BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

三 帖 間

2010年04月30日 | 古本
 もう文庫の均一棚を丹念に目ざとく探すしかない。
面白そうな文庫が在った。「第1回酒飲み書店員大賞受賞」とある。初めて聞く文学賞
だが、冗談でもなんでも面白ければいいのだ。こういう〔いかにも系文学賞〕はどんどん
創って、読む方も書く方も楽しめばいいのだ。権威などは思いっきり無くていい。
 木造二階建ボロアパート三帖間の青春、この〔荘〕にまつわる奇人変人列伝往来記は
爆笑だった。流石にのん兵衛書店員が選んだだけのことはある。(笑)

 最寄は東横線大倉山駅、木造で窓も無いボロアパート、住所や名前もすっかり記憶
の彼方で記録メモもない。共同で借りたアタシらの三帖間は月家賃3000円(40年
程前だし)だった。押入れの半畳が宙に浮いて手前に突き出ている。狭いがお互いそこ
で過ごす時間も重ならず短い、荷物だって両手に持てる範囲のモノしかない。
アタシはそこに1日だけ泊まり、ダチの〔T田〕が泊まったのは2,3日程度か。
結局はそこを1ヶ月で(前家賃を払ったという意味で)引き払い、アタシは西武池袋線
東長崎「藤荘1号」に舞い戻った。 うむー、その話しはまたいずれかに・・・。

 「ワセダ三畳青春記-早稲田大学正門徒歩五分路地裏胡桃木古木造二階アパ野々
  村荘三帖」という文庫書き下ろし は面白し。 著者 高野 秀行 集英社文庫
  ( 2003年10月25日 第1刷 で、2007年3月25日 第8刷 )
 ※年1刷の増刷は素晴しい。他にも高野さんの文庫があるようなので、探してみ
  ます。きっと面白い。

タテカン

2010年04月27日 | 古本
 昨年の6月、道北に旅をした。日本海に面するサロベツ原野は、真直ぐな道路と果て
しない草原が続く。人家や行き交う車さえ、遥かを見渡しても見当たらず気分がいい。
とにかく〔人気〕というものが無いのだから、当時流行っていた新型インフルエンザの
ウィルスだって、ここでは何も出来ずに通り過ぎるだろう、と書いた。
 そんな大いなる自然や稚内の海岸名所の至る所にも「テロ警戒中」という大きな縦看
板が目に付いた。あれは何処の誰がどんな意図で設置しているのだろうか。そしてもし
テロの計画・実行を計る人に、あの看板はそれを抑止・防止する効果はあるのだろうか。
あまりにも場違いなところにぽつねんと在ると、違和感という意味で確かに目に付く。
あれは道北地方の人口減と停滞経済に対して、その分活性化する動植物へのジョーク
警告としてなら有効だろう。エゾ鹿など人や車を恐れていないようだし。(笑)

 森 達也さんは都会のなかの、そんな看板やポスター・監視カメラに疑問を投げ掛けて
いる。もう在ることに慣れすぎているポスター類の文章にも、日本国民の均質化と同調
しない人への排除性をみて、どうなのかと検証する。
 あまりにもその通りと思う指摘を激しく納得だ。新刊ふた月目で半額コーナはアタシ
には在り難いが、森さんには気の毒だ。でも新刊でほかに何冊も買ってるから許して。

 「誰が誰に何を言ってるの?」 著者 森 達也  大和書房 定価1500円+税
  ( 2010年3月5日 第1刷発行 )
 

買います

2010年04月23日 | 古本
 ひと月程前に手に入った千円の図書券がサイフに入っている。これに少し足せば新
刊の一冊も買えるという余裕と、それを早く使ってしまいたいという落ち着きのない
気分があった。何度か新刊書店をうろつき、慎重に狙いを何冊かに絞った。しかし
イザとなると決断がつかない。読みたいのは山々だが、もう少し待てば古本系に出回
るのではないかという期待があるからだ。それからでも遅くはなかったことを、何度
も半額棚で見ているからだ。
 綜合雑誌系に目をやると、あまり見掛けない表紙の出版物が1冊だけぽつねんとあっ
た。手にすると「面白いお話、売ります。」というコピーで、Story Seller vol3
という雑誌名だ。431ページ中、広告は3ページのみでうるさくない。厚さの半分が
広告という雑誌は、それだけで疲れる。

