BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

空へ・空へ

2019年02月18日 | 古本
何年も探していた本だが、見つける時は見つけるもんだ、それもつづけざまにだ。南の沢BOOK OFFで
文庫を見つけ、そのあと行った宮の沢のBOOK OFFで単行本をだ。なんしろタイトルが2文字だから見
つけやすい。どちらも棚を目で流していたら、瞬間に目に留まった。これはもう文庫と単行を2冊買えという
事だろうと、迷いはない。文庫には追加のあとがきなどがあり、単行は文字が多少大きいので読み安い。
なんどもネットでなどとも思ったが、それは古本列伝の仁義に反する。ともかくいつかきっと探して出会うと
信じていたが、その通りになった。
さてジョン・クラカワー、期待通りで手に汗にぎるとはこういうことだと思わせる。
1996年5月10日、エベレスト登山で登頂組・日本人1人を含む一行9人のうち、4人が山頂近くで斃れた。
その過酷なノンフィクション。やっぱり8848メートルはすざましい。低酸素症にも何種類があり、軽いのから
重いのまで、して猛烈な吹雪が低体温や凍傷をもたらし死を招く。まさに死の淵からの手招きだ。その様子を読ん
でいるこちらまでその現場に立ち会っているかのような錯覚に陥る。
ただ何人もの外国人名が出てきて覚えきれないのが、翻訳書の宿命。ほんとは人物名一覧を書き出し、それがどん
な立場の人間か見て分かるようにするのがいいと思うがそれが面倒。〔著者覚え書き〕には数え切れないほどの
人物名、これはハリウッド映画のクレジットロールにも似ている。長いほど見た読んだその余韻にしたれるという訳だ。
 「空 へ」 著者 ジョン・クラカワー  文藝春秋 定価1762円+税 海津 正彦訳
  ( 1997年10月10日 第1刷 )
 「空 へ」 著者 ジョン・クラカワー  文春文庫 定価819円+税  訳者同じ
  ( 2000年12月10日 第1刷 )

カバーは2枚付き。

2019年02月16日 | 古本
長年BOOK OFFに通い何百冊と文庫を買ったが、この経験は初めてだった。均一でしかも108円と
正しい値だった。そしてついにこの本を読む順番が来たのでカバーを外しにかかった。アタシのクセで読む
ときは全てでカバーを外して読む。するとどうだ、カバーが2枚もまとっていたのだ。つまり映画化が決ま
ったのでその宣伝が入ったカバーに差し替えたのだろう。だがその時、印刷済の在庫の文庫には取り換える
手間を省き、その上からさらに宣伝用カバーをかけたのだろう。おかげで初期のカバーと映画化用カバーを
アタシは同時に手にしたことになる。これは初めてで何だか得した様な気分に(笑)
しかし佐藤さんは不運だ。5回も〔芥川賞〕の候補に挙がりながら、受賞をのがしている。しかもすべて
優れた作品で、これは惜しい。当時の選考委員の顔ぶれが知りたいものだ。(調べれば分かるだろうが)

「オーバー・フェンス」「撃つ夏」「黄金の服」の3作が所収され、どれもが青春の焦燥感なるものの
内容。今読んでもそれは古くない。そもそも青春などはそういう焦燥にまみれたものだからか。
して解説文を書いている〔久世 朋子〕(エッセイスト)さんの文章はもう一つの別な短編作を読んだ気分で
その巧さに感じ入った。短いながらも文章の運びが巧すぎる。アタシは1冊の文庫で2枚のカバーを手に
入れ、2人の作家を読めたのだ。

 「黄金の服」 著者 佐藤 泰志  小学館 定価590円+税
  ( 2016年8月29日 第3刷発行 ) 

いやはや

2019年02月13日 | 古本
カナダ側のイヌイットとアメリカ側のエスキモー、ロシアの北極圏という海洋狩猟民族のお話し。
シーナさんには珍しく付録で〔東日本放送〕製作の60分DVDが付いていた。これは多分CMを入れて
1時間30分番組として放送したのだろう。やたらとナレーションが多く説明過多、その都度シーナさん
は何々したと入るので、いかにも軽薄なTV番組にしかみえない。映像としてもシーナアップが多すぎる
だろう。それよりなんぞいい画でも見せてくれと言いたくなる。まるでアイドルタレントの旅行記のようだ。
初出誌は「小説現代」で月刊雑誌、単行本は2006年版。してDVD付きにしても定価2300円は高杉
さんだろ。そしていつもの文庫化だろう。雑誌の連載、TV番組の放映、単行本、文庫。一粒で四つも美味し
い思い。誠に慶賀にたえない。
 「極北の狩人」 著者 椎名 誠  講談社 定価2300円+税
  ( 2006年6月20日 第1刷発行 )

あっちゃこっちゃに書き散らかしたものをまとめたもの。子供の頃、十代のケンカの日々、銀座の出版社
時代から物書きたき火作家稼業までの、プラス写真家を網羅。いやはや忙しい人生だこと。
ただいままで散々読んだことがほとんどで、これも登別にあるかもしれない。とくに目新しい事も無く、
381ページあるわりにはすぐ読み終える。いやはやだなもし。
 「たき火をかこんだがらがらどん」 著者 椎名 誠  小学館 定価1800円+税
  ( 2007年6月18日 初版第1刷発行 )

