な光景だったと言うべきだろう。
いつも乗る地下鉄駅行きバス路線で、その行為の半分を目撃した。
 その人はアタシよりあとのバス停で乗車し、短い区間で先に降りた。アタシが
先に降りたり、あるいは駅で同時に降りれば、目撃することは無かったろう。
 降車時、お年寄りなどが、運転手に声をかけることはそう珍しい事ではない。
たいていは敬老パスで乗せて貰ったお礼を、短い言葉で伝えたりする。運転手が
それに表情で応えることもある。多分その方も声をかけたのだろうが、乗車口中
ドア付近に立っていたアタシには聞えなかった。何人かが降りて、何人かが乗り
ドアが閉まってバスは動いた。するといま降りた筈の方がバスに向かって腰を
折り、頭を下げていることに気付いた。ゆっくりと動いたバスの、その人が降り
立った位置に中ドアが過ぎたあたりで、穏やかに頭をあげ、短い白髪にグレーの
帽子を被せた。

 しかしあれほどに、乗せてもらった恩義を動作にして表現するものだろうか。
そしてそれは、あの人にとって習慣的流儀なのだろうか。それともなにか特別な
意味や理由があったのだろうか。
 ときに目撃した平和線の感心な〔姉と弟〕の光景は、以前にも書いた。必ずし
もアホな定刻発車命という場面ばかりではないのだし。(笑)

半生の反省

2009年07月24日 | 古本
 普段は行かない学生街の正統派古本屋さんへ立ち寄った。
そこにも100円均一棚があって、5円という外税を取らない
のが潔よい。いつもの系と、いつもは見かけない系を6冊買った。

 流石に学生街に在った店の本、ところどころピンクのマーカー傍線が引いてあ
った。その傍線部分を読むと、若き学生の気になったことがミエミエで可笑しい。
 野坂さん、先日TV番組の20周年特別版、過去のダイジェスト編集のなかで
こんな発言をしていた。〔軍銃器は竹ヤリにすべきだ〕と。そうだ、アタシも以
前からそれを主張していた。横ヤリではなく、竹ヤリだ。いずれ書きます。憲法
9条を守って軍隊(自衛隊)を災害救助隊にするべきと。戦争兵器は全て破棄だ。
 「この国のなくしたもの」 著者 野坂 昭如 PHP研究所 定価1600円
  ( 1997年10月22日 第1版第6刷発行 )

 いつものルート古本屋さんの半額棚、最新刊に近いシーナ本を立ち読みした。
「あとがき」を読むと、熱心な読者が単行本の冊数を数えて教えてもらったと書
いてある。文庫は別で、その数は300冊を越えるそうだ。だから以前に書いた
当ブログ、30年で120冊の予想は外れている。したがってアタシの棚にある
シーナ本は約4分の1ということになった。うむー、ウムー、生むー、だ。
 「ニューヨークからきた猫たち」 著者 椎名 誠  朝日新聞社 
  ( 定価1300円+税 2002年11月30日 第1刷発行 )

 大先輩のカメラマン、イクヤさんの本をみつけた。
20年前の出版時、買いそびれていた本だ。イクヤさんの現役時、光栄にもお目
にかかって、お話しもできた。70歳を過ぎ、札幌でお元気にお過ごしと思う。
 「フレームのなかに風があふれた」 著者 佐藤 郁弥  早川書房
  ( 定価1700円 1989年9月30日 発行 )

 1997年刊の短編集。なんだか形容詞が多くて文章が荒っぽい。
まあ、とっても謙虚で誠実な人柄はにじみ出ているが。月刊誌の連載など請ける
からか。南木さんは1年か2年に1作くらいのペースで、じっくり書いてほしい。
 「冬物語」 著者 南木 佳士  文藝春秋  定価1300円
  ( 1997年3月1日 第1刷 )

 この本はすでに文庫で読んでいると思う。まぁしかし、沢木さんの本がダブッ
タとしても、将来の古本屋開業を思えばなんでもない(笑)。すぐに売れるハズ
だし、仕入れと思えばなんでもない。
 「王の闇」 著者 沢木 耕太郎  文藝春秋  定価1200円
  ( 1989年9月1日 第1刷 )