 7人の作家の読み切り、書き下ろしでそのうち知っている作家さんは3名のみ。
 書き手は以下の7人。
①沢木 耕太郎「男派と女派」 いつもの話で、特に新味なし。沢木さんは「血の味」
 という小説の不出来と「旅する力-深夜特急ノート」ですっかりミソをつけた。
②近藤 史恵「ゴールよりももっと遠く」 なる程こういうジャンルは初めてよむ。
 中々面白くて別作品も読んでみたい。ただ男性?女性?名前だけでは最近区別がつ
 かない。
③湊 かなえ「楽 園」 あなたの手口はもう分りました。子供が痛む小説はもう止めて
 下さい。
④有川 浩「作家的一週間」 うむー、こういう書き方も最近はアリなんだ、と知る。
 小説の世界も進化しているのだ。
⑤米澤 穂信「満 願」 それなりに楽しめた。ただミステリーには手を出しませんが。
⑥佐藤 友哉「555のコッペン」 こういう小説内容、興味持てない。
⑦さだ まさし「片 恋」 なんの期待もなかったが、しかし意外や巧くて面白いのだ。
 だからといってコンサートなどに行く気にはなれない。

 定価は800円(平成22年4月10日発売)だった。千円図書券を出したからと
いって200円のお釣りはくれない。ならばもう1冊、図書券に690円を足して
やっと出た「いい旅北海道 12」を買おう。発行案内メールもくれたし、あざらし
さん例の〔道新エッセイ4回で中止事件〕の顛末も知りたくて。知事サイドではなく
道新の〔志も骨もない〕担当の自主規制だった、と。らしいのだが、しかし真相は
果たして?
 「いい旅北海道 12」廃刊危機、なんとか売れて存続できればいいのだが。
  編集・発行人 舘浦 海豹 ( 発行日 2010年3月30日 )
  ※特別増量ページだったので定価は 890円
 
 それにしても「Story Seller 3」は編集後記で、この号で最後になると。存在に
気がつくともう終わりだという。編集兼発行人 新井 久幸氏には面白かったとメール
を送ろう。きっと彼なら何処かで復活する。
 

身 の 丈

2010年04月21日 | 古本
 南木 佳士さんの本はなかなか手に入らない。半額系だろうと均一棚だろうと「ダイ
ヤモンドダスト」や「医学生」などを除いてはいくら探しても見あたらない。
 文庫作戦にしてようやく棚にぽつんと孤立して1冊在ったのが、前々から読みたか
った「阿弥陀堂だより」だ。
 いいなぁ~南木さん、人間としての身の丈に合った話と文体が優しい。自分の悪しき
性格が矯正される(笑)おもいだ。南木さんの小説を読みおえると、どれも静かにしみ
じみとした余韻にしたれるのだ。

 「阿弥陀堂だより」 著者 南木 佳士  文春文庫  定価505円+税
  ( 2002年8月10日 第1刷 ) ※単行本 1995年6月 文藝春秋刊

ド ナ ウ

2010年04月19日 | 古本
 考えてみると、チェーン系古本屋さんにおいてはあの広いフロァーの1,2割程度
の棚しかチェックしていない。CD,DVD,ゲーム、コミック本などが売り場の大半
を占めているからだ。その大半のコーナーには用事はほぼ無いので、店内の行動パタ
ーンが限られる。
 フロァーの棚の配列にもよるが半額系単行を一応ザーッと見回し、均一棚を目を皿に
にして追加、変化を嗅ぎ取る。最近はそのパターンに文庫の均一棚に目を通す。
 そんななか、以前から気になっていたタイトルが文庫で在った。これは是非もない。
文庫で420ページという重量感と内容にどっぷり浸かった。新聞の小さなベタ記事が
目に留まったことから始まるノンフィクション。大崎さんは流石に巧くて読ませる。
 < 邦人男女、ドナウで心中
   33歳指揮者と19歳女子大生 ウィーン >
 まるで小説でもこうは偶然が重ならないだろうという展開ののち、ドナウ川は静かに
流れる。 うむー うむーが何度も重なる。