得難い作家

2019年02月11日 | 古本
いわゆる大正時代からの女性風俗史、まあモダンガールと言ってもいいのだが、古すぎてあんまり寝本
でも読み進まない。ハイカラと言われた女性たちの群像だが、今の時代と違い過ぎて一時ストップだ。
いつか読む本に困ったとき用として80ページくらいまで中断。早く読みたい本が積んである。
 「モダンガール論」 著者 斎藤 美奈子  文春文庫 定価657円+税
  ( 2003年12月10日 第1刷 )

ウェブ・マガジンや雑誌などを書いたものを取りまとめたもの。3・11<長い恵の歴史の中で、そこに
神がいる、という想念はあたり前のこととして人間生活の中に定着した。 だがこのたび、神は人間を殺
した。>と。3月18日からの放射能測定器をもちながらの現地行。海や空中、土中などのセシウムはど
の地点を測るのかで、数字はまるで違うものになる。福島がアンダーコントロールされているは、いわば
統計偽装である。あの原発事故で死人はいないとのたまった政治家がいたが、もうそれはキチガイの言い
分だ。
1944年生まれの作家に藤原 新也さん辺見 庸さん、おっと椎名 誠さんもいる。当然まだまだいるだろ
うが、なんとも奇特だ。(勿論各人各様であるが)
 「たとえ明日世界が滅びようとも」 著者 藤原 新也  東京書籍 定価1300円+税
  ( 2013年9月5日 第1刷発行 )

コヤニスカッテイ

2019年02月05日 | 古本
1980年代後半に、この映画が公開された。残念ながらアタシは劇場ではなくTVで見た。しかも何回となく。
「コヤニスカッテイ」フランシス・コッポラ製作、監督はゴットフリー・レジオのドキュメンタリー。ナレーショ
ンやスーパーでの説明は一切ない。ただ無常な低い声で〔コヤニスカッテイ〕とお経のように繰り返し唱えられる。
アメリカ先住民のホピ族の言葉で「平衡を失った世界」という意味。そのビデオは今手元にない。誰かに貸してその
ままのようだ。映画はひたすらあまたの大きなビルの爆破倒壊場面を映し出す。(勿論その他の映像もある)
この本前にも読んだ気がするが「サンデー毎日」に連載されていたものを2002年10月に単行化。
内容はまるで2011年の3・11を予言していた。当時の小泉内閣、持ち上げたメディアも田原も筑紫も容赦して
ない。これが例えば3・11後に刊行された本としても何の矛盾もない。読んでひたすら憂鬱になって、永遠の不服従を!
写真は亡くなったが中平 卓馬氏のもの。新宿四谷三丁目、バー〔みどり〕での懐かしい思い出がよみがえる。
 「永遠の不服従のために」 著者 辺見 庸  毎日新聞社 定価1429円+税
  ( 2002年11月30日 第3刷 )


朝日新聞の連載、「プロメテウスの罠」とした3・11の福島第1原発事故の検証シリーズで第6シリーズまでの書籍化。
かくも電力会社は無責任で想像力も無いのか唖然とすることばかり。帯には<無主物の責任ー原発から飛び散った放射性
物質は東電の所有物ではない。したがって東電には除染の義務はないーゴルフ場から訴訟を受けた際、東電はそう抗弁し
た。>とさ。東電も官僚も政府も誰も責任を負わない。(勿論訴訟はあっちこっちで起きているが)日本はもう絶望した
ほうが身のためだ(笑)
 「プロメテウスの罠 明かされなかった福島原発事故の真実」 朝日新聞特別報道部 学研パブリッシング
  ( 定価1238円 2012年3月26日 第3刷発行 )

オカドメさん

2019年02月04日 | 時と事
岡留 安則さんが1月31日、肺ガンのため那覇市内の病院で亡くなった。まだ71才という若さ、酒とタバコに
やられたのだろうか。1979年の「噂の眞相」創刊時から、2004年の休刊まで毎月10日の発売が待ちどお
しかった。各ページの縦1行情報はなんとも面白く、それを先に読んだ。どんな権力や権威にもヤスノリ(安乗り)
はしなかった。訴訟だらけになったが、罰金を取られても右翼に事務所内で襲われても、それをネタにした。もう
あんな雑誌は日本に創刊されないだろう。休刊後アタシはどんな雑誌を読んでも物足りなく、雑誌コーナーに足を
向けることはしなくなった。死を伝える報道があるかとその日のニュースを注視していたが、TVでは扱いがなか
った。かろうじて新聞に載ったが、真相の真はこの眞だ。それを知る記者や校閲の人もいなくなったのか。
相変わらずTVはロクでもないニュースばかりで、殺人や俳優の不始末に限られた時間を費やす。NHKスペシャル
あたりで「噂の眞相」とはどういう雑誌だったかと言うような特集はやらないだろうな(笑)


登別映像機材博物館には、創刊時から休刊までの、そして岡留さんや関連本を置いてある。それはアタシの誇りだ。