BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

アホらしくて

2018年03月27日 | 時と事
どうやら日ハムの新球場構想は札幌市のお隣さん、北広島市の「きたひろしま総合運動公園」内に決まった。
どうでもいいがなんだかホッとした。あれだけ大手の広告代理店を使いプレゼンしていたのだろうから、これ
が違っていたらどえらい事になっていただろう。最も札幌市だって同じ代理店を使っていただろうから、電通
にとってはどっちに決まっても損はない。きたひろの方が規模が大きいので、利益は多いだろうが。
しかしだ、年間何百億円もの利益を出している一企業に、あらゆる造成負担や固定資産税の免除をするという
ことはどういうことやねん、きたひろさん。確かにそれによって市が利益をえることもあると思うが、そんな
にきたひろさんの財政は豊かな豊か町なのですか?近隣の交通渋滞や路線価格の高騰、すでに住んでいる住宅の
固定資産税だって上がるに違いない。静かな環境も壊されるだろう。そのどこがきたひろにとっていいねん。
企業がもっとおおくのゼニを得たいという欲に、スポーツに名を借りた押し付け感動嘘編をバラまいて、庶民
のゼニをかすめ取っているだけだ。それにメディアも乗っかり感動を煽る。
前国税庁長官の佐川 宣寿氏の国会証人喚問の証言同様、あ~、なんちゅう虚しさ、アホらしさだ。

危 惧

2018年03月24日 | 新 刊
不覚をとった。新刊をまさに二重買いしてしまったのだ。読んでいる内にどうも前に読んだ気がそこかしこに。
16年の2月刊だったから、以前もきっと新刊で買っただろう。まあほとんどは正午さん本は古本だったから、
せめてもの著者に対する印税のお返しだと思えばいいのだが。
今読むとどうも理屈ぽくて、面倒になってきた。前に読んだのだからと早読みにした。
佐世保でのひとり暮らし、年1冊ペースでしこしこ今も書いていると思う。でも直木賞をとったばかりだから
そうもいかないかも知れない。まあそんなことぐらいでペースを崩す作家じゃないが。
 「小説家の四季」 著者 佐藤 正午  岩波書店 定価1900円+税
  ( 2016年2月23日 第1刷発行 )

角幡さんが結婚して子供などがなどできたらどんな書きようになるか案じたが、それはとんだ危惧だった。
妻と2歳になった娘さんに見送られて、極夜行へと旅立った。半端じゃない命のやり取りと言える困難に遭って
北極の1日太陽が出ない夜の暗闇を、さまよい歩いた。特製の六分儀は風に飛ばされ失くし、現文明のGPSは
あえて持たなかった。星空の星座観測と、以前の記憶を手繰り寄せて4ヶ月以上もの旅になった。
途中にあてにしていた食料木屋はことごとく北極白クマに荒されて、食料などの補給はできなかった。終盤には
一頭の相棒の犬を殺して喰い、生き抜くしかない状況まで追い込まれた。しかしすんでのところで出発点の村へ
とたどりついた。まあ生きて帰ったのだからこのノンフィクションがあると、自分に言い聞かせて読み進めて行
けたことだけが救いなのだが、著者ともども途中はとても生きた心地がしない(笑)
冒険探検家とはいえ、あまりに危険な旅を今後も続けるのだろうか。少しのことではもう、本人も読者も納得し
ないだろうし、かといって高野 秀行氏路線には行けないのだから、その旅は危険すぎる方向へ向かうのか。
生きて、売れて欲しいと心から願うノンフィクション作家。
 「極 夜 行」 著者 角幡 唯介  文芸春秋 定価1750円+税 
  ( 2018年2月10日 第1刷 )




クリントさん

2018年03月21日 | 映画
とうとうクリントさんも本当に終わってしまった。もう何も言うことは無い。偉大な監督の終焉を観たのだ。
映画「15時17分、パリ行き」列車内の出来事はなんのスペクタルもなく、犯人は1人でその背景などの
描写はない。映画が始まると延々と子供時代からの青年たちのお話が続き、アタシはシネコンの部屋を間違
えたのかとさえ思った。ほぼどうでもいい長いお話のついでにパリ行き電車に乗ったら、たまたま暴漢に出
会ったというだけのこと。時のフランスのオーランド大統領、感謝スピーチがまるで時間稼ぎのように使わ
れているが、なんの工夫も無い。
この世に信用のならないものが3つある。そば屋の出前の、いま出ましたという返事。スパゲッティの袋に
書いてある茹で時間。最後が映画のチラシの宣伝文句だ(笑)
永く生きるという事は、好きだった映画監督、作家たちを少しづつ消し失って行くということなのか。