 「ドナウよ、静かに流れよ」 著者 大崎 善生  文春文庫 定価590円+税
  ( 2006年6月10日 第1刷 ) ※単行本2003年6月 文藝春秋刊

羆あらし

2010年04月14日 | 古本
 UFOや西欧のオカルトは、バカバカしくて信じないから何にも怖くない。
しかしこの話しは読み進めるだに背中が凍り付いて、身体が震えた。漠然と知っては
いたが、こうして小説になったのを読むと凄惨な事件だったことが分かる。
 苫前町古丹別・現三渓地区で、1915年(大正4年12月)10人もの死傷者を出
した事件は、熊害としては世界最大だという。東北地方から山深くに入植した開拓農民
居住区を、冬眠し損なった羆が次々と襲った。壁や屋根を草で囲い、入り口はムシロを
垂らしただけの粗末な開拓小屋は、羆にはなんの防御にもならず、肉食動物の本能の
ままになった。大きくてことさら凶暴なオスの成獣羆は、壁をブチ破って女・子供を
喰い殺した。

 その事件の跡地近くには、復元した当時の居住小屋と納屋、慰霊碑などが設えら
れ、事件資料館になっているようだ。あと一年くらい早くこの本と出会っていれば、
昨年道北に行った際寄ってこられたのにと後悔。古本均一主義列伝はこうしてタイ
ミングを逸れ、しみじみ間の悪い思いをするのだ。
 道路地図の一般道道1049号線の行き止まり終点には、※三渓別羆事件跡地という
注意印が載っている。その印 手前3kmからは冬季閉鎖だ。むかしも今も寒く雪深い
ところ、きっと今日も夜は氷点下で雪が積もっただろう。

 「 羆 嵐 」(くまあらし) 著者 吉村 昭  新潮社  定価900円
  ( 昭和52年9月10日 6刷 )

ジョーク

2010年04月09日 | 映画
 それにしても、今作もまた小林 政広監督「春との旅」は、一体どうしたというのだろ
う。これまでづーっと寡黙さを通した作品群を撮りながら、今回は一転してTVドラマ
ごとき饒舌な説明セリフが多いのだ。
 そして例によって主役の二人には〔歩くこと〕ではなく〔歩き方〕に意味を持たせる
手口を使った。春ちゃん役の徳永 えりさんはガニ股歩き、老漁師 忠男役の仲代 達矢
さんはひどいビッコ歩き。(シーンでの強弱はあるが)
 しかしどうあれ主役の仲代さんの芝居は若さにあふれ、都会的風貌とセリフの速度は
どうしたって元老漁師にはみえない。そういう意味で仲代さんは明らかなミスキャスト。
それこそ大滝 秀治さんがトボケた味の漁師に仕立てたほうが、リアリティがある。また
今作の豪華キャストは、それぞれ名優すぎて、芝居がうるさくてハナにつくのだ。
 小林監督いつもの1シーン1カット的手法を、今作は変に説明的インサートと会話
シーンの切り返しがある。(目線を変にずらしたのは狙い過ぎと思うが)だったら以前
に撮った〔説明のなさすぎ〕映画との整合性は果たしてとれるのか、なんだったのか。
予算があればこう撮るが、低予算ならこんなもんでいいという過去の作品なのか。
(それが悪いとは一概に言えないが)全く音楽など意に介さないといったスタイルの
作品が多い中、今作にかぎってあの大仰に謳いあげる音楽は一体なんなのか。
 その一々にアタシは混乱するのだ。でなにより一番納得出来ないのは汽車の中のラ
ストシーン、何故あんな安易な決着の付け方をするのか。仮にああなるとしてももっと
違う演出があると思う。「監督」はしても演出はしないということか。
 春との旅を、忠男爺のガンコ性格と足の障害と、取って付けた昔話しの〔ニシン漁〕
の見当違いな問題に集約させた。チラシにある「生きる道、きっとある。」とするなら、
誰にどう思われようが、故郷で再起するなら、あの土壇場の結末はなんだ。生きつづけ
ろよ!、忠男爺!。 小林 政広監督、これはあなたの自己否定ですか?
 仲代さんが舞台挨拶で「小林監督は黒澤 明に並ぶ天才だ」と云ったのは、大いなる
ジョークですよね。誰も笑えないジョークですよね。
 そしてクレジットは何時にも増してなおざり。メインキャストは辛うじて読めるが、
それ以外は、直接のスクリーンでも読むのは困難。例えるなら広い湖面に放ったひと
つまみの砂粒ていどのものだ。 アリバイの顕微鏡文字で入れられたスタッフ達よ、
後援スポンサー、各町の市井の人々、怒って立ち上がれ。(笑)