 清張さんの半生の記だ。まずしく孤独な青春の日々は、アタシも泣ける。
やっぱり清張さんはすごい。ただ頭を下げるしかない。こうして本ばかり読んで
いるアタシの半生も反省だ(笑)。
 「半生の記」 著者 松本 清張  河出書房新社 定価850円
  ( 昭和52年5月25日 初版発行 ) 

ワナワナ

2009年07月22日 | 古本
 待った甲斐があるというもんだ。佐藤さんの著作を読みたいと
思っていたのだが、半額ではまだ手がでない。だが一番読みたか
ったタイトルが均一棚に落ちてきて輝いていた。してやったりだ。
 それで、佐藤さんは予想より遥かにしたたかなひとだと分かった。そして国策
捜査は全くその通りだろうが、佐藤さんあるいは佐藤さん的な人は特別に扱かわ
れるらしい。外務省の専門職にいて、外交上の国家機密を握っているのだ。たっ
ぷりと仕事三昧で、楽しくておいしいことが沢山あったと、うかがえる。

 逮捕されてすぐ弁護士が面会にきて、しかも3人ものチーム弁護士がついた。
30分の面会のために、半日の順番待ちをしてくれる。看守や担当世話囚人は、
随分優しく敬意を払った対応だ。そして取り調べ担当検事は、一般事件では全く
考えられない配慮をしめす。自分徳と自分に対するそんな特別対応を得々と自慢
するのだ。二の句は、自分が不利益なることについては国家機密で、2030年
になったら歴史が自己の正当性を証明するとイキまく。自己弁護権はだれにでも
あるのだから、言い分は聞くけどね。
 まぁ、国のチョットした外交方針の転換と、ムネオさんとの蜜月を嫉んだ内部
チクリで罪に貶められた。まさに外務省とは伏魔殿というべきか。
 全く気の毒な佐藤 優さんの〔ワナ〕話しではあるが、アタシはウマいメシを
喰った人と、イイおもいをしたヤツには、あんまり見方しないタチなのだ(笑)。

 「国家の罠」-外務省のラスプーチンと呼ばれてー  著者 佐藤 優
  ( 新潮社 定価1600円+税 2006年2月10日 15刷 )
   ※初版発行約1年で15刷は凄いな。
 

魔 日 ?

2009年07月20日 | 古本
 金輪際買うまいと思っていたのだが、ポケットに多く入っていた
10円玉に油断した。まぁしかし、やっぱりスポーツ新聞の縮刷版
で10年以上前のスポーツの、結果を読んでいるのと変わらない。
自ら〔クダラン〕というタイトルを付けているのだから、ミもフタもないのだ。
その週間内でしか通用しない話題を、こうして単行化することに土台無理がある。
一体だれがどんな気持ちで一冊にすることを、企てるのだろうか。そして13年
の時間を経て、それをつい買ってしまうアタシも相当バカだと反省する。それで
バカにハジの上塗りのようだが、買ったからには読んで小銭の元は取るのだ。
 そして1つ位は勉強になることがある。今回は「魔 日」という言葉を知った。
桂 文楽の落語に使われていると書いてある。それで思い出した。
 そうか、あれは魔日だったのに違いない。以前書いた5月20日の当ブログ、
時間丁度でドアが閉まり、定刻発車命のJRバスのことだ。正確なデジタル時計
に寸分たがわずドアを閉め、2メートルだけ進み信号待ちする。変則信号の為か
いつも50秒は停止すると書いたが、あれはそんな時間では済んでいなかった。
その後に腕時計の秒針で実測すると、それぞれ75秒と80秒とが2回続いた。
それだけの時間を信号待ちをするなら、タイミングを計って発進するなら、場合
によっては10人は救える。
 ドアを閉め、2メートル進み、長秒間信号待ちすることに、一体どんな意味が
あるのか。一人でも多く乗せてあげようとする、一寸した計らいで1時間待たな
くて済む乗客が居るということを、バス会社と運転手は想像はできないものか。
ったく「正確にも程がある」だろ。
 皮肉にもワガ愛用のバス路線は〔西野平和線〕という。乗る度にちっとも平和
な気持ちになれないのだァ~(笑)。もしほんのタッチの差でドアが閉まったら、
そしてクダラン本を買ってしまったら、そんな日を 魔 日 と言うべきだろう。

 「クダラン」 著者 中野 翠  毎日新聞社  定価1400円
  ( 1996年12月25日 発行 )
 