 「15時17分、パリ行き」 監督 クリント・イースト・ウッド

三部作

2018年03月18日 | 映画
北の三部作「北の零年」「北のカナリアたち」「北の桜守」いずれも脚本は那須真知子だ。しかしだ、この三部作
いかにも女優〔吉永 小百合〕ありきの映画でしかないことを残念に思う。70才をとうに過ぎ、小ジワ1本もない
女優の生活感や歴史感の無さは気味が悪い。どんな時代背景でも泥や接ぎ一つない衣装と、きれいなお化粧。多く
の時間とお金、大掛かりなスタッフと大量の協力クライアント。期待した滝田 洋二郎監督だけに、なぜか虚しい。
今回の役者、夫役 阿部 寛はただの背高木偶の棒役者だし、息子役の堺 雅人はどんな性格設定か分からない存在。
せめて口をつぐんだ時の変な癖が無いのが救いだった。妻役の篠原 涼子もただの我儘女で暑苦しい芝居。
終戦後樺太から命からがらひきあげ、乗った船は撃沈されて長男が行方不明、あとで夫も戦地で戦死と知るが。(こ
のとき夫の出征時、すでに銃を持っている意味が分からん)網走に流れ着いて吉永さんは江蓮商店として飲食店を営む。

その後15年が過ぎ、次男堺 雅人はアメリカに渡り、米国企業の日本社長となって札幌の狸小路に店をだす。そんな
ある日、子供の頃のいじめっ子が堺 雅人に事業資金200万の金を借りに来る。お前など知らないと言いつつも内ポケ
ットから札束を出し、1万円を手でくしゃくしゃににぎったあと床に2回捨て落とす。役者・安田 顕はそれを拾う。
この辺の性格設定も中途半端でチグハク、15年は空白だ。映画の後半、まさに再開した親子がその時(引き上げ直後)
を埋めるべく旅に出るのだが、なんのリアリティもなく、少しの健忘症にかかっている母吉永さんはメークにも芝居にも
変化なし。ただただ北海道で撮られたという、大掛かりというだけのいつもの〔吉永 小百合〕さん映画。チラシには
「激動の時代を懸命に生き抜いた親子の物語」とあるが、アタシにはその懸命さが全く伝わらん。
ラストの物語を象徴する演劇的シーン、ここで吉永さんは取って着けたような白髪だ。アタシはこれ目頭も熱くシラケ
たね(笑) 映画「蒲田行進曲」のラストは効果的だったが。

 映画「北の桜守」 監督 滝田 洋二郎  東映作品+沢山の企業 2018年 時間は2時間ほど

伏字大賞

2018年03月16日 | 古本
これは本日紹介の本の伏字の平均的ページです。これより少ないページもあり、
また4ページまるまる真っ黒もあります。
これは収容中に検閲を受けての出版の事ゆえか。
(このブログは1回につき1枚の写真しか投稿できないのです)

グアンタナモ地獄

2018年03月16日 | 古本
この本が出版された時点では、著者のモハメドゥ・ウルド・スラヒはまだ釈放されておらず、読んでいる途中で
この新聞記事を読み、無事16年10月に釈放されたことを知った。なんしろ15年も獄中生活をおくっていた。
それもなにか懲役作業につくというような単純なことではなく、毎日のように続く長時間の尋問や拷問の日々を
生き抜いた。CIAの秘密施設で用いられていた「強化尋問技術」にたけたその連中の拷問内容は、ここに書く
ことさえ憚れられる。それは「夜と霧」の2倍の本の厚さになり、期間も比べものにならない生き地獄となった。
(拷問内容を読むのには覚悟がいる)
新聞記事は彼を無実の罪から救うべく奮闘した弁護士〔ナンシー・ホランダー〕と協力者たちの強靭な意思があ
ったとある。9・11の容疑だったがゆえ、彼女もアメリカ国内で非難も賛同もよんだらしいが、米国の司法制
度を守る決意はゆるぎなかった。
不思議なことはキューバのグアンタナモ米軍施設内に秘密施設があることだ。オバマは閉鎖を予定したが共和党の
反対で実現しなかった。にしても国交の無かったキューバに長年なぜそんな米軍施設が在ったのか、そこが分からん。
この事件、映画化しないのか。でもスピルバーグやクリントイーストウッドじや出来ない。期待はオリバー・ストーン
だがどうだろう。
447ページ、読むのに時間がかかった。そして伏字の多いこと半端じゃない。4ページまるまる〔のり弁〕もあり、
まるで公開請求されて渋々出したお役人の決済書類なみだ。伏字は主に尋問者の名前や役職名だろうが、話しの流れ
の理解にそう支障はない。
 「クアンタナモ収容所 地獄からの手記」 著者 モハメドゥ・ウルド・スラヒ  編集 ラリー・シームス
  ( 訳・中島 由華 河出書房新社 定価2800円+税 2015年11月30日 初版発行 )
 ※この本、定価2800円なのに、BOOK OFFでは360円だった。まだほぼ新刊なのに。
  

検証いいんかい!