 「春との旅」 監督・脚本 小林 政広  4月8日 道新ホール 先行試写会
  主演 仲代 達矢・徳永 えり  大滝 秀治 菅井 きん 小林 薫 田中 佑子
       淡島 千景 柄本 明 美保 純 戸田 菜穂 香川 照之  (134分) 

ベ ン 意

2010年04月07日 | 古本
 書店へ行くと何故か〔便意〕をもよおすというのは、あれは本当なのだろうか。
どうもあれは本当だろうと、アタシは思っている。
 つまりこうだ。今はサラリーマンのように規則正しい生活をしていない。出勤前だと
か、昼休みだとか、仕事おわりに用を足すという必要はないのだ。今の立場は内でも外
でも、ほぼしたい時にするというのが基本だ。そうだとすると週に何度も書店を見廻る
アタシが、その途中での強いベン意は普通のタイミングで自然なことだ。(笑)
 ここ数年わが消化器系の直腸は、きっちりと正しい〔しつけ〕はしていない。従って
その〔いいつたえ〕か〔ことわざ〕か〔書物紙質系本能生理的〕なのか、普通にそうな
るのは経験的実感実証なのだ。アタシが行く全ての店のトイレの在処は知っているし、
利用済みだ。ある店では、店員さんに一声掛けなければ入れないところもある。総じて
新刊系も古本系もトイレはなおざりで、愛想がない。店の外、ウラ側に公衆便所的に
しつらえていたり、すぐ入り口に在って〔使いたいなら勝手に使いなさい。なにがあっ
てもウチラ無関係よ〕的風な店もある。(ただし、大手の大型書店はホテル並みに豪華
だが、滅多に行かないのさ。) どうも本など探しにきて、便意をバラス(する)のは
もっての外という風潮があるのは困りものだ。(笑)

 さて、そういう〔泄〕話しが最も面白いシーナさんだが、やはりここ最近は文庫本
作戦しかない。昔出版の単行本で手に入らなかったものが、文庫でなら少しはある。
勿論文庫だから最新刊単行の文庫化はないし、まして文庫均一棚の世界も厳しい。
ゆっくりと細々探していくしかない。なんだかしみじみと、圧倒的に未読の単行本が店
にあふれていた時代が懐かしい。 うむー 仕方あるまい。

 「かつおぶしの時代なのだ」 著者 椎名 誠 情報センター出版局 定価830円
  ( 1988年8月28日 第42刷  ※初版は1981年4月 )
  ※未読でソフトカバーの単行本をみつけた。アタシは嬉しいのだ。
   以下は全て文庫、著者も勿論 椎名 誠さんです。
 「ジョン万作の逃亡」 角川書店  定価430円
  ( 平成4年6月30日 30版発行  ※初版は昭和59年3月 )
 「風の国へ・駱駝狩り」 新潮文庫  定価360円
  ( 平成6年7月1日 発行  ※平成元年に朝日新聞社から刊行、再編集 )
 「ナラン-草の国の少年たち」 新潮文庫  定価440円
  ( 平成8年1月1日 発行  ※これも既刊本を再編集・大幅加筆したもの )
 「ぶっかけめしの午後」  文春文庫  定価467円+税
  ( 2005年12月10日 第1刷 ※週刊文春「赤マント」シリーズの文庫化)

1903

2010年04月02日 | その他
 過日 隣の町、小樽文学館へ行った。
古本コーナーがあり、ひとり5冊まで自分で決める寸志で持ち帰ることができるという。
アタシは市内の古本屋チェーン店における均一棚の、収穫不足が補えるかと期待した。
 元 小樽貯金局だったというその建物の文学館内古本部屋は、なにかこう土蔵といっ
た雰囲気で、ガッチリとした木の本棚に相当数収まっている。だがしかしそれぞれの本
は木棚に根を生やした様な収まりで、冴えない隠居本のたぐい。いわば誰も引き取り手
のない書物庫然とした按配だ。つまり胸トキメクようなタイトルは無かった。在ったと
すればとっくに誰かの手に渡っているのだろう。文庫2,3冊を手に取ってみたが、
いくらをカンパすべきか、それを考えていると展示をみる時間がなくなる。したがって
持ち帰りの収穫はゼロ。

 文学館内では 小林 多喜二 伊藤 整 石川 啄木など、小樽ゆかりの作家さんたちの
実物資料展示が行われている。多喜二は1903年生れ、知里 幸恵さんと同じ年の生
れであったのだ。29才の壮絶死、多喜二のデスマスクに見入った。 うむー・・・。