教訓その①

2009年07月18日 | 古本
 写真展の中にあった一枚に目が留まった。
写真家森山 大道さんが1978年の一夏、札幌の白石区に
拠をかまえ、撮ったものの中にあった。
 道内のどこか場末のスナック、丸い7脚のイスの左端に座り、ひとりの若い女
の子がこちらを振り向いている。客なのかホステスなのか、口開けの客を待って
いるママさんにもみえる。ありふれた状況だとしても、心を捉えたのはその表情
にあった。一途で無垢、この先を恐れたりしない若さがあった。あるがままを受
け入れ、達観した明るさというよりは、この先の人生にある何者をも討ち貫く強
さに満ちている。今もきっとどこかで人の心を捉えた生き方をしているいるのだ。
 果たしてアタシの若い日に、こんなひとに遇っていたか、いなかったかどうか。
記憶の地層を探っても、そこはもう曖昧だ。
 
 この写真が欲しいと思ったが、ハガキ状にはなっていなかった。
入場口の森山ショップには、写真集やグッツが森山じゃなくて山盛り。アタシは
発作的につい活字の多い本を買ってしまった。係りのお姉さんが美人だったこと
に動揺し、冷静さも欠きミエを張ったのだ(笑)。アタシは1ヶ月分の本代を、
一瞬にして使ってしまった。こういう展覧会は入場料だけをポケットにねじ込ん
で行くべきだ、というのが教訓その①だ。(笑)

 「森山大道、写真を語る」(※写真と対談) 著者 森山 大道  青弓社
  ( 定価3000円+税 2009年3月14日 第1刷 )
 

シベリア

2009年07月16日 | 古本
 ついにこの週刊文春連載“新宿赤マント”シリーズ、
表紙カバー色が上下二色になった。(と言っても今回手に
入れたには5年前刊なのだが)今迄は単色の表紙だったが、
どうやら上下に色分けするという手があったようだ。表紙としての色が尽きたら
どうするのだろうと思っていたが、それは危惧に終わった。
 こうなったらしかし半永久的に色デザインには困らないだろう。上下二色が尽
きたら左右二色にするとか、それもほぼ出揃ったら次は三色にするとか。
 ただいくらなんでもシーナさんだって、100才までは連載が続かないだろう
から、結局表紙デザインやタイトルには困らないのだ。

 思いがけず同時に手にできたのは「シベリア追跡」だ。
これは井上 靖さんや吉村 昭さんが書いた〔大黒屋 光太夫〕の、200年以上
前、伊勢湾駿河沖から嵐で遭難漂流、アリューシャン列島に流れ着き、シベリア
大陸を彷徨った10年の過酷な旅を今に追跡したものだ。マイナス5、60度に
なる気象条件や、ロシアという国のシステムも、シーナさんの筆に負うと思わず
爆笑してしまう。ロシア国内の飛行機において〔立ち乗り〕(座席なし!)と
いう方式があったと書いているが、これはいまも在るのだろうか。シーナさんの
シベリア追跡旅は1985年で、いまから24年前。この本の刊行は1987年、
ひょっとすると今でも〔立ち乗り〕があったら、それはそれで楽しい?(笑)。

 「ただのナマズと思うなよ」著者 椎名 誠 文藝春秋 定価1238円+税
  ( 2004年9月15日 第1刷 )
 「シベリア追跡」 著者 椎名 誠  小学館  定価1200円
  ( 昭和62年12月20日 初版第1刷発行 )

T 君

2009年07月13日 | 古本
 在ったのでつい手が伸びた。一度知ったら次々と読みたくなる
のは仕方ないこと。どうも大崎さんは短編のほうが断然面白い。
スジに無理がなく、余分なシーンを読まなくて済むのだ。
登場人物や主人公が札幌、旭川、小樽などの北海道出身なのもいい。でもいつか
北海道の小さな町、例えば東の清里町、北の豊富町、南の鹿部町、道央なら占冠
村あたりの出身はどうだろう?(笑)
 「別れの後の静かな午後」は6作品の短編をまとめたもの。著者 大崎 善生
 (中央公論新社 定価1300円+税 2004年10月25日 初版発行)
 「編集者T君の謎」は週刊誌の連載エッセィ一年分を単行化したもの。
 (講談社 定価1500円+税 2003年1月23日 第1刷発行)
 大崎さんの筆力にも負って、将棋の世界も面白い。副題が〔将棋業界のゆかい
な人びと〕で本当にゆかいだ。日本将棋連盟の機関紙「将棋世界」の編集者T君
だって、もっとなにかあるに違いないと思わせてくれる。T氏はその編集部へ入
るまで、生涯に読んだ本がただ一冊 太宰 治の「人間失格」だというのだから、
それはそれで信じてあげようと思うのだ。(笑)      

多 彩 人

2009年07月11日 | 古本
 その人の本はアタシの本棚の奥深くに、何冊か収まっている。
が、もう直接目にすることはなかった。
アタシが行く古本屋さんでも、見掛けることはなかった。
 そして人は、いつかひっそりと亡くなっていくのだという事を、新聞記事は教
えてくれる。(勿論最近まで、執筆やそのほかの活動は続いていたのだろうけど)
 平岡 正明さんは、まだ68才だった。
ジャズ評論や、山口 百恵を書いたのを読んだ。
少し飛躍した理屈だったが、そういう分析や解釈でも30年前のアタシにはアリ
だと、思わせてくれた。あれからもう長い時間が経ってしまっている。
 7月9日、評論家 平岡 正明さんが脳梗塞で亡くなった。

表 紙

2009年07月09日 | 古本
 表紙のデザイン写真(画?)風景にみとれた。
「九月の四分の一」というタイトルにも、何かありそうな予感だ。
著者名をみると大崎 善生さんだった。「聖の青春」のイメージが
強かったが、小説も書いていることはうかつにも知らなかった。というより今迄
なじみの棚では、目に入らなかったのだ。だとするとまだまだ見逃している面白
い本が、あの棚には在るのだと希望がもてる。南木 佳士さんと共に6月は収穫が大きかった。
 ただ、南木さんも大崎さんもやや同じパターンに陥っていないだろうか。3冊
づつ読んだだけで言うのもなんだけど。
 大崎さんはこれでもかと言うくらい仕掛けの波状展開、〔まぁ小説だから仕方
ないか〕という思いがしないでもない。それと、〔あ!この書き方あの作家さん
に似ている〕とも思ったりする。それでも札幌出身の大崎さん、1ページごとに
そうだよなぁ、そうだよなぁと思いつつ読める。読者層の想定はどの辺だろうか。

 「パイロットフィッシュ」 著者 大崎 善生 角川書店 定価1400円+税
  ( 平成13年11月10日 再版発行 )
 「アジアンタムブルー」 著者 大崎 善生 角川書店 定価1500円+税
  ( 平成14年9月1日 初版発行 )
 「九月の四分の一」 著者 大崎 善生 新潮社 定価1300円+税
  ( 2003年4月24日 発行 ※4作品所収 ) 

転 校

2009年07月07日 | 古本
 小学生時代の転校生のことを思い出した。
小説にでてくるパターンと似ている。
アタシのあの時代でもツギのあたった服でもなく、おしゃれで、
都会的。身体がどこか弱く学校は休みがち、長めの髪はストレートで、鼻すじの
通った美人だ。
 しかし何故か決って2年か3年で転校していなくなる。そして一度くらいは次
の学校でも友達ができ、慣れたと学級に手紙がくる。仲の良かった女子が、1人
2人返事をだす。でもそれは多分、長続きはしない。次の学校でも元の学校でも、それぞれに子供なりの新しい毎日があるからだ。
 その人の顔を今でもはっきりと覚えているが、ただし今も同じ顔であるハズも
なく、かりに今会ったとしても勿論分からない。

 ふとそんなことを思い出した南 木さんの小説、子供の頃はどれも切ない。
 ごく最近、初めて南木 佳士さんの3冊を続けて読んだ。十年も二十年も遅れて
いる読者だが、いつだっていい作家に出会えたヨロコビは大きいのだ。

 「ダイヤモンドダスト」 著者 南木 佳士 文藝春秋 定価980円+税
  ( 1989年3月5日 第2刷 ※4作品所収)
 「医学生」  著者 南木 佳士  文藝春秋  定価1300円+税
  ( 1993年7月5日 第4刷 )
 「医者という仕事」 著者 南木 佳士  朝日新聞社 定価1400円+税
  ( 1995年5月1日 第1刷発行 ※エッセイ集 )