2018年03月06日 | 古本
これは「本の雑誌」の2005年3月号から2012年5月号に書評として連載されていたものの単行化。
厳選82作とその他5作の1500字。外国翻訳ものから日本の純文学からエンタメ本まで。取り上げたも
のの作品で翻訳本は全部知らない人、日本物は5名しか読んでいない。多少の本好きだと思っていても、や
はりプロには負ける。ていうか、世の中には作家と書物が多すぎないか。アタシはアタシの好きな作家だげ
を読んでいて十分に満足している。橋本治「巡礼」のなか、<ゴミの山のどこかにとても大事な何かがある
と信じているからなのである。><すべてがなくなって、元に戻った時、生きて来た時間もなくなってしま
う。生きて来た時間が「無意味」というものに変質して、消滅してしまう>アタシはここに傍線を引きたい
気分だ。(傍線は引かないけど)博物館の機材は断じてゴミじゃないし(笑)
 「ガタスタ屋の矜持」 著者 豊崎 由美  本の雑誌社 定価1600円+税
  ( 2012年6月20日 初版第1刷発行 )

不肖・宮嶋さん、登別本棚には沢山あるのだが、なんかすぐ読みたくて重買しっちまった。(200円だし)
なんちゅうてもとにかく彼独特の毒文が痛快なのだ。(すぐに語り口が移る)信じられないのは所々に青の
太いボールペンで傍線がひかれていることだった。それも特に特別な内容や表現でもなく、なんちゅことも
ない普通の文章だ。まるで受験生の参考書のごとく。こんな傍線を引くヤツの気が知れんのだが、それを不肖
さんにもし伝えたら「おーたいしてワシの事を分かっているやんけ!」ちゅうに違いない(笑)しかしなんだ、
そんなに傍線を引いて読む程いい本だったら古本に売り飛ばすなちゅうに。
 「不肖・宮嶋 踊る大取材線」 著者 宮嶋 茂樹  新潮社 定価1500円+税
  ( 1999年10月15日発行 )

2011年3月11日、あれからもうまる7年が経つ。石巻市立大川小学校が津波に襲われ、学校にいた児童
76人と教職員13名中10名が犠牲になった。その後事故検証委員会が立ち上がったが、その検証を検証し
たもの。この検証委員の選考や問題意識もなんだが頓珍漢を絵に描いている。そしてそこに文部省からは意外
な人物の名が絡んでいた。あの森友学園問題で交渉対応文章が省内にあると発言した元厚生省官房長(当時)、
後の文部省事務次官 前川 喜平氏だ。しかし氏は若い女性の貧困や苦悩に熱心にその手の場所に通って相談を
受けて調査していたようだが、ことこの大川小の事故検証においては、なおざりで不作為役人の域を出なかっ
たようだ。
市は遺族抜きの第三者検証機関を5700万円で予算化し、2014年1月19日に事故検証委員会が「最終
報告書案」を締めくくった。しかしそれは決して被害者遺族の最も知りたい、地震後津波がくるまでの50分
間に何がどうしたかという肝心な要点が無く、遺族の心情に沿ったものではなかった。
得てしてなりがちな展開と結論、結局あれは震災で誰にも責任は無く、仕方のないことと検証にならない報告
となっている。現場にいてたった一人生き残ったA教員。せめてこのようなことが二度と起こらないよう、あ
らましの真実を話せよ。
 『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』 著者 池上 正樹 / 加藤 順子  ポプラ社
  ( 定価1500円+税 2014年3月7日 第1版発行 )

爽やかに

2018年03月01日 | 古本
ナンシーさんのはほとんど読んでいるがなんしろ手元にはない。まあ安いし、2度読みもいいだろうと
「小耳にはさもうと」と「聞く猿」の2冊を。驚くのはここで取り上げている人物の半分がアタシが知
らないかもう消えた人だ。それだけ入れ替わりや、消えていくタレントも多いという事か。ただ何年経っ
てもその筆致が正しい事が見て取れる。関さんはほとんど表に出ず、タレントなどとはなれ合いを避けた。
マツコ・Dさんなどは出る幕は無かったろうに。(体形は似ているのだがね)
全く惜しい人を早くに亡くしてしまったもんだ。今生きていたらネタに困ることも無く、健筆をふるって
いたのに違いないのだが、なんとも今更ながら惜しい。
1996年11月30日 第5刷発行と、1998年2月20日第4刷発行。今から20年前だがちっとも
古くならないのが「ナンシー関」さんだ。

高倉 健さん、一筋縄ではいかない人だとは思っていたが、巷間言われていた人物とはやはり相当違う。
彼をお慕い申し上げた女優は枚挙にいとまがないし、あらゆる分野の人とのつながりが多くて、たとえ
それがヤクザであっても拒まなかった。しかしそれを巧妙に隠し続けた人生は「闇」だったのだろうか。
作品スタッフに対する気遣い伝説は本当らしいが、高い時計やコートなどをさり気なく周りに呉れてや
れたのも、持っている物が多すぎただけなのか。
以前、健さんの著作「あなたに褒められたくて」を読んで書いたのだが、自分が何をしたのかではなく、
他人が自分に何をしてくれたのかを多く書いた。にしても死の直前に入籍した養女にやられ放題は気の
毒だ。遺骨さえどこにあるのか分からないらしい。まさに「死はたたみ一畳で足る爽やかに」だ。
 「高倉 健 七つの顔を隠し続けた男」 著者 森 功  講談社 定価1600円+税
  ( 2017年10月11日 第4刷発行 )