BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

ほめ上手

2016年03月20日 | 古本
 今なら普通に現場に女性スタッフはいる。演出系、制作系、技術系など。どの部門にも女
性が活躍している。重いライトや特機を担いだり運んだりだって珍しくない。ただこの方の
出会った時代の映画界、女性スチールは数少なかっただろう。数々の有名な監督の映画の
現場で、スチールを任されることになった体験記。どこをどう切り取っても画になるのが撮影
現場だ。その分で腕を磨き、そして今も違うテーマで撮り続けられているのがなによりのこと。
 「映画の人びと」 写真と文 渋谷 典子  バジリコ(株) 定価2400円+税
  ( 2013年11月1日 初版第1刷発行 )

 早く読みたくてずーっと古本屋さんで探した。新刊でならすぐ読めただろうが、売れてい
る作家さんならジキに出るだろうと待つこと半年だ。かように作家にとって有り難くない本
好きでいつも申し訳ないと思う。
 いつもの様に桜木さんの長編は、ほんすじ違うところで長くてクドイいのがじゃまだ。し
て本作は着物がクドイ。着物などどう表現されたところで、衣装素人のアタシにはイメージ
さえ出来ない。そこになにか意図を含まれても、戸惑うばかり。また三姉妹のよく解らない
確執だがそこも根本が分らん。どしてだべ、大した理由もないと思うのだが。
 しかしそこは桜木さんだ、読み終えるとアタシは背にびっしりとアセをかき、しばらく寝
つけないのだ。次々といろんな疑問が湧いてくる。〔ウラル〕ってなんだ?余計なルビか。
それは褒めていること。桜木さんはすんなりの連作短編が一番いい。クドクないからね(笑)
しかしなんだ、オビの著名人のほめ上手にはいつも感心する。
 「 霧 」 著者 桜木 柴乃  小学館 定価1500円+税
  ( 2015年9月29日 初版第1刷発行 ) 

悦 痴

2016年03月14日 | 古本
 <Hが「変態」の頭字であることが知られているが、>とあったがアタシは知らなかった。
戦前から言われてたらしいが、そんな言葉を初めて訊いたのは中学生の女子たちからだった
気がする。男たちは躊躇なく「スケベ」などと言った。
 ちなみに本当のHは「悦痴」というのが語源ではと、出久根さんはいう。なかなか鋭い考察
で、このように沢山勉強になるのが出久根さんのエッセィだ。
 「たとえばの楽しみ」 著者 出久根 達郎  講談社文庫 定価600円+税
  ( 2000年1月15日 第1刷発行 )

 京都弁風にいうと「黒田はん、あんたはんもいい人たちと仕事に巡り合ったのどすなぁ」
てなことになるのだろうか。優しいひとには優しい物語が集まるのだ。「知」をもって「情」
で書いた新聞記者、黒田 清さんもすでに鬼籍の人だ。
 「会えて、よかった」 著者 黒田 清  三五館 定価1200円+税
  ( 1996年5月2日 2刷発行 )

足らん?

2016年03月10日 | 映画
 日本が大好きだというハリウッド映画監督〔喰えんてぃん・足らんてぃーの〕いや失礼、
〔クエンティン・タランティーノ〕監督の「ヘイトフル・エイト」を観てきた。本作は
70mmフィルムで撮られた作品ということだ。だが日本のシネコンは今やデジタルプロ
ジェクター上映。かっては日本の大きな都市の劇場に1館くらいは在ったかも知れない70
mmフィルム映画上映館、今や1館も無いだろう。そもそもが35mm映写機を2台使って
の交互上映映写機空間に、70mmもの大型映写機を設置するのは難しかった筈だ。
 いまやアメリカでも70mmフィルムで撮られる作品は極めて少ないだろうし、しかも
ほとんどがデジタル上映だ。
 ただネットで調べるとアメリカにはまだ100館くらいな70mm上映館が在るらしく、
わざわざそこへ足を運ぶ客もいるようだが、さすがに映画大国というべきか。
 して70mm映画は35mm映画のフィルム映像画面は2倍以上。だからと言って作品の
良し悪しが2倍になったり半分になったりするワケではない。まあ映画は80パーセントが
「脚本」で決まるのであり、決して機材自慢になったりロケーション地自慢になるのはスジ
違いなのは言うまでもない。
 で本作、1寸先はどうなるか分らない吹雪に閉じ込められた8人の密室劇。この作品の
予告編つくりは難しかったに違いない。ハイライトシーンはネタバラシになるからね。
タランティーノ監督の高笑いが聴こえてきそうだと言っておこう。ただ長くは感じない。

 映画「ヘイトフル・エイト] 監督 クエンティン・タランティーノ アメリカ 168分

ボウセン

2016年03月06日 | 古本
 対談本というと大抵は数時間を想定したやり取りだが、石牟礼 道子さんと藤原 新也さん
は3日間連続して熊本市にある石牟礼さん宅で行われたようだ。きっとお茶でもゆっくりと
飲みながら話されたのだろうか、話しに急ぎがない。
 福島と水俣、根底は放射能と水銀という海の汚染。研究という学問に汚染された学者たち、
「ただちに人間の健康に影響はない」と平気で云い続けられた水と土と空気と人間の悲しみ。
タイトルガ秀逸だ。
 「なみだふるはな」 著者 石牟礼 道子 藤原 新也  河出書房新社 
  ( 定価1900円+税 2012年3月30日 初版発行 )

 古本列伝にはところどころに傍線は普通にある。ご丁寧に赤ボールペンだったりするとき
もある。この文庫にも鉛筆にてそれがある。珍しいのはその傍線が特にどうということもない
文章に添えられていることだ。たとえば<1980年代のバブル経済に踊らされた日本社会
を見ているかのようだ。>なんということもない文章の、ここに引かれた傍線は直線ではな
く丁寧な波々型なのだ。この文章が傍線を引くほどのことなのか。それほど重要だと思うな
ら古本に売るなとアタシはイカル(笑)「中村屋のボース」ほど面白くなかったハライセ。
 「インドの時代」 著者 中島 岳志  新潮文庫 定価438円+税
  ( 平成21年1月1日 発行